2025/12/15
入試情報室より【女子大はどうなる?-近畿圏の女子大の状況から-】
全国で女子大の共学化や募集停止が発表されています。女子大の数が最も多かった1998年度には全国で98校の女子大があったのですが、2024年度には71校になっています。東京の恵泉女学園大、神奈川県の鎌倉女子大や広島県の広島女学院大、宮城県の仙台白百合女子大など、かつては地域でのブランド力を誇った女子大も募集停止や共学となっています。近畿圏には2022年度で18の女子大がありましたが、2027年度には10になるなど、状況は急激に変化しています。
近畿圏の女子大の募集状況について一覧にしてみました。
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2021年度から2025年度の平均充足率(募集定員に対しての入学者数の割合)の高い順に並べています。但し、2023年度から共学化した神戸親和大は序列に入れず、最後の行に追加しています。
平均充足率で100%を超えたのは、2025年度で6学部のうち5学部が充足するなど募集でも安定している同志社女子大、「女子大宣言」をして新たな学部の新設を発表するなど攻めの姿勢の京都女子大の2大学のみです。そして、現在判明しているだけでも2027年度には女子大が10大学に減る見込みです。
ここで、共学化によって、充足率がどのように変化しているのか、見てみましょう。まずリスト一番下の神戸親和大は共学化する前の2022年度には63.1%と危険水域にまで入学者数が減少しましたが、共学となった2023年度以降、定員の1.2倍を超える入学者となっており、大成功したことがわかります。一方2025年度から共学化した園田学園大、神戸松蔭大は共学化によって入学者数は大きく増加しましたが、定員充足(充足率100%)とはなっていません。どちらも発表のタイミングが遅く周知されていなかったのかもしれません。2026年度の入学率も気になるところです。
京都光華大は2026年度入試から、武庫川大(仮称)は2027年から共学ですが、こちらの動向も気になるところです。
一方、京都華頂大と京都ノートルダム女子大は2027年度以降の募集停止を発表しました。特に京都ノートルダムに関しては、小中高に関しては、別法人に移管、大学のみ現法人の下で大学閉鎖後、清算されるという大きな決断がなされています。
女子大が募集で苦戦している理由について考えてみました。18歳人口の減少という大きな環境変化はありますが、社会環境の変化によって女子大のかつてのメリットが失われた、とのロジックで3点にまとめてみました。
・女子大のかつてのメリット①=家政、保育など主婦として有用な知識や技能が体系的に学ぶことができる→専業主婦の減少、家事の男女分担など社会の価値観が変化し、被服の分野でもファストファッションの広がりから、例えば洋裁や編み物を技能として取得する必要性が減少した。
・女子大のかつてのメリット②=保育・幼児教育や栄養士など家政学の延長として資格を取得することができる。→教育系の資格を取得しても少子化の中で求人は減少しており、待遇も良いとはいえない。また管理栄養士についても、その他の分野での就職市場が活性化している現状では魅力的だとはいえない。
・女子大のかつてのメリット③=仕事上で必要とされる語学力について、多くの女子大は英語・国際理解教育についての伝統があり、企業への就職実績が高いなどニーズがあった。→少なくともテキストベースではオンラインなどでの翻訳精度が上がり、ある水準までは人がかかわる必要性が減少した。
あとは、高校でも女子校の多くが共学化されており、特に近畿圏では公立の女子校はなく、多くの受験生にとって共学の方が普通だという点と、近年定着してきたジェンダーフリーの考え方から「女子」という枠組みの中に入れられることに対する違和感なども理由として考えられるでしょう。
いずれにせよ今後女子大を巡る環境が大きく変化するとは考えにくく、共学化や募集停止など、さらに続くのではないでしょうか。
< 文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦 >