2022/10/17

関東関西有名中学入試分析 【有名私立大学系列校 中学受験or高校受験 どちらを選ぶ?】

 中学受験を目指す皆さん、志望校は決まっていますか?皆さんのなかには、私立大学への進学を前提として、大学の附属校や系列校、もしくは特定の大学への進学を保証しているコースのある中学校を目指している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 先日、私の中学受験に関するコラムをお読みになっている小学生の保護者の方から、大学附属校の中学校や高校に関するご相談のメールをいただきました。ある私立大学への進学を希望するにあたり、その大学への進学を前提としている系列中学校の受験と、公立中学に進学をしてから、高校入試でその大学の系列高校を受験するのと、どちらがいいでしょうか、という趣旨のご相談でした。

 早慶(早稲田大学、慶應義塾大学)や関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)などの有名私立大学の多くが、その大学への進学を前提とした一貫教育を行う附属もしくは系列の中学校、高校を設置しています。中学校も高校もあるところが多いのですが、国際基督教大学(東京都三鷹市)のように大学系列校が高校のみのところや中高とも設置されている大学附属校・系列校のなかでも、中学の募集のない高校単独校もあったり、募集定員の総数が中学より高校のほうが多かったりするケースもあります。進学希望の私立大学の場合、附属校や系列校は中学受験よりも高校受験で目指したほうがいいのではないか、と考える方もいるでしょう。

 「中学からのほうがいい」か「高校からのほうがいい」は、受験生ご本人やご家族の状況、受験検討先の中学や高校、最終的な進学先として希望する大学など、様々な要因から検討をして個々に判断をされるべきものです。今回のコラムでは、このような大学一貫教育校の中学受験もしくは高校受験に関して、首都圏と関西圏の違いも踏まえて述べていきたいと思います。中学受験か高校受験かを考えている方の参考になれば幸いです。

私立 中学入試・高校入試 首都圏と関西圏の違い

 私立大学一貫教育校に限ったことではありませんが、私立の中学入試や高校入試において、首都圏と関西圏では入試の形態や試験科目などでいくつか違いが見られます。今回は難関とされる私立大学(早慶、関関同立、MARCH〔明治大学、青山学院大学、中央大学、立教大学、法政大学〕)の附属・系列の中学、高校にあてはまる傾向を中心に、ポイントを述べていきたいと思います。

【大学系列校 中学入試】

入試形態 首都圏は教科型一般入試中心 関西圏は自己推薦入試もある場合

中学入試の基本形態は国語や算数などの学力筆記試験に基づく一般入試です。他方、首都圏や関西圏の一部私立中学では小学校(通知表)や中学入試向けの模擬試験の成績、受験生自身の課外活動歴、英検などの資格試験歴などを出願基準とした自己推薦入試や出願基準は問われないAO入試も実施をしています。

大学系列校の中学入試に的を絞ると、首都圏ではほとんどの中学校が一般入試のみを実施しています。海外在住経験のある帰国生入試を別日程、もしくは一般入試と同日に実施をする中学校もありますが、英語や算数などの学力試験を課すケースがほとんどです。

例えば、立教池袋中学校(東京都豊島区・男子校)は、第1回入試(2022年は2月2日実施)では国語、算数、理科、社会の4教科による一般入試を実施する一方、第2回入試ではAO入試を実施しています。このAO入試は小学校の成績等の出願条件はなく、国語と算数の学力試験と自己アピール面接(スポーツ・芸術や英語を代表とする語学等、受験生自身の特技や経験をアピールする面接)に基づき合否を決定しています。

他方、関西圏の大学系列校の中学入試の場合、首都圏同様に学力一般入試が中心には変わりありませんが、一部の中学校は、中学校が示した成績等の基準を満たした受験生のみが受験可能な自己推薦入試も取り入れています。例えば、同志社女子中学校(京都市上京区)は学力一般入試とは別に自己推薦入試も実施していますが、この推薦入試は、小学校の成績(調査書)や中学受験用の模擬試験(五ツ木・駸々堂テスト)の6年生時の成績などを基準として、中学校側が受験資格として認めた受験生のみが出願できる入試です。

試験科目 首都圏は4科目中心 関西圏は4科目・3科目選択中心も2科目入試も有

大学系列中学の一般入試の試験科目ですが、首都圏では4科目(国語、算数、理科、社会)、関西圏では首都圏と同じ4科目もしくは3科目(国語、算数、理科)の選択というケースがほとんどになります。首都圏、関西圏とも、国語・算数の2科目入試を実施している大学系列中学校も一部にはありますが、例えば、早稲田大、慶應義塾大の系列の首都圏にある系列中学校は原則的に4科目入試のみです(注:慶應義塾湘南藤沢中等部〔神奈川県藤沢市〕は4科目入試に代えて国語、算数、英語の3科目入試の選択も可能。英語入試問題の難易度は英検準1級程度)。

関西圏の場合、関西大系列の中学校(関西大第一中、関西大北陽中)、立命館大系列・協定校の中学校(立命館守山中、平安女学院中など)、関西学院大の協定校(帝塚山学院中など)に2科目入試の日程がある場合がありますが、2023年入試から同志社中学校(京都市左京区・男女共学)が従来の4科目・3科目選択型入試から2科目(国語・算数)入試のみに移行します。

一般入試日程 首都圏・関西圏とも、複数校併願可能な大学系列あり

大学系列に限らず、首都圏でも関西圏でも、入試日や入試実施の時間帯の異なる場合(午前入試・午後入試)、複数の私立中学校を併願受験することが可能です。特定の大学(系列校)にこだわる場合、試験日の異なる中学校を複数受験することはよくあります。

 例えば、慶應義塾大学の系列中学校の2022年の場合、2月1日に慶應義塾普通部(横浜市港北区・男子校)、2月2日に慶應義塾湘南藤沢中等部(神奈川県藤沢市・男女共学)、2月3日に慶應義塾中等部(東京都港区・男女共学)、それぞれ試験日が重ならない形で入試を実施しました。同志社大学の系列中学校の2022年の場合、1月16日には同志社中、同志社女子中、同志社香里中(大阪府寝屋川市・男女共学)の3校が入試を実施しますが、同志社女子中は1月17日にも、同志社香里中は1月18日にも、それぞれ入試を実施しました。同志社国際中(京都府京田辺市・男女共学)は帰国生対象の入試が中心になりますが、一般生の入試も1月19日に実施されました。慶應義塾大系の中学校の場合、男子は最大3校受験が可能です。他方、同志社大系の中学校の場合、女子は最大4回、受験のチャンスがあります。

プレテスト 関西圏:関関同立系でも実施校あり(首都圏にはなし)

中学入試におけるプレテストとは、私立中学校自身が実施をする中学入試の模試のことです。首都圏ではプレテストを実施している中学校はありませんが(入試過去問の練習会を実施する中学校はあります)、関西圏では多くの私立中学校がプレテストを実施しています。関関同立の系列校や協定校の中学校の場合、関西大(関西大北陽中)や立命館大(立命館守山中)の系列校、関西学院大(帝塚山学院中、賢明学院中)や立命館大(平安女学院中、育英西中など)の協定校でプレテストを実施している中学校があります。一般入試において、受験校のプレテスト受験経験が出願要件となることはありませんが、自己推薦入試も実施する中学校の場合、自己推薦入試の出願にあたって、受験校のプレテストの成績が出願要件となっているケースもあります。

男女別 首都圏:男子校・男子定員多い学校が多い 関西圏:提携校に女子校もあり

太平洋戦争以前、日本の(旧制)大学は国公立も私立も、原則男性のみが通っていた男子校でした。そのこともあり、大学系列校も男子校として創設されたところが多く、中学校・高校とも、今も男子校の学校も少なくありません(慶應義塾普通部、早稲田大学高等学院中学部、立教池袋中、立教新座中など)。

男子校から共学化された大学系列校の場合、男子・女子の入学定員は、男女ほぼど同数のところもありますが、教育設備等の関係や系列の小学校からの入学者数とのバランスから、女子よりも男子のほうが多い学校を、特に首都圏でいくつか見られます(慶應義塾中等部、早稲田実業中、明治大明治中、法政大第二中など)。関西圏の場合、関関同立系に関しては、男子校前身校は全てが男女共学校になりました(関西学院中、同志社香里中、立命館中など)。男女の入学定員は、関西学院中(兵庫県西宮市)は男子のほうが多く設定されていますが、関関同立系のほとんどの共学の中学校は男女同数の募集定員、もしくは男女ほぼ同数の入学者となるようになっています。

【大学一貫校高校入試】

入試形態 首都圏も関西圏も一般入試と推薦入試の二本立て中心

私立高校入試は、学力筆記試験を中心とする一般入試と中学校の成績(内申書)や課外活動歴、資格などを総合的に判断して合否を決める推薦入試の2つに区分されます。大学系列の高校も、多くの学校が一般入試と推薦入試の二本立ての入試を実施しています。

 公立高校入試の場合は一般入試当日の学力試験の点数と中学校の内申点を合計したうえで合否を決めることが一般的ですが、難関大学の系列高校の一般入試は学力試験の点数だけで合否を決めるケースが大半です。高校によっては面接試験の評価や英検などの外部試験を点数化して加点をするところなどもありますが、内申書や通知表は参考程度とするところがほとんどです(ただし、中学校欠席日数が多い場合は注意)。

 推薦入試は高校ごとで異なる中学校成績要件(内申点)をクリアしたうえで、生徒会などの校内活動、部活動やスポーツなどの課外活動、特技や資格などで顕著な実績をもつ中学生を、提出書類や面接、作文などで合否を決める入試方式です。例えば、早稲田実業高(東京都国分寺市・男女共学)や慶應義塾高(横浜市港北区・男子校)は高校野球の強豪校としても知られ、プロ野球選手も多数輩出をしていますが、野球の実力があっても推薦入試や一般入試でも合格できず、結果として甲子園常連校として知られる他の野球強豪校に進学をした受験生のケースもあります。

試験科目 首都圏は3科目中心 関西圏は5科目中心も3科目(日程)のある学校も

公立高校の入試科目は、どの都道府県も5科目(国語、社会、数学、理科、英語)を原則としています。他方、私立高校の一般入試科目は、地域によっては5科目のところもあれば、3科目(国語、数学、英語)中心のところもあります。

首都圏の私立高校入試は、開成高(東京都荒川区)や渋谷教育学園幕張高(千葉市美浜区)などの一部の進学校が5科目入試を実施しているのを除き、3科目入試が基本となっています。早慶・MARCHの大学系列の高校も、3科目入試が基本です。他方、関西圏の高校入試は学校や入試日、専願・併願などの出願方式により、5科目入試の場合もあれば3科目入試の場合もあります〔進学校として知られる灘高校(神戸市東灘区)は国語、数学、理科、英語の4科目入試〕。関関同立系列の高校の一般入試では、同志社高(京都市左京区)、立命館高(京都府長岡京市)前期入試、関西大第一高(大阪府吹田市)など、多くの高校が5科目入試としています。他方、関西学院高(兵庫県西宮市)は3科目入試としていたり、立命館高校や立命館宇治高校(京都府宇治市)では、5科目入試の入試日とは別に、3科目入試の入試日も設定しています。

入試科目が公立高校と同じ5科目の場合、公立高校との併願としての受験生も多くなります。他方、首都圏のような3科目入試の場合、私立高校第一志望の受験生は、受験に必要な国語、数学、英語の受験勉強に専念をします。特に早稲田系、慶應系の高校入試問題の国語や英語は大学入試レベルの設問も珍しくはなく、過去問研究や難度の高い問題の演習量が必要になります。

一般入試日程と男女別 首都圏:男子は早慶系列最大7校受験可

中学入試の一般入試日程と同様に、高校入試においても、入試日が異なる場合、複数の私立高校を併願受験することが可能です。特に首都圏の場合、大学系列の高校を複数併願受験するケースは多く見かけられます。

   首都圏の場合、私立高校の一般入試実施日は都県で異なります。東京都と神奈川県は2月10日から、千葉県は1月17日から、埼玉県は1月22日から(いずれも2022年度)の入試実施となっています。埼玉県にある私立大学の系列高校早稲田大本庄高等学院〔本庄市・男女共学〕、慶應義塾志木高〔志木市・男子校〕、立教新座高〔新座市・男子校〕など)は東京都や神奈川県にある高校よりも入試日が早くなるため、埼玉県内の高校が第一志望の受験生のみならず、東京や神奈川にある高校との併願受験生も、毎年多く受験をします。

   首都圏の私立大学の系列高校群の大きな特徴として、男子校の数や男子の高校募集枠が多いということです。首都圏にある、早稲田大系列高校5校のうち2校(早稲田大高等学院、早稲田高〔早稲田高は高校入試を実施しません〕)、慶應義塾大系列4校の高校のうち2校(慶應義塾高、慶應義塾志木高)、立教大系列の2校(立教池袋高、立教新座高)は、いずれも男子校です。早慶系列の高校受験を希望する場合、首都圏在住の女子受験生は最大2校しか受験できませんが、男子受験生の場合は、一般受験生が最大4校、首都圏外在住であったり、首都圏外にある早稲田大系列の高校も含めると、最大7校、受験のチャンスがあります(【資料1参照】)

【資料1】早慶系列高校の入試日程(2022年度)

試験日 (2月) 男子 女子
7日 慶應義塾志木高(1次)  
9日 早稲田大本庄高等学院 早稲田大本庄高等学院
10日 早稲田実業高 早稲田実業高
慶應義塾高(1次) 慶應義塾女子高
11日 早稲田大高等学院  
慶應義塾志木高(2次)  
12日 慶應義塾湘南藤沢高
(全国枠・帰国枠)
慶應義塾湘南藤沢高
(全国枠・帰国枠)
13日 慶應義塾高(2次)  

 ※上記以外にも、1月8日と2月18日に早稲田佐賀高、1月23日と25日に早稲田摂陵高(両校とも男女共学)が、いずれも首都圏内で入試を実施しました。

   他方、関西圏の私立大学の系列高校の入試の場合、それらの高校の多い京都府、大阪府、兵庫県の私立高入試開始日(2月10日から)と滋賀県の私立高入試日(2月3日・4日)、奈良県の私立高入試日(2月6日・7日)の違いから、滋賀県または奈良県にある高校の受験の可能・不可能によって受験の回数が異なってきます。

例えば立命館大系列の高校は、京都府にある立命館高、立命館宇治高、滋賀県(守山市)にある立命館守山高(他に北海道に立命館慶祥高があります。いずれも男女共学)の3校、立命館大・立命館アジア太平洋大への進学を前提としたコースのある立命館学園との協定校は(関西圏の場合)、平安女学院高(京都市上京区・女子校)、育英西高(奈良市・女子校)、初芝立命館高(堺市東区・男女共学)、初芝橋本高(和歌山県橋本市・男女共学)の4校あります。京都府南部や滋賀県在住の場合、2月3日に立命館守山高、10日と12日に立命館高、立命館宇治高(両校とも10日、12日とも入試を実施)、最大計3回受験することが可能です。

 有名私立大学系列校 中学受験と高校受験 どちらがいいの?

  今まで有名私立大学系列校の中学入試と高校入試の特徴やポイントを述べてきました。中学受験と高校受験のどちらがお勧めか?は一概には言えないところがあります。社会や理科が得意であれば中学受験が、英語を活かしたいのであれば高校入試が、首都圏在住の男の子であれば高校受験でもチャンスが多い、などとも言えますが、最も重要なのは受験生となるご本人の、受験に対する意欲と覚悟だと思います。

受験をするお子さまご本人が、小学生(4年生ぐらいまで)の段階で、中学受験に意欲があり、受験勉強に取り組む決意と覚悟があるならば、中学受験をチャレンジされるべきだと思います。一方で、保護者の方としては中学受験に意欲的であっても、受験をするお子さまご本人の受験意欲が高くないのであれば、中学受験の勉強を急かすことはするべきではないと思います。中学受験も高校受験も、もちろん大学受験も、早慶や関関同立などの人気私立大学やその系列校の入試は易しいものではありません。受験生それぞれに、程度の差こそあれ「受験勉強」が必ず必要になります。その「受験勉強」を進める意欲と覚悟がある時期に、直近にある受験に挑むのが最短かつ最良の道だと考えます。決して焦る必要はなく、しかし、気になる中学校・高校・大学が出てきた時には、その学校を調べたり、学校行事やイベントでその学校や大学を体感してみてください。その体験や体感が、志望校受験への重要かつ欠かせないステップとなります。

<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>