2022/02/21
入試情報室より【「大学入試が変わる」というのはどこまで本当?】
ことごとく頓挫する教育改革
2013年9月7日、国際オリンピック委員会(IOC)が2020年のオリンピック・パラリンピックを東京で開催すると決定、そのお祭り気分が冷めやらぬ10月31日、第2次安倍内閣の私的諮問機関である「教育再生実行会議」は第4次提言「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」を行いました。それを受けて文部科学省の作業部会が発足し、急ピッチで制度設計が進められていきました。(当社からも民間の教育企業として文部科学省の会議に参加し意見を述べています。)
その結果大学入試に関しては共通一次試験から40年続いた「大学入試センター試験」を廃止し、記述式や民間英語資格・検定の利用も含む「大学入学共通テスト」を2021年度入試からスタートさせることが決定されました。
しかし、ご存じの通り、2019年11月1日に当時の文部科学大臣によって英語民間検定利用の見合わせが突然発表され、次月には記述式の導入も見送りに、そしてコロナ禍の騒ぎの中で大きく報道されませんでしたが、総合型選抜のための情報提供機関「JAPAN e-ポートフォリオ」が2020年9月に破綻するなど、提言を基に立ち上げられた改革がことごとく頓挫し、教育現場に大きな混乱が引き起こされたのは記憶に新しいところです。
大学入試の変化は?
学習指導要領は時代のニーズに合わせて今まで何度もリニューアルされてきましたが、残念ながら我が国の経済的・学術的な面を含む国際競争力の相対的な低下はご存じのとおりです。人口構成(少子高齢化)が財政に与えているインパクトに比べれば、その原因を教育に押し付けるのはどうかとも思うのですが、ともかく世界に通用する人材育成に向けた教育を急激に浸透させるために、まず大学入試を変えてしまおうと考えられたわけです。
しかし、そもそもですが、準備期間が短すぎました。英語の4技能が大切だとわかっていても、全国同時に50万人のスピーキング能力を測る仕掛けを作るためには莫大な予算が必要ですし、年に1度のために、50万人分の記述答案を短期間に正確に、しかも同一基準で採点する組織をつくるというのは現実的ではありません。(予備校系の記述模試の受験者数は多いものでも10万人程度です)
結果的に「大学入学共通テスト」は従来と同じ「マークシート式」の解答方法に落ち着き、「多面的な思考力を問う」との目的から、問題文の文字数や資料の分量は増えましたが、例えば国語は「論説文」「小説」「古文」「漢文」各50点、という比重は従来通りです。
しかし、大学ごとの個別試験に関して文部科学省は「学力の3要素(知識・技能/思考力・判断力・表現力/主体性・多様性・協働性)」をバランスよく判断できるような制度に変更することを要請しています。
そこで、何が変わったのか、変わらなかったのかを整理したいと思います。
というわけで、高校新指導要領1年生となる今の中学3年生が大きな影響を受けることになりそうです。このような変化に対する不安もあるのでしょうか、大都市圏を中心に有名私立大学の附属高校・中学校人気が高まっています。確かにそのような選択肢もありだとは思いますがありますが、それ以外の学校に通っていても、教科書内容を基本に、学校での学習活動を大切にするという姿勢を大切にしていれば不利になることはありません。今後も制度変更に関する報道がなされるとは思いますが、そういった情報に気を付けつつ、基礎的な知識と技能の獲得を進めていきましょう。
<文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦>