2024/01/09
入試情報室より【大学 一般選抜 過去の入試統計の活用法】
新年あけましておめでとうございます。これをお読みの皆様にとって、特に今年受験を迎える学年にとって良い年になることを祈ってやみません。
大学受験生の皆さんも私立大学の一般選抜への出願の時期となってきました。
入試ガイドや大学の出願要項を確認し、自分に適した受験方法や判定方式を探し、出願するというのは大切なのですが、大学から発行されている入試統計にも出願に関する大きなヒントが隠されています。
受験方法や判定方式別に受験者数や合格者数が発表されている大学は、そこも確認しておいてほしいのですが、併せてチェックしていただきたいのは合格最低点です。特に「全学部日程」などと呼ばれるどの学部でも共通出題の場合は、学部間のリアルな難易度の差がここに現れます。
実際は数字の並んだ表ですが、わかりやすくするために、過去3年分の合格最低得点率と実質倍率をグラフに表してみました。一般選抜の複数日程をそれぞれ平均したものです。
まず、一例として関西大学です。まず、文系学部だけを見てみましょう。
普通に考えると実質倍率が6.5倍を超えている人間健康学部や法学部の合格最低得点率が高くなりそうなものですが、人間健康や社会安全は2023年度では文系の中では最も合格最低点が低いグループになっています。また逆に倍率が4倍前後と比較的高くない社会学部は2021年度2022年度では文系で最も高得点が必要な学部となっています。
この違いはなぜなのでしょうか。
まず社会学部は、例えばベネッセの基準偏差値では70と模擬試験では高めの偏差値を必要とされています。従って「腕に自信のある」受験生だけが集まり、少数精鋭の戦いとなるわけです。一方、関西大学にあこがれて、学部を問わずどこかに合格したいという受験生は模擬試験の基準偏差値が低い人間健康(ベネッセで65)や社会安全(同67)から受験しますので、結果的に合格ラインが高くはならないわけです。
また、別の例として、他大学との併願が多い京都橘大学を挙げてみます。
こちらは近似直線も入れてみました。するとこの場合は実質倍率と合格最低得点率の間に相関が見えてきます。つまり倍率が高い=高得点が必要というわけです。例えば2021年度は実質倍率が3倍を超え、当日得点率も70%必要だった日文(文学部日本語日本文学科)が、2022年度には2.5倍、62.3%、2023年度には2.5倍、59.0%と出願者の減少に伴って合格ラインが大きく変化しました。つまり受験者数によって難易度が変化したわけです。また、先の関西大学の例でも2年間連続で実質倍率、合格最低得点率とも低かった法学部が、2023年度には突然両方とも高騰しました。これは過去2年間このような合格ラインにしたために入学者が増え、ついに収容定員を超えてしまったという大学側の都合によるものでした。このように年度による運不運が作用する場合もあります。従って、同じ大学内で併願を考える場合は合格最低得点率を見て優先順位をつけることも重要ですが、例に出したように志願者の増減や大学側の都合による予想以上の乱高下にも備えるのであれば、同じ学部ばかり複数回出願するのは避けた方がいいと考えられます。
出願の参考になれば幸いです。
<文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦>