2022/11/28

入試情報室より【模擬試験の偏差値の評価について】

そろそろ入試シーズンが近づいてきました。受験生が受験校を決める理由の第一位はやはり「難易度」、つまり自分の学力に相応しい難易度の学校に出願するというのが一般的です。その自分の学力をはかるためにも「模擬試験」について、中学受験、高校受験、大学受験、いずれの受験生に対しても、塾としてはその重要性をお伝えしておりますが、今回は、模擬試験の数値をどのように評価するべきか、という話をしてみたいと思います。

偏差値とは?

まず、模擬試験に限らず、テストには点数が付けられますが、問題の難易度や解答方法などの影響で平均点は大きく変動します。そこで、どの試験でも平均点を50点(100点満点の場合)と仮定し、そこからどれだけ上下に離れているのかを数値で表したものが偏差値です。つまり偏差値50なら、その模試の受験者の平均点だったという事になります。但し参加する受験者層によっても意味が変わってきます。一般的な小学生向けの模擬試験と中学受験用の模擬試験では同じ偏差値50でも同じ学力というわけではありません。そもそも近畿圏では小6生の1割弱、首都圏では1718%程度の人数しか中学受験には参加しないわけですから、中学受験用の模試での偏差値50は、小学生全体の平均よりは高いと考えた方が良いでしょう。

大学入試用 模擬試験では

さて、大学入試用の模擬試験についても、同様のことがいえます。「共通テスト模試」などのマークシートで解答する形式の模擬試験の場合、受験者数も多く、今の受験生の志願動向、つまり「未来の」難易度もわかる、というメリットもありますが、例えば選択肢が5つの中から選ぶ問題だけで成り立っていたとすると、問題を解かずに無作為にマークを塗りつぶしたとしても確率論的には20点は取れてしまうという点でそれほど極端に平均点が下がることはありません。一方「記述模試」となると、国公立大学志願者の多くは受験しますが、マーク式の出題がメインの私立大学を考えている受験生は受験しません。そうなると母集団の学力ゾーンが上がりますし、無回答の場合は当然0点になりますので、一人の受験生にとってはマーク式の模試よりも厳しい点数と偏差値が付くことになります。その結果、「自分は記述式には向いていないのだ」と思い込み、マーク式の大学ばかりを志願する受験生が増えてしまうのです。

また、模擬試験会社による違いにも注意が必要です。

模擬試験会社による違い

河合塾は大学ごとの基準偏差値を学部単位ではなく、学科、受験方式別に細かく発表していますが、数値に関しては2.5刻みと大雑把です。一方ベネッセ・駿台では数値は1刻みですが、学部ごとでの評価となっています。

関関同立について河合塾とベネッセの基準数値を比較してみました。(いずれも各社HPに掲載されています)大学名横の数値は全学部の単純平均です。ベネッセのデータに合せて河合塾の基準値は、各学部の中での最低値を取り出しています。

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例えば関西大学を見てみましょう。文系学部の中では外国語学部が最難関、という評価はどちらの模試も同じですが、理系学部では難易度の関係が異なっています。同志社のグローバルコミュニケーション学部や立命館の国際関係学部では数値に20以上の開きがあります。実は各模擬試験での基準偏差値というのは昨年の受験生の成績と合否結果との相関から割り出されたものですから違いがあって当然で、その上模擬試験の問題傾向や難易度も各大学の入試問題とことなるわけですから、ブレが出るわけです。

というわけで、毎回の偏差値や合否判定に一喜一憂するべきではなく、模擬試験は自分の不得意科目や単元を見つけるツールと割り切って使い、その対応を行ってから、入試に向けては志望校の過去問に必ず時間を計測しながら取り組む、という準備が受験対策の王道だといえるでしょう。

<文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦>