2020/10/12

首都圏有名中学入試分析【中学入試 過去問の活用法】

過去問の活用法 その1 過去問の集め方

中学入試の過去問題は中学校自身が配布をしていたり、販売をしている場合があります。しかし、掲載年数が少ないケースが多く、模範解答のみの記載で解説がなかったりして、自宅学習で使うには使いにくいものもあります。したがって、書店などで販売をされている、出版社が編集・販売をしている過去問を使うのが一般的です。首都圏では声の教育社や東京学参、近畿圏では英俊社などが中学入試の過去問を販売しています。

「古い過去問も解く必要はありますか?」という相談は入試時期が迫ってくると、多くの保護者の方がお尋ねになります。

麻布中や武蔵中(いずれも東京都)など、独特な出題形式や論述問題を課す一部の中学校を志望校とする場合は、独特な入試問題に慣れるためには、古いものも含めて、多くの過去問を解き進めることが有効です。その場合は過去問集を販売している出版社が別途で提供をしている(古い)過去問提供のサービスやAmazonなどのインターネット通信販売で出品されている、古い年度の過去問集を購入するなどの方法があります。

しかし、オーソドックスな入試出題傾向の中学校を受験予定の場合は、現在市販をされている過去問集ベースで十分です。過去問集に掲載されていない回の過去問は、中学校自身が配布・販売をしているものを使うことも可能ですし、併願受験校や第一志望校と入試傾向の似通っている中学校の過去問も解き進めることで、演習量はかなりのものとなるはずです。やみくもに過去問を集めるのではなく、今から入試本番までの残された日数と過去問を解くことができる日数・回数から逆算をして、過不足のない数量の過去問を準備していきましょう。

過去問の活用法 その2 問題・解答用紙ともコピーを使う 制限時間を設ける

過去問はただの問題集ではありません。合格のための戦略を考え、戦術を鍛えるための最も重要なツールとして使うものです。

過去問を解き進める目的は以下の3点です。

➊入試問題の形式や傾向を把握する

➋志望校入試の出やすいところや今の学習課題を明確にする

➌制限時間内に正確に解き終わる技術や体内時計を身につける

3点の中で、秋期から入試直前期において特に重要となるのが➌です。そのために過去問も"実戦的"な使い方が必要となります。

①問題用紙・解答用紙ともコピーをして使う

過去問の問題用紙や解答用紙はコピーをとり、そのコピーに書き込んでいきながら進めていきましょう。

過去問は1回解いて終わりではなく、2回目・3回目と解き直すことや復習に使うことがあり得ます。国語の場合は問題文に線や印をつけたり、算数の場合は余白に計算をしたり、図形問題に補助線や書き込みを入れたり、そのような鉛筆を使った作業は、書き込みのない問題用紙で進めることが重要です。

解答用紙は入試本番と同じ原寸大の大きさで印刷をして下さい。特に記述問題や論述問題で、字数条件がない問題を解くにあたって、出題者が求める条件を揃えた、過不足のない解答文を書くには、入試本番と同じ解答欄の大きさに纏(まと)め上げる練習を積み重ねる必要があります。

字数制限のある国語や社会の記述問題や論述問題において、その問題における配点の満点分をとるためには、制限字数の7割以上の字数の解答文を書くことが必要であると、私は指導をしています。字数制限のない問題であっても、解答欄の7割以上のスペースを埋めることを意識して、記述問題や論述問題に取り組みましょう。

②制限時間を設定して取り組む

入試では、各科目ごとに制限時間が設定されます。いくら実力を身に着けても、問題を解く時間や解答文を書く時間が遅いと、解答用紙に書き込む時間が足りなくて「時間終了」となってしまいます。模試やプレテストでも、同じような「時間終了」という経験をした場合、入試本番で同じことにならないように、制限時間内に解答を書き終えることができるように、正確さを保ちながらも、よりすばやく問題を解き進める「技術」を身につけつつ、入試の制限時間内に仕上がる「体内時計」をつくりあげていくことが、小6生の秋期以降の大きなポイントとなります。

制限時間を設けての過去問演習のポイントですが、以下の3点になります。

➊いつから実施するのか?(実施開始時期)

➋どの曜日・時間帯に実施するのか?

➌その他のポイント

➊の実施開始時期ですが、模試における志望校の合格可能性の判定が50%以上であれば、今からでも実施をして大丈夫です。他方、合格可能性の判定が50%未満であれば、各教科の中で、過去問を進めるにあって、まだ学習が必要な単元や項目があると考えられます。

➋の実施曜日や時間帯ですが、入試自体が午前中や日中に実施されること、集中力や思考力が高い時間帯に過去問演習も進めるべきことを考えて、土曜日や日曜日、祝祭日、学校の振替休日に進めることをお勧めいたします。もっとも、秋期の土・日・祝日には模試や(近畿圏では)プレテストが実施されることも多く、それらも制限時間の中で解くものですから、模試やプレテストも過去問演習の一環と考えながら、「どの中学校の何年度の問題をいつ解くか」のスケジュールを決めてきましょう。

➌制限時間を設けた過去問演習のその他のポイントとして、

・国語 算数 理科 社会 (英語) どの教科を進めるのか? 全教科とも進めるか?

・制限時間は入試本番と同じ時間内でいいのか?

模試を解く際、「時間が足りなかった」と思う科目はありますか?長文読解や(記述問題や論述問題の)文章作成が必要な国語や計算力、筆算の必要な算数で、制限時間内にすべての問題を解き進めることができない、ということがよくあります。もっとも、理科や社会でも、長文を読ませたり、記述問題や論述問題、理科の計算問題で解答に時間がかかる問題を出題する中学校もありますが、理科社会とも、時間のかかる問題は国語力と算数力が関係するものです。

それでは国語をベースにして、制限時間内の過去問演習の進め方を、制限時間の設定方法も含めて、具体的に説明をしていきたいと思います。

国語を例にした過去問演習の方法

①国語が苦手なら「読み方」と「解き方」を丁寧に身に着けることからスタート

②入試本番と同じ制限時間で解き、得点率が安定しているなら5分から10分短く解く

③志望校独特の問題対策は過去問演習と別に対策を

①国語が苦手なら「読み方」と「解き方」を丁寧に身に着けることからスタート

国語の中学入試問題の中核は文章読解です。文章読解問題の「読み方」と「解き方」が身に着いていないまま制限時間内に過去問を解いても、時間が足りない、仮に時間が足りたとしても、直観で解いた問題が多く、得点率が低い、ということになりがちです。

直近で受験をした模試の国語の時間が足りず、大問3つ以上の設問が白紙のまま解答することができなかったり、そもそも、読解問題の「読み方」や「解き方」を習っていない場合は、いきなり制限時間を設けた過去問演習を進めることはせず、まずは塾の授業で「読み方」や「解き方」を習い、身に着けていきましょう。そして、次回の模試で制限時間内に解けるための解法学習と演習を進め、その模試の国語問題が制限時間内に解けるようになれば、過去問演習のスタート時期となります。

②入試本番と同じ制限時間で解き、得点率が安定しているなら5分から10分短く解く

国語を苦手としている受験生は①のステップを踏んでから、国語が得意、または国語が得意という意識はなくても模試では制限時間内に解けていて、模試での国語の偏差値も安定している場合は第一志望校や併願校、第一志望校と入試のレベルや作問が似ている学校の過去問を、入試本番と同じ制限時間のもとで解いていきましょう。

新しい過去問から?古い過去問から?など、過去問を解く年度の順番についてですが、国語に限らず、第一志望校の最近4回分は入試直前時に解くために残して、それら以外の過去問について、

➊受験は考えていないが第一志望校と問題のつくりが類似し、かつ合格偏差値も近い学校の過去問(できれば国語の制限時間が第一志望校と同じ問題)

→➋志望順位の低い順番で受験予定校の過去問

→➌第一志望校の過去問

いずれも古い問題(ただし、第一志望校以外は過去5年以内のもの)から解き進めていきましょう。 入試本番と同じ制限時間内で過去問を解きますが、演習量をこなしていくうちに、入試と同じ制限時間内に解き終えることができ、かつ自己採点でも入試本番の合格最低点(の割合)を余裕をもって超えることができるようになれば、入試本番の制限時間より5分または10分短く設定をして、または自宅ではなく、塾の自習室など、入試本番により近い環境のもとで引き続き過去問演習を進めましょう。

③志望校独特の問題対策は過去問演習と別に対策を

中学受験の国語入試問題では、説明文や小説などを読んで設問に答える問題を中心に、漢字や熟語、ことわざ、文法の知識を問う問題もどの中学校でも出題されます。他方、近年では、作文や小論文の形式の問題も国語の入試のなかで出題されることも増えてきました。

問 もしあなたが極限の状況で「国を選ぶか、友を選ぶか」の選択に迫られた時は、どちらを選びますか。

その理由とともに百字以内で答えなさい。

横浜雙葉中

この問題は昨年の横浜雙葉中の国語入試問題の中で出題をされたものです。理由を明確にして、自分の考えを説明していくこのような問題は、作文問題というよりは小論文問題とも言えるものです。小論文の書き方や論証の仕方をあらかじめ学習していないと、単に「国が重要だから」とか「友だちは大切だから」とか、論証がない文章となる可能性がありますし、そもそも、「何を書いたらいいのか?」を考えるだけで時間が終了してしまいます。

このような小論文問題など、一般的な国語入試問題とは異なる問題が志望校で出題をされている場合、該当するような問題の解き方を習っていないのであれば、過去問演習では、このような問題は飛ばして解き進めてください。そのうえで、小論文や作文など、塾などで解き方を習い、問題演習を重ねてから、過去問演習でも解くようにしていきましょう。

国語をベースにして、制限時間を設けた過去問演習のポイントを説明してきましたが、算数の過去問演習の進め方も、基本的には国語と同様です。つまり、

①算数各単元の「解き方」が身についているか確認をする。「解き方」が身についていない単元があれば、過去問演習に入る前に、速やかに「解き方」を習い、問題演習で定着を図る。

②入試本番と同じ制限時間での過去問演習を進める。

③志望校独特の出題形式があれば、過去問演習とは別個の対策を。

これらのポイントに留意をしながら、過去問演習や入試対策を進めていきます。

過去問は単なる問題集ではなく、志望校合格のための「案内図」と言えるものです。過去問を解くことによって自分の「合格への道しるべ」を確認し、無理なく、かつ効果的に受験勉強を進めていきましょう。

<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>