2022/12/12

関東関西有名中学入試分析 「入試直前ファイナルチェック」

 中学受験を控えた小6生・保護者のみなさん、入試本番まで残りわずかとなりました。受験生のなかにはすでに「前受験」の学校の入試を受けられた方もいらっしゃるかもしれません。"志望校合格"のための入試直前ファイナルチェックとして、入試直前期のポイントを述べていきたいと思います。

▼index

チェックポイント1 入試配点と直前勝負ポイントを確認する

チェックポイント2 理科・社会の入試直前期勉強法

チェックポイント3 算数・国語の入試直前期勉強法

算数・国語の共通ポイント:制限時間内に解き進める演習を
 
算数単独のポイント:過去問、模試、プレテストから重点学習単元を確認し対策を
 
国語独自のポイント:文章ジャンルと出題・解答形式に慣れるための演習を

 

チェックポイント1 入試配点と直前勝負ポイントを確認する

 あなたの入試科目数は何科目ですか?4科目、3科目、2科目、もしかしたら1科目という受験生もいらっしゃるかもしれません。それぞれ、入試に必要な各科目の学習を進めていく必要がありますが、入試直前期の追い込み学習では、受験に必要な各科目をまんべんなく進めることも必要です。しかし、より重要なのは、短期間で得点力が伸びやすく、「伸びしろ」が大きい科目や単元の学習を強化して、少しでも得点を上げるという方針で受験勉強を進めていき、合格最低点を越えることです。その学習方針の前提として確認をして欲しいのが、入試の科目と配点です。

【資料1】 中学入試の科目配点例

学校例

算数配点

国語配点

理科配点

社会配点

A中学

100点

100点

100点

100点

B中学

100点

100点

50点

50点

C中学

100点

100点

100点

(試験なし)

D中学

100点

100点

(試験なし)

(試験なし)

 【資料1】に中学入試の科目配点の例を示しました。A中学とB中学は4科目入試、C中学は近畿地方ではよく見られる算数・国語・理科の3科目入試、D中学は算数・国語の2科目入試です。同じ4科目入試でも、A中学とB中学とでは理科、社会の配点が異なります。A中学は理科、社会の配点が国語、算数と同じ(均等)なのに対して、B中学は算数・国語の配点が理科・社会の2倍になります。3科目入試のC中学は理科の配点が算数・国語と同じになります。D中学の配点は算数と国語が同じです。それぞれの中学校の入試配点から見た、入試直前期の受験勉強戦略を考えていきたいと思います。

 短期間の学習で得点力が上がりやすい科目は、一般的には社会と理科です。社会と理科(特に、植物や動物などの生物分野)は知識事項の学習が多く、理解・記憶・暗記に基づく知識項目の学習により、これまでの模試の偏差値が高くない場合でも、入試本番までに得点力を上げることができる可能性は十分にあります。

他方、思考力や計算力、情報処理の力が問われる算数や、文章読解力や文章読解の前提ともなる語彙力が求められる国語は短期間での学習効果には個人差が大きく、入試直前期に短期集中で学習を進めても思うように得点力が伸びないケースもあります。もっとも、このような理由から入試直前期に算数や国語の勉強を全く止めて理科・社会ばかりを進めるのは、算数や国語の入試問題に対する「慣れ」や「カン」をさびつかせることになりお勧めできません。4科目入試・3科目入試の受験の場合、算数・国語の演習も進めつつ、理科・社会の知識項目の総復習を入試直前期のポイントとされるといいでしょう。

 特にA中学やC中学のように理科(社会)の配点が算数・国語と同じ場合、理科・社会の学習状況、具体的には、入試過去問演習の理科・社会の得点状況から、入試直前期の受験勉強の進め方が変わってきます。

たとえば、A中学・C中学のように科目配点が100点満点として、理科・社会の入試過去問演習の得点状況が受験校の合格最低点(割合)よりもマイナス10点以上の場合、理科・社会において、受験校が求める学力水準にまだ到達していない、まだ理科・社会の勉強を強化しなければならない事項がある、と言えるでしょう。

他方、A中学・C中学の受験生で、理科・社会は合格最低点(割合)を超えている場合やB中学のように理科・社会よりも算数・国語の配点が高い場合は、理科・社会の学習も続けつつも算数・国語のなかで入試直前期に強化すべきポイントも学習しながら、バランス良く進めていくことが重要になるでしょう。D中学のような算数・国語の2科目受験の場合はもちろん、算数・国語に特化をした受験勉強となります。

理科・社会の具体的な入試直前期勉強法については「チェックポイント2」、算数・国語の勉強法については「チェックポイント3」で述べていきたいと思います。

チェックポイント2 理科・社会の入試直前期勉強法

 入試直前期の理科・社会の勉強法ですが、現在も進めている志望校の過去問演習における理科・社会の得点状況によって変わってきます。志望校入試の例年の合格最低点の割合よりも低い割合の得点率の場合と合格最低点の割合を超える高い得点率をキープできている場合で、理科・社会の学習内容は変わってきます。

志望校入試の例年の合格最低点の割合よりも低い割合の得点率の場合、理科・社会の基礎的・標準的学習事項・テーマが定着しきれていない、もしくは忘れてしまっている学習事項・テーマがあると考えられます。そのような「弱点」や「盲点」となっている学習事項・テーマを再確認するために、

受験校の過去問演習の答案用紙・出題項目表や今までに受験をした模試、プレテスト(近畿地方の受験生の場合)の成績表や答案用紙を見直して下さい。

市販をされている中学入試の過去問題集の前半部分や模試・プレテストの個人成績表には出題された問題の項目やテーマ、単元が掲載されており、個人成績表の場合は受験生ご自身の正解率や受験生平均の正解率が数値またはグラフとして載せてあるはずです。過去問の場合、例えば、受験校入試の例年の合格最低点の得点率が約70%であるとすると、理科・社会の過去問のなかで、得点率が70%を下回る項目やテーマを確認しチェックをしましょう。模試やプレテストの場合は成績表にある設問ごとの受験生全体の正解率(70%以上)が高いにもかかわらず受験生ご本人は不正解だった問題が目立つ項目やテーマをチェックしてください。

チェックをした理科・社会の項目やテーマについて、今まで学習をしてきたテキストや問題集の問題を改めて解いてみましょう。理科であれば「太陽・天体の動き」、「人や動物の器官やはたらき」、社会であれば「関東地方」、「工業地帯・工業地域」、「明治時代~大正時代」など、テキストや問題集のもくじで単元やテーマの該当ページを探し、解き進めていきます。志望校が求める学力水準にもよりますが、問題の正解率が60%を下回る場合は、その項目やテーマを授業に組み入れて強化をしていく必要もあるかと思います。

一方、理科・社会において、過去問の得点率が合格最低点を上回り、模試やプレテストも含めて、得点率が著しく低い項目やテーマが見当たらない場合は、文章を書かせる記述問題や論述問題、作図問題など、思考力や表現力、文章力が求められるタイプの問題演習を進め、仮に入試本番で、算数・国語などの他科目で実力が発揮できなかった場合でも、理科・社会の高得点でその分をカバーができるように得点力を磨いていきましょう。

【資料2】 開成中学校 2022年社会入試問題より抜粋(入試問題文・資料文は一部改変をしています)

問8 SDGs(持続可能な開発目標)で掲げられる目標の一つに「ジェンダー平等を実現しよう」というものがあります。日本でも、男女共同参画社会の実現に向けた取り組みが進められていますが、そのなかで今日、「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)」の問題が指摘されています。以下の〔資料文〕にある下線部の言動の背景には、母親に対するどのようなアンコンシャス・バイアスがあると考えられるでしょうか。解答欄に合わせて書きなさい。

〔資料文〕 アンコンシャス・バイアスは、過去の経験や見聞きしたことに影響を受けて自然に培われていくため、アンコンシャス・バイアスそのものに良し悪しはありませんが、アンコンシャス・バイアスに気づかずにいると、そこから生まれた言動が、知らず知らずのうちに、相手を傷つけたり、キャリアに影響をおよぼしたり、自分自身の可能性を狭めてしまう等、様々な影響があるため、注意が必要です。・・・(中略)・・・ 単身赴任の母親に対して「え?母親なのに単身赴任?お子さん、かわいそうね・・・」といった言動が、母親や家族を傷つけることがあるかもしれません。 (内閣府男女共同参画局「共同参画」2021年5月号より)

※解答欄:母親は「                      」というアンコンシャス・バイアス

思考力や表現力、文章力が求められるタイプの問題の例として、開成中学校(東京都荒川区)の社会の入試問題の一部を掲載しました【資料2】。

母親が単身赴任ということは、子どもは母親とは離れて、父親あるいは祖父母などの近親者など一緒に生活することが一般的には想定されます。例えば、旧来からは母親(女性)が主導的に進めるとされてきた食事の準備や洗濯の家事を、子ども自身や父親などが進めることに対する、第三者の心配が頭に浮かんで欲しいところです。

チェックポイント3 算数・国語の入試直前期勉強法

 「チェックポイント1」で、私は「思考力や計算力、情報処理の力が問われる算数や、文章読解力や文章読解の前提ともなる語彙力が求められる国語は短期間での学習効果には個人差が大きく、入試直前期に短期集中で学習を進めても思うように得点力が伸びないケースもあります」と述べました。しかし、算数と国語は中学入試の基軸となる科目ですし、算数・国語の2科目入試の受験生にとっては算数・国語のみの受験勉強です。算数・国語の入試直前期勉強法について、両科目に共通するポイントと算数、国語、それぞれ独自のポイントを述べていきたいと思います。

算数・国語の共通ポイント:制限時間内に解き進める演習を

 理科・社会と比べて、中学入試の算数・国語に共通するのは「制限時間との勝負」という側面が強いことです。つまり算数・国語は、入試の制限時間内に手をつけることができない問題が残ってしまうことがあり、本来であれば正解できた問題を白紙解答としてしまい得点できず、それが合否に影響してしまった、ということが起こりうる可能性がある科目である、ということです。

 解ける問題・解けない問題は別として、入試問題の全ての設問に手をつけることができるようにするには、制限時間内に解き進める練習を進めること、解ける問題と解けない問題の"取捨選択"の練習も進めることが、入試本番までに必要となります。

そのための練習は入試問題の過去問演習になります。入試本番と同じ制限時間内に、もしも同じ制限時間内であれば安定的に合格最低点以上の得点率を出せている場合は入試本番よりも5分から8分短い制限時間内で、焦りながらも、高い集中力を保ちながら「速く」、「正確に」解き進める練習を進めます。

もっとも、このような算数・国語の過去問演習は受験生にとっては、体力的にも、精神的にも、1回進めただけでも大きな負担となります。算数・国語、合わせて1日1回分を原則として、土曜日・日曜日など、午前中から時間がある場合、十分な休息時間がとれる場合に限り、2科目受験生や理科・社会に比べて算数・国語の入試配点が高いのであれば、午前と午後の1日2回分進めることも考えていいでしょう。

算数単独のポイント:過去問、模試、プレテストから重点学習単元を確認し対策を

 「算数独自のポイント」と書きましたが、これは国語との違いとしてであり、実は理科・社会と同じ考えに基づいたポイントとなります。つまり、入試過去問や模試、(近畿圏の中学受験生の場合は)プレテストの単元別・項目別の得点状況や受験生の得点状況を確認し、解法の再学習や問題演習を重点的に進める単元・項目を決めて、それらを実施する学習が、"制限時間内過去問演習"と並ぶ、入試直前期の算数学習の柱となります。

 算数は2つの要素からなる科目です。1つ目の要素は、たし算、ひき算、かけ算、わり算、分数、小数、約分、通分など、基本となる公式やきまりを習ったうえで、それらを使い、解き方を考え計算をしていく要素です。2つ目の要素は、和差算、つるかめ算、倍数算、速さ・距離の関する問題、図形の相似など、特定の単元や項目をテーマ別に学習し習得していく要素です。

1つ目の要素を強化していく学習の中心は計算問題であり、計算問題の練習は入試直前期の今を含めて、中学受験をする、しないにかかわらず、小学生のみなさんは常に計算問題の練習をされています。他方、2つ目の要素を強化していく学習は単元・項目の公式や解法を習い、その単元・項目の問題を集中的に解き進めていくことです。もちろん、受験生のみなさんそれぞれによって、得意とする単元・項目、苦手とする単元・項目は違ってくるでしょう。

入試直前期であるこの時期には、苦手とする単元・項目をひたすら強化していくというのではなく、以下のポイントに基づき、再学習や問題演習を多く進める単元・項目を決めていきましょう。

①:志望校の算数入試で過去によく出題される単元・項目

②:過去問演習・模試・プレテストで、他の受験生の正解率は高いが自分は苦手とする単元・項目

③:苦手意識は強く感じてはいない単元・項目

④:問題演習では難問・奇問は解かない。基本問題と志望校入試に似た問題を解き進める

①と②は、チェックポイント2のコラムでも述べた通り、過去問題集の傾向と対策のページや過去問演習の答案用紙・出題項目表、今までに受験をした模試、プレテストの成績表にある単元・項目欄と受験生全体の正解率を分析して、強化学習をする単元・テーマを決めていきましょう。③については、受験生が既に苦手意識で凝り固まってしまっているテーマの学習を強いても、その労力や精神的疲労が大きくなりがちであり、むしろ、苦手意識はあまり感じないけれども、問題の正解率はいまひとつ、という単元・項目の学習のほうが受験生の精神的負担も軽く、得点力向上にもつながりやすいです。④については、目的はあくまでも受験合格であり、合格に必要な得点をとることです。算数の満点が目的ではなく、解ける問題やよく出る問題を確実に得点して、解けない問題は深追いをせずに捨てるために、難問・奇問ではなく基本問題と志望校入試と似た問題の演習を進めてください。

国語独自のポイント:文章ジャンルと出題・解答形式に慣れるための演習を

 中学入試の算数・理科・社会が特定の単元・項目の学習を積み上げていきながら、入試問題でも個々の単元・項目が問われることが多いのに対して、中学入試の国語は文章を読み、その文章にまつわる設問を解いていく、読解力を基軸として、文章力と設問に対する情報処理力が中心に問われる科目です。特定の学習単元や学習項目に関する知識や理解の示すというよりは、今まで知らないことを含めたテーマや内容の文章をその場で読み、設問の指示に合った解答を選ぶ、作成することが求められます。

 入試直前期の学習も、特定の単元・項目の学習や演習が中心となる他科目と比べて、国語は先に述べた制限時間内演習と文章ジャンル、出題形式、解答形式に慣れる練習がポイントとなります。

 中学入試の国語の「文章ジャンル」というのは、いわゆる説明文、物語文(小説)、随筆、詩、短歌・俳句、古文などの文章形式のことです。中学入試の国語においては、説明文と物語文の両方が出題されるケースが多いのですが、説明文のみの出題、物語文のみの出題、詩や短歌・俳句も出題など、中学校によって、文章ジャンルの出題傾向に特徴がある場合があります。例えば、国語では過去10年以上、説明文は出題せずに、比較的長め物語文に基づく問題を出題している麻布中(東京都港区)を第一志望校とする受験生の場合、麻布中の国語過去問はもちろん、長め物語文に基づく読解問題を使った演習が入試直前期の国語学習の中心となります。

 中学入試の国語における出題形式、解答形式というのは、記号選択問題、空所補充問題、語句の記述問題、文章の記述問題、(作文・小論文を含めた)論述問題など、出題の設問の形式と解答の方法や内容の形式のことです。当然ながら、志望校の出題形式や解答形式に合わせた過去問演習が、入試直前期の国語学習では重要になります。

先に述べた麻布中の国語入試問題では、漢字の書きとり問題以外は全ての設問で、文章で答えさせる記述問題が出題されています。他方、慶應義塾中等部の国語入試問題では、漢字の書きとり問題以外は記号で答えさせる問題が中心となっています。麻布中を志望校とする場合は、国語学習においては文章を書く記述問題を中心に、慶應義塾中等部を志望校とする場合は記号選択問題を中心にした問題演習が効果的と言えます。

解答形式と関係しますが、国語の過去問演習や問題集演習を進める際、特に文章を書く記述問題や論述問題を含んだ問題演習となる際、その解答は必ず、入試本番と同じ原寸大でコピーをした解答用紙に書き込んでください。記述問題や論述問題のなかには「〇〇字以内で答えなさい」と字数制限があるものと、特に字数制限は示されないものがあります。字数制限がある場合は解答用紙以外でも、原稿用紙などのマス目のあるものであれば、指示された字数以内の解答文を書くことは可能ですが、字数制限がない場合は、本当に自由な字数で書いていいのではなく、解答用紙にある解答欄の行数や大きさに合わせた文章を書く必要があります。一般的に、記述問題や論述問題で、その設問の配点の満点をとるためには、その解答欄の7割から8割以上の解答文を書くことが前提条件になります。記述問題や論述問題の解答欄は、満点となる解答文に含むことを入試問題作成者が求める条件とする語句や表現の量を踏まえて作られます。解答欄の7割未満の解答文の場合、出題者が求める、つまり採点基準ともする語句や表現が何かしら不足していると考えて構いません。

字数制限のない文章記述問題や論述問題で「過不足のない」解答文を書くには、実際の解答欄の行数や大きさにあてはめる練習を日ごろから進める必要があります。このことは国語のみならず、理科や社会の記述問題、論述問題の演習にも言えることですが、入試過去問題集にある解答用紙を、入試本番と同じ原寸大でコピーをして、そこに書き込んでいきましょう。それのことを積み重ねることにより、記述問題や論述問題で満点のために「過不足のない」解答文を考える意識が育まれていくはずです。

 今回のコラムで今年、中学入試に挑む小6生のみなさんと保護者様に向けた内容は最後となります。受験生のみなさんが体調を整えながらも受験勉強を進め、それぞれの第一志望校の合格を勝ち取られることを心から祈っています。

<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>