2022/03/22
入試情報室より【過去問演習のすすめ】
関関同立即日分析を通じて見えるその意義
入試情報室はフリーステップ教育技術研究所の協力の元、今年も2月1日から9日まで、関西の有名4私立大学である「関関同立」(関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学)の入試問題を試験当日終了直後に入手・分析し、発信するという「即日分析」を行いました。その結果を基に、大学入試に限らず、その学校の過去問を演習する意義をお話したいと思います。
過去問=過去に出題された問題だからその後は絶対出題されない問題だ(確かに一理あります)として、過去問に向き合おうとしない受験生を見たこともありますが、広範な試験範囲(高校受験なら、小中学校の教科書全て、大学入試なら小中高の教科書と資料集も全て)の中から入試で出題されるのは数十分の試験時間内に問くことができるごくわずかな問題です。あくまでも確率論ですが、まずは出題頻度が高い問題から優先して、限られた勉強時間を使う方が効率的だと言えます。
過去問に見る各校の特色
関西学院大学・立命館大学 過去5年分の世界史
ここで関西学院大学と立命館大学の過去5年分の世界史の出題範囲を見てみましょう。
※画像をクリックすると別ウィンドウで開きます。
中国・東アジア史にはオレンジ色を、民衆運動・革命史には青色を塗ってみました。
関西学院大学は過去5年間合計125問のうち、中国・東アジア史は27問(21.6%)、民衆運動・革命史は7問(5.6%)になるのに対し、立命館大学では合計100問のうち、中国・東アジア史が47問(47%)、民衆運動・革命史が11問(11%)と大きく異なります。東洋史が得意な受験生は立命館大学の方が、西洋史が得意な受験生は関西学院の方が有利だと考えられますので、立命館大学に合格したいのであれば、東洋史に優先的に取り組むべきだということになります。
出題範囲が異なることは問題を解かなくてもこのような分析表があればわかりますが、実際に問題に取り組むことで、その学校の「歴史観」のようなものが浮かび上がってくることもあります。
青山学院や東洋英和女学院などと同じプロテスタント系の関西学院大学では、宗教改革を直接問う問題も出題されていますが、それに至るまでの西洋古代~中世史を大切にしており、当時の支配者階級についての設問が多くなっています。一方、立命館大学は文化史や民衆視点での歴史(昨年2月7日の疫病をテーマにした通史や、人権問題、ナショナリズムの高まりなど)に軸足を置いている出題が多くなっています。このように過去問を通じて、その大学にはどのような先生方がいらっしゃるのかが透けて見えてくることもありますので、自分の志向と過去問を掛け合わせて大学を選ぶことで、入学後の学びの楽しさも変わってくるかもしれません。そういった意味で推薦系の入試や「大学入学共通テスト利用」で出願するからといって、一般試験の過去問を見ないまま入学するのはあまりお勧めできません。
今回は大学入試の世界史を例にとりましたが、どの入試、どの教科でも学校による出題傾向や大問数、解答形式が異なりますので、模試の判定で合格確実だと評価されていても、模試の問題はどの学校の出題傾向と異なるわけですから過信をせず、必ず時間を測って過去問に取り組むことをお勧めします。
<文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦>