2025/09/08
関東関西有名中学入試分析【中学入試 過去問の取り組み方】
中学受験を目指す小6生にとっては志望校や併願受験予定校が決まる時期となりました。既に志望校の入試問題に類似した模試や中学校主催のプレテスト(近畿圏)を受験された方もいらっしゃるかと思います。
これからの時期、志望校や併願受験予定校の入試過去問題(過去問)を本格的に解いていく時期になります。今回は小6生の秋季から年末年始にかけての時期の過去問の使い方や活用法について、述べていきたいと思います。
INDEX ■過去問の活用法 その1 過去問の集め方 |
■過去問の活用法 その1 過去問の集め方
中学入試の過去問題は、中学校自身が配布をしていたり、入試説明会等で販売されていたり、学校ホームページ上からダウンロードができたりする場合があります。しかし、掲載年数が少ないケースが多く、模範解答のみの記載で解説がなかったりして、近年では国語の読解問題が著作権許諾の問題で掲載されていないケースが多いなど、自宅学習で使うには使いにくいものもあります。したがって、書店などで販売をされている、出版社が編集、解答作成、販売をしている過去問題集を使うのが一般的です。首都圏では声の教育社や東京学参、近畿圏では英俊社などの出版社が中学入試の過去問題集を販売しています。
市販をされている中学入試過去問集めは、中学校によって掲載されている年数や回数が異なります。過去10年分前後掲載されている中学校もあれば、2年分、3年分程度の掲載となっている中学校もあります。複数回入試を実施している中学校の場合、過去問集に掲載をされていない回がある場合もあります。
「古い過去問も解く必要はありますか?」という相談は入試時期が迫ってくると、多くの受験生の保護者の方がお尋ねになります。
麻布中や武蔵中(いずれも東京都)など、毎年個性的な出題形式や論述問題を課す一部の中学校を志望校とする場合は、独特な入試問題に慣れるために、古いものも含めて多くの過去問を解き進めることも有効です。その場合は、過去問題集を販売している出版社が現行版の過去問とは別に提供をしている(古い)過去問提供のサービスやAmazonやブックオフ(古本)などのインターネット通信販売で出品されている、古い年度の過去問集を購入するなどの方法があります。
しかし、オーソドックスな入試出題傾向の中学校を受験予定の場合は、現在市販をされている過去問集ベースで十分です。過去問集に掲載されていない回の過去問は、中学校自身が配布・販売をしているものを使うことも可能ですし、併願受験校や第一志望校と入試傾向の似通っている中学校の過去問も解き進めることで、演習量はかなりのものとなるはずです。やみくもに過去問を集めるのではなく、今から入試本番までの残された日数と過去問を解くことができる日数・回数から逆算をして、過不足のない数量の過去問を準備していきましょう。
■過去問の活用法 その2 問題・解答用紙ともコピーを使う 制限時間を設ける
過去問はただの問題集ではありません。合格のための戦略を考え、戦術を鍛えるための、入試直前期において最も重要なツールとして使うものです。過去問を解き進める目的は以下の3点です。
➊入試問題の形式や傾向を把握する。
➋志望校入試の出やすいところや現在の学習課題を明確にする。
➌制限時間内に正確に解き終わる技術や"体内時計"を身につける。
3点の中で、秋期から入試直前期において特に重要となるのが➌です。そのために過去問も"実戦的"な使い方が必要となります。
- 問題用紙・解答用紙ともコピーをして使う
過去問の問題用紙や解答用紙はコピーをとり、そのコピーに書き込んでいきながら進めていきましょう。過去問は1回解いて終わりではなく、2回目・3回目と解き直すことや復習に使うことがあり得ます。国語の場合は問題文に線や印をつけたり、算数の場合は余白に計算をしたり、図形問題に補助線や書き込みを入れたり、そのような鉛筆を使った作業は、書き込みのない、まっさらな問題用紙で進めることが重要です。
解答用紙は入試本番と同じ原寸大の大きさで印刷をして下さい。特に記述問題や論述問題で、字数条件がない問題を解くにあたって、出題者が求める条件を揃えた、過不足のない解答文を書くには、入試本番と同じ解答欄の大きさに纏め上げる練習を積み重ねる必要があります。
字数制限のある国語や社会の記述問題や論述問題において、その問題における配点で高得点をとるためには、最低でも制限字数の7割以上の字数の解答文を書くことが必要であると、私は指導をしています(例:「100字以内で書きなさい。」という問題の場合は70字以上の文章を書く)。字数制限のない問題であっても、解答欄の7割以上のスペースを埋めることを意識して、記述問題や論述問題に取り組みましょう。
- 制限時間を設定して取り組む
入試では、科目ごとに制限時間が設定されます。いくら実力を身につけても、問題を解く時間や解答文を書く時間が遅いと、解答用紙に書き込む時間が足りなくて「時間終了」となってしまいます。模試やプレテストでも、同じような「時間終了」という経験をした場合、入試本番で同じことにならないように、制限時間内に解答を書き終えることができるように、正確さを保ちながらも、よりすばやく問題を解き進める「技術」を身につけましょう。入試の制限時間内に仕上がる"体内時計"をつくりあげていくことが、小6生の秋期以降の大きなポイントとなります。
制限時間を設けての過去問演習のポイントですが、以下の3点になります。
➊いつから実施するのか?(実施開始時期)
➋どの曜日・時間帯に実施するのか?
➌その他のポイント
➊の実施開始時期ですが、模試における志望校の合格可能性の判定が50%以上であれば、今からでも実施をして大丈夫です。他方、合格可能性の判定が50%未満であれば、各教科のなかで、過去問を進めるにあって、まだ学習や復習が必要な単元や項目があると考えられます。とはいえ、遅くとも12月には過去問演習に着手する必要があり、いつから過去問演習を開始し、それまでにどの単元や項目を授業で強化をしていくのか、塾の先生と相談を進めて下さい。
➋の実施曜日や時間帯ですが、入試自体が午前中や日中に実施されること、集中力や思考力が高い時間帯に過去問演習も進めるべきことを考えて、土曜日や日曜日、祝祭日、学校の振り替え休日に進めることをお勧めいたします。
もっとも、秋期の土・日・祝日には模試や(近畿圏では)プレテストが実施されることも多く、それらも制限時間の中で解くものですから、模試やプレテストも過去問演習の一環と考えながら、「どの中学校の何年度の問題をいつ解くか」のスケジュールを決めてきましょう。
➌制限時間を設けた過去問演習のその他のポイントとして、以下が挙げられます。
・国語 算数 理科 社会 (英語) どの教科を進めるのか? 全教科とも進めるか?
・制限時間は入試本番と同じ時間内でいいのか?
模試を解く際、「時間が足りなかった」と思う科目はありますか?長文読解や(記述問題や論述問題の)文章作成が必要な国語や計算力、筆算の必要な算数で、制限時間内にすべての問題を解き進めることができない、ということがよくあります。もっとも、理科や社会でも、長文を読ませたり、記述問題や論述問題、理科の計算問題で解答に時間がかかる問題を出題する中学校もありますが、理科・社会とも、時間のかかる問題は国語力(文章読解力と記述力)と算数力が関係するものです。
この後は国語を例にして、制限時間内の過去問演習の進め方を、制限時間の設定方法も含めて、具体的に説明をしていきたいと思います。
■国語を例にした過去問演習の方法
①国語が苦手なら、過去問の前に「読み方」と「解き方」を身につけることからスタート
②入試本番と同じ制限時間で解き、得点率が安定しているなら5分から10分短く解く
③志望校独特の問題対策は過去問演習と別に対策も進める。
①国語が苦手なら「読み方」と「解き方」を丁寧に身につけることからスタート
国語の中学入試問題の中核は文章読解です。文章読解問題の「読み方」と「解き方」が身についていないまま制限時間内に過去問を解いても、時間が足りない、仮に時間が足りたとしても、直感で解いた問題が多く、得点率が低い、ということになりがちです。
直近で受験をした模試の国語の時間が足りず、大問3つ以上の設問が白紙のまま解答することができなかったり、そもそも、読解問題の「読み方」や「解き方」を習っていない場合は、いきなり制限時間を設けた過去問演習を進めることはせず、まずは塾の授業で「読み方」や「解き方」を習い、身につけていきましょう。そして、1か月先ぐらいの模試で制限時間内に解けるための解法学習と演習を進め、 その模試の国語問題が制限時間内に解けるようになれば、国語担当講師と相談して、過去問演習のスタート時期を決めていきましょう。
②入試本番と同じ制限時間で解き、得点率が安定したなら5分から10分短い時間で解く
国語を苦手としている受験生は①のステップを踏んでから、国語が得意、または国語が得意という意識はなくても模試では制限時間内に解けていて、模試での国語の偏差値も安定している場合は第一志望校や併願校、第一志望校と入試のレベルや作問が似ている学校の過去問を、入試本番と同じ制限時間のもとで解いていきましょう。
新しい過去問から?古い過去問から?など、過去問を解く年度の順番についてですが、国語に限らず、第一志望校の直近4回分は入試直前時に解くために残して、それら以外過去問について、
➊受験は考えていないが第一志望校と問題のつくりが類似し、かつ合格偏差値も近い学校の過去問(できれば国語の制限時間が第一志望校と同じ問題)→➋志望順位の低い順番で受験予定校の過去問→➌第一志望校の過去問 の順番で進めるといいでしょう。
いずれも古い問題(ただし、第一志望校以外は過去5年以内のもの)から解き進めていきましょう。過去問を解く曜日ですが、前述の通り学校の授業のない、土日や休日の午前中が理想です。ただし、秋から冬休みにかけての土日や休日には模試やプレテストが実施されることが多く、模試やプレテストに参加をする日は、帰宅後、休息を入れてから、夕食後の時間帯に進めるということも考えていきましょう。ちなみに、夕食までの時間帯には模試やプレテストの間違え確認や復習を進めて下さい。
入試本番と同じ制限時間内で過去問を解きますが、演習量をこなしていくうちに、入試と同じ制限時間内に解き終えることができ、かつ自己採点でも入試本番の合格最低点(の割合)を、余裕をもって超えることができるようになれば、入試本番の制限時間より5分または10分短く設定をして、または自宅ではなく、塾の自習室など、入試本番により近い環境のもとで引き続き過去問演習を進めましょう。
③志望校独特の問題対策は過去問演習と別に対策を
中学受験の国語入試問題では、説明文や小説などを読んで設問に答える問題を中心に、漢字や熟語、ことわざ、文法の知識を問う問題もどの中学校でも出題されます。他方、近年では、作文や小論文の形式の問題も国語の入試のなかで出題されることも増えてきました。
例題1:
もしあなたが極限の状況で「国を選ぶか、友を選ぶか」の選択に迫られた時は、どちらを選びますか?その理由とともに答えなさい。(神奈川県 女子校)
例題2:
あなたが図書館の館長となった場合、小学生や中学生の子どもたちに多くの本を読んでもらうためにどのようなことを進めたらいいか、考えつくことを書きなさい。(東京都 男子校)
例題3:
あなたがこれまでに誰か(何か)に出会って、自分では気付かなかった自分自身の一面を発見して変わった経験を、具体的に書きなさい。(神奈川県 共学校)
※各例題とも、設問文を一部改変しています。
これらの例題は中学入試国語の問題の設問のひとつとして出題されたものです。テーマについて、具体例も示しながら、自分の考えを論証的に説明していく小論文とも言える問題です。中学校によっては毎年のように小論文型の設問も出題をしているところもあり、出題の確認をする点でも過去問の分析や研究は極めて重要です。
このような小論文問題など、一般的な国語入試問題とは異なる問題が志望校で出題をされている場合、該当するような問題の解き方、すなわち小論文の書き方を習っていないのであれば、過去問演習では、このような問題は飛ばして解き進めてください。そのうえで、小論文や作文など、塾などで解き方を習い、問題演習を重ねてから、過去問演習でも解くようにしていきましょう。
国語をベースにして、制限時間を設けた過去問演習のポイントを説明してきましたが、算数の過去問演習の進め方も、基本的には国語と同様です。つまり、
1.算数各単元の「解き方」が身についているか確認をする。「解き方」が身についていない単元があれば、過去問演習に入る前に、速やかに「解き方」を習い、問題演習で定着を図る。
2.入試本番と同じ制限時間での過去問演習を進める。学校授業のない土日や休日の午前中を中心に。
3.志望校独特の出題形式があれば、過去問演習とは別個の対策を。算数の場合は途中式や文章説明も書かせる問題や図やグラフを作成させる問題など。
これらのポイントに留意をしながら、過去問演習や入試対策を進めていきましょう。
今回は「中学受験 過去問の取り組み方」と題して、過去問の使い方や活用法について述べてきました。過去問は単なる問題集ではなく、志望校合格のための「案内図」、「ナビゲーター」とも言えるものです。過去問を解き、確認をしていくことで「(志望校)合格への道しるべ」を確認し、無理なく、かつ効果的に受験勉強を進めていきましょう。
<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>