2021/09/06

関東関西有名中学入試分析【中学入試 過去問の取り組み方(解説編)】

 中学受験を目指す小6生にとっては追い込みの時期となってきました。既に志望校の入試問題に類似した模試や中学校主催のプレテスト(近畿圏)を受験された方もいらっしゃるかと思います。

これからの時期、志望校や受験予定校の入試過去問題(過去問)を本格的に解いていく時期になります。今回は秋季から年末年始にかけての時期の過去問の使い方や活用法について、述べていきたいと思います。

過去問の活用法 その1 過去問の集め方

 中学入試の過去問題は、中学校自身が配布をしていたり、入試説明会等で販売されていたり、学校ホームページにてダウンロードができたりします。しかし、掲載年数が少ないケースが多く、模範解答のみの記載で解説がないなど、自宅学習で使うには使いにくいものもあります。したがって、書店などで販売をされている、出版社が編集、解答作成、販売をしている過去問を使うのが一般的です。首都圏では声の教育社や東京学参、近畿圏では英俊社などの出版社が中学入試の過去問を販売しています。

 市販をされている中学入試過去問集は、中学校によって掲載されている年数や回数が異なります。過去10年分掲載されている中学校もあれば、2年分、3年分の掲載となっている中学校もあります。複数回入試を実施している中学校の場合、過去問集に掲載をされていない回がある場合もあります。

 「古い過去問も解く必要はありますか?」という相談は入試時期が迫ってくると、多くの受験生の保護者の方がお尋ねになります。

麻布中や武蔵中(いずれも東京都)など、毎年個性的な出題形式や論述問題を課す一部の中学校を志望校とする場合は、独特な入試問題に慣れるために、古いものも含めて多くの過去問を解き進めることも有効です。その場合は、過去問集を販売している出版社が別途で現行版の過去問とは別に提供をしている(古い)過去問提供のサービスやAmazonなどのインターネット通信販売で出品されている、古い年度の過去問集を購入するなどの方法があります。

しかし、オーソドックスな入試出題傾向の中学校を受験予定の場合は、現在市販をされている過去問集ベースで十分です。過去問集に掲載されていない回の過去問は、中学校自身が配布・販売をしているものを使うことも可能ですし、併願受験校や第一志望校と入試傾向の似通っている中学校の過去問も解き進めることで、演習量はかなりのものとなるはずです。やみくもに過去問を集めるのではなく、今から入試本番までの残された日数と過去問を解くことができる日数・回数から逆算をして、過不足のない数量の過去問を準備していきましょう。

過去問の活用法 その2 問題・解答用紙ともコピーを使う 制限時間を設ける

 過去問はただの問題集ではありません。合格のための戦略を考え、戦術を鍛えるための最も重要なツールとして使うものです。

過去問を解き進める目的は以下の3点です。

➊入試問題の形式や傾向を把握する

➋志望校入試の出やすいところや今の学習課題を明確にする

➌制限時間内に正確に解き終わる技術や"体内時計"を身につける

 3点の中で、秋期から入試直前期において特に重要となるのが➌です。そのために過去問も"実戦的"な使い方が必要となります。

問題用紙・解答用紙ともコピーをして使う

 過去問の問題用紙や解答用紙はコピーをとり、そのコピーに書き込んでいきながら進めていきましょう。

 過去問は1回解いて終わりではなく、2回目・3回目と解き直すことや復習に使うことがあり得ます。

 国語の場合は問題文に線や印をつけたり、算数の場合は余白に計算をしたり、図形問題に補助線や書き込みを入れたり、そのような鉛筆を使った作業は、書き込みのない問題用紙で進めることが重要です。

 解答用紙は入試本番と同じ原寸大の大きさで印刷をしてください。特に記述問題や論述問題で、字数条件がない問題を解くにあたって、出題者が求める条件を揃えた、過不足のない解答文を書くには、入試本番と同じ解答欄の大きさに纏め上げる練習を積み重ねる必要があります。

 字数制限のある国語や社会の記述問題や論述問題において、その問題における配点の満点分をとるためには、制限字数の7割以上の字数の解答文を書くことが必要であると、私は指導をしています(例:「100字以内で書きなさい。」という問題の場合は70字以上の文章を書く)。字数制限のない問題であっても、解答欄の7割以上のスペースを埋めることを意識して、記述問題や論述問題に取り組みましょう。

制限時間を設定して取り組む

入試では、科目ごとに制限時間が設定されます。いくら実力を身につけても、問題を解く時間や解答文を書く時間が遅いと、解答用紙に書き込む時間が足りなくて「時間終了」となってしまいます。模試やプレテストでも、同じような「時間終了」という経験をした場合、入試本番で同じことにならないように、制限時間内に解答を書き終えることができるように、正確さを保ちながらも、よりすばやく問題を解き進める「技術」を身につけつつ、入試の制限時間内に仕上がる"体内時計"をつくりあげていくことが、小6生の秋期以降の大きなポイントとなります。

制限時間を設けての過去問演習のポイントですが、以下の3点になります。

➊いつから実施するのか?(実施開始時期)

➋どの曜日・時間帯に実施するのか?

➌その他のポイント

➊の実施開始時期ですが、模試における志望校の合格可能性の判定が50%以上であれば、今からでも実施をして大丈夫です。他方、合格可能性の判定が50%未満であれば、各教科のなかで、過去問を進めるにあって、まだ学習が必要な単元や項目があると考えられます。とはいえ、遅くとも12月には過去問演習に着手する必要があり、いつから過去問演習を開始し、それまでにどの単元や項目を授業で強化をしていくのか、塾の先生と相談を進めてください。

➋の実施曜日や時間帯ですが、入試自体が午前中や日中に実施されること、集中力や思考力が高い時間帯に過去問演習も進めるべきことを考えて、土曜日や日曜日、祝祭日、学校の振り替え休日に進めることをお勧めいたします。

もっとも、秋期の土・日・祝日には模試や(近畿圏では)プレテストが実施されることも多く、それらも制限時間の中で解くものですから、模試やプレテストも過去問演習の一環と考えながら、「どの中学校の何年度の問題をいつ解くか」のスケジュールを決めてきましょう。

➌制限時間を設けた過去問演習のその他のポイントとして、

・国語 算数 理科 社会 (英語)どの教科を進めるのか? 全教科とも進めるか?

・制限時間は入試本番と同じ時間内でいいのか?

     

 模試を解く際、「時間が足りなかった」と思う科目はありますか?長文読解や(記述問題や論述問題の)文章作成が必要な国語や計算力、筆算の必要な算数で、制限時間内にすべての問題を解き進めることができない、ということがよくあります。もっとも、理科や社会でも、長文を読ませたり、記述問題や論述問題、理科の計算問題で解答に時間がかかる問題を出題する中学校もありますが、理科・社会とも、時間のかかる問題は国語力(文章読解力と記述力)と算数力が関係するものです。

 この後は国語を例にして、制限時間内の過去問演習の進め方を、制限時間の設定方法も含めて、具体的に説明をしていきたいと思います。

<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>