2024/03/04
関東関西有名中学入試分析【国語で求められる力 "四つの力"を身につけるために】
中学受験を目指す小学生のみなさん、国語の勉強は順調ですか?国語の勉強といえば、漢字の書き取り練習や塾のテキスト、問題集にある文章問題を解く、というイメージがあるかもしれません。しかし、やみくもに漢字の書きとり練習をしても、解法を身につけないままに問題集を解いても、国語の成績が上がらないということがよくあります。
中学入試に必要となる科目のなかで、国語は短期間に集中して学習を進めても試験問題の得点の上昇に個人差が出やすい科目です。すなわち、国語の勉強効果は短期間では出にくいケースもあり、読解力、語彙力、文章表現力などを養うために中長期的な学習が求められる科目です。
私は中学受験生の国語指導にも長年携わってきましたが、国語の勉強法や成績の上げ方について、よく相談を受けてきました。今回は中学受験に必要な国語の"四つの力"とその力を養うための勉強法についてお話をしたいと思います。
なお、今回お話をする内容は、高校受験を控えた中学生の皆さんの国語学習の参考にもなると思います。高校入試と中学入試の国語には、漢字や国文法の学習範囲、古典の有無などの違いもありますが、現代国語の文章を読んで設問を解いていくことが、中学入試・高校入試、双方の国語入試の中心となります。高校受験を意識し始めた中学生の皆さんにとっても、受験国語の学習の参考となれば幸いです。
私は、中学入試国語では"四つの力"が求められていると考えています。国語の"四つの力"とは、"読む力"、"書く力"、"ことばの力"、"考える力"、のことです。それら"四つの力"を身につけることは、受験学年、非受験学年を問わず、国語において重要です。"受験生"となってからは、入試問題を意識し、入試問題が求める国語力を、他科目の勉強との両立を考えながら養成していくことがポイントとなります。では、受験生に必要な"四つの力"とその力を身に着けるための勉強法について、説明をしていきたいと思います。
"読む力":読書と塾で学習する文章ジャンルを精選する
"読む力"を養うためには読書が最も重要です。入試問題の作成にもあたっている中学校の国語の先生方は全員と言っていいほど、読書が大切とおっしゃっています。とは言っても、じっくり読書に勤しむ時間がない、好きなジャンルの本しか読まない、マンガしか読まないなど、読書に関しても、私は中学受験生の保護者様から長年ご相談を受けてきました。
中学受験生の読書のポイントは、興味のあるジャンルの読書では大人向けの書籍も読む、興味のないジャンルの読書は無理をせず、そのようなジャンルの読解練習は塾で進める、ということです。
例えば、受験生ご自身が歴史の興味のある場合、歴史に関する書籍であれば"大人向け"の新書やハードカバーの書籍を読むことも可能かと思います。最近の中学入試では新書などの"大人向け"の文章からの出題が、特に論説文問題では多く、ジャンルを問わず"大人向け"の文体や語彙に慣れるには、そのような文章に多く親しむことが重要となります。
他方、受験生自身の興味がないジャンルの読書についてはどうでしょうか。例えば、歴史には興味があるけれど科学技術や自然科学には興味がない小学生の場合で考えてみましょう。中学入試国語の入試問題には、歴史に関する文章も、科学技術に関する文章も、自然科学に関する文章も、いずれも過去に多く出題されています。もちろん、科学技術論も自然科学論を含めて、理系・文系、説明文・小説・随筆などを問わず、様々なジャンルの文章の読書をバランスよく進めることが理想的です。しかし現実として、受験生ご自身に興味のないジャンルの本を読むように勧めても乗り気にはならず、仮に読書を進めてみたとしても、ただ文章や字を追っただけの思考を伴わない"字読み"となる可能性があります。また、そもそも他科目の学習もあり、読書のみに時間を多く費やすこともできません。
そのような場合には、塾の通常授業や季節講習で、受験生ご自身の興味が薄い、しかし入試では狙われやすいテーマの文章問題を中心に取り組むというのはいかがでしょうか。特に学習テーマをご家庭が決めることもしやすい個別指導塾や家庭教師の場合は、受験生個々にとって興味が薄い文章テーマや背景をわかりやすく解説してもらいながら、苦手意識があるテーマやジャンルの文章問題に、無理なく慣れていくことも可能です。
"書く力":志望校の記述問題・論述問題を確認し、それに即した文章力を鍛える
最近の中学入試の国語では、文章での解答が求められる記述問題や論述問題がほとんどの中学校で出題されます。ひとくちに記述問題・論述問題と言っても、中学校によってその形式には差異があります。最も大きな違いは、例えば「100字以内で書きなさい」という設問文のもとマス目で区切られた解答欄のある字数制限のある場合と、字数制限のない場合です。字数制限のない場合でも解答用紙に解答欄や罫線が書かれていて、その範囲内に解答文を書く形式がほとんどです。
どちらの場合であっても、決められた解答欄の中に過不足のない解答文を書くには、解答文の書き方を学ぶこと、そして実際に解答文を解答欄に書く練習量を数多くこなすことが必要になります。すなわち、場数を多く踏むことによって"カラダで覚える"、ということです。
塾の授業やテキストでは字数制限のある問題も字数制限のない問題も取り扱います。受験校が確定するまでは、制限字数のある問題にも、ない問題にも、慣れていきましょう。受験校が確定してからは、第一志望校の記述問題・論述問題の出題傾向において、制限字数のある問題の出題が多数である中学校受験の場合は、問題演習も字数制限のあるものを中心に、字数制限のない問題の出題が多数である中学校の受験の場合は、問題演習も字数制限のないものを中心に進めていきます。併願校を含めての受験校が決める際、受験校の記述問題や論述問題の対策について塾の国語担当の先生に相談されるといいでしょう。
"ことばの力":漢字と"大人の語彙"の学習
"ことばの力"の養成のポイントは漢字と"大人のことば"の学習にあると、私は考えています。漢字学習の中心は小学校や塾における漢字の宿題やドリル・ワークの学習です。言うまでもなく、中学入試に出題される漢字問題は原則として、小学校で習う常用漢字から出題されます。小学校から課される漢字に関する宿題も、立派な中学受験対策なのです。コツコツと漢字学習を進めていきましょう。ただ単に読みや書き順を覚えるのではなく、意味とその成り立ちの関連性について学習することで訓練的にとらえられがちな漢字の学習も理解しながら進める「楽しい学習」となります。
もうひとつは"大人の語彙"の学習です。ここで言う"大人の語彙"というのは、小学生が普段、会話や読み書きで使うことのない、しかし、中学入試の国語では文章の本文や設問に使われる、大人社会の読み書きで使われることばのことです。
【資料1】 1日目:敢えて リークする ネットワーク ユニーク もっけの幸い など 2日目:痛感 周遊(旅行) ピュア カド(角)がとれる (人間として)丸くなる など |
【資料1】にあげたのは、2023年1月に実施された灘中学校(兵庫県神戸市)国語入試問題のなかで、実際に設問の傍線部に登場したり、正解として書くことが求められたりしたことばの一部(抜粋)です。ちなみに灘中の入試は2日間あり、国語と算数は2日間とも、理科は1日だけ試験があります。
いずれのことばも小学生の日常の会話や作文では使われることは少ないものですが、大人の会話や文章のなかでは見かけることができることばです。特に最近では英単語由来のカタカナ語が中学入試でも取り上げられることが増えてきました。このような"大人のことば"の理解も、中学受験国語の中では重要になってきます。
"大人の語彙"の学習のために、もちろん国語辞典をこまめに引くことも理想的ですが、国語辞典の説明書きや例文のみで、そのことばの意味や概念、用例の理解が難しい場合もあります。お父さん、お母さんをはじめとした大人の皆さんが、食事などの日常の団らんの際や自動車・電車などに乗る際などに、小学生の子どもさんが質問をする"大人のことば"について、意味やことばの使用の具体例を説明されることを、私はお勧めしています。もちろん、学校や塾の先生にこまめに質問をして、答えてもらうことも有効です。
"考える力:模試で制限時間内に読み解く思考力を養う
一般的な国語の"考える力"は、読書の際に文章やテーマについて思考を巡らすことによって養われるものです。もちろん、読書を通じての"考える力"の養成も大切です。しかし、志望校入試合格を目指す受験生にとっては、入試のもつ制限時間を意識した"考える力"を養うことも重要になります。そのために重要となるのが模擬試験(模試)です。
小学生のみなさん、模試を受験したことはありますか?模試を受験する目的は、現状の学力(偏差値)を測る、弱点分野や今後の学習課題をチェックする、志望校の合格可能性(合否判定)を確認するなどもありますが、制限時間内に問題を読み解きする力や習慣を身につけることも、特に新小6生にとっては模試受験の大きな目的となります。
長い文章を読み、多くの設問に対する答えを書く。学校によっては字数の多い記述問題・論述問題の解答文を作成する。中学入試の科目の中で、国語は"時間との闘い"という要素が他科目にもまして強い科目です。入試本番で、国語の入試において時間が足りず、一部の設問を白紙のままで解答を終えざるを得ない受験生を、毎年、少なからず見かけます。
"時間との闘い"に打ち勝つには、制限時間内に問題を読み解き、完答をするトレーニングが恒常的に必要です。そのトレーニングの場として、入試本番同様に制限時間内に解く模試が、特に国語において重要になるのです。
首都圏でも関西圏でも、様々なテスト会や中学受験塾が模試(公開テスト)を実施しています。小5生までを対象とした模試もありますが、小6生になると、模試の実施回数も多くなり、なかには私立中学校が会場となる模試や特定の中学校の入試問題に即した模試もあります。問題のつくり(記述問題の多さなど)、難易度、受験者層など、模試ごとに特徴や違いがあります。どの模試が自分に、自分の志望校に最適であるのか、塾の先生に相談をして受験をする模試や受験時期、受験ペースを決めていきましょう。
入試国語の学習上、重要なのは、恒常的に模試を受験し、制限時間内に解くトレーニングを入試本番までに数多くこなすことです。最初に受験をした模試で時間が足りず、白紙解答の設問が出ても気にしないでください。塾に通っている場合は国語担当の講師に相談し、次回の模試までの課題を洗い出し、制限時間内に読み解くカリキュラムを策定し、日々の国語の学習に活かしていきましょう。
今回は国語に必要な"四つの力"について、中学受験を考えている小学生(特に新6年生)に必要なことという視点から述べてきました。"読む力"、"書く力"、"ことばの力"、"考える力"、いずれの力も短期間で付け焼刃的に身につくものではなく、中長期的な期間でじっくり、コツコツと、着実に身につけていく力です。ここまでに書かれたことを参考にして、また、志望校合格に必要な国語力を身につけるために、常に目的意識を持ちながら国語の勉強を進めてください。
<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>