2025/11/17

入試情報室より【どうなる?2026年度大学入試】

【既卒生の増加】

大学入学共通テストの出願状況ですが、速報値で491,272人となり前年度より6,704人増加しました。内訳では、現役生が6,131人減少した一方で、既卒者などが12,835人増加しました(確定値は12月上旬に発表されますが、原稿作成は116日ですので速報値で表記します)。2024年度入試は旧課程最後の入試でしたので、現役志向が高まりましたが、新課程初年度となった2025年度には、浪人することによるデメリットが少なく、昨年の反動で既卒が増加したと考えられます。因みに現役生にとって、既卒生は1年間多く受験勉強をしてきた強敵です。同学年だけが受験する高2までの模擬テストと比べ、既卒生も戦いに加わる高3で受けた模試の成績は下がる場合があります。その数値を見て志望校を安易に下げてしまうことをせず、まずは得点できなかった単元の対策を急ぎましょう。

【女子大の苦境】

今年の4月、京都ノートルダム女子大学の募集停止が発表され、業界にも衝撃が走りました。学生の街といわれる京都で、「京女」(京都女子大学)「同女」(同志社女子大学)「ダム女」(ノートルダム女子大学)と3大学セットで称されるブランド力を誇っており、2020年度入試では募集定員の115.9%が入学するなど、勢いがあったのですが、「現代人間学」「国際言語文化」の2学部(2023年から社会情報課程を増設したが、定員20名という規模)といった一般教養的な設定が、今の高校生には訴求しなくなったようで、志願者数が減少し、入学者数も募集定員の半分程度と低迷してしまいました。

一方で就職市場の堅調ぶりから、中堅以上の規模の共学校の多くに設置されている経営・経済・商といった系統には男子のみならず女子も集まり、指定校推薦などの推薦系の入試で入学者を集めきれなかった女子大は、一般選抜での穴埋めができない事態となっています。

【進む女子大の共学化】

近畿圏では神戸親和女子大学(2023年度)、神戸松蔭女子大学(2025年度)、園田学園女子大学(2025年度)、京都光華女子大学(2026年度)と女子大の共学化が相次いで進行してきています。そんな中で日本最大の女子大学である武庫川女子大学も共学化することが6月に報道され、これまた衝撃が走りました。武庫川女子大学は2024年度の定員充足率は98.6%と決して学生獲得に苦労している大学ではないのですが、財政的にも余力がある今の間に体制を立て直そうと考えたうえでの計画だと思います。

【共学化した女子大のその後】

神戸親和女子大学よりも前に共学化した大学もあるのですが、その多くは女子大学、もしくは女子短期大学時代に設置していた家政学部を元にした分野構成、つまり「幼児教育」「看護」「栄養」の3本柱に「国際・語学系」が加わった形のままとなっています。コロナ禍で海外留学が困難になり、航空業界も採用を見合わせるなどで国際系の学部は大打撃を受けました。幼児教育の分野でも、10年前には不足していた保育園は、現在では余剰気味になってきており、栄養士に関しては、直近の管理栄養士国家試験の合格率が48.1%と低迷するなど学部系統として不人気になりました。唯一定員充足に関しては心配のなかった「看護」に関してもコロナ禍で医療に対する関心が高まった反動で落ち着き始め、関西では近畿大看護学部新設に伴い、成績上位層が近畿大学に流れています。

このように共学化で短期的に学生募集が上向いても、設置学部の構成によっては苦戦している大学もあります。共学化の次に打つ手は学部改編となりますが、他大学との競争に勝つスピード感が求められます。

【理系志願者の増加】

今年の高校3年生は、「情報Ⅰ」が必修化され数学の単元が増加した新課程の2年目なのですが、河合塾主催の第2回全統共通テスト模試では理系志願者が増えている、との分析がなされています。先に述べたように経営・経済・商といった分野も女子の志願が増えていますが、理工系への女子志願者も伸びてきているようです。一方で情報系の学部の新設が続いていますが、供給過多になる可能性もあり、大学によって明暗が分かれそうです。

薬学系については、管理栄養士と同じく、薬剤師国家試験の合格率も低迷しており、私立ならそれなりの学費と6年間という時間に見合うのかどうか、という観点も含めて中堅以下の薬学部の志願動向は弱くなっています。そんな中で医学部、歯学部は志願動向が上向いており、難易度がさらに上昇すると思われます。

【今年の大学受験生へ】

すでに総合型選抜や公募制推薦入試を受けた受験生もいると思いますが、各大学は年内入試に関して、学部併願制度やチャレンジ制度(年内入試で合格を確保しておいて、一般選抜での特待権利の確保に挑戦できる)など出願しやすい制度を整備してきています。一方、12月までに行われる選抜(年内入試)で入学者定員を十分確保してしまうと、一般選抜での合格者を出すことができなくなり、そうなれば大学は文部科学省から厳しい指導を受けることになります。従って年内入試で多くの合格者を出すわけにもいかず、年内入試の方が合格しやすいというのは過去のお話です。年内に良い知らせが無かったとしても、安易に志望校を下げるのではなく、2月、3月まで挑戦すると覚悟し、過去問演習など王道の対策を行うべきだと思います。爛漫の桜が咲くことを祈っております。

 

< 文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦 >