2025/10/06
関東関西有名中学入試分析【中学受験 社会の勉強法をお教えします!(基本編)】
今回は中学受験における社会(社会科)の特徴と学習方法(基本編)についてお話をしたいと思います。中学受験の学習において、算数や国語と比べると重要度が下がるとされる社会科ですが、的を得た勉強法に基づき時間をかけて勉強を進めていくと、算数や国語と比べて、実力や得点力は上昇しやすい科目なのです。中学受験の社会の特徴と勉強方法を理解して、社会科を得意科目、得点源となる科目になる一助となれば幸いです。
中学受験の社会の特徴
中学入試科目としての社会科は地理分野、歴史分野、公民分野(国際関係や環境分野も含む)および時事問題が出題範囲となります。特に日本に関する地理分野と歴史分野が、多くの中学校の社会入試の出題の中心となっています。もちろん中学校ごとには異なることもありますが、おおまかに言えば、中学入試社会の出題範囲全体を10割とすると、地理分野で4割、歴史分野で4割、公民分野などの他分野で2割、これぐらいの割合での出題比重が一般的です。
社会の学習というと、地名(都道府県名、都市名、山脈や山地、平野、河川名など)や歴史用語(歴史上の人物、出来事、寺院名など)、歴史年号などの用語暗記が多く、地理や歴史に興味がない受験生にとっては暗記作業が多くてつらくなる、という懸念がよく聞かれます。確かに、中学受験の社会入試問題では地名や歴史用語を漢字で正確に書くことを求められることも多く、用語の理解や定着は入試本番で合格ラインの得点をとるためには必要不可欠です。しかし、地名や歴史用語を始めから一問一答的に、機械的に覚えて暗記をしようとすると"暗記学習"が苦痛になるのは当然と言えます。むしろ、社会学習の本来の要諦である、単元やテーマの体系的な理解に、社会を学習し始めた方や社会学習が苦手な方は徹するべきだと、私は考えます。
社会の勉強法基本編:「体系的な理解」を身につけるために
社会科の体系的な理解とは?例えば、歴史について、平安時代であれば貴族(藤原氏)が中心の社会で平安京(京都)を中心に貴族による文化(国風文化)が営まれた時代で十二単という着物を着たお姫さまがいたイメージとか、江戸時代であれば徳川氏が征夷大将軍となり江戸幕府を開き、武士が支配層となり、各地に藩やお城ができた時代でちょんまげ頭で刀を持った武士がいたイメージとか、どのような人物が支配層にいて、服装や社会のイメージをおおまかにでも把握できることです。そのような「体系的な理解」ができてこそ、地理分野にしても歴史分野にしても、個別の事項や用語がスムーズに理解できるようになります。
【資料1】
問 1868年に明治天皇の名のもとで五か条の誓文が出されました。五か条の誓文の内容としてあきらかに誤っているものを、次のア~エから1つ選び、記号で答えなさい。
ア 政治は会議を開いて、みんなの意見を聞いて決めよう。
イ 国民が心を合わせて、国の勢いをさかんにしよう。
ウ 憲法をつくって、これまでのよくないしきたりを改めよう。
エ 知識を世界から学んで、天皇中心の国家をさかんにしよう。
【資料1】はかつて開成中学校(東京都荒川区)の社会入試問題で出題された問題のひとつです(表記は一部改変をしています)。1868年に出された五か条の誓文(五か条の御誓文)は小学校の歴史の教科書や中学受験向けの歴史のテキストや参考書にも記載があります。しかし、その内容を細かく確認・理解をしている人は少ないのではないでしょうか。開成中のこの問題は、もちろん五か条の誓文全5条の内容を細かく確認・理解をしていれば解くことができる問題ではあるのですが、明治時代に関する体系的な理解があれば、五か条の誓文のすべてを理解していなくても解答可能なのです。
この問題の正解は「ウ」です。「ウ」には「憲法をつくって」という表記がありますが、日本において欧米のような憲法(制定)に関する議論がなされるようになったのは、1868年より後に起こった自由民権運動や(不平等)条約改正が契機でした。このような「体系的な理解」があれば、五か条の誓文に関する細かな理解はなくても、明治維新当初の時期はまだ憲法制定の議論はなかったのでは、との推察から「ウ」が不正解と判断することが可能です。
では、社会科の「体系的理解」を身につけるためには、どのような学習をしたらいいでしょうか?社会科も小学校での教科科目ですから、本来は小学校の授業や教科書での学習ということになります。実は小学校の近年の教科書は非常に工夫されていて、挿絵や図表がわかりやすかったり、QRコードをスマホやタブレットで読み込んで、動画などで補足説明がされたりするものもあります。また、どの中学校の入試も小学校での学習範囲を基本線とした出題ですから、地理分野でも歴史分野でも、どこまでの内容・用語が中学入試の出題範囲か、逆に言えば、覚えなくてもいい用語(地名や人物名など)の範囲を確認するうえでも、教科書は特に有効な学習ツールです。
しかし、小学校での社会科の授業進度(歴史分野の学習が終わるのが小6秋、それから公民分野)に基づく学習で中学入試に向けた受験勉強を進めるのは時期的に現実的ではありません。中学受験のための社会、特に歴史分野や公民分野の学習は小学校の授業進度に関わらず進める必要があります。小学校の教科書の先取りの読書も有効ではありますが、先ほどから述べている社会科の「体系的な理解」、すなわち事象の因果関係などの流れや(歴史分野)人物、建物や服装などの文化を視覚的に理解できるという点で、学習まんがや学習アニメなどの動画コンテンツの活用をおすすめしたいと思います。
社会の学習の初歩にあたっては、学習まんがや学習アニメなどの動画によるイメージの把握や「体系的な理解」から始められると、初学の単元やテーマもスムーズに進められると思います。
とはいえ、学習まんが、アニメ、動画を観ただけで中学受験の入試問題が解ける訳ではありません。歴史分野でも地理分野でも、学習まんが、アニメ、動画が進んだら、塾のテキストや紙面媒体の参考書、(地理分野)地図帳、(歴史分野)歴史学習用の図説(写真や絵柄も掲載されている学習用の資料集)も使用した学習に入っていきます。そのなかで初期に重要なのは、用語や地形などを書き込むワークブック型の書籍を使っての学習です。地理分野の学習においては都道府県や平野、湾岸、半島などの位置やかたちを、歴史分野においては歴史上の出来事が起こった場所、城や寺院などの地図上の場所などを、地図帳や参考書を参照しながら、ワークブックに書き込んで覚えていきます。このような学習を経て、体系的な理解が進んだ段階で、地理分野にしても、歴史分野にしても、参考書やテキストによる単元やテーマに関するより深い学習と用語の理解・記憶(結果としての用語暗記)が進んでいきます。
今回は中学受験の社会について、科目の特徴や勉強方法について述べてきました。社会科はやみくもに学習をしようとすると勉強する範囲が無限大に思えてしまい、何を、どのように学習をしていいのかがわからなくなってしまう科目でもあります。塾に通われている方は塾のカリキュラムや塾の先生の指示に従いながら、他方、塾に通われていない方はまずは小学校の教科書(地理分野、歴史分野、公民分野)の記載範囲を、学習まんがや動画も活用しながら、「体系的な理解」を心がけていきながら学んでいきましょう。社会科は努力が実を結びやすい科目です。効率的な学習により、中学受験における社会が皆さんの合格を大きく後押しする科目、得意科目となることを願っています。
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関東関西有名中学入試分析【中学受験 社会の勉強法をお教えします!(受験生編)】
<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>