2025/06/09
関東関西有名中学入試分析【知らないと損をする!中学受験の模試・プレテストの活用法】
中学受験を考えている皆さん、受験勉強は順調に進んでいますか?受験勉強を進めるにあたって模試というものが極めて重要なツールとなります。特に小学6年生の受験学年における模試は受験勉強の到達度や自身の受験勉強上の課題、志望校の合格可能性を確認するうえで欠かすことができないツールとなります。
加えて、近畿地方の多くの私立中学校では、9月から11月にかけて小学6年生を対象に私立中学校自身が模試(通称プレテスト)を実施します。近畿地方の私立中学校のなかには科目試験による一般入試とは別に自己推薦入試を実施している中学校もありますが、その自己推薦入試の出願にあたっては自校主催のプレテストや模試の結果が出願要件や選考基準のひとつとしているケースが多くあります。自己推薦入試の受験を検討している場合は、模試やプレテストで結果を残すため、一般入試を前提としている受験生と比べて、早めに受験勉強を仕上げていくことが重要になります。
中学受験生、特に小6の受験生にとってはマストツールとも言える模試とプレテスト。今回は中学受験の模試やプレテストについて、特徴や注意点、活用方法を中心に述べていきたいと思います。
INDEX ■中学受験の模試とは? |
中学受験の模試とは?
中学受験生向けの模試は、中学受験進学塾が主催して実施される模試(公開テスト)と進学塾とは別個のテスト会(首都圏模試センター、五ツ木書房など)が主催して実施される模試とに、大きく二分されます。
進学塾が主催する模試の場合は、その塾の入塾テストを兼ねることや塾生の学習到達度、カリキュラム達成度をはかることを目的とした色合いがある出題内容になります。各塾の塾生の学力層や塾それぞれのカラーに応じて、問題の難易度や出題範囲、記述問題・論述問題の質量などが変わってきます。
例えば、偏差値の高い難関校とされる中学校を志望する塾生の多い進学塾主催の模試の場合、塾生に基礎・基本が身についている前提で、難関校の入試で問われる記述量の多い論述問題や思考力、発想力を問う応用問題が多くなります。当然ながら、主催をするその進学塾や提携塾の塾生の受験が大多数を占めます。そのため、他の模試よりもその進学塾の意向や傾向が影響します。他方、テスト会主催の模試の場合は、大手進学塾の塾生に限らず、幅広く多くの小学生が受験します。難易度の高い問題よりは、基礎・基本をベースとしたオーソドックスな私立中学入試一般の出題内容・出題形式が中心となります。つまり、受験生ご自身の現状の学力水準や志望校・受験検討校によって、適切となる模試は異なってくるのです。
学校別模試も実施
小学6年生の場合、夏以降、特定の中学校の出題形式や問題用紙・解答用紙、試験時間を入試本番の条件に合わせた学校別模試も実施されます。学校別模試の対象となるのは第一志望の受験生が多い、入試難易度(偏差値)の高い中学校が多くなります(【資料1】、【資料2】参照)が、地域の人気校や公立中高一貫校対象の学校別模試を実施している中学受験塾やテスト会もあります。
【資料1】首都圏中学受験塾が実施する 学校別模試 男子対象校
麻布中 栄光学園中 開成中 慶應義塾湘南藤沢中 慶應義塾中等部 慶應義塾普通部 駒場東邦中 渋谷教育学園渋谷中 渋谷教育学園幕張中 聖光学院中 筑波大附属駒場中 灘中 (私立)武蔵中 早稲田中 早稲田実業中 早稲田大高等学院中 |
【資料2】首都圏中学受験塾が実施する 学校別模試 女子対象校
桜蔭中 慶應義塾湘南藤沢中 慶應義塾中等部 渋谷教育学園渋谷中 渋谷教育学園幕張中 女子学院中 豊島岡女子学園中 フェリス女学院中 雙葉中 早稲田実業中 |
一般的な中学受験の模試と比べて、学校別模試の特徴としては、
- 作問傾向や解答制限時間など、各中学校の入試に沿った内容となる。
- 当該校を第一志望とする受験生が集まり、そのなかでの順位や偏差値が示される。一般の中学受験生対象の模試よりも学力水準が高い受験生が多いため、偏差値は低めに出る傾向があり。
- 模試を主催する塾の塾生の割合が高くなる傾向とはなるが、他塾生や塾に通っていない受験生が「他流試合」や試験慣れの場として受験をすることも珍しくない。
- 模試の対象校で実施される場合もあるが、多くの場合は主催する進学塾の教室で実施。
以上の4点が挙げられます。
難関校とされる中学校のなかには、毎年、非常に個性的な出題をする学校もあり、個性的な問題への慣れをつくり、また思考力や発想力を磨くため、学校別の模試を活用する受験生も少なくありません。
プレテストとは?
