2023/03/20

入試情報室より【大学の総合型選抜入試の合格に向けて】

総合型選抜の全体状況

今年の大学入試シーズンも終わりましたが、実は一般選抜を経て入学する受験生の割合は減少しつつあります。文部科学省の調査によりますと、平成12年(2000年)度入試では総合型選抜(旧AO入試)による入学者は8,117人、大学入学者のわずか1.4%でしたが、令和4年(2022年)度には84,908人(13.5%)と10倍以上の規模となっています。私立大学に限ると、78,175人(15.7%)で、学校推薦型選抜による入学者207,184人(41.7%)と合わせると、6割近くの受験生が一般選抜の始まる前に入学が決定しており、むしろ一般選抜による入学者の方が少数派となっています。

 

難関大学にも広がる総合型選抜

AO入試が次第に広まっていった2000年代には、学力テストに依らない入学者選抜では大学入学後の修学に支障を来すのではないか、との不安の声もありましたが、その後の追跡調査によってAO入試を経て入学した学生の方がむしろ大学内での成績や就職状況も良いことが知られるようになり(注)、今では難関大学でも総合型選抜が導入されるようになりました。関西の私学では、甲南大学が入学者総数の10.9%、関西学院大学が8.3%、立命館大学でも5.0%を総合型選抜による入学者が占めるなど、難関大学での利用も広がってきています。

 

けして合格率が高くはない総合型選抜

例えば、関西学院大学の文系学部グローバル入試という総合型選抜の出願資格は以下の条件となっています。(一部省略しています)

次の①に該当し、かつ②~⑤の中で1つ以上に該当する者

①本学が指定する英語資格・検定試験のスコア CEFR B1レベル以上を有する者

②日本の高等学校在籍期間中に、90日以上連続して、海外に留学した経験を有する者

③高等学校入学後、模擬国連の活動に熱心に取り組み、その活動の実績を、客観的な資料によって証明できる者

④「関西学院世界市民明石塾」に参加し修了した者、または修了予定の者

⑤高等学校入学後、英語弁論大会、英語エッセイコンテストなどにおける全国レベルの大会において入賞実績を有する者

このように、なかなか出願のハードルも高いのですが、出願できれば合格できるのかといえばけしてそうではなく、総合型選抜の平均倍率は国公立で3倍以上、私立でも2.2倍と狭き門になりつつあります。前出の関西学院大学のグローバル入試でも、142名の志願者に対し合格が93名でしたので、この条件を満たしていても49名が涙を呑んだことになります。

 

総合型選抜で合格するには

このように出願するだけでも高いハードルの総合型選抜ですが、不合格者に多いタイプとして、今までの経歴や資格を自分で過大評価していた、というのがあります。例えば留学経験があるから総合型選抜に有利だと信じ、留学での経験紹介ばかりで志望動機の準備ができていなかった、などという失敗談を聞くこともあります。まず、各大学の求める人物像(アドミッションポリシー)を理解し、その大学に入って何を学びたいのか、なぜ学びたいのかを掘り下げてアピールすることが重要です。その大学、その専門分野でなければならない理由を考えて準備をするべきでしょう。そのためには経歴だけでなく、その分野に関する幅広い関心や関連知識も必要となるわけです。

 

準備で決まる総合型選抜

先の述べたように総合型選抜は出願するための条件や提出すべき書類が多いのですが、出願の直前に何とか形だけを整えた志望理由書は、必ず見透かされてしまいます。大学の先生は毎日のように学生のレポートを読み、論文指導をしていますので、論理的な矛盾や飛躍、用語のあいまいな使用に対しては厳しく評価する習慣があります。志望理由書は、自分が何をしたいのかを表現するものですが、そのためにどのような周辺知識を持っているのか、正確な表現ができるのかが決め手です。難関大学の総合型選抜での合格者を多く出している学校は論文集の作成や弁論大会といった協働的な学びとあわせ、基礎学力の定着を早い時期から行っています。今後も難関大学を中心に総合型選抜のさらなる広がりが見込まれます。質の低いネット上の情報ではなく、新聞や専門的な雑誌などを参照しながら、正確な用語の定義を身につけつつ、深くその分野に関する思想形成をするためには、十分な時間が必要だと思います。そのためにも総合型選抜について早めに調べて、早めの準備をするべきだと思います。

(注)成績が最もいいのはAO入学者 東北大、早稲田大の内部資料で判明|大学入試改革の「本丸」|朝日新聞EduA (asahi.com)

 

<文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦>