2021/05/10

関東関西有名中学入試分析【中学入試で求められる国語力 "書く力"と"考える力"を養うために】

 中学受験を考えている小学生のみなさん、受験勉強は順調ですか?小学6年生のみなさんにおいては、特に国語で、塾や問題集で取り扱う文章が難しくなったり、読む文章がより長くなったりと、5年生までとの違いを感じている方も少なくないかと思います。

 今回は「中学入試で求められる国語力 『「書く力」と「考える力」を養うために』と題して、中学入試の国語について、特に近年重視されてきている「書く力」と「考える力」について、お話をしていきたいと思います。

 中学入試の国語において求められる力として、私はこの『フリステWALKER』での連載において都度、四つの力を示してきました。「読む力」、「書く力」、「ことばの力」、そして「考える力」の四つの力です。四つの力のいずれもが大切なのですが、最近の中学入試では、特に「書く力」と「考える力」を問う問題が目立つようになってきました。その背景としては、思考力や表現力、発想力を重視した大学入試の変革があります。中学入試においても、それらの力を入試で問う学校が増えてきました。

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関東関西有名中学入試分析 【中学・高校入試国語で求められる力】

 今までも「書く力」を求める国語入試問題は数多く出題されていますが、それらは問題文を読み、理解し、その文章の記載内容に即した解答文の作成を求めるものです。最近では、問題文の理解は基本としながらも、受験生に考えや具体例の提示を求める「小論文形式」の問題も、国語の中で出題される例が増えてきました。

「小論文形式」とは?

 いわゆる「論文」とは、あるテーマについて、客観的、科学的、論理的な根拠を示しながら、自分の主張や見解を記述する文章のことであり、「小論文」はそのような「論文」を、入試を含めた、学校などの場での試験において、制限時間を設けたうえで実施するものです。大学入試では「小論文」が試験科目として採用されているケースが多くありますが、近年では、中学入試の国語においても「小論文」の形態の論述問題を出題する中学校が増えてきました。

問題 傍線⑥「何度も、何度でも思い出す気がする」とあるが、あなたが何度も思い出す出来事について教えてください。

(2020年 暁星中 国語入試問題より抜粋)

 この問題は2020年の暁星中学校の国語入試の最後の設問となった問題です。字数制限のある問題ではありませんが、だいたい300字から350字が記載できる解答欄に文章を書くことが求められます。

 この問題への解答のポイントは、

  1. 「何度も思い出す出来事」がすばやく思い浮かぶこと
  2. 「何度も思い出す出来事」の具体的内容
  3. なぜ「何度も思い出す」のか。その理由
  4. 「何度も思い出す出来事」がその後の自分に与えた影響や教訓

 以上の4点になります。いずれも「考える力」が必要になります。

 「小論文形式」の問題のなかでは、この問題のような自分自身のエピソードに基づくものも多いのですが、他には、「ディベート型」の問題や図やグラフなどの資料の分析を求める「分析型」の問題も出題されるようになってきています。

「ディベート型」

 問題 この文章では「ストック依存型」と「フロー依存型」の生き方が対比して述べられていますが、あなたはこのどちらの生き方をしてみたいと思いますか、両者を比較した上であなたの考えを述べなさい。

(2020年 三田国際学園中 国語入試1回目問題より抜粋)

 ここにあげたのは「ディベート型」の問題です。教育における「ディベート」とは、あるテーマに対して、賛成か、反対かを論じたり、Aを選ぶか、Bを選ぶかを論じたりすることで、論理的思考力や実証能力、健全な批評能力を養うことを目的として、教育現場で活用されています。したがって、「ディベート型」の入試問題の解答文では、論理性や実証性がポイントになります。

 今回の問題文(松井孝典著『われわれはどこへ行くのか?』)において、「ストック依存型」の生き方とは、化石燃料やウラン鉱物(原子力発電の動力源)など、地球上に蓄積(ストック)された様々な物質をエネルギー源として取り出す生き方と定義されています。他方、「フロー依存型」の生き方とは、太陽光や太陽熱、雨、風、水の流れなど、地球上のモノや自然エネルギーの流れ(フロー)に依存した生き方と定義されています。「ストック依存型」を選ぶにしても、「フロー依存型」を選ぶにしても、自分が選んだ依存型のメリットを論理的かつ実証的に説明できることが、この問題で高得点を得るためのポイントとなります。

「分析型」

 図やグラフ、数値を示した表を見せて答えさせる「分析型」の問題。このタイプの問題は社会や理科の入試問題の中でも出題されることがあります。国語の中で出題される場合でも、社会や理科を含む、小学校での学習内容や生活体験と関連した出題がされる傾向にあります。

 資料1
関東関西有名中学入試.jpg

 資料1は春日部共栄中の2020年の国語入試問題からの抜粋です。1980年から2016年にかけての、中学校、高等学校、大学の学校数・教員数・生徒数の変化の図表を示し、その変化と理由を述べさせる問題です。問1は図表からわかる数値の変化を文章にまとめる能力が問われています。他方、問2は問1で述べた変化の理由を考える能力が問われています。

 問2に関して、1980年代から2010年代にかけて、中学校・高校の数や学生数の減少傾向と大学の数や学生数の増加傾向をテーマにして、その歴史的、社会的、経済的な背景について、小学校や塾の授業で学習した経験のある方はほとんどいないと思います。もちろん、問2で、そのような歴史的、社会的、経済的な背景や因果関係を書きまとめたら高得点となるはずですが、中学校側は受験生にそこまでのことは求めていないと思います。

 中学校が受験生に求めるのは、文章力、語彙力、分析力、論理的思考力、そして発想力です。問1では分析力が、そして問2では発想力が特に求められています。「発想力」について、この問題では、仮に歴史的な事実や学術上実証された事実ではなくても、因果関係のつながる「仮説」であれば、それを論理的に文章にまとめることができれば高得点となるはずです。例えば、日本の経済が発展し、日本国民の平均所得が上昇し、大学の授業料を支払える家庭が増えた。それに伴い、大学の新設を求める声が日本各地で広がった。などの「仮説」を考え、それを論理的に説明するのです。

 

「小論文形式」への対策

 今まで述べてきたような「小論文形式」の入試問題は公立中高一貫校や私立中学のなかでも公立中高一貫校との併願受験を意図した入試方式の中でよく出題されていますが、私立中学の国語一般入試の中での出題はまだ少数です。しかし、大学入試改革の流れを受けて、今後「小論文形式」の入試問題を組み込む私立中学は増えていくものと思われます。

 

入試説明会で情報収集を!

 受験を考えている中学校で「小論文形式」の問題が出題されるのかどうか。それを知るためには、中学校主催の入試説明会や個別を含めた入試相談会に参加することが大切になります。今までは出題していなかった「小論文形式」の問題を次年度から出題をするなど、入試内容に大きな変更がある場合、多くの私立中学では事前の入試説明会でその変更についての説明をします。サンプル問題を提示して、どのような問題を出題するか、その出題意図や評価のポイントを説明する学校もあります。新型コロナウイルス感染症の影響で、学校やホールなどの集合会場での入試説明会が自粛されるケースもありますが、その代わり、ZoomやYouTubeなどを使ったオンライン入試説明会を実施する中学校が増えています。

 

"週間日記"を書こう!

 出題可能性を確認したら対策です。"書く力"と"考える力"を同時に養う方法として、私は"週間日記"を提案します。本来、日記は日々起きたことを書き記すものですが、毎日書くのは続かない、三日坊主になる、書くことが思いつかない、などの懸念が出てくるかもしれません。それならば、週末に、テーマを決めて、制限時間を決めて、"週間日記"とするのです。

〇月×日 「本場中国の麻婆豆腐」
 昨日は家族で、新しくできた中国料理のお店に食事に行った。お店には、日本人だけでなく、中国人と思われるお客さんがたくさんいた。コックさんをはじめとする店員さんはみんな中国人で、近くにある大学の中国人の留学生も多く来るらしい。このお店の一番人気が麻婆豆腐ということで、麻婆豆腐を頼んでみた。食べてみると、確かにおいしいけど、とても辛くて、すぐにお水を飲まないと食べられなかった。自宅で母が作る麻婆豆腐や別の中華料理のお店の麻婆豆腐よりも、辛くて濃い味がした。父が店員さんと話したら、このお店は中国の調味料や作り方をそのままで料理を作っていて、他の中華料理店みたいに日本人向けの味付けにはしていないらしい。だから、本当の中国の味を食べたい日本人やふるさとと同じ味の中華料理が食べたいという中国人のどちらにも人気なのだという。しかし、小学生にとっては辛すぎて、子どもでも食べやすいメニューがあってもいいのではと思った。(405字)

 "週間日記"のサンプルを書いてみました。

書くにあたってのポイントは、

  1. テーマやエピソードに関する理由づけをする(麻婆豆腐が他のお店より辛い理由 お客さんが多い理由)
  2. 自分の考えや意見を書く(子ども向けのメニューがあるべき)
  3. テーマは身近なことを中心に、時にはニュースについても
  4. 制限時間を設ける(はじめは20分程度で 慣れてきたら10分程度で)30分以上はかけない
  5. 書式は原則自由 ただし、志望校が字数制限を設ける場合はその字数制限で書く
  6. 「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書く

 ①や②については、最初はすぐには書けないかもしれません。その場合はエピソードや感想のみを書くだけでも大丈夫です。ただ、エピソードについて"なぜ?"や"だから"を考えようとしてください。今回の例に関しては「なぜ、麻婆豆腐が辛いのか?」、「だから、自分は子ども向けのメニューが欲しい」というように、理由づけとアイデアを考える習慣をつけましょう。考える習慣の有無、そして文章を書いた量によって鍛えた文章力が、特に「小論文形式」の入試問題では大きな差となります。"週間日記"で"書く力"と"考える力"を身に着けて、入試に対する強い武器としましょう。

                                           

<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>