2021/12/06

関東関西有名中学入試分析 【冬期~小6生入試直前期の合格戦略】

今年も残り少なくなってきました。中学受験に挑む小6生にとってはラストスパートの時期です。これからの時期は受験生のみなさん一人ひとりによって、志望校合格のための戦略や勉強法が大きく変わってきます。今回は中学受験を間近に控えた小6生の冬期・入試直前期の戦略について述べていきたいと思います。

戦略その1 志望校入試までに残された日数から冬期の学習内容を決める

【資料1】2022年首都圏・近畿圏 私立中学校入試開始日(解禁日)

冬期_入試直前期_私立中学校入試.png

「志望校の入試まで、あと何日ですか?」この質問に対する答えは志望校のある都府県によって異なってきます。

例えば、埼玉県在住の受験生であっても、埼玉県内にある私立中学校を第一志望とする場合と、東京都内にある私立中学校を第一志望とする場合では、志望校入試までに残された日数は20日ほど異なってきます(【資料1】参照)。もっとも、埼玉県内の私立中のなかには2月にも入試を実施するところもありますが、2月入試は、1月入試による入学手続き状況により、合格者数が絞り込まれる可能性もあるため、第一志望とするのであれば、合格者数の絞り込みのない初回の入試を受験するのが鉄則となります。

 埼玉県内の私立中学校を第一志望とする場合、フリーステップの冬期講習最終日の1月4日から6日後の1月10日から入試がスタートします。できれば12月初旬からは併願校を含めた過去問演習に入り、遅くとも冬休み・塾の冬期講習開始時には、模試の偏差値や合格可能性判定にかかわらず、第一志望校の過去問演習に入る必要があります。過去問演習を進め、過去問を解いて見つかった補強ポイントをその場で学習していくスタンスがいいでしょう。

この学習スタンスは、冬休み明け早々から、いわゆる「前受験」とされる中学校の受験が始まる近畿圏の中学受験生にも当てはまると思います。受験校の中学の「プレテスト」を受験しているのであれば、「プレテスト」の見直しや弱点補強を進めたうえで過去問演習を進めていきましょう。

 他方、2月1日から入試開始となる東京都や神奈川県にある中学校を第一志望校とする場合、フリーステップの冬期講習最終日の1月4日から志望校入試まで、1か月弱の日数があります。直近の模試の合格可能性判定が60%以上であれば、冬期講習期間に過去問演習を進めるのが原則です。しかし、模試の合格可能性判定が60%未満であれば、志望校合格に必要な6年生までの学習事項のなかで理解・定着が不十分な単元やテーマが残っていると考えられます。今までの受験をした模試やテスト問題を見直し、以前、得点率が低かった単元やテーマの問題を解き直して、弱点の補強を冬休み・冬期講習の受験勉強のテーマとすることをお勧めします。そのうえで、冬休み明けからは過去問演習がスムーズに進められるように留意しましょう。

戦略その2 前受験や午後入試など併願校の情報収集を

 私立中学入試は入試日や入試の時間帯が異なれば、第一志望校以外の中学校を併願受験することが可能です。近年の中学受験では、いわゆる「前受験」や「午後入試」とされる入試で複数の中学校を受験する受験生が多くなっています。

「前受験」について

 「前受験」というのは、第一志望校の入試より前の時期に実施をされる入試を受験することです。「前受け」とも呼ばれたりしています。入学・通学の可能性の有無によって、「前受験」も大きく二つに区分されます。

ひとつは第一志望校の入試日より前に、自宅から通学可能な地域にある中学校を受験するものです。例えば、東京都在住の受験生で、第一志望校の入試日が2月3日の場合、2月1日と2月2日に入試を実施する中学校を「前受験」として併願をすることが可能です。他方、第一志望校の入試日が2月1日で、同日より前に東京都の私立中学の入試がない場合でも、【資料1】にもあるように、東京都と隣接県とで入試開始日(解禁日)が異なる場合があるため、毎日の通学に支障のない場所であれば、東京都内の中学校よりも入試日の早い埼玉県や千葉県にある中学校を「前受験」することも可能です。

このような「前受験」の学校選びのポイントは、①毎日の通学が可能な場所にあること、②この学校の合格によって、2月の受験負担が軽減されること(第一志望校のみの受験になる等)の2点です。例えば、立教新座中学校(埼玉県新座市)は立教大学の系列校ですが、同校の1月中の入試に合格をした後も受験を続ける受験生の場合、早稲田大学または慶應義塾大学の系列の中学校に的を絞るケースも多く見受けられます。

もうひとつの「前受験」は、志望校入試の前にリアルな「中学入試」を経験し、合格を勝ち取ることで志望校入試に弾みをつけるためとするものです。このような「前受験」の受験校としては、受験生の自宅から通学可能な地域外にある学生寮を併設した、首都圏や近畿圏以外の地域にある中学校も選ばれる傾向にあります。例えば、愛光中学校(愛媛県松山市)は男子学生寮(女子は自宅からの通学を原則)を併設した、四国地方屈指の進学校ですが、学校のある松山市以外に、東京都内や大阪市、福岡市でも入試を実施していて、それぞれの地域の難関中学校を第一志望とする受験生の「前受験」校としても人気を集めています。

このタイプの「前受験」のポイントとしては、①確実に「合格」が見込める学校を選ぶ、②第一志望校入試の疑似体験となる会場設定、の2点になります。

①については、上述した愛光中学校は四国・中国地方ではトップクラスの難易度(偏差値)のある入試であり、そのような難関校を「前受験」と考えることができるのは、開成中学校(東京都荒川区)や灘中学校(神戸市東灘区)などの首都圏・近畿圏の最難関中学校の合格可能性が高い受験生に限られます。「前受験」の目的はリアルな入試を体験することと「合格」という成功体験を得ることです。難関校にこだわる必要はなく、受験生ご自身の目的やニースにあった学校を選びましょう。

②については、第一志望校と同じ試験会場、または類似の試験会場での「入試」をあらかじめ経験することを意図したものです。首都圏外・近畿圏外の中学校の首都圏や近畿圏での入試は貸会議場や貸ホールが会場とされる場合が多いのですが、大学のキャンパスで入試を実施する中学校もあります。

昨年度の例ですが、例えば、早稲田佐賀中学校(佐賀県唐津市)の1月の首都圏入試(1月11日)は早稲田大学早稲田キャンパス(東京都新宿区)で実施されています。東京都内にある早稲田大学の附属・系列の中学校(早稲田中、早稲田大高等学院附属中、早稲田実業中)の入試は各中学校で実施されていますが、早稲田大学での入試は、貸会議場や貸ホールでの入試よりも気持ちも引き締まり、精神的な高揚感も高まるはずです。加えて、早稲田佐賀中の首都圏の入試には前記の早稲田大系の3校の受験生が主に集まる傾向にあるため、早稲田大系の中学校の志望者にとっては臨場感の高い入試となります。

他方、キリスト教カトリック系の女子校である不二聖心女子学院中学校(静岡県裾野市)と札幌聖心女子学院中学校(北海道札幌市)の首都圏入試は、聖心女子大学(東京都港区)のキャンパスで実施されます。東京(港区)にある聖心女子学院中等科は中学入試を実施していませんが、雙葉中学校や白百合学園中学校(いずれも東京都千代田区)などのカトリック系の女子校を志望校とされる受験生にとっては、カトリック校の雰囲気の校舎や教室、女子だけの受験生での「受験」を事前体験するメリットは大きいと思います。

「午後入試」について

「午後入試」とは、お昼過ぎの午後の時間帯から実施される中学入試のことです。旧来からの中学入試は午前中からお昼にかけて入試を実施するのが一般的です。今では「午前入試」とも呼ばれるようになりましたが、そのような「午前入試」の終了後の時間帯に実施される入試が「午後入試」です。なかには西大和学園中(奈良県北葛城郡河合町)の本校入試や大阪桐蔭中(大阪府大東市)などのように、午後入試のみで生徒募集をしている中学校やコースもあります。

「午後入試」のポイントとしては、①入試科目が算数と国語(または算数のみ)のところが多い、②同じ中学校であれば「午前入試」のほうが合格しやすい傾向にある、③受験チャンスが増えるメリットと心身の疲労のリスクを慎重に考える、の3点があります。

これらのポイントから、4科目(国算理社)または3科目(国算理)の受験勉強を進めてきた受験生と2科目(国算)に絞って受験勉強を進めてきた受験生とで、「午後入試」の考え方が異なってくると思います。4科目・3科目の受験勉強を進めてきた受験生は、「午前入試」の学校では4科目・3科目の入試を受験する前提だと思います。今まで、4科目や3科目で受験をしてきた模試やプレテスト直後の受験生ご本人の体調を見て、受験会場への移動もあわせて、その2・3時間後に「午後入試」で実力を発揮できる体調にあるか、翌日にも「午前入試」を控える場合、翌日の入試までに体調を整えることが可能か、慎重な検討が必要です。

他方、2科目の受験勉強を進めた受験生にとっては、「午前入試」は4科目・3科目の受験生よりも入試時間は短く、「午前入試」・「午後入試」の中学校が自宅から近いのであれば、「午前入試」後にいったん帰宅をして、食事や休息をとってから「午後入試」に向かうことも可能です。そのため、4科目・3科目の受験生より、2科目受験生は「午後入試」を無理なく活用しやすいとも言えます。もっとも、2科目入試であっても、入試本番ということもあり、模試やプレテストでは経験をしなかったような緊張や疲労を感じるかもしれません。自宅からの学校や入試会場への所要時間や交通アクセス、入試難易度や問題傾向などを確認して、無理のない範囲で「午後入試」という選択肢を検討してください。

<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>