2023/02/20

入試情報室より【第3回 大学入学共通テスト レビュー】

ブログ「学校選びの道しるべ」でも速報として取り上げましたが、今年の大学入学共通テストについてお伝えしたいと思います。

【英語】

リーディングは昨年と同じ大問6つ(実質的には大問の45以外はABに分かれているので大問10)という構成ですが、昨年度さらりと読めた大問5の伝記が物語文にかわり、直接書かれていない内容まで想像しながら答えるというものもあり、少し時間を取られた感じがありました。全体的に昨年よりもやや難化です。

【数学】昨年大波乱となった数学は今年大幅易化です。数ⅠA・ⅡBとも形式的にも特に奇をてらったものは少なく、数ⅠAのバスケットゴールを題材にした問題も問題文にヒントが多く書かれているため、少し時間は取られますが、難易度は標準的なものでした。全体的に難易度も高くなく、大学入試センターの中間集計による平均点は昨年よりも共に20点以上高くなっています。

【国語】

現代文は、本文を読んでまとめた「生徒のメモや気づき」を補うという形式が定着してきたようです。最初は何という面倒な・・・と思いましたが、自分なりにメモを構成しながら本文を読む練習を積むといった対策ができそうです。但し、今年の素材文そのものが難しく、第1問から苦しんだ受験生もいたことでしょう。こちらも昨年よりはやや難化です。古文も共通テストではおなじみの「生徒の気づき」を補う出題、漢文はオーソドックスな出題でした。

【世界史B

1問は女性参政権をテーマにした問題で、たまたま探究活動でそのあたりを調べたことのある高校生でなければちょっと手が止まる感じです。後半のB問題は中国史ですが、会話文の読み込みがヒントになるというもので、第3問、第5問も問題文を読み込む必要がある、つまり読解力も試される問題でした。

【日本史B

現役生が苦手とする近現代の出題割合が低かったので、平均点が上がったのではないでしょうか。但し大問2、大問4の複数資料を参照する問題では、暗記型の学習をしていた受験生には厳しかった事でしょう。

【地理B

出題分量や範囲も昨年とそれほど大きく変わっていませんでした。選択肢も3つの順列=6択、という形式が多く、1つがわかると一気に2択に持ち込めますので大きく得点が崩れることもなかった事でしょう。

【倫理】

「問い」をテーマにした第2問は仏教・神道・西田哲学に至るまで幅広く、知識だけでは解けない良問なのですが、高校生にとっては難しかったでしょう。第4問は「親ガチャ」つまり格差と運をテーマにした問題ですが、これも難しいと感じました。

【物理】

2問のリード文と第4問の小問2つに会話文形式が取り入れられていましたが、それを読み込まなければ解答に行きつかないわけではありません。そもそも物理という科目は思考力を必要とする科目ですので、思考力を重視する共通テストといえども、センター試験とあまり変わりがないような気がします。

【化学】

出題単元や大問構成はほぼ昨年通りです。結晶構造の計算問題や分解速度のグラフの読み取りなど標準的な問題でしたが、第5問の二酸化硫黄の光の透過率を利用した濃度測定という珍しい出題で、数学的処理も含めて得点できた受験生は少なかったのではないでしょうか。

【生物】

今年難化し、得点調整対象ともなりそうです。第1問の遺伝子発現に関する出題ですが、実験結果からの考察が必要で、第2問も遺伝子重複とこれまた実験結果からの考察で少しですが計算付き。第3問の光合成の問題ですが、これまた実験考察問題、第4問は植物の代謝問題ですが、これまた実験考察付き。このように、今年の生物は知識だけで点数になる要素が少なく、各予備校とも平均点は4割を切るだろうとの予測でした。しかし今の高校生はやはりこのようなタイプの問題にも耐えられるように、分析力や思考力を重視する授業が各高校で展開されているということでしょうか、中間集計の方が高いという結果になっています。

【まとめ】

大学入試センター試験と比べると、どの教科も2割以上ページ数が増え、文字数や情報量が多いという印象です。例えば英語のリーディングは、総単語数が6000語を超えていますが、6000語というのは、12単語ずつ読み続けても50分かかるわけですから、正確に読み込む力だけでなく、重要でない情報は読み飛ばすという作戦も必要になるわけです。今後もこの傾向は続くと考えられますので、今の小中学生は、ネット環境でも文字のメディアから必要な情報を早く得るという生活習慣があれば、その対策になることでしょう。

<文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦>