2021/01/25

入試情報室より【コロナ禍と公立高校入試】

2021年度公立高校入試の試験範囲についてのお話です。

公立高校入試の出題除外(入試問題に出さない単元)についての情報が、各都道府県の教育委員会から発表されていますので、その情報をまとめてみました。(教科書のページ数のみの表記など、表現方法がまちまちですので、一部表現が不正確な部分があるかもしれません。各地域の受験生は必ず各都道府県の教育委員会発表の文書で出題範囲をご確認ください。)

コロナ禍と公立高校入試_改.jpg

〇というのは出題範囲、△はその単元の中の一部が除外、▲は複数日程のうち、一部の日程では除外、×は全日程で除外という意味です。地域による差がある5科目18単元のみこの表に記載しています。

まず、都道府県別の除外状況を見てみましょう。(この表の右端に〇の数を記入しています。〇が多い場合は青く、少ない場合は赤い色を付けています。たとえば秋田県では除外範囲は無い、つまり例年通りの試験範囲ですよ、という意味になります)北海道・三重・埼玉・大阪が最も〇が少なくなっています。これらの道府県は中学校での授業の遅れがあまり取り戻せていないと判断したということですが、入試範囲から外れている部分は、学校の授業で取り扱うといわれても、演習量は明らかに少なくなると思われますので、その道府県の高等学校はその単元の学びなおしが必要になると思われます。特に、数学で「三平方の定理」が除外されている地域では、私立高校も範囲除外にするケースも多く、高校での数学の理解度に差が生まれる可能性があります。一方2年生の3学期に取り扱うことが多い「確率」の単元に関しては長崎県が除外としています。31日から突然休校要請がなされたわけですから、他の地域でも同じように授業時数が不足していると思うのですが、3年生に入ってからその授業時間を取ったと考えているのでしょうか?そう考えると、むしろ試験範囲から除外している都道府県が少ないことにも疑問を感じます。

次はこの表の一番下の集計行をご覧ください。

これは47都道府県のうち、どの都道府県では試験範囲になっているかを表した数字です。すると、公民の(私たちと国際社会の諸課題)、数学の(資料の活用)、理科の(自然と人間)(下に★印をつけています)は半分以上の都道府県が試験範囲にしませんよ、という単元となります。いずれもこれからの社会の諸課題を考えるうえで大きな意味のある単元で、答えのない課題を扱うという意味でも過去の指導要領改訂の看板の一つであったような気もするのですが、教科書の最後のページになっているためか、このような扱いになってしまいました。確かに今年はコロナ禍の影響による授業時数の減少という異常事態ではありますが、時代の変化に合わせるべく数十年にわたる議論とそこで決められた指導要領に基づいて作られた検定教科書の単元が、このような扱いになっています。

 もちろん、各都道府県によっては、これらの単元は勉強しなくていいわけではなくて、学校では扱いますよ、と注記しているところもありますので、その問題意識をお持ちの方も多いとは思います。年度末の難しい時期ではありますが、何とか入試から除外された単元についての学習を促すような機会を中学校でも卒業までに作っていただきたいものです。

<文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦>