2023/10/23
入試情報室より【大学受験で利用される英語の外部検定について】
次回で4回目を迎える「大学入学共通テスト」ですが、2021年1月の初回を迎えるにあたって、さまざまな混乱がありました。
2017年には文部科学省から、2020年度を最後に、大学入試センター試験を廃止し、2021年度から記述式を含んだ「大学入学共通テスト」(以下「共テ」)に切り替える方針が示されました。またそれに加えて英語に関し英語の「4技能」のうち、特にスピーキングの能力を全国同時実施の共テで測ることはできないため、民間の各種検定(以下、外部検定)の受験を必須とする内容も発表されました。
ここから全国の高校では大混乱が・・・。まず数学と国語に記述式が導入されるというわけですから、その対策、というわけで、数学の先生も途中式を重視するように定期テストを作り変え、国語の先生は長文記述の指導や添削を行いました。また英語では外部検定の準備として、今まで以上にスピーキングの機会を増やし、特に私学ではオンライン英会話の導入や海外研修の拡充を進めるなど、英語の先生もその対応に追われました。
ところが、記述式については「短文と80字超の2題」とされていた方針が、2018年6月には「小問3題」と後退し、2019年8月にはアルバイト1万人が採点することが報道されると導入に否定的な世論が拡大し、ついに2019年12月5日に記述式を見送ることが公表されました。実はこの時には既に中国武漢で原因不明の感染症の拡大が始まっていたのですが、その後に訪れる世界的な大混乱を知らない我々は、さしあたり大学入試についてはあまり変更が無いことに安堵していたのでした。(ダイヤモンド・プリンセス号内でのパンデミックはその2か月後、全国の学校に対して政府から休校要請が出されたのは、2020年2月27日でした)
一方で、もう一つの入試改革の目玉であった外部検定導入についてですが、居住地や家庭の経済状況による有利不利に対する世論が厳しくなり、結局こちらも2019年11月に当時の文部科学大臣によって見送りが公表されました。今を思えば、その後のパンデミックを考えると実施は不可能だったわけなのですが、それに向けて準備をしていた学校の先生方は当時残念がっていました。
このように共テとセットでの外部検定は必須ではなくなりましたが、大学ごとにはその利用は広がってきています。2022年度入試に於いて、総合型・推薦型で利用する大学は全国762大学中379大学とほぼ半数、一般選抜に利用する大学も243校と3割を超えています。
一言で外部検定といっても、様々な企業や団体が行っており、多くの大学が募集要項に明記され日本国内で受験できるメジャーなものでも7種類ほどになります。そこで実際に受験生は何を利用しているのか、ということが気になりますが、旺文社教育情報センターが各大学にアンケートを行い(有効回答数は152大学、60.8%)、集計したものをまとめてみました。
受験生が選んだ外部検定はどれ?<2023年 一般選抜>|旺文社教育情報センター (obunsha.co.jp)
まず、全体としては、外部検定を利用した受験生の内、90.0%が「英検」を利用しています。受験案内や出願書類が日本語で、小中学生でも受験できる級が用意されているなど、日本では一番なじみのある検定となっています。1級のハードルが高すぎるため、2級との間に準1級、2級と3級の間に準2級を設定しており、2025年からは2級と準2級の間にもう一つ級を設定するなど、さらに受けやすい工夫がなされています。
一方、大学ごとの割合も、東京と近畿圏の規模の大きい一部の大学を選んで示しておきます。ご覧のようにいずれの大学でも利用者の9割前後が英検となっていますが、唯一上智大学だけTEAPが英検に迫る割合となっていますが、TEAPは上智大学が開発した検定ですので、入学後の事も考えて大学側が求める英語力を付けておこうという意識の高い受験生が多いのでしょう。
というわけで、上智の例外を除いて、多くの受験生は英検を利用しているということがわかりますが、たとえばスピーキング一つをとっても検定ごとにその内容や時間が異なるなど大きな違いがあります。受験料はかかりますが、出来れば複数受験してみて、自分に相性の良い検定を見つけてみてもよいのではないでしょうか。
<文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦>