2020/08/17

関東関西有名中学入試分析【秋の受験勉強の要-模試・プレテストの活用方-】

中学受験生のみなさん、夏の学習は順調に進んでいますか?8月終盤以降、中学受験生(小学6年生)対象の模擬試験(模試)が毎月のように実施されます。例えば、首都圏の中学受験向けの首都圏模試『統一合判』や近畿圏の中学受験向けの『五ツ木・駸々堂模試』は8月終盤以降、4回の模試を実施予定です。公立中高一貫校向けの模試や特定の中学校の入試問題に即した学校別の模試も実施されるようになります。また、近畿圏の多くの私立中学では、9月から11月にかけて小6生を対象にプレテストを実施します。(【注】新型コロナウイルス感染防止のため、模試やプレテストの開催の時期や方法など、昨年までと変更がある場合があります。模試やプレテストの詳細については、ホームページなど、最新の主催者発表情報をご確認ください)

中学受験生にとって重要な模試とプレテスト。今回は、秋の受験勉強の指針ともなる中学受験生向けの模試とプレテストについて、その受け方や活用法を中心に述べていきたいと思います。

模試とプレテストの違い

中学受験の模試とは?

中学受験生向けの模試は、中学受験大手進学塾が主催して実施される模試(公開テスト)と進学塾とは別個のテスト会(首都圏模試センター、五ツ木書房など)が主催して実施される模試とに、大きく二分されます。

進学塾が主催する模試の場合は、その塾の入塾テストを兼ねることや塾生のカリキュラム到達度をはかることを目的とした色合いがある出題内容になります。

例えば、偏差値の高い難関校とされる中学校を志望する塾生の多い進学塾主催の模試の場合、塾生に基礎・基本が身についている前提で、難関校の入試で問われる記述量の多い論述問題や思考力、発想力を問う内容が多くなります。当然ながら、主催をする進学塾や提携塾の塾生の受験が大多数を占めます。

他方、テスト会主催の模試の場合は、大手進学塾の塾生の受験ももちろんありますが、受験をするのは地域密着型の進学塾や個別指導塾で勉強している受験生、そして、家庭学習を中心にして受験勉強をしている小学生も多く受験します。難易度の高い問題よりは、基礎・基本をベースとしたオーソドックスな私立中学入試一般の出題内容が中心となります。

フリーステップでは原則的に、首都圏では首都圏模試センター主催の『統一合判』模試、近畿圏では五ツ木書房主催の『五ツ木・駸々堂模試』の受験を推奨しています。その理由は上記にもあるように、両模試が基礎・基本をベースとしたオーソドックスな私立中学入試の出題内容に基づいていること、中学受験に必要な各科目の学習状況を確認しやすいこと、にあります。

プレテストとは?

近畿圏の多くの私立中学校は学校自ら模試を実施しており、通称"プレテスト"と呼ばれています。10月から12月前半にかけて、主に週末や祝祭日(振替休日)に学校ごとで実施をされます。

模試との違いとしてのプレテストのポイントは、

①多くの中学校のプレテストが受験料無料

②入試本番と同じ学校会場・教室、同じ学校の先生による問題作成

③来年度入試の変更点や形式変更も踏まえた問題が出題される

④答案返却時の解説会や相談会を実施する中学校もある

以上4点です。

模試の場合も受験生個々の志望校を選択して受験できる場合がありますが、出題形式、試験時間、配点、試験監督など、プレテストは各中学校の入試そのままですから、生徒本人の志望校がプレテストを実施している場合は、ぜひ受験を検討してください。

模試・プレテストの活用ポイント

Ⅰ.志望校や併願校の選定

6年生の場合、9月以降は受験校を決定していく時期となります。第一志望校のみならず、合格の可能性を見定めながら併願校も決めていく時期となります。受験候補の学校の合格可能性を確認することが、6年生にとっての模試の大きな役割となります。

難関とされる一部の中学校を除き、私立中学校の多くが複数回の入試を実施しています。午前中からお昼頃までの時間帯の入試(いわゆる午前入試)を実施する中学校が多いなか、午後の時間帯に入試を実施する中学校も近年増えてきています(いわゆる午後入試)。同じ中学校であっても、入試日や午前入試、午後入試の違いで受験者層が大きく変わり、入試の倍率や難易度も変わることがよく見受けられます。

一般的な傾向としては、2月1日に私立中学入試がスタートする東京都の私立中学の場合、複数回入試を実施する学校であれば、それぞれの学校の第一志望者が中心となる2月1日の午前入試が入試倍率や模試が定める合格可能性判定の偏差値でもっとも抑えめとなりやすく、他校からの併願受験者が集まる午後入試は、2月1日であっても、午前入試よりは入試倍率や模試が定める合格可能性判定の偏差値も高くなりがちになります。

合格可能性の判定については模試によって判定方法が変わってきますが、例えば、首都圏模試の場合、志望校として6校を登録すれば、午前入試、午後入試の双方、それぞれの中学校の全ての入試回について合格可能性を判定します。第一志望校としては午前入試とされる方が多いなかで、午後入試の併願先の情報収集は後手となりがちなケースがよく見受けられますが、このような模試判定から、午後入試の学校の合格可能性も見ていくことが可能です(【資料1】首都圏模試の全入試方式合格可能性判定例を参照)。

■資料1

首都圏_資料1.jpg

Ⅱ.受験後の復習と弱点補強

模試もプレテストも、合格判定や偏差値を出すだけのものではありません。いずれも実施時期までに身につけておくべき各科目の学習内容を練りに練って出題されるており、解くことで現時点での学習到達度や課題、弱点がわかるように作問がなされています。つまり、模試やプレテストの復習と模試を活用した学習は極めて効率性の高い学習となるのです。

模試やプレテストは土日や祝日(振替休日)に実施されるのが一般的です。模試が終わった後は解放感や疲労感から、その日勉強しないという受験生がいるという話を聞きますが、それは非常にもったいないことです。模試やプレテストが終わった後、受験生は問題用紙を持ち帰ることができると同時に、解答解説の冊子が配られます。記憶力が鈍らないうちに"できなかった"問題や単元を頭に焼きつけて欲しいと思います。

私は指導をしてきた中学受験生や保護者の方に、模試やプレテストが終わった後は以下のようにすることをお願いしています。

①終了後、できるだけすぐに、答え合わせをして、間違えた問題、正解か不正解かあいまいな問題の番号に印をつける

②帰宅後など、落ち着いて勉強ができる環境に戻ったら、模試の間違えた問題と解答解説を照らし合わせて、解説を理解しようと努める

③その後、塾のテキストや参考書で今回の模試で出題された単元やテーマの箇所を調べ、必要に応じて、付せんや蛍光マーカーをつける

④そして、模試やプレテスト後の初回の塾の授業で、模試の解説や参考書を読んでもわからない箇所の質問をして、その解説後、明らかになった弱点箇所の類題演習に努める

このような"弱点強化"を進めていくと、模試の場合は、8月以降の4回の模試を通じて、中学受験の学習全範囲が総復習できるようになります。もちろん、偏差値や志望校合格判定も気になりますが、中学受験のぼう大な出題範囲を効率よく学習していくツールとして、模試やプレテストを上手に活用して欲しいと思います。

今回は中学受験の模試やプレテストの受け方とその活用法についてお話をしていきました。近年の中学入試は午後入試を含めて、入試回数や入試方式の複数回化や複雑化が進んでいます。それに合わせて最近の模試は、そのような中学入試の複数回化や複雑化にも対応できるように作られています。

男子校・女子校・共学校、キリスト教系の学校・仏教系の学校、歴史のある伝統校・新進気鋭の学校など、模試では受験会場の中学校が選べる場合ほとんどですが、人気のある中学校の試験会場は模試の申込開始早々に定員に達し、募集を締め切るケースがよくあります。首都圏模試も五ツ木・駸々堂模試も、模試実施の1か月ほど前から申込受付を開始しますが、スケジュール確認も含めて、期間にゆとりを持って動いていただければと思います。

志望校合格のために役立てるツールとして、模試やプレテストを活用していきましょう。

<文/開成教育グループフリーステップ修学院教室チーフ住本正之>