2026/05/25
入試情報室より 2026年度国公立大学入試を振り返る
年度も変わり、学校では新たな出会いと様々な行事で忙しい時期ですが、新課程入試2年目となる今春の大学入試について、国公立大学の動向に注目して振り返ってみたいと思います。
大学入学共通テストが難化したことから、国公立大学の志願者数は減少するとの予想もありましたが、全体として前年並みの安定した志願状況となりました。一般選抜(前期日程)の志願者数は前年比ほぼ100%となっており、大きな増減はみられませんでした。つまり倍率についても大きな変動はなく、全体として落ち着いた状況です。
一方で、日程別の志願者数には動きがありました。後期日程および中期日程では志願者数が4~5%ほど減少しています。これは、共通テストが難化したことより、受験生が高倍率となりそうな日程を避け、より確実な合格を見込める出願行動を取ったためと考えられます。
前期日程についても共通テストの得点状況を踏まえ、志望校を見直す動きが広がり、結果として大学間で志願者の分散が進みました。
地域別では、関東・東海・近畿といった都市部で志願者数が減少し、地方で増加する傾向がみられます。都市部では私立大学志向へのシフトが一部でみられる一方、地方国公立大学は比較的堅調な志願状況となっています。北海道と四国の国公立大学は昨前年比で9%、九州は4%も志願者が増加しています。
まずは大学群ごとの状況を見てみましょう。
①旧帝大・難関国立大学(旧七帝大+一橋・東京科学・神戸)
旧帝大を中心とする難関大学では、志願者数はやや減少傾向となっています。
共通テストの難化により、合格の可能性を重視した受験生が志望校を下方修正したことが主な要因です。東京大、京都大ではボーダー付近の受験生が出願を控えたとみられます。その影響でしょうか、一橋大の前期は4%増、大阪大は3%増とやや狭き門となりました。
②準難関国立大学(筑波・千葉・東京外国語・お茶の水・横浜国立・金沢・岡山・広島)
旧帝大に次ぐレベルの大学群では、志願者数は横ばいからやや減少となっています。
難関大学からの流入はあるものの、同時にさらに下位層への流出もみられ、全体としては大きな増加には至っていません。受験生の慎重な出願行動が反映された結果といえます。
③中堅国公立大学(東京都立・横浜市立・信州・静岡・滋賀・奈良女子・熊本・長崎など)
地方を中心とした中堅レベルの国公立大学では、志願者数が増加傾向となっています。
安全志向の強まりにより、準難関大学からの志願者が流入しており、相対的に人気が高まっています。特に前期日程での志願者数増加が目立ちます。このランクの大学では二次・個別学力検査の科目数が少ないところも多く、地歴公民や理科への対応が追い付いていない現役生にとっては魅力的に感じられる、というのもあるかもしれません。
④地方国公立大学(秋田・山形・福井・鳥取・島根・山口など)
地方の国公立大学では、堅調または増加傾向がみられます。
学費の安さや地元志向に加え、安全志向の出願行動が重なり、安定した志願者数を確保しています。また、都市部志向の一部見直しも背景にあると考えられます。
⑤ちょっと例外 大阪公立大学
先に、「都市部の大学では志願者数が減少」と書きましたが、大阪公立大学は例外的な動きとなりました。
まず、文系では文学部は志願者数が2年連続増加し、前期・後期とも2年前の1.3倍前後となりました。法学部・経済学部・商学部も隔年現象はありますが、志願者数は増加傾向です。驚いたのは、現代社会システム科学域の英国型の出願数で、昨年の108名から259名と大きく伸びました。理系は募集単位が小さいのでわかりにくいのですが、工学部のマテリアル工学は2年前の1.5倍、化学バイオ工学は1.7倍と大きく伸ばしています。森ノ宮キャンパスの完成で、北摂からのアクセスが良くなったのも原因の一つですが、やはり昨年度入学者から大阪府民は学費が無料となったのも大きいと思います。昨年度の入学者から聞いた話ですが、「学費が無料のうちに大学院にも行っておいたら?」とご家族にも勧められているとの事。志願者数や合格最低点からはわかりにくいのですが、大阪公立大学受験者の中には京大・阪大も狙える学力層も増えてきたように思います。
次に学問分野別の志願者数の動向についてです。
①人文・社会系(文系:法・経済・文学など)
文・人文系では、志願者数はやや減少または横ばいとなっています。
一方で就職市場の活況からでしょうか、私立大学と同様に、国公立でも経済・経営系は安定した人気がみられました。募集単位も大きい大学が多いため、共通テストの得点を踏まえて、他学部からの出願変更先としても選ばれやすい傾向があります。また、難関大学からの志望変更(下方修正)による流入も一部でみられます。
②教育系
教育学部は、ここ数年志願者が減少していますが、さらに今春も概ね横ばいまたはやや減少傾向です。
教員系は志望者数の長期的な減少傾向に加え、採用環境への不安などが影響していると考えられます。ただし、地域によっては地元志向と結びつき、一定の人気を維持しています。
③理学・工学系(理系基盤分野)
理学・工学系は、全体としては横ばい〜やや増加傾向となっています。
特に工学系では、情報系・データサイエンス関連分野の人気が継続しており、志願者の流入がみられます。一方で、伝統的な理学系では大学・学科によって差があり、二極化の傾向もみられます。
④医療系(医学・歯学・薬学・看護など)
医療系は、全体としてやや減少傾向となっています。
コロナ禍以降の看護をはじめとする医療系人気も落ち着いてきました。薬学系は国家試験の難化なども影響しているのでしょうか、志願者が減少しています。一方、医学部は依然として高倍率を維持していますが、共通テスト難化により出願を控える動きが一部でみられたようで、前期日程で5%減、後期日程では21%も減少しました。
⑤農・水産・生命系
農学・生命科学系は、概ね横ばいまたはやや増加傾向です。
理系の中では比較的出願しやすい分野として、安全志向の受験生の受け皿となっている側面があります。環境・バイオ系分野への関心も一定の影響を与えています。
⑥総合・融合系(情報・国際・地域系など)
近年増加している総合系・融合系学部では、志願者数の増加傾向がみられます。
特に情報系・国際系・地域政策系などは、学際的な学びや将来の就職を意識した志願動機から人気を集めています。
大学群と専門分野の二つの視点を掛け合わせると、文系なら地方の教育学部、理系なら地方の生命科学系が比較的狙い目だといえます。都市部に比べると家賃相場も手ごろな地方都市で、S/T比も低い(教員一人当たりの学生数が少ない)という恵まれた教育、研究環境の地方国公立大学に通うというのも悪い選択ではないのかもしれません。その可能性を残すためにも、共通テストの出願と受験は強くお勧めしたいと思います。
< 文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦 >