2020/09/28

入試情報室より【大阪の情報系学部について~大学・学部の移転と難易度変化に関する考察~】

今月、立命館大学が2024年度から、情報理工学部をびわこ・くさつキャンパスから、映像学部を衣笠から「大阪いばらきキャンパス」に移転すると発表しました。滋賀県民からは学生の流出を心配する声も上がっていますが、情報理工学部はそもそも定員規模が小さく(一般募集で266名)、院生まで含めても、びわこ・くさつキャンパスで学ぶ約15千人のうちの2400人程度ですので、草津のマンションの大家さん、ご心配なさらなくて結構です。さらに映像学部は一般募集で86名定員とその3分の1以下ですので、学生移動に伴う周辺環境への影響はあまりないと思います。滋賀や京都では募集に苦しんでいるので大阪に移転するの?という疑問に対しては以下のグラフをご覧ください。別に学生募集に苦しんでいるというわけでもありません。

立命館大学映像学部・情報理工学部一般入試実質倍率推移.jpg

しかし、難易度という話になると少し変わります。立命館大学は20154月に経営学部と総合心理学部を「大阪いばらきキャンパス」に移転させましたが、その前後でどの程度難易度が変化したのか、というのを河合塾の「栄冠を目指してVol.1」の2010年版と2020年版で拾ってみました。参考として関関同立の同じ専門分野も併せてグラフにしてみました。

まず、心理学系です。

「心理」分野比較.jpg

私立大学の定員厳格化の影響で、全体的にここ10年、大規模私立大学の合格者数は減っており、それに伴って難易度は上昇しているのですが、立命館大学は大阪への移転によって関西学院の受験者層が流入し、序列が変わっています。

経営学系統ではどうでしょうか。

「商・経営」分野比較.jpg

同様にびわこくさつキャンパスから大阪いばらきキャンパスに経営学部を移転させた立命館大学が関西大学、関西学院大学の受験者層を取り込み、難関国公立の併願として滋賀県からの受験者数の増えた同志社大学と併せて難化していることがわかります。

従って、次年度の入試から2024年に移転する2学部がじわじわと難易度が上昇することが考えられます。但し、過去の例からすると、それに伴って周りの同じ専門分野の大学が影響を受けると考えられますが、実は情報系のニーズの高まりにも注目する必要があります。

情報系といえばビッグデータとディープラーニングをベースとするAI技術が世界的に加速しているわけですが、それに伴い、その人材育成が急務になっており、東京では文系のイメージが強い立教大学が「人工知能科学研究科」という情報系の大学院大学をこの4月に開設しました。一方関西では26年前から関西大学の総合情報学部が文理融合型の情報を扱う学部として、茨木のお隣の高槻市に開設されていますが、経営学・心理学・メディア論などが中心で、立教大学のような構成にはなっていません。そこで、世界的なAI技術者ニーズの高まりに近畿大学が反応し、情報系の新学部設置の計画を発表しています。また、認知科学といった隣接分野ではありますが、同じく茨木の追手門学院大学も心理学部の中に人工知能を研究する新学科設立の計画を発表しています。

立命館大学が情報理工と映像をセットで大阪に移転させて来ることで、短期的には情報系を志望する学生の取り合いになるかもしれませんが、大阪府立大学と大阪市立大学が合併して新たに生まれる「大阪公立大学」もシステム系の学域を設置するなど、長期的には大阪がAI人材育成の一大拠点となる、ということも考えられます。

現在の中学生・小学生が大学受験を迎えるころには、また学部の構成や難易度、大学の序列も変動がみられるのではないでしょうか。

<文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦>