2022/08/01

関東関西有名中学入試分析【中学受験 知らないと損する 模試・プレテストの受け方と活用法】

中学受験生のみなさん、夏の学習は順調に進んでいますか?8月終盤以降、中学受験生(小学6年生)対象の模擬試験(模試)が毎月のように実施されます。例えば、首都圏の中学受験向けの首都圏模試『合判模試』や近畿圏の中学受験向けの『五ツ木・駸々堂模試』は8月下旬から11月・12月にかかけて、毎月に4回の模試を実施予定です。公立中高一貫校向けの模試や特定の私立中学校の入試問題に即した学校別の模試も実施されるようになります。

また、近畿圏の多くの私立中学では、9月から11月にかけて小6生を対象に中学校主催の模試(プレテスト)を実施します。

 中学受験生にとって重要な模試とプレテスト。今回は、秋の受験勉強の指針ともなる中学受験生向けの模試とプレテストについて、その受け方や活用法を中心に述べていきたいと思います。

中学受験の模試とは?

 中学受験生向けの模試は、中学受験大手進学塾(サピックス小学部、四谷大塚、日能研、浜学園、馬渕教室など)が主催して実施される模試(公開テスト)と進学塾とは別のテスト会(首都圏模試センター、五ツ木書房など)が主催して実施される模試に、大きく二分されます。

進学塾が主催する模試の場合は、その塾の入塾テストを兼ねることや塾生の学習到達度をはかることを目的とした色合いがある出題内容になります。各中学受験塾の塾生の学力層や塾それぞれのカラーに応じて、問題の難易度や出題範囲、記述問題・論述問題の質量などが変わってきます。

例えば、偏差値の高い難関校とされる中学校を志望する塾生の多い進学塾主催の模試の場合、塾生に基礎・基本が身についている前提で、難関校の入試で問われる記述量の多い論述問題や思考力、発想力を問う内容が多くなります。当然ながら、主催をするその進学塾や提携塾の塾生の受験が大多数を占めます。

他方、テスト会主催の模試の場合は、大手進学塾の塾生の受験ももちろんありますが、地域密着型の進学塾や個別指導塾で勉強している受験生、そして、塾には通わず、家庭学習を中心にして受験勉強をしている小学生も多く受験します。難易度の高い問題よりは、基礎・基本をベースとしたオーソドックスな私立中学入試一般の出題内容が中心となります。

学校別模試も実施

 小6生の場合、夏以降は特定の中学校の出題形式、問題用紙・解答用紙、試験時間を合わせた学校別模試も実施されます。学校別模試の対象となるのは第一志望の受験生が多い、入試難易度(偏差値)の高い中学校が多くなります(【資料1】参照)が、地域の人気校や公立中高一貫校対象の学校別模試を実施している中学受験塾やテスト会もあります。

【資料1】首都圏中学受験塾 学校別模試 男子対象校(例)

麻布中 栄光学園中 開成中 慶應義塾湘南藤沢中 慶應義塾中等部
慶應義塾普通部 駒場東邦中 渋谷教育学園渋谷中
渋谷教育学園幕張中 聖光学院中 筑波大附属駒場中 灘中
(私立)武蔵中 早稲田中 早稲田実業中 早稲田大高等学院中

一般的な中学受験の模試と比べて、学校別模試の特徴としては、

①作問傾向、制限時間など、各学校の入試に沿った内容となる。

➁当該校を第一志望とする受験生が集まり、そのなかでの順位や偏差

値が示される。

③模試を主催する塾の塾生の割合が高くなる傾向になるが、他塾生や塾に通っていない受験生が「他流試合」や試験慣れの場として受験をすることも珍しくない。

④模試の対象校で実施される場合もあるが、多くの場合は主催する塾の教室で実施。

 以上の4点が挙げられます。

難関校とされる中学校のなかには、毎年、非常に個性的な出題をする学校もあり、個性的な問題への慣れをつくり、また思考力や発想力を磨くため、学校別の模試を活用する受験生が少なくありません。

プレテストとは?

 近畿圏では、数多くの私立中学校が、学校自ら学校別模試を実施しており、通称"プレテスト"と呼ばれています。9月から12月前半にかけて、主に日曜日や祝祭日(振替休日)に学校ごとで実施をされます。

模試との違いとしてのプレテストのポイントは・・・

①大半の中学校のプレテストは受験料無料。

②入試本番と同じ学校会場・教室、同じ学校の先生による問題作成。

③来年度入試の変更点や形式変更も踏まえた問題が出題される。

④答案返却時の解説会や相談会を実施する中学校もある。

⑤難易度・偏差値が高い中学校というよりは、各地域で人気のある中学校が実施をしているケースが多い。

⑥公立中高一貫校の適性試験型のプレテストを実施する中学校もある。

⑦中学校が推薦入試を実施している場合、プレテストで一定の成績をおさめることが推薦入試の出願要件のひとつとしているケースが多い。

以上7点です。

プレテストは、受験会場はもちろん、出題形式、試験時間、配点、試験監督など、プレテストは各中学校の入試そのままですから、生徒本人の志望校がプレテストを実施している場合は、ぜひ受験を検討してください。また、公立中高一貫校を第一志望の受験生にとっても、無料で適性試験の練習ができる、得点や講評も出て、現状や今後の受験勉強の課題を確認できる場としても、プレテストはメリットが大きいと考えていいでしょう。また、⑦にもあるように、中学校が自己推薦入試やAO入試を実施している場合、自校主催のプレテストの受験を出願要件としたり、プレテストで一定の成績以上であることを出願要件としたり、入試での合否選考の判断資料としているところもあります。

模試・プレテストの活用ポイント 

 夏以降、小6の中学受験生にとっては必須となる模試やプレテストですが、受験をするにあたってのポイントを3点、まとめておきたいと思います。

Ⅰ.志望校や併願校の選定

小6生の場合、9月以降は受験校を決定していく時期となります。第一志望校のみならず、合格の可能性を見定めながら併願校も決めていく時期となります。受験候補の学校の合格可能性を確認することが、6年生にとっての模試の大きな役割となります。

難関とされる一部の中学校を除き、私立中学校の多くが複数回・複数日の入試を実施しています。午前中からお昼頃までの時間帯の入試(いわゆる午前入試)を実施する中学校が多いなか、午後の時間帯に入試を実施する中学校も近年増えてきています(いわゆる午後入試)。同じ中学校であっても、入試日や午前入試、午後入試の違いで受験者層が大きく変わり、入試の倍率や難易度も変わることがよく見受けられます。

一般的な傾向としては、2月1日に私立中学入試がスタートする東京都の私立中学の場合、複数回入試を実施する学校であれば、それぞれの学校の第一志望者が中心となる2月1日の午前入試が入試倍率や模試が定める合格可能性判定の偏差値でもっとも抑えめとなりやすく、他校からの併願受験者が集まる午後入試は、2月1日であっても、午前入試よりは入試倍率や模試が定める合格可能性判定の偏差値も高くなりがちになります。

合格可能性の判定については模試によって判定方法が変わってきますが、例えば、首都圏模試(『合判模試』)の場合、志望校として6校を登録すれば、午前入試、午後入試の双方、それぞれの中学校の全ての入試回について合格可能性を判定します。第一志望校としては午前入試とされる方が多いなかで、午後入試の併願先の情報収集は後手となりがちなケースがよく見受けられますが、このような模試判定から、午後入試の学校の合格可能性も見ていくことが可能です。

Ⅱ.中学校受験会場の選び方

 中学受験の公開模試では、複数の私立中学校の会場の中から自分の受験する会場を選ぶことが可能です(進学塾主催の模試の場合は進学塾の教室会場を選ぶことも可能)。

第一志望校の中学校が模試の会場となっている場合は、もちろん第一志望校の中学校を会場としましょう。他方、模試の試験会場のなかに志望校や受験を考えている中学校がない場合は、受験会場はどのように決めたらいいでしょうか?

模試受験会場選択のポイント

 ①第一志望校または受験する可能性の高い学校

 ➁自宅からの交通アクセスにおいて無理のない学校

 ③男子校・女子校志望の有無

 ④宗教色のある学校志望の有無

 ⑤校舎が新しい

第一志望校が試験会場になくても、今後の学習状況によっては第一志望校となる可能性のある学校、憧れのある学校が試験会場のリストにあれば、その学校を選びましょう(①)。

志望校の候補となる学校がない場合は、まずは自宅からの交通アクセスにおいて、無理なく行くことができる学校を複数選びます(➁)。電車と徒歩を合わせて60分以内で行ける範囲を目安としましょう。そのうえで、男女別学の学校を第一志望とするのであれば男子校または女子校を、共学校を第一志望とするのであれば共学校を、それぞれ候補に選びましょう(③)。

そして、第一志望校がキリスト教主義や仏教主義など、特定の宗教をバックボーンとしている学校であれば、模試の受験会場の学校も志望校の宗教宗派に近い学校を選ぶといいでしょう(④)。例えば、キリスト教のなかでもカトリックの宗派の学校の場合、どの学校の校内や校舎内にもイエスキリストや聖母マリアの像や宗教画があり、教室内にもキリストやマリアの肖像画や十字架のある場合が多く、志望校と似た雰囲気を体感しながら模試を受けることができます。

①から④までのチェックポイントを踏まえても、ここという学校が見つからない場合は、①の交通アクセスを優先しつつも、集中力をもって快適に受験ができる学校という観点から、校舎・教室が新しい学校、改築された学校を選ぶというのはいかがでしょうか(⑤)。

Ⅲ.受験後の復習と弱点補強

 模試もプレテストも、合格判定や偏差値を出すだけのものではありません。いずれも実施時期までに身につけておくべき各科目の学習内容を練りに練って出題されるており、解くことで現時点での学習到達度や課題、弱点がわかるように作問がなされています。つまり、模試やプレテストの復習と模試を活用した学習は極めて効率性の高い学習となるのです。

 模試やプレテストは日曜日または祝祭日(振替休日)に実施されるのが一般的です。模試が終わった後は解放感や疲労感から、その日勉強しないという受験生がいるという話を聞きますが、それは非常にもったいないことです。模試やプレテストが終わった後、受験生は問題用紙を持ち帰ることができると同時に、解答解説の冊子が配られます。記憶力が鈍らないうちに"できなかった"問題や単元を頭に焼きつけて欲しいと思います。

私は指導をしてきた中学受験生や保護者の方に、模試やプレテストが終わった後は以下のようにすることをお願いしています。

①終了後、できるだけすぐに、答え合わせをして、間違えた問題、正解か不正解かあいまいな問題の番号に印をつける。

②帰宅後など、落ち着いて勉強ができる環境に戻ったら、模試の間違えた問題と解答解説を照らし合わせて、解説を理解しようと努める。

③その後、塾のテキストや参考書で今回の模試で出題された単元やテーマの箇所を調べ、必要に応じて、付せんや蛍光マーカーをつける。

④そして、模試やプレテスト後の初回の塾の授業で、模試の解説や参考書を読んでもわからない箇所の質問をして、その解説後、明らかになった弱点箇所の類題演習に努める。

このような"弱点強化"を進めていくと、模試の場合は、8月以降の4回の模試を通じて、中学受験の学習全範囲が総復習できるようになります。もちろん、偏差値や志望校合格判定も気になりますが、中学受験のぼう大な出題範囲を効率よく学習していくツールとして、模試やプレテストを上手に活用して欲しいと思います。

 今回は中学受験の模試やプレテストの受け方とその活用法についてお話をしていきました。近年の中学入試は午後入試を含めて、入試回数や入試方式の複数回化や複雑化が進んでいます。それに合わせて最近の模試は、そのような中学入試の複数回化や複雑化にも対応できるように作られています。

男子校・女子校・共学校、キリスト教系の学校・仏教系の学校、歴史のある伝統校・新進気鋭の学校など、模試では受験会場の中学校が選べる場合ほとんどですが、人気のある中学校の試験会場は模試の申込開始早々に定員に達し、募集を締め切るケースがよくあります。どの模試でも模試実施の2か月ほど前から申込受付を開始しますが、スケジュール確認も含めて、期間にゆとりを持って動いていただければと思います。

志望校合格のために役立てるツールとして、模試やプレテストを活用していきましょう。

<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>