2025/02/17
入試情報室より【大学入学共通テスト2025速報】
1月18日・19日に行われた2025年度大学入学共通テストですが、注目の新課程初年度ということでどのような出題だったのでしょうか。大きな変更点をピックアップしてお伝えします。
【国語の実用文の追加】
46年前の共通一次試験導入時から一貫して、国語は現代文2題、古文、漢文各1題というバランスで出題されていましたが、今年から実用文が1題追加されました。具体的には外来語の使用に関する提言を題材にした出題で、意識調査や言い換えの手引きなどの資料を見てまとめる、という内容でした。2年前に公表されていた試作問題の一つに準じた内容でしたが誘導がより丁寧で、それほど難しくはなかったように感じます。
【日本史、世界史における「歴史総合」の導入】
従来、歴史は日本史、世界史の選択が可能でしたが、新指導要領では日本史と世界史を融合させた近現代史を主な範囲とする「歴史総合」が必修化されました。そこで、今年度から「日本史探究」「世界史探究」に「歴史総合」からの1題が課されることになりました。「歴史総合・地理総合・公共」という独立した別科目には歴史総合の問題が2題含まれていますが、結論から言えば、その2題のうち1題ずつがそれぞれの探究科目に流用されていました。しかも「日本史探究」には主に日本史に関する内容が多い大問1が、「世界史探究」には主に世界史に関する内容の多い大問2が流用されていました。つまり、従来の入試とそれほどかけ離れた内容ではなく、受験生もホッとした事でしょう。
【数学の新課程内容】
数学では指導要領の改訂で新たな内容が追加されましたが、事前発表の通り、学校での選択によって不利にならないような工夫がなされていました。数学ⅡBCでは全部で大問が7つに分かれていましたが、大問1~3は必答ですが、大問4~7の4つからは3題を選ぶ形式になっていました。但し、大問ごとの難易度は異なるため、幅広い学習ができていれば有利に働くことも考えられます。
【今年から導入された新科目=「情報Ⅰ」】
結論から書きますと、導入初年度にありがちな現象ですが、難易度は低くなっています。
大問1 小問集合
情報セキュリティーに関しては知識が必要だが、7セグLEDの表示パターン数も難しくなく、チェックディジットとGUIの問題は問題文にヒントがあるのでそれを読み落とさなければ得点できる。
大問2 A,Bの2つのパートに分かれています。
A:商品購入時のレシートに印字された情報を題材にした融合問題。どの情報がどのように伝達され使われるのかを判断するもの。
B:おつりとして渡す千円札の枚数をシミュレートする問題。問題文の表に隠された文字を書き込んでいけば解答にたどり着ける。
大問3 プログラミング
複数の工芸品を分担して製作する工芸部を題材にした問題。日本語で記述されているプログラミング言語の穴埋めがメインとなっている。プログラムの長さと難易度は中程度。
大問4 データの活用
旅行・観光に関する都道府県別の資料を基に作られた散布図が題材。その読み取りと解釈が設問となっている。難易度はやや易。
【まとめ】
「大学入学共通テスト」になった当初から会話文や複数資料の読み込みなどでページ数が増え続けていましたが、今回はそのあたりが各教科整理され、本来の思考力が試される内容に改善されてきたように思います。文系科目を中心に平均点が上昇している可能性が高いです。既に難関国立大に関しては、志願者数が増加しているとの情報がありますので、競争が激化しそうです。
今年度から導入された「情報Ⅰ」は総じて平易な内容で、点数差はあまり広がらなかったと考えられます。次年度以降プログラミングや情報セキュリティーなどさらに踏み込んだ出題がなされる可能性も考えておくべきでしょう。
また、国語の実用文(大問3)も今年は無難な作りになっていましたが、次年度以降は選択肢の長文化などの難化が予想されますので対策が必要でしょう。ただし、今の中高生は早い時期からパソコン、タブレット、スマホなどの情報機器を使いこなしてきた「デジタルネイティブ」です。Webサイト上の広告やお勧めサイトへのリンクをかいくぐり、検索サイトやSNSを活用して必要とする情報を探し出すことを日常的に行っていますので、複数の資料から必要な情報を見つける実用文の部分では差がつかないともいえます。つまり言葉の知識や論理的な読解力といった従来の基礎学力が重要だといえるでしょう。
<文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦>