2023/04/03

関東関西有名中学入試分析【中学受験 算数 理科 社会 最初の学習ポイントとは?】

4月になりました。小学校も新学年がスタートしました。中学受験を考えている小学生のみなさん。受験勉強ははかどっていますか?集団指導塾や個別指導塾などの進学塾に通われている方もいらっしゃれば、習い事や課外活動などの関係で塾に通っていない方もいらっしゃるでしょう。

塾に通われている受験生の場合、基本的には塾が提供するカリキュラムや教材を進めていくことが受験勉強の基本線になります。「どの時期にどの単元・テーマを進めるか」、「模試やテストはいつ受けるか」、「入試過去問はいつから解き始めるか」などの時期は塾が提示します。

他方、塾に通われていない受験生の場合、「どの時期に、何をやるのか」はご家庭で決めていくことになります。特に初めての中学受験を経験されるご家庭で、ひとまずは塾通いを見合わせていらっしゃる保護者の方にとって、「どの時期に、何をやるのか」は見当がつかないと考えていらっしゃる方も少なくないのではと思います。

今回は塾通いをされていないご家庭を前提として、自宅学習で中学受験勉強をスタートするにあたっての学習ポイントを、算数、理科、社会について述べていきたいと思います。

※国語に関しては、今年2月掲載の私のコラム「中学入試 国語で求められる力 "四つの力"を身につけるために」をご参照頂ければ幸いです。

■算数

小学校既習内容の定着確認と小学校教科書内容の速習

 小学生の保護者の皆さまにとって、中学受験の算数はどのようなイメージでしょうか?中学受験専門の集団塾で解法やテクニックを習わないと解けない問題が多い、難解な科目というイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれません。確かに、難関とされる中学校の算数の入試問題では小学校での学習内容や市販の参考書での学習では対応が難しい問題が少なからず出題されるケースも珍しくありません。しかし、私立中学校(特に入試科目を算数・国語の2科目のみとしている中学校)では、一部の思考力重視の設問があるケースを除くと、多くの場合、小学校の教科書で習う計算や解き方を使って解くことが可能な問題で合格点がとれる算数の入試問題の構成となっています。また、言うまでもないことですが、集団塾で習う算数に関する解法やテクニックも小学校の教科書内容の計算や解法が定着している前提で学習するものです。

 小学校教科書内容の定着と学習が重要な中学受験の算数なのですが、中学受験の学習スタートの段階で重要なのが、小学校教科書内容の速習と、(速習学習の前提条件として)今現在小学算数のどのあたりが定着できているのかを確認することです。

 先ほど、私立中学校入試の多くは「小学校の教科書で習う計算や解き方を使って解くことが可能な問題で合格点がとれる算数の入試問題の構成」と述べましたが、小学校の教科書や授業では解法自体は教えますが、その解法を使ってのどのようなタイプの問題が解けるのかを、時間を多く割いて、数多く問題演習をこなすことはできません。実際の中学入試で多く出題されるのは、小学校で習う計算や解法に基づいて解くことはできても、受験までに数多くの類題演習をこなしていないと速やかに解くことができない、時間の差が出やすい問題(特に文章題や図形問題)です。中学受験の集団塾の多くは小学校の教科書で扱う公式や解法は早めに定着させて、定着後、期間を置いて、その公式や解法を使う応用問題の解法を指導し、その後、その応用問題の範囲を広げたり、難易度を高くした類題を解いていったりしていきます。

 今後、塾に通う可能性がある場合はもちろん、塾に通わないで受験勉強を進める場合でも、算数は、まず今現在の算数で学校の既習範囲がしっかりと定着しているかを確認してください。定着の確認方法ですが、例えば、今、小学5年生の場合、市販の小学5年生用の算数の参考書や問題集の冒頭に4年生のまとめ(テスト)が掲載されているものを使って確認しましょう。8割以上解けていれば5年生の内容に進んでください。もしも8割未満、特に特定の単元の正解率が低い場合は、小学4年生用の問題集でその単元の公式や解法を確認して、再学習を進めてください。

 小学校での既習範囲の定着を確認したら、未習範囲も含めて、当面は小学校6年生までの教科書学習内容(公式や解法)を学習していくのが理想です。もっとも、志望校の算数の入試過去問が小学校の教科書やワークの問題と同水準であれば、小学校の学習スピードに合わせた「復習」ベースの学習でも問題はありませんが、志望校の入試過去問が小学校の教科書やワークの問題レベルより明らかに高い場合や入試問題の難易度は教科書レベルであっても近年の入試の合格倍率(当日の受験者数÷合格者数)が2倍以上を維持している場合は、小学校6年生までの学習範囲は早めに終わらせて、その後は中学入試の算数の各単元・テーマを深く学習し、小6の秋以降は志望校や併願校の入試過去問や類題問題の演習および弱点補強を進めるのが理想的です。もちろん、「正確に」かつ「すばやく」問題を解くための計算練習も日々欠かさないようにしましょう。

■理科

「カラー」の教材やツールを活用する 興味ある単元・テーマによる学習順番の変更も可能

 中学入試の理科の重要性は、志望校の理科の入試配点や受験生本人の将来の志望(医師、薬剤師、宇宙飛行士、技術者などの"理系な職業"に憧れているならば、当然、理科の学習重要性は高くなります)など、受験生それぞれによって異なってきます。

志望校の入試配点が算数や国語と同じ均等配点であったり、受験生ご本人が"理系な職業"に憧れているなど、理科の重要性が高い場合は、計算問題が多く出題され、合格者と不合格者の入試得点率の差が大きくなりやすい物理分野や生物分野の学習や問題演習に、できるだけ早期に取り組めるような受験勉強の計画が重要になります。他方、志望校の理科の入試配点は算数や国語よりも低い場合や今現在は"理系な職業"を目指している訳ではない場合でも、志望校の入試科目として理科が必須科目である場合も、算数や国語よりは勉強時間数は少なくなるかもしれませんが理科の受験勉強は必要です。

理科の重要度の強弱に関わらず、理科の受験勉強開始期のポイントは理科という科目(の特定の単元)に好奇心を持つことができることです。理科への好奇心養成において重要となるのが色(カラー)だと、経験則上ではありますが、私は考えています。

花などの植物、動物や昆虫、太陽・月・星座などの天体、燃焼などの化学反応、等々、理科が取り扱う事象は色彩の鮮やかさや色の違い・変化など、カラーでの視覚や理解が極めて重要になります。理科の入試問題をカラー印刷で出題をしている中学校もあったりします。実験や観察が重要視される理科という科目の特徴上、理科の受験勉強を進めるにあたってはできるだけカラー印刷の参考書や問題集、カラー動画、カラーの絵や図説を活用されることをお勧めしています。

 また、理科は算数や国語に比べると、特定の単元・テーマでの学習完結性が高いこともあり(このことは社会にも言えます)、受験生ご本人の興味や意欲に合わせて、特定の単元・テーマの集中学習から受験勉強をスタートさせることも可能です。特に生物分野(植物・動物・昆虫・人体など)と地学分野(地層・河川・海・天体など)は、物理分野や化学分野と比べると計算が必要な問題の絶対数が少なく(ただし、計算問題が全くないということではありません)、用語や機能の理解や記憶が初期学習の中心となることもあり、算数が苦手であったり、算数の学習が出遅れている場合でも、物理分野や化学分野よりはスムーズに学習が進められる場合が多いです。

理想的には算数同様に、理科も小学校の教科書学習範囲を、物理分野、化学分野、生物分野、地学分野を横断的かつ体系的に速習を進めて、小学校学習内容を理解してから中学受験に頻出される、各分野の単元・テーマを深掘りして学習・演習を進めるのが望ましいのですが、算数の得意不得意に応じて、算数が得意かつ意欲的に取り組めるのであれば、早い時期から計算問題の伴う物理分野の学習を進める、他方、算数が苦手であるなら、算数の学習が進むまで物理分野の学習は控えて、むしろ生物分野や地学分野の学習を進めていくとうことも可能です。最終的には物理・化学・生物・地学の四分野全ての学習は必要ですが、受験勉強のスタートにあたっては、受験生ご本人の勉強がはかどる単元・テーマからの理科学習開始でも大丈夫です。興味が持てる分野や単元から、学習を積極的に進めていきましょう。

■社会

用語暗記にこだわらず、学習まんが、アニメ、動画、ワークブックで体系的な理解からスタート

 中学入試科目としての社会科は地理分野、歴史分野、公民分野(国際関係や環境分野も含む)および時事問題が出題範囲となります。特に日本に関する地理分野と歴史分野が、多くの中学校の社会入試の出題の中心となっています。社会の学習というと、地名(都道府県名、都市名、山脈や山地、平野、河川名など)や歴史用語(歴史上の人物、出来事、寺院名など)、歴史年号などの用語暗記が多く、地理や歴史に興味がない受験生にとっては暗記作業が多くてつらいのではないか、という懸念がよく聞かれます。確かに、中学受験の社会入試問題では地名や歴史用語を漢字で正確に書くことを求められることも多く、用語の理解や定着は合格のためにも必要です。しかし、地名や歴史用語は一問一答的に理解・暗記しようとするから"暗記学習"が苦痛になるものであり、社会学習の本来のポイントである単元やテーマの体系的な理解に、初期の学習は徹するべきだと、私は考えます。

 社会科の体系的な理解とは?例えば歴史であれば、平安時代であれば貴族(藤原氏)が中心の社会で平安京(京都)を中心に貴族による文化(国風文化)が営まれた時代で十二単を着たお姫さまがいたイメージとか、江戸時代であれば徳川氏が征夷大将軍となり江戸幕府を開き、武士が支配層となり、各地に藩やお城ができた時代でちょんまげ頭で刀を持ったサムライがいたイメージとか、どのような人物が支配層にいて、服装や社会がどのようなイメージがおおまかにでも理解できていることが体系的な理解のポイントです。そのような「体系的な理解」ができてこそ、地理分野にしても歴史分野にしても、個別の事項や用語がスムーズに理解できるようになります。

 では、社会科の「体系的理解」を身につけるためには、どのような学習をしたらいいでしょうか?もちろん、塾や書店で手に入れることができる社会科用参考書や問題集でも学習は可能ですが、流れや(歴史分野)人物、建物や服装などの文化を視覚的に理解できるという点で、学習まんがや学習アニメ(DVD)、YouTubeなどの動画コンテンツの活用をおすすめしたいと思います。

 学習まんがは特に歴史分野に関するものは、私が小学生の頃からも数多くあり、私自身も小学生の頃に読んでいました。現在でも、多くの出版社が日本の歴史や歴史上の人物に関する学習まんがを刊行していて、なかには、今現在人気のある漫画家や"重鎮"とされる大物漫画家が執筆しているものもあります。縄文時代(以前)から平成・令和の現在までの全巻となると20巻以上、全巻を購入するとなると(特にハードカバーのものは)金額的には高価にはなりますが、小学校の図書室や公共の図書館の子ども向けのコーナーには必ず複数は置いてあるかと思います。また、近年では歴史分野に限らず、地理分野や公民分野に関するものでも、DVDなどの学習アニメやYouTubeなどのインターネットコンテンツで動画を視聴できたりします。YouTubeの場合、例えば中学受験範囲の歴史分野の動画を探す際、「中学受験」、「歴史」で検索をして、再生リストをクリックすると、教員の方や塾、中学受験指導者の方などがつくった歴史の授業動画などが出てきます(ただし、これらの動画のなかには動画制作者の塾や中学受験指導者の「営業目的」の内容が含まれている場合もあるので、視聴の際にはご注意下さい)。社会の学習の初歩にあたっては、このような学習まんがや学習アニメ、動画などによるイメージの把握や「体系的理解」から始められると、算数や国語との学習併用上もスムーズに進められると思います。

 とはいえ、学習用のまんがやアニメ、動画を観ただけで中学受験の入試問題が解ける訳ではありません。歴史分野でも地理分野でも、学習用のまんがやアニメ、動画が進んだら、紙ものの参考書や(地理分野)地図帳、(歴史分野)歴史学習用の図説(写真や絵柄も掲載されている学習用の資料集)も使用した学習に入っていきます。そのなかで初期に重要なのは、用語や地形などを書き込むワークブック型の書籍を使っての学習です。地理分野の学習においては都道府県や平野、湾岸、半島などの位置やかたちを、歴史分野においては歴史上のできごとが起こった場所、城や寺院などの地図上の場所などを、地図帳や参考書を参照しながら、ワークブックに書き込んで覚えていきます。このような学習を経て、地理分野にしても、歴史分野にしても、体系的な理解が進んだ段階で、ここからが参考書やテキストによる、単元やテーマに関するより深い学習と用語の理解・記憶(結果としての用語暗記)が進んでいきます。

 今回は塾通いをされていないご家庭を前提として、自宅学習で中学受験勉強をスタートするにあたっての算数・理科・社会の初期の学習ポイントを述べていきました。ある程度学習を進めて、引き続き家庭学習で受験勉強を進めるご家庭もあれば、集団授業塾もしくは個別指導塾に入塾をして塾のカリキュラムに沿って受験勉強を進めるご家庭もあるかと思います。

いずれの場合も、中学入試本番までの期間と志望校合格に必要な各科目の学習内容(到達点)から逆算をして、その時点、その時点で「どの時期に、何をやるのか」を見極めて、時には修正をしながら、受験生ご本人にとってベストな「受験勉強」を組み立てて欲しいと願っています。

<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>