2025/08/25
入試情報室より【出生数の変動と高校入試】
厚生労働省より2024年の出生数が公表されました。 それによりますとその人数は68万6千人。昨年よりも4000名以上減少しています。1000年以上もの間、増加し続けた日本の人口ですが、ついに2010年をピークに減少に転じています。今回は出生数と高校の関係について紹介したいと思います。
明治維新以来、年間出生数は150万人、死亡数は90万人程度で人口が毎年50~60万人ずつ増加していました。1920年(大正9年)には出生数が200万人を超えるようになり、戦後のベビーブームとなった1948年(昭和24年)には過去最高の270万人を記録します。当時は高校が不足しており、高校進学率は43.5%(1947年)と半分にも満たない状況でした。戦後間もない当時の政府や自治体には学校を作る力(財力や人材)は乏しく、この状況を見かねた篤志家や企業などによって私立高校が多くつくられることになりました。その後、高度経済成長期を迎え、自治体に余力が生まれる1970年代に入ってから公立高校の増設もなされるようになってきました。ここ数年で80周年を迎える私立高校や50周年を迎える公立高校が多いのはこのためです。そのおかげで1974年には高校進学率は90%を超え、現在では通信制も含めると高校進学率は約99%になりました。
一方で出生数の減少によって高校が余る、という現象が生じています。高校生の数が最も多かったのは、進学率が上がり、第2次ベビーブームの影響を受けた1990年(平成2年)の約580万人をピークに減少しており、今では当時の半数ほどになっています。1校当たりの定員も減少し、各地で公立高校の統廃合や学科の転換が行われているのはこのためです。
近畿圏では兵庫県、奈良県でも公立高校の大規模な統合や再配置が行われていますし、大阪府は定員割れが3年続いた公立高校は統廃合の検討対象とするという条例まで制定されており、今後も高校の減少は続くと思われます。
しかし、この話、東京都ではあまり聞かない話です。実は地域によって人口動態は大きく異なります。高校受験を迎える今年の15歳人口を1として、今後の高校受験者数の推移を推計してみました。
すると、出生率は低いとされる東京都、実は実人数では減少ではなく、逆に3年後から3年間ほど15歳人口が増えると考えられます。2030年の中3(つまり現在の小4の学年)は今よりも15歳人口が5%増えます。公立校では定員を増やす可能性もありますが、その後の子どもの減少を考え、学校規模を拡大しない私立校もあるでしょうから、単純に考えると高校受験の競争率が上がることになります。東京都では中学受験率が関西圏よりもはるかに高くなっていますが、高校受験を回避するために中学から私学を選ぶという考え方にも納得できます。
さて、去年生まれた子どもたちが高校受験を迎える2039年、人口流入が無かったと仮定すれば東京都でも今年よりも2割以上高校受験生が減少することになります。今後、東京都でも高校の統廃合の議論が始まるかもしれません。安定した教育を受けるためにも、今後高校入試を迎える皆さんは学校規模や定員充足状況なども参考に、学校選びをすることをお勧めします。
< 文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦 >