2024/07/01

関東関西有名中学入試分析 【中学受験 夏の過ごし方(実践編)】

 先月の私のコラムでは「中学受験 夏の過ごし方(計画編)」と題して、中学受験生の夏期の過ごし方や学習計画のポイントをお話しました。今回は「中学受験 夏の過ごし方(実践編)」と題して、夏休み期間の学習計画や学習方法について、具体的に日付を示しながら説明をしていきたいと思います。

 中学受験を目指す皆さんには、この夏、充実した受験勉強を進めて欲しいと思いますが、今年も厳しい暑さが予想されるなか、毎日、朝から夜まで勉強漬というのは、小学生にとって、体力的にも精神的にも現実的ではありません。心身ともに無理をせず、メリハリをつけて受験勉強を進めることがポイントになります。

 体力的にも精神的にも余裕をもって、効果的に夏の学習を進めるために、期間ごとの過ごし方と特に重要になる朝の過ごし方を中心に、これから述べていきたいと思います。

夏の期間別の過ごし方 前半期と後半期

 小学校の夏休みを期間別に、前半期(7月後半~8月前半)とお盆を含めた後半期(8月中旬~後半 小学校授業再開までの期間)の2つの期間に区分したいと思います。前半期と後半期、それぞれの時期の心構えや学習ポイントについて述べていきたいと思います。

前半期の学習ポイント

 2024年の夏、720日(土)から825日(日)までの期間を"夏休み"として考えてみます。以前は720日頃から831日までが夏休み、91日に始業式という小学校が首都圏でも関西圏でも一般的でしたが、近年では8月の第4週から授業再開が一般的になっています。今年の825日は日曜日、26日は月曜日ですので、26日に始業式や授業再開とする小学校が多いかと思われます。1か月強の夏休みですが、8月中旬には"お盆"があります。集団授業塾・個別指導塾とも"夏休み"には夏期講習を実施するところがほとんどですが、"お盆"期間には、塾でも授業を実施せず"休校期間"となるのが一般的です。
 例えば個別指導学院フリーステップでは、今年の場合、810日(土)から18日(日)までが夏期講習の休止期間となります。この期間を"お盆"と考え、"夏休み"のなかで"お盆"より前を前半期、それ以降を後半期とします。前半期は21日間、後半期は16日間です。前半期と後半期としていますが前半期こそが"夏休み"と考え、お盆前までの"夏休み"に取り組むべき学習課題を完了させられることがベストです。夏休みスタートの段階で「夏休みは1か月以上あるから」と考えると、勉強や宿題は後回しにしがちになります。夏休みの勉強や宿題は前倒し、前倒しで進め、終わらせられるものは早期に終わらせることが受験勉強の鉄則です。
 前半期の"前倒し"の勉強とは、具体的にはどのように進めていくことなのでしょうか。私は720日から89日までのカレンダーに、この日にどの単元を学習するのか、どの教材の何ページを学習するのかを書いておくことをおすすめします。その際のポイントとしては、①1週間(月曜日から日曜日)を大きなタームとして考える。②フリーステップのように毎週日曜日は休講日の塾の夏期講習に通う場合、日曜日には原則予定を書き込まず、学習が遅れた場合の予備日とする。③仮にある日に決めた学習テーマが完了しなかった場合であっても、翌日は翌日の学習テーマを進める(進められなかった分は日曜日に学習)。④715日までに89日までの学習テーマはあらかじめ決めること。

 夏休み前半期の学習計画について、小学6年生の社会で具体例を示したいと思います。720日から89日までの夏休み前半期は21日間あります。この期間中、720日の翌日21日(日)を除いた日曜日を除外すると19日間です。フリーステップで主に中堅校志望の中学受験生用に使われるテキスト『小学実力練成エフォート』の社会A5つの章、社会Bには8つの章、合計13章が掲載されています。日曜日を除き、毎日1章ずつ進めて13日(1周目)。残り6日間のなかで12章ずつを原則に、社会Bの第678章の計3章は89日の1日で、社会ABのテキストの2周目を進めていきます。このスケジュールで学習が進んだ場合は、日曜日には、章末にある完成問題や巻末に掲載されている総合問題や入試特集(演習問題)を進めていきましょう。他方、仮に勉強がスケジュール通りに進まなかった場合は、日曜日を使って遅れを取り戻していきましょう。

 『エフォート』社会の各章は「要点のまとめ」、「基本問題」、「発展問題」の3つのパートで主に構成されています。「要点のまとめ」は用語や事象が文章で説明されていて、学校の教科書や集団塾の授業の講義をダイジェストにしたようなパートです。「基本問題」は「要点のまとめ」で説明されている用語・事象について、一問一答形式の問題が掲載されているパートです。「発展問題」は各章のテーマに関連した入試問題が掲載されているパートです。

 「完成問題」、「入試特集」、「総合問題」というパートもあり、もちろん、時間に余裕のある受験生は夏期にこれらのパートも進めて構いませんが、算数・国語・理科の学習も並行して進めることも踏まえて、夏期においては「基本問題」と「発展問題」の学習に範囲を絞るのを基本とされるといいでしょう。1周目の学習として、例えば、まず、「基本問題」見開き2ページを15分ほどで解き、8割以上の正解率であればそのまま「発展問題」に進み、正答率が8割未満であれば「要点のまとめ」に戻り、読み込みと太字用語の理解や記憶に努めます。『エフォート』社会の各章は3つから5つの単元で構成されていますが、190分から120分の時間を使って進めます(1単元あたり30分程度が目安)。2周目は1周目で解いた内容の復習のため、1日あたりの章の数は増えますが、1章あたり60分以内の時間でサクサクと進められるはずです。基本問題と発展問題のなかで、前回解けなかった問題や間違えた問題を解き直し、さらに「完成問題」も解き進めていきましょう。

後半期の学習ポイント

 後半期の学習についてです。前半期の解説でも述べたように、"後半期"はお盆を含めても16日間と短い期間です。短い期間ですが、特に小6の受験生にとっては本格的な"受験勉強"への導入期間として、極めて重要な時期となります。

 受験生の場合は志望校の入試過去問や9月受験予定の模試の過去問を解き、今後志望校の入試傾向に沿った演習型学習に進む前に、強化すべきテーマや単元、出題形式のチェックと学習を進めます。

 今までは単元ごと、テーマごとに学習をしてきましたが、入試問題や模試は各単元がランダムに出題されます。ランダムな出題形式に慣れると同時に、間違えた問題の単元の復習や覚え直しを進めます。新しいテキストや問題集を使うよりは、今までに学習をしてきたテキストや問題集から、過去問のなかで思うように解けなかった問題の単元の確認をし、類題を数多く解き進めていくのです。

 過去問については、8月の段階では解ける問題が少ないのでは、と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。今の時期は過去問の形式や傾向、特徴をつかむ時期であり、実際の入試の合格最低点(合格基準点)をクリアしなければいけない時期ではありません。1月または2月の入試本番で合格最低点をクリアするための、8月後半や9月の学習テーマを見つけるための過去問演習です。もちろん、得点が高いに越したことはありませんが、得点が高いか低いかにはこだわらず、出来なかった単元や事項のなかで、この16日間で強化するところを見定めて、塾での学習や問題演習を進めていきましょう。

 他方、非受験学年の場合は、引き続き単元ベースの学習を進めることが中心となりますが、通年用のテキストを使った学習であれば章末問題を使った復習学習をおすすめします。後半期16日間に、1学期と前の学年で学習をした単元の章末問題を進めて、今までに習った内容の総チェックを進めるのです。

 たとえば、算数の場合、夏期講習に入る前に学習を完了した単元や特殊算のまとめ問題を、1日あたり2テーマ解き進めていきます。塾で使う算数テキストには、単元やテーマの章末にまとめの問題も掲載されています。

 例えば、『小学実力錬成エフォート算数』というテキストの場合、各章や特殊算の単元ごとに"発展問題"という章末問題パートがあります。夏休みに入る前に学習を完了させている章の"発展問題"について、2章分×14日間を原則として(811日以外の後半期の日曜日〔818日・25日〕を除外した日数)、直近に学習完了をした章から全27章分(ステージⅠ:計9章 ステージⅡ:計10章 ステージⅢ:計8章)を解くのです。"発展問題"は見開き2ページで、30分~40分と制限時間を設けて解き進めていくといいでしょう。"発展問題"が難しい(正解率5割未満が続く)場合には、『エフォート』より易しめのテキスト(例『小学ウィンパス』など)の章末問題で、学習した単元の復習を進めてみましょう。

夏は朝の学習が超重要!

 今までは時期別の学習内容について述べてきましたが、最後に、夏の一日の過ごし方について述べたいと思います。夏、最も学習がはかどる時間帯は暑さがやわらいでいる朝です。そして、これは中学受験に限った話ではありませんが、夏休み期間の学習において、最も差がつく要因は朝の学習の有無や朝学習の内容です。

夏期は通常の時期より早起きをして、午前6時までには起床をして、学校の有無に関わらず、午前730分頃までは朝学習を進めることを強くおすすめします。

 では、朝の時間帯にはどのような学習が効果的なのでしょうか。具体的には塾の先生にも相談して学習内容や使用教材を決めて頂きたいと思いますが、私のおすすめは、思考力を"程よく"使う項目の学習を朝に進めることです。

算数であれば計算問題や文章題、図形問題の中でも基本的な問題(いわゆる一行問題と呼ばれる小問)、国語であれば比較的短い文章を読ませたうえでの短め(20字程度)の記述問題、理科であれば重さ・化学反応・天体分野の計算問題です。

 あくまでも"程よく"頭を使う問題であることがポイントです。この時期の朝学習の目的は、暑さが厳しくなる前の時間帯に脳を早く目覚めさせること、一日の学習の良いスタートとリズムをつくることにあります。朝の時間帯に難問や長い記述問題、論述問題を解く必要はありません。一問を解くために長時間を費やす必要のある問題を朝からいくつも解くと、朝学習だけで疲れてしまい、その後の時間帯の学習に悪影響が出やすくなります。

 例えば、午前530分に起床(もちろん、就寝時間は早めに)。着替えや軽い飲食をしてから、午前6時頃から30分間を算数。午前630分からのラジオ体操をはさんで、午前650分から30分間を国語または理科を進めます(【資料】に朝学習のモデルプランを示しました)。

 お盆休みの期間を含めて、720日から825日までの36日間。11時間。この36時間の朝学習により、時間数以上の充実感と実力のレベルアップを感じることができるはずです。

【資料】 夏期朝学習のモデルプラン

  530 起床

  530550 着替え 洗顔 軽飲食

  555625 算数学習(計算・一行問題)

  630645 ラジオ体操などの軽運動

  650720 国語学習(読解問題)

  730755 朝食

  (800830 理科学習〔計算の伴う問題〕)

 今回は「中学受験 夏の過ごし方(実践編)」と題して、具体例を示しながら中学受験生の受験勉強の計画づくりや勉強方法について述べてきました。

 夏期の学習はお盆までの"前半期"が勝負です。そして、暑くなる前の朝学習が極めて重要です。この2点を強く意識しながら、充実した夏の受験勉強となるように、夏休みの計画を組み立てていただければと思います。

 

<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>