2022/12/26

入試情報室より【日本の大学のこれから】

文部科学省の「学校基本調査」という細かい統計資料がネット上に公開されています。それを元に設置者別に分けて10年毎に区切ったグラフを作成しました。(文部科学省の統計資料ですので、既に募集が無い大学も含まれており、逆に省庁大学校は含まれていません。)

学校基本調査 年次統計 総括表(学校種ごと) 10 大学の学校数、在籍者数、教職員数(昭和23年~) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp)

「進学率推移(男女別)」グラフ

進学率推移.png

「日本の大学数推移」グラフ

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2次ベビーブームによる18歳人口が最高だった1992年は、大学の増設が追い付かず、男子の大学進学率は1975年の約4割から、35分ほどまで急落したのですが、そこから大学急増期に入ります。特に公立大学は1990年からの10年間で1.82倍になっています。2000年からの10年間に国立大学は減少しますが、山梨大学への山梨医科大学の統合など、同じ地域の医科大学が国立大学に吸収されるケースや、筑波大学への図書館情報大学の統合、東京商船大学+東京水産大学=東京海洋大学、神戸大学への神戸商船大学の統合、九州大学への九州芸術工科大学の統合、大阪大学への大阪外国語大学の統合などが行われたためです。

一方1950年(昭和25年)には105校しかなかった私立大学は今では600校以上大きく伸びています。戦後の学制改革後から女子は短期大学への進学率が大学進学率よりも高かったのですが、1986年から施行された男女雇用機会均等法により労働市場が変化し、ちょうどOA化が大きく進むきっかけとなったWindows95が発表された1995年には逆転します。そこで短期大学から4年制大学への昇格や共学化も進み、私立大学が1990年からの20年間で急増することになりました。

「日本の大学生数(万人)推移」グラフ

日本の大学生数推移.png

一方、学生数はどのように変化したのでしょうか。これも同じ統計資料から取ってみました。すると、1950年には「大学生」というのはわずか23万人。同世代の1割以下です。特に女子は全国で17,324名、2020年度の大学生女子は129万人ですので、なんと当時は今の74分の1、つまり4年制大学に行く女子というのはかなりレアな存在だったことになります。

学校数では国立よりも多い公立大学ですが、看護系の単科大学など小規模な大学もありますので学生数としては全国でも16万人ほどと少数派となっています。18歳人口は減少が続いていますが、大学進学率の向上に伴い、大学生の人数は増加しています。

「1大学あたりの大学生数(人)推移」グラフ

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一つひとつの大学を見ると、規模は様々です。特に私立大学は66千人以上が在籍する日本大学、38千人の早稲田大学、33千人の近畿大学などのマンモス大学から、今年の在籍学生数が38名の東京神学大学まで様々です。というわけで、平均値はどんなものなのか、学生数を学校数で割ってみました。

このようにみると、1950年の国立・私立では平均で1,200名ほど、実際には6年制の学部もありますが、ざっくり4で割ってみると1学年300名。さらに学部数で割ると、ほぼ顔見知りになる規模です。なるほど、大昔の大学生が同窓会をよくやるのはこういうわけだったのか。

それはさておき私立大学の学校数や学生数は1980年代から大きく伸びていましたが、平均学生数は横ばいとなっています。しかも2000年から2020年の間に約17%も減少しています。国立は大学の統合により学生数が増えた時期もありましたが、2010年から減少に転じています。

 一方男女比はどのように変化したのでしょうか。こちらのグラフは1949年からの大学における女子の割合を示しています。1949年には6.4%。全国でもわずか8136名でした。それが2021年には44.5%130万人ほどと激増しています。実際大学への進学率もほぼ男女で差が無くなっています。2022年度入試での東京大学理科Ⅲ類合格者の高校別ランキングで首位だったのは、男子校の灘でも開成でもなく、女子校の桜蔭だったのも象徴的でした。

大学数が増えることは、受験生にとって選択の幅が広がるという利点がありますが、1つの大学の学生数が減ることで、それぞれの大学の活力が失われるような気もします。一方で今はまだ女子が少ない理工系の分野でも女子の進学率が上がれば、女性にとっても研究しやすい環境が整い、様々なイノベーションが進むことも期待できます。今後大学の統合も進んでいくことになるでしょうが、元気な大学が生まれるきっかけになればとも思います。

<文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦>