2025/02/03
関東関西有名中学入試分析【中学受験直後の時期 新中学生と保護者のポイント】
今年の中学受験を終えられた受験生のみなさま、保護者のみなさま、まずは本当にお疲れさまでした。第一志望校に入学を決められた方もいらっしゃれば、当初の志望校とは異なる中学校に進学予定の方もいらっしゃるかもしれません。
前回のコラムで「中学入試に挑む小6生のみなさんと保護者様に向けた内容は(前回で)最後」と述べましたが、今回は特別編として、中学受験を終えた新中学生とその保護者の方が小学校卒業までの時期に留意をすべきポイントについて述べていきたいと思います。
INDEX ポイントその1 受験直後の時期の新中学生のすごし方 |
ポイントその1 受験直後の時期の新中学生のすごし方
【まずは休養をしっかりと】
中学受験を終えられた小6生のみなさんは程度の差こそあれ、本来やりたかった様々なことを我慢して受験勉強に打ち込まれていたかと思います。当然、精神的にも肉体的にも、疲れがたまっているのではないでしょうか。次のステップにスムーズに進むためにも、まずはしっかりと休養をとることが大切です。しっかりと睡眠と食事をとり、小学校通学を再開し、体調と通学のリズムを整えていきましょう。小学校と比べると、中学受験を経て入学する中学校はご自宅から場所が離れている方が大半だと思います。電車やバスなどの公共交通機関を使って、通学に長い時間を要する方もいらっしゃるでしょう。小学生の時期と比べて、中学生になったら、起床時間もより早くする必要があると思います。冬の今の時期、早速、中学生になってからの起床時間にしましょう、とは言いませんが、今までの(小学校通学に間に合う)起床時間には規則正しく起きて、通学までの時間はゆとりをもって過ごせるといいでしょう。理想を言えば、時間に余裕があり、かつまだ寒く運動をするのが億劫になりがちなこの時期こそ、読書に勤しんで欲しいと思います。
【小学校の友だちとの交流を大切に】
公立の小学校から公立の中学校に進学する場合、同じ小学校の同級生と同じ中学校に進学し、小学校での友だち関係は続くことになります。他方、中学受験を経て中学校に進学する場合、たまたま同じ小学校からの友だちが同じ中学校に進学することもあるかもしれませんが、原則的には新入生がそれぞれ異なる小学校から入学し、友だちづくりも中学校から再スタートとなります。もちろん、入学する中学校での友だちづくりはとても重要ですが、今の小学校生活での友だち関係も、これからの中学校での友だちづくりにも勝るとも劣らず大切なのです。
特に私立中学校の場合、入学者やその保護者は中学校の教育方針や校風を理解し、納得して入学します。また、一般的に偏差値で測られる中学受験の難易度や受験生の学力水準に合った中学校に進学をします。つまり、受験を経て入学をする中学校の場合、同級生となる生徒(やその保護者)は自分と同じような価値観や学力水準を持っていることが多いと言えます。他方、公立、国立、私立を問わず、自分の進学先と別の中学校に進む同級生は、自分とは異なるものの考え方や学力を含めた個性を持っている場合が多いと言えます。
中高一貫校の6年間、同じ中学校・高校では一生の親友に出会える機会に溢れています。一方で、他の中学校に進学する友だちは自分とは異なる個性をもとに、自分とは違う進路や自分が今後接することが少ないかもしれない職業やキャリアを進むこともあり得るでしょう。また、中学校・高校生活で悩みができた際、学校の人間関係に縛りがない、また価値観が異なる別学校に通う友だちに相談をすると、自分には思いもつかなかった解決策やアドバイスを話してくれる可能性もあると思います。
自分の視野や人間性を広めるにあたっても、違う中学校に進学することになる友だちとの交流を、今も、そして今後も、大切にしていきましょう。
【合格のごほうびは?】
合格を勝ち取った小6生のみなさん、ごほうびはいただきましたか?(笑)。既に何かのプレゼントをもらったり、旅行やお食事の予定を組まれている方もいらっしゃるかもしれません。長年、中学受験生を見てきた、いち受験指導者としての私見として読んでいただければ幸いです。
小学生への「ごほうび」と言うと、お菓子やおもちゃなどの品物のイメージもありますが、中学受験を乗り越えた「ごほうび」という観点で考えると、受験生であったお子さまご本人だけでなく、受験のために共に頑張ってきた保護者の方、ご家族皆さんに対する「ごほうび」と考えてもいいと思います。中学受験をともに乗り越えた家族へのねぎらいやリフレッシュという意味では、品物よりは家族全員にとっての思い出にもなる旅行がいいのではと考えます。
理想を言えば、中学受験で学習をして興味を持った事項と関係があるところに行かれることをおすすめいたします。社会であれば古代の遺跡や寺院、城跡、理科であれば科学館や星空がきれいに見える場所、天文台などです。もちろん、ご家族共通の好みやレジャーに関することでもいいと思います。大切なのは、中学受験を家族みんなで頑張ってきたことへの「ごほうび」と思い出づくり、次のステップに向けてのリフレッシュとなることです。また、旅行計画について受験生であったご本人に調べてもらったり、プランニングをしてもらうことも、考える力を養うことにもつながります。そもそも「ごほうび」はご家庭個々に考えることではありますが、参考となれば幸いです。
ポイントその2 保護者の中学準備事項
中学受験に関するあらゆることは保護者の方が計画を立てたり、方向性を決めてきたりしたかと思います。私立や国立の中学校、公立の中高一貫校に進学するにあたっても、公立の一般的な中学校に進学するとは異なる視点での準備が必要になります。中学進学にあたっての準備事項のポイントについて、述べていきたいと思います。
【大学受験の変化状況の確認】
私は今現在も、中学受験のみならず大学受験の指導にも携わっています。25年以上、受験指導の現場に関わってきましたが、中学受験に比べて大学受験の変化・変動の大きさを感じています。今年中学校に入学される新中学1年生の皆さんの多くが大学受験をむかえる6年後には、さらに変化が増しているものとみられます。まだ早いかもしれませんが、6年後の変化を見据えて冷静かつ余裕をもった進路選択ができるためにも、今現在の大学入試の動向を知っておくことは新中学生の保護者にとって有益だと考えます。特に、保護者の皆さんの世代の「大学受験」とジェネレーションギャップが生じている項目については要注意です。
保護者の皆さまが学生時代だった頃と比べて大学や大学入試の変化として大きいものとして、ここでは、①大学入試の複線化、年内合格方式の増加、②大学の競争激化、淘汰・統廃合の増加、③大学入試への英語の外部試験・資格導入の増加、の3点をあげたいと思います。
①大学入試の複線化・年内合格方式の増加
国公立大学への入学を希望する場合、原則として、1月中旬に大学入学共通テスト(旧・大学入試センター試験)を受験し、その後、2月25日以降に実施される各大学の二次試験を受験するという流れとなっています。今でもこのような「一般選抜」の流れは変わってはいません。しかし近年では、国公立大学のなかでも「一般選抜」とは異なる方式での入試や募集定員も増えました。いわゆる「学校推薦型選抜」や「総合型選抜」にあたる入試方式です。一般選抜とは異なり、学力中心の二次試験を課されることはありませんが、大学入学共通テストの受験が必要なケースと必要でないケースとに分かれてきます。大学入学共通テストの受験が不要な入試の場合、年内で合否が決まることもあります。
一方、私立大学の入試はどうでしょうか。私立大学入試において年内に合格が出るのは、以前は指定校推薦入試と自己推薦入試やAO入試、スポーツ推薦などと呼ばれていた、現在の総合型選抜に相当する入試ぐらいでした。大学入学共通テストが終わった1月終盤から国公立大学二次試験(前期試験)が始まる2月25日よりも前の時期までに、各大学が一般入試を実施してきました。今でもほとんどの私立大学は「一般選抜」を実施していますが、近年では年内に合格発表が出される入試方式を採用している大学やその募集人数が増えています。
このような大学入試の複線化や早期化の流れは、中高一貫校生にとっては(高校受験の時期を必要とする中高生と比べて)有利な状況と言えるかもしれません。その理由は中3生の高校受験に時間やエネルギーを費やす必要がない分、大学を含めた進路について考えたり、進路のために必要な教科・科目の選択や学習に必要な時間がまとまって確保できることにあります。例えば、指定校推薦や総合型選抜で大学進学を目指す場合、志望理由書の提出や面接・口頭試問で問われるため、志望する大学や学部、大学で学びたい、研究をしたい分野を少なくとも高3生の夏までには具体化する必要があります。大学での学びや進路、職業について、中3生の時期(以前)からじっくりと考えることができる、早期に具体化する時間的な余裕がある分、高校受験が必要な中高生よりは中高一貫校生のほうが近年の大学入試の変革にはアドバンテージがあると言えるでしょう。
②大学の競争激化、淘汰・統廃合の増加
ここ数年、日本の大学を巡る環境は大きく変化し、上記に示したような大学入試の変化のみならず、大学そのものの変化や競争の激化、難易度の変遷、さらには大学の淘汰(募集停止や閉学)や統廃合も進んでいます。新中1生の親御さんが高校生・大学生だった頃(今から20年前後前と推察いたします)と比べて、国公立大学においては東大や京大などの旧帝大、私立大学においては早稲田大、慶應義塾大の早慶が、それぞれの最難関グループのポジションにあることは変わりありませんが、上智大やMARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)、関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)、日東駒専(日本大、東洋大、駒沢大、専修大)など、私立大学を中心に、20年(以上)前と比べて、いわゆる偏差値で測られる入試難易度や就職先、学生の気質などに大きな変化が現れている大学もあります。
例えば、女子大学は共学化や募集停止をする大学が近年急増し、津田塾大、東京女子大、聖心女子大、神戸女学院大など、長い歴史を持ち、社会的評価が現在でも高い名門校においても、あくまでも大学受験予備校の模試偏差値ベースの話にはなりますが、保護者の皆さんが学生だった頃からは入試難易度が大きく易化しているケースが目立ちます。私立大学の医学部(医学科)においても、従来は医学部の創設時期に応じて、創設が古い大学医学部(特に戦前から旧制の大学であったところ)は相対的に難易度が高く、創設が新しい大学医学部は相対的に難易度が(医学部入試のなかでは)易しめとされてきましたが、医学部創設が近年である東北医科薬科大や国際医療福祉大は新設の私立大医学部の中では難易度が高めとなり、また創設が古いなかでも順天堂大は以前よりも入試難易度が高くなりました。いずれの大学医学部とも、高額になりがちな私立大医学部の学費を低めに設定したり、給付型の奨学金制度を充実させたりしたことが難易度上昇の大きな理由となっています。
このように、保護者の方の学生時代と各大学の評価や難易度が変わってきていること、ひいては現在の中高生の各大学への評価や嗜好も、親御さん世代とは異なる可能性があることも踏まえて、次の進路となる大学選びにおいての保護者としてのあり方や方向性を、時間をかけて情報を収集しながら考えて欲しいと思います。
③大学入試への英語の外部試験・資格導入の増加と英語学習の早期必要化
大学入試において、英語という科目は文系・理系を問わず、ほとんどの大学受験生に必須となるものです。このことは親御さんが大学受験生であった頃も、そして今も変わりはありません。ただ、以前は大学入試センター試験(1月中旬)や個々の大学の入試(1月終盤から2月にかけて)で英語の試験が課されるのが普通でしたが、今では、一部の私立大学では、個別入試では英語の試験はなく、英語の入試得点は、外部の英語検定や資格試験の級やスコアで決定するところも増えてきました。特に首都圏の難関私立大学ではこのような英語外部試験や資格利用の傾向が強く(上智大や立教大など)、また①で述べた総合型選抜や指定校推薦においても、英語外部試験や資格が出願要件または加点材料となるケースが増えています。
つまり、他科目に比べて、英語は入試方法によっては早期に実力を仕上げる必要がある、ということです。この流れは元々、現在の大学入学共通テストの導入が決定した際の、わが国全体での入試制度改革で決まったものでした。大学入学共通テストの導入にあたって、当初は将来的には共通テストからは英語の試験は廃止し、代わりに英検やTOEFL、TOEICなどの英語能力に関する外部試験や検定のスコアを大学入試の英語の得点として換算・加点する方向性が文部科学省によって決められました。しかし、英語の外部試験の機会が少ない地方の受験生に不利だという声や英語の外部試験・検定ベースの教育が高校の英語授業に適合するのかなどの声もあり、当面は共通テストの英語試験を維持し、私立大学においても、英語外部試験・検定の利用は各大学に委ねるという方針に変わりました。首都圏以外の私立大学では、一般選抜においては英語の試験科目を維持している(英語外部試験・検定の利用と選択ができる)ところがほとんどですが、首都圏の私立大学においては、大学入学共通テスト利用方式を除き、一般選抜において事前の英語外部試験・検定の級・スコア提出がないと受験ができない制度となっているところもあります。
今後、このような英語外部試験・資格試験の大学入試出願時までの受験必須化は増えていく可能性があります。その場合、英語については入試出願時には結果が出ている時期までに外部試験や資格試験を受ける必要があります。一般選抜の出願が高3生の年始1月とすれば、前年の10月頃までには外部試験や資格試験を受験している必要があります。総合型選抜や指定校推薦の場合は高3生の1学期(まで)には結果がわかるものである必要があります。このような場合、数学や国語、理科系・社会系科目よりも早く、英語に関しては学力や得点力を仕上げる必要があります。
【IT機器の準備・使い方】
今では小学生でもスマートフォン(スマホ)やタブレット、パソコンなどのIT機器を使いこなすケースが増えてきました。他方、まだスマホは持たせていないご家庭や持たせるべきではないと考えているご家庭もあるかと思います。
公立中学生と比べて、私立や国立の中学生のほうが、スマホなどのIT機器の利便性や必要性が高くなります。公立中学校に比べて私立や国立などの中学校は自宅から学校までの距離が遠距離となりやすく、公共交通機関を利用して通学する私立・国立(公立中高一貫校の)中学生も多く、保護者との連絡ツールとしての機能や利便性の向上もあり、またGPS機能などを使った子どもの安全確保の機能もあることから、実際にスマホや携帯電話を持っている私立・国立の中学生の割合は公立中学生よりは多いと推察されます。また、英語や国語などの辞書機能やインターネットを使っての調べるためのツールとしても、今では中学生でもスマホやパソコン、タブレットは必要性が高まってきました。とはいえ、スマホなどのIT機器は適切かつ理性的に使用をしないと、インターネットやアプリを通じたトラブルや事件、犯罪に中学生が巻き込まれてしまう危険性がゼロではありません。またゲームや動画、音楽鑑賞などにのめり込んでしまう、その結果、学力低下のみならず金銭的なトラブルが生じてしまう事象も、残念ながら起こっています。
このようなIT機器に対して、私立、国立、公立のいずれの中学校においてもIT機器の使い方やマナー、リスクマネジメントなどを教育、指導をするようになっています。スマートフォンと呼ばれていなかった時代においては、携帯電話は学校には持ち込み不可、またはどうしても連絡用として学校に持ち込む場合でも登校時に(下校までは)担任の先生に預けるなど、校内で使用禁止としていたケースが多かったのですが、現在では先に述べた辞書機能や調べ物のツールとして、スマホやタブレットを授業時に使用可能としているところが増えています。学校によっては学校指定のスマホやタブレットを貸与または購入をさせて、教科学習や家庭学習、生徒・学校間連絡などのツールとして使用しているところもあります。このような学校用のスマホやタブレットの使用が決まっている場合、それとは別に私用のスマホやタブレットなどを持つべきなのかは、その用途や機能、スペックに応じて、ご家庭個々に考えていくことになります。
既にIT機器を持っている、使っている方にもあてはまりますが、これから中学進学にあたって、IT機器の使用を開始する新中学生においても、IT機器を使用する目的や使用方法、リスク、使用上の約束事などを親子でしっかりと話し合ったり、検討していく必要があると思います。また、IT機器に頼りすぎず、例えば、辞書や調べ物においては紙面の辞書や辞典、参考書との使い分け、紙面媒体を使っての調べ方の学習、ノートなどの紙面を使っての文章の書き方、まとめ方など、IT化の進歩の反面で軽視されがちな「アナログな」読み方や学習方法も、引き続き学び続けて習得して欲しいと思います。
<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>