近畿圏では数多くの私立中学校が、学校自ら模試を作成し、小学6年生を対象として実施しています。このような学校主催の模試は通称"プレテスト"と呼ばれています。9月から12月前半にかけて、主に日曜日や祝祭日(振替休日)に学校ごとで実施されます。
模試との違いとしてのプレテストのポイントは・・・
・大半の中学校のプレテストは受験料無料(難関校とされる中学校実施のプレテストでは有料のケースあり)。
・入試本番と同じ学校会場・教室、同じ学校の先生による問題作成。
・来年度入試の変更点や形式変更も踏まえた問題が出題される。
・答案返却時の解説会や相談会を実施する中学校もある。
・難易度・偏差値が極めて高い中学校というよりは、各地域で人気のある中学校が実施をしているケースが多い。
・公立中高一貫校の適性試験型のプレテストを実施する中学校もある。
・当該中学校が自己推薦入試を実施している場合、プレテストで一定の成績をおさめることが推薦入試の出願要件のひとつとしているケースが多い。
以上7点です。
プレテストは、受験会場はもちろん、出題形式、試験時間、配点、試験監督など、プレテストは各中学校の入試そのままですから、生徒本人の志望校がプレテストを実施している場合は、ぜひ受験を検討してください。また、公立中高一貫校を第一志望の受験生にとっても、無料で適性試験の練習ができる、得点や講評も出て、現状や今後の受験勉強の課題を確認できる場としても、プレテストはメリットが大きいと考えていいでしょう。また、中学校が自己推薦入試などの一般学力入試とは別体系の入試を実施している場合、自校主催のプレテストの受験を出願要件としたり、プレテストで一定の成績以上であることを出願要件としたり、入試での合否選考の判断資料のひとつとしているところもあります。
模試・プレテストの活用ポイント
中学受験生にとっては必要不可欠となる模試やプレテストですが、受験をするにあたってのポイントを3点まとめておきたいと思います。
Ⅰ.模試における志望校や併願校の選択や判定
小学6年生の場合、これからの時期は受験校を具体的に選定をしていく時期となります。第一志望校のみならず、合格の可能性を見定めながら併願校も決めていく時期となります。受験候補の学校の合格可能性を確認することが、小学6年生にとっての模試の大きな役割となります。
難関とされる一部の中学校を除き、私立中学校の多くが複数回・複数日の入試を実施しています。午前中からお昼頃までの時間帯の入試(いわゆる午前入試)を実施する中学校が多いなか、午後の時間帯に入試を実施する中学校も近年増えてきています(いわゆる午後入試)。同じ中学校であっても、入試日や午前入試、午後入試の違いで受験者層が大きく変わり、入試の倍率や難易度も変わることがよく見受けられます。
一般的な傾向としては、2月1日に私立中学入試がスタートする東京都や神奈川県の私立中学校の入試の場合、複数回入試を実施する中学校は、それぞれの学校の第一志望者が中心となる2月1日の午前入試が入試倍率や模試が定める合格可能性判定の偏差値でもっとも抑えめとなりやすく、他校からの併願受験者が集まる午後入試は、2月1日であっても、午前入試よりは入試倍率や模試が定める合格可能性判定の偏差値も高くなりがちです。
合格可能性の判定については模試によって判定方法が変わってきますが、例えば、首都圏模試(『合判模試』)の場合、志望校として6校を登録すれば、午前入試、午後入試の双方、それぞれの中学校の全ての入試回について合格可能性を判定します。第一志望校としては午前入試とされる方が多いなかで、午後入試の併願先の情報収集は後手となりがちなケースがよく見受けられますが、このような模試判定から、午後入試の学校の合格可能性も見ていくことが可能です。
Ⅱ.中学校の模試受験会場の選び方
中学受験の公開模試では、複数の私立中学校の会場の中から自分の受験する会場を選ぶことが可能です(進学塾主催の模試の場合は進学塾の教室会場を選ぶことも可能)。
第一志望校の中学校が模試の会場となっている場合は、もちろん第一志望校の中学校を会場としましょう。他方、模試の試験会場のなかに志望校や受験を考えている中学校がない場合は、受験会場はどのように決めたらいいでしょうか?
模試受験会場選択のポイント ① 第一志望校または受験する可能性の高い学校 ② 自宅からの交通アクセスにおいて無理のない学校 ③ 男子校・女子校志望の有無 ④ 校舎が新しい |
第一志望校が試験会場になくても、今後の学習状況によっては第一志望校となる可能性のある学校、憧れのある学校が試験会場のリストにあれば、その学校を選びましょう(①)。
志望校の候補となる学校がない場合は、まずは自宅からの交通アクセスにおいて、無理なく行くことができる学校を複数選びます(➁)。電車と徒歩を合わせて60分以内で行ける範囲を目安としましょう。そのうえで、男女別学の学校を第一志望とするのであれば男子校または女子校を、共学校を第一志望とするのであれば共学校を、それぞれ候補に選びましょう(③)。
①から③までのチェックポイントを踏まえても、ここという学校が見つからない場合は、①の交通アクセスを優先しつつも、集中力をもって快適に受験ができる学校という観点から、校舎・教室が新しい学校、改築された学校を選ぶというのはいかがでしょうか(④)。
Ⅲ.受験後の復習と弱点補強のツールとして
模試もプレテストも、受験検討校の合格可能性判定や偏差値を出すだけのものではありません。いずれも、実施時期までに身につけておくべき各科目の学習内容を練りに練って出題されており、解くことで現時点での学習到達度や課題、弱点がわかるように作問がなされています。つまり、模試やプレテストの復習と模試を活用した学習は極めて効率性の高い学習となるのです。
模試やプレテストは日曜日または祝祭日(振替休日)に実施されるのが一般的です。模試が終わった後は解放感や疲労感から、その日勉強しないという受験生がいるという話を聞きますが、それは非常にもったいないことです。模試やプレテストが終わった後、受験生は問題用紙を持ち帰ることができると同時に、解答解説の冊子が配られます。記憶力が鈍らないうちに"できなかった"問題や単元を頭に焼きつけて欲しいと思います。
私は指導をしてきた中学受験生や保護者の方に、模試やプレテストが終わった後は以下のようにすることをお願いしています。
①終了後、できるだけすぐに、答え合わせをして、間違えた問題、正解か不正解かあいまいな問題の番号に印や付箋をつける。
②帰宅後など、落ち着いて勉強ができる環境に戻ったら、模試の間違えた問題と解答解説を照らし合わせて、解説を理解しようと努める。
③その後、塾のテキストや参考書で今回の模試で出題された単元やテーマの箇所を調べて解説を読み、それでも理解ができない、わからない箇所には付箋や蛍光マーカーをつける。
④模試やプレテスト後の初回の塾の授業や来塾時において、③の過程で付箋やマーカーをつけた箇所の質問をして、その解説後、明らかになった弱点箇所の類題演習に努める。
このような"弱点強化"を進めていくと、小6生の場合、通年での模試受験と模試の復習により、中学受験の学習全範囲が総確認できるようになります。もちろん、偏差値や志望校合格判定も気になりますが、中学受験のぼう大な出題範囲を効率よく学習していくツールとして、模試やプレテストを上手に活用して欲しいと思います。
Ⅳ.受験後の模試セットは中学受験終了まで保管して活用する
前項Ⅲでは模試の復習方法について述べましたが、今まで受験をした模試セット(問題用紙、採点された解答用紙[のデータ]、解答解説冊子、成績表[個票]、模試採点後のデータや講評が記載された冊子など)は絶対に受験終了まで保管をしてください。
過去に受験をした模試はご自身の弱点や(模試受験当時の)未習分野に関する大切なデータベースになります。模試受験直後や採点答案・成績表の返却時の再学習や復習はもちろん重要ですが、入試が間近に迫ってきた時期(小6の11月以降)の効率的な学習のために過去の模試を活用するのです。
入試が差し迫った時期には受験予定校の入試過去問や入試予想問題を使ったアウトプット型の演習学習が中心となります。その一方で、今までに学習をしてきた中学入試の出題範囲の知識や体系的理解を確認、再学習をするうえで、今までに受験をしてきた模試が役に立ちます。
初見の文章に対する読解力や対応力が問われる国語は例外になりますが、算数、理科、社会においては過去の模試の再学習は効率的な復習ツールとなります。問題用紙に過去に間違えた問題番号に蛍光マーカーもしくは付箋をつけ、そのなかで特に、模試受験生全体の正解率が比較的高い(目安は6割以上)にも関わらず、自分が間違えてしまった問題を再度解いていくのです。正解であれば大丈夫ですが、再度間違えてしまった場合や解けなかった場合、再度解説を読み、その後、間違えた問題に関連した単元やテーマについて、塾のテキストや参考書を再確認したうえで、問題の類題や同じテーマの別問題を、塾のテキストや問題集に掲載されている問題で再度解き進めることにより再学習を進めるのです。小学6年生時に通年で受験をしてきた模試をこのようにして総復習をしていくだけでも、今までの弱点項目の再学習はかなり効果的に進むはずです。プレテストについても、模試同様の活用方法が可能です。
今回は中学受験の模試やプレテストの受け方とその活用法について述べてきました。中学受験生の保護者の皆さんにおかれても、中学受験、高校受験、大学受験のいずれかを経験された方であれば、ご自身でも模試を受験したり、模試を復習したりされた方も少なくないと思います。かつての模試と比べて、現在の模試は、模試問題の解説授業を動画で視聴ができたり、模試の結果表がWEB上で、受験後数日で確認ができたり、インターネットやIT技術を使って、極めて便利かつ即応性の高いものとなっています。復習や学び直しもしやすく工夫されている模試も増えています。
模試の受験料も以前よりは割高となっている傾向にはありますが、先にも述べたように、入試本番まで模試を学習ツールとしてフル活用してこそ、志望校合格への強力かつ正確なナビゲーターとなります。今回のコラムを参考として、模試やプレテストを志望校合格まで最大限に使い切って欲しいと思います。
< 文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之 >