2022/06/20
入試情報室より【複線化する大学入試-学校推薦型選抜・総合型選抜】
突然ですが、クイズです。大学に入学した人のうち、どのくらいの割合が入試問題を解いて合格した人でしょうか。
実はその割合は国立大学で82%、公立大学で70%、私立大学で42%となっています。特に私立大学では一般入試の始まる1月末には既にお席の半分は埋まっている、といったイメージでしょうか。
では、私立大学入学者の残りの半分強はどのようにして入学できたのでしょうか。実は私立大学の場合43%は学校推薦型選抜(旧推薦入試)、15%は総合型選抜(旧AO入試)を経て入学しています。(参照:文部科学省「令和3年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」)
学校推薦型選抜
学校推薦型選抜は、「公募」と「指定校」の2通りに分けることができます。指定校推薦は、各高校に割り当てられた定員枠の範囲内で、各大学の基準を満たした受験生が学校長より推薦され、大学では作文や面接といった審査を経て入学が許可される、という方式です。文部科学省からの、学力不問の選抜は好ましくないとの指導もあり、面接を「口頭試問」と表記している大学もありますが、この方式ではほとんどの候補者が合格します。(とはいえ、100%ではありませんし、合格後でも何らかの問題で入学許可が取り消される場合もあります。)
一方、一般推薦(公募制)は学校ごとの人数枠は無く、評定平均など出願基準に合致すれば誰でも出願することが可能です。但しその代わり各大学での学力試験が課される場合がほとんどです。国公立を中心に専願(合格すれば入学を確約する)としている大学もありますが、併願が可能な大学であれば、年内に一つ合格校を確保しておいて、さらに上位校を狙うという作戦に使うことができます。一般入試に比べると、科目数や範囲が少ないケースも多く、前哨戦としての受験もお勧めです。出願期間は原則11月1日以降となっています。
総合型選抜
かつて「AO入試」と呼ばれていた方式です。そもそも受験生に大学の入学を許可するのは教授会の権限なのですが、そこから権限委任された「アドミッションオフィス(AO)」が判定していたのでこのように呼ばれていました。
定員の一部について、志望理由書や高校時代の学習・研究活動の成果(ポートフォリオ)や評定平均などの記録を元に、能力や意欲を「総合的に判断」して入学を許可する方式ですが、今では教授も選考に参加するケースがほとんどですので、実態に合わせて「総合型選抜」と呼ぶようになりました。
この方式でまず重視されるのは出願時に提出する「エントリーシート」や「志望理由書」です。各大学・学部の「アドミッション・ポリシー」を読み込み、その内容に沿った志望理由を作る必要があるなど、出願書類の作成には時間が必要です。中には9月から出願を受け付けている大学もありますので、少なくとも夏休み前にはある程度の方針を決めて準備を始めることが必要となります。
中学生・高校生時代の課外活動・海外経験・ボランティア活動・学外の研究会での発表など、大学や専門分野によって優遇される要素は様々ですが、それらを証明する書類が必要なケースもありますので注意が必要です。中にはオープンキャンパスへの参加歴(体験講義に参加してレポート提出)など、大学の入試イベントと連動している場合もあります。ともかく早めの情報収集がお勧めです。
合格してから入学まで
まず、国公立大学では学校推薦型選抜・総合型選抜のいずれの方式でも大学入学共通テスト(以下、共通テスト)が必要となる場合があります。書類審査や面接などの選考で合格していても、共通テストで失敗すると入学は許可されません。龍谷大学は、2023年度入試から、合否判定には使わないが、学校推薦型選抜(指定校)で出願した受験生に共通テストの受験を義務付けています。自分に関係なくても次年度以降の指定校推薦枠に影響を与える可能性がありますので、必ず十分な準備をしてから受験すべきでしょう。
共通テストが課されていない国公立や私立でも、入学までに英語等の民間検定や、オプションの有料オンライン講座の視聴が推奨されている場合があります。受講しなくても入学できないわけではありませんが、入学後のメリットを考えると、積極的に取り組むべきでしょう。
<文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦>