2024/07/15

入試情報室より【医療系国家資格(医師・歯科医師・薬剤師・獣医師)の取得をめざす皆さんへ】

 医療系の世界で活躍するには、医療系のライセンスが必要ですが、そのライセンスを取得するには大学で所定の教育を受けなければなりません。というわけで、医学部はもちろんその他の医療系の大学・学部もハードルが高くなっているわけですが、現在の国家試験の合格率や大学ごとのランキングを調べてみました。元データはすべて厚生労働省・農林水産省のHPで公開されている情報です。

医師国家試験

 2024年2月に行われた第118回医師国家試験の結果は315日から厚生労働省のHPに公表されていますが、それによりますと、10,614名出願、10,336名受験で合格は9,547名、合格率は92.4%という結果でした。全国82の医学部医学科国家試験合格率のランキングを作ってみると、1位は自治医科大学の100%2位は国際医療福祉大学の99.2%、第3位が兵庫医科大学の99.1%4位が産業医科大学99.0%5位が順天堂大学98.5%と私立大学が上位を独占しました。
医療系国家資格2

 私立大学の医学部といえば学費が高いというイメージもありますが、その分確実に医師に育ててくれるというメリットがあると考えると悪くない選択かも知れません。

 国内で今年度最も合格率が低かった金沢医科大学でも合格率は82.2%でしたので、大学ごとの差はあまり無いといえます。医学部に入ること自体が難しいですが、国家試験の合格だけを考えれば、どの大学の医学部を選んでも間違いではなさそうです。

医師国家資格合格率比較_アートボード 1.jpg

 因みに日本と協定を結んでいる海外の大学の医学部の出身者、または海外の医師免許を持っている人が270名受験していますが、合格者は145名、合格率は53.7%に留まっています。国内の私立大学よりも学費が安いとのことで、東欧の国立の医学部に進学する人もいますが、この現状を見るとあまりお勧めではありません。

歯科医師国家試験

 今年行われた第117回歯科医師国家試験には3,568名出願、3,117名受験に対し、合格者数は2,060名、合格率は66.1%となりました。実は歯科医過剰が予測されるため国家試験の合格者数を抑制すべしとの日本歯科医師会による提言から、2001年には90.7%だった合格率が2022年には61.6%と大きく絞り込みました。また、医師国家試験と異なり、学校毎の合格率の差が大きくなっています。

歯科医師国家試験_アートボード 1.jpg

歯科大学_アートボード 1.jpg

 今年度の上位10校はご覧の通りですが、朝日大学歯学部、福岡歯科大学、奥羽大学歯学部の3校は合格者が受験者の半数以下となっています。歯科医師を目指す受験生は合格率の高い大学をめざすことをお勧めします。

薬剤師国家試験

 3月19日に厚生労働省から、第109回薬剤師国家試験の結果が発表されました。それによると、今年は全国で15,118名出願、13,585名受験、に対し9,296名が合格し、合格率は68.4%となりました。今年度で20位までの大学です。ここで注目すべきは6年前に開設され、初めての受験者を輩出した山陽小野田市立山口東京理科大学です。6年前に入学したのは119名。その内101名が受験にたどり着いただけでもたいしたものなのですが、なんとその内95名が合格、合格率は94.06%と初年度なのにいきなり74大学中2位という快挙を成し遂げています。

 過去5年分(第105回~第109回)までの平均合格率も計算してみました。

過去5年分_アートボード 1.jpg

 設置別では国立合計では83.4%、公立合計では84.3%、私立合計で67.7%。今年の1位は私立の名城大学で私立大学間でも結構差があることがわかります。その5年間平均でのランキング(ベスト30)を作ってみました。1位は先ほどの山口東京理科大学ですが、2位は今年1位の名城大学、3位は金沢大学、4位の医療創生大学は2019年にいわき明星大学から校名が変更した大学ですが、薬学部は17年の歴史があります。5位、6位と国立大が続き、7位は安定の京都薬科大学。薬学部をめざす関西の受験生がまず大学名を挙げるのも納得です。大阪医科薬科大学、神戸薬科大学、立命館大学もランクインしています。

獣医師国家試験

 2月1415日に北海道、東京、福岡の3会場で行われた第75回獣医師国家試験の結果が農林水産省から発表されました。まず、全体の受験者はここ10年で最高の1394人(それでも国家試験としては最小規模)で、合格者数は1013人で割合にすると72.7%。昨年の69.9%よりは向上しましたが、それでも厳しい数値となっています。今年は受験者数も合格者数も過去最高となりましたが、それは6年前に愛媛県今治市に獣医学部を開設した岡山理科大学が今回加わったためです。

獣医師_アートボード 1.jpg

 過去7年間の平均受験者数が80名以上の6大学だけ取り出して、合格率の順位の推移をグラフに表してみました。すると高め安定の北里、日本獣医、日本。乱高下する酪農学園、麻布、これからの岡山理科と分けることができそうです。岡山理科の初年度入試は学部開設の認可がおくれたために推薦系の入試が一部実施できず、他大学に受験生が流れてしまったうえに、1期生ということで先輩方のアドバイスやフォローも無いという逆風の中にしては善戦したとみて良いでしょう。

 というわけで、同じように6年間勉強しても分野や大学によって合格率が大きく異なることがわかりました。これからこれらの専門分野をめざそうと考えている高校生の皆さん、参考にしてみてください。

 

<文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦>