2022/01/11

関東関西有名中学入試分析【入試直前ファイナルチェック その②】

入試直前ファイナルチェックその①では全体概況と理科社会についてお話してきました。こちらの「その」では主要科目である、算数・国語についてより詳しくアドバイスしていきます。

チェックポイント3 算数・国語の入試直前期勉強法

 「チェックポイント1」で、私は「思考力や計算力、情報処理の力が問われる算数や、文章読解力や文章読解の前提ともなる語彙力が求められる国語は短期間での学習効果には個人差が大きく、入試直前期に短期集中で学習を進めても思うように得点力が伸びないケースもあります」と述べました。しかし、算数と国語は中学入試の基軸となる科目ですし、算数・国語の2科目入試の受験生にとっては算数・国語のみの受験勉強です。算数・国語の入試直前期勉強法について、両科目に共通するポイントと算数、国語、それぞれ独自のポイントを述べていきたいと思います。

算数・国語の共通ポイント:制限時間内に解き進める演習を

 理科・社会と比べて、中学入試の算数・国語に共通するのは「制限時間との勝負」という側面が強いことです。つまり算数・国語は、入試の制限時間内に手をつけることができない問題が残ってしまうことがあり、本来であれば正解できた問題を白紙解答としてしまい得点できず、それが合否に影響してしまった、ということが起こりうる可能性がある科目である、ということです。

 解ける問題・解けない問題は別として、入試問題の全ての設問に手をつけることができるようにするには、制限時間内に解き進める練習を進めること、解ける問題と解けない問題の"取捨選択"の練習も進めることが、入試本番までに必要となります。

そのための練習は入試問題の過去問演習になります。入試本番と同じ制限時間内に、もしも同じ制限時間内であれば安定的に合格最低点以上の得点率を出せている場合は入試本番よりも5分から8分短い制限時間内で、焦りながらも、高い集中力を保ちながら「速く」、「正確に」解き進める練習を進めます。

もっとも、このような算数・国語の過去問演習は受験生にとっては、体力的にも、精神的にも、1回進めただけでも大きな負担となります。算数・国語、合わせて1日1回分を原則として、土曜日・日曜日など、午前中から時間がある場合、十分な休息時間がとれる場合に限り、2科目受験生や理科・社会に比べて算数・国語の入試配点が高いのであれば、午前と午後の1日2回分進めることも考えていいでしょう。

算数単独のポイント:過去問、模試、プレテストから重点学習単元を確認し対策を

 「算数独自のポイント」と書きましたが、これは国語との違いとしてであり、実は理科・社会と同じ考えに基づいたポイントとなります。つまり、入試過去問や模試、(近畿圏の中学受験生の場合は)プレテストの単元別・項目別の得点状況や受験生の得点状況を確認し、解法の再学習や問題演習を重点的に進める単元・項目を決めて、それらを実施する学習が、"制限時間内過去問演習"と並ぶ、入試直前期の算数学習の柱となります。

 算数は2つの要素からなる科目です。1つ目の要素は、たし算、ひき算、かけ算、わり算、分数、小数、約分、通分など、基本となる公式やきまりを習ったうえで、それらを使い、解き方を考え計算をしていく要素です。2つ目の要素は、和差算、つるかめ算、倍数算、速さ・距離の関する問題、図形の相似など、特定の単元や項目をテーマ別に学習し習得していく要素です。

1つ目の要素を強化していく学習の中心は計算問題であり、計算問題の練習は入試直前期の今を含めて、中学受験をする、しないにかかわらず、小学生のみなさんは常に計算問題の練習をされています。他方、2つ目の要素を強化していく学習は単元・項目の公式や解法を習い、その単元・項目の問題を集中的に解き進めていくことです。もちろん、受験生のみなさんそれぞれによって、得意とする単元・項目、苦手とする単元・項目は違ってくるでしょう。

入試直前期であるこの時期には、苦手とする単元・項目をひたすら強化していくというのではなく、以下のポイントに基づき、再学習や問題演習を多く進める単元・項目を決めていきましょう。

入試直前期_チェックポイント.png

①と➁は、チェックポイント2のコラムでも述べた通り、過去問題集の傾向と対策のページや過去問演習の答案用紙・出題項目表、今までに受験をした模試、プレテストの成績表にある単元・項目欄と受験生全体の正解率を分析して、強化学習をする単元・テーマを決めていきましょう。③については、受験生が既に苦手意識で凝り固まってしまっているテーマの学習を強いても、その労力や精神的疲労が大きくなりがちであり、むしろ、苦手意識はあまり感じないけれども、問題の正解率はいまひとつ、という単元・項目の学習のほうが受験生の精神的負担も軽く、得点力向上にもつながりやすいです。④については、目的はあくまでも受験合格であり、合格に必要な得点をとることです。算数の満点が目的ではなく、解ける問題やよく出る問題を確実に得点して、解けない問題は深追いをせずに捨てるために、難問・奇問ではなく基本問題と志望校入試と似た問題の演習を進めてください。

国語独自のポイント:文章ジャンルと出題・解答形式に慣れるための演習を

 中学入試の算数・理科・社会が特定の単元・項目の学習を積み上げていきながら、入試問題でも個々の単元・項目が問われることが多いのに対して、中学入試の国語は文章を読み、その文章にまつわる設問を解いていく、読解力を基軸として、文章力と設問に対する情報処理力が中心に問われる科目です。特定の学習単元や学習項目に関する知識や理解の示すというよりは、今まで知らないことを含めたテーマや内容の文章をその場で読み、設問の指示に合った解答を選ぶ、作成することが求められます。

 入試直前期の学習も、特定の単元・項目の学習や演習が中心となる他科目と比べて、国語は先に述べた制限時間内演習と文章ジャンル、出題形式、解答形式に慣れる練習がポイントとなります。

 中学入試の国語の「文章ジャンル」というのは、いわゆる説明文、物語文(小説)、随筆、詩、短歌・俳句、古文などの文章形式のことです。中学入試の国語においては、説明文と物語文の両方が出題されるケースが多いのですが、説明文のみの出題、物語文のみの出題、詩や短歌・俳句も出題など、中学校によって、文章ジャンルの出題傾向に特徴がある場合があります。例えば、国語では過去10年以上、説明文は出題せずに、比較的長め物語文に基づく問題を出題している麻布中(東京都港区)を第一志望校とする受験生の場合、麻布中の国語過去問はもちろん、長め物語文に基づく読解問題を使った演習が入試直前期の国語学習の中心となります。

 中学入試の国語における出題形式、解答形式というのは、記号選択問題、空所補充問題、語句の記述問題、文章の記述問題、(作文・小論文を含めた)論述問題など、出題の設問の形式と解答の方法や内容の形式のことです。当然ながら、志望校の出題形式や解答形式に合わせた過去問演習が、入試直前期の国語学習では重要になります。

先に述べた麻布中の国語入試問題では、漢字の書きとり問題以外は全ての設問で、文章で答えさせる記述問題が出題されています。他方、慶應義塾中等部の国語入試問題では、漢字の書きとり問題以外は記号で答えさせる問題が中心となっています。麻布中を志望校とする場合は、国語学習においては文章を書く記述問題を中心に、慶應義塾中等部を志望校とする場合は記号選択問題を中心にした問題演習が効果的と言えます。

解答形式と関係しますが、国語の過去問演習や問題集演習を進める際、特に文章を書く記述問題や論述問題を含んだ問題演習となる際、その解答は必ず、入試本番と同じ原寸大でコピーをした解答用紙に書き込んでください。記述問題や論述問題のなかには「〇〇字以内で答えなさい」と字数制限があるものと、特に字数制限は示されないものがあります。字数制限がある場合は解答用紙以外でも、原稿用紙などのマス目のあるものであれば、指示された字数以内の解答文を書くことは可能ですが、字数制限がない場合は、本当に自由な字数で書いていいのではなく、解答用紙にある解答欄の行数や大きさに合わせた文章を書く必要があります。一般的に、記述問題や論述問題で、その設問の配点の満点をとるためには、その解答欄の7割から8割以上の解答文を書くことが前提条件になります。記述問題や論述問題の解答欄は、満点となる解答文に含むことを入試問題作成者が求める条件とする語句や表現の量を踏まえて作られます。解答欄の7割未満の解答文の場合、出題者が求める、つまり採点基準ともする語句や表現が何かしら不足していると考えて構いません。

字数制限のない文章記述問題や論述問題で「過不足のない」解答文を書くには、実際の解答欄の行数や大きさにあてはめる練習を日ごろから進める必要があります。このことは国語のみならず、理科や社会の記述問題、論述問題の演習にも言えることですが、入試過去問題集にある解答用紙を、入試本番と同じ原寸大でコピーをして、そこに書き込んでいきましょう。それのことを積み重ねることにより、記述問題や論述問題で満点のために「過不足のない」解答文を考える意識が育まれていくはずです。

 

 今回のコラムで今年、中学入試に挑む小6生のみなさんと保護者様に向けた内容は最後となります。受験生のみなさんが体調を整えながらも受験勉強を進め、それぞれの第一志望校の合格を勝ち取られることを心から祈っています。

<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>