2026/04/06
関東関西有名中学入試分析【早慶明の中学入試からみる中学受験算数のポイント(発展編)】
中学受験の算数について、前回のコラムでは関関同立(大学)系列の中学校の算数入試問題を通じて、中学受験算数の基本的なポイントを述べてきました。前回述べた内容の学習を進める前提として、今回は中学受験算数の発展的学習のポイントを、首都圏にある難関私立大学(早稲田大学、慶應義塾大学、明治大学)系列の中学校の算数入試問題からピックアップをして述べていきたいと思います。これらの大学系列の中学校志望の方はもちろん、入試的に難関校とされている中学校志望で算数の志望校対策学習を効率的に進めたい方、難関校志望ではないけれども、中学入試で算数を得点源科目としたい方など、中学受験算数の発展的学習を必要とする皆さんの参考となれば幸いです。
※(補足)今回とりあげる算数の入試問題は2025年実施分の分析に基づくものです。また、早稲田大学の系列中学校は4校、慶應義塾大学の系列中学校は3校、明治大学の系列中学校は4校(いずれも2026年4月現在)ありますが、今回取り上げるのはそれらの中学校のなかでも一部の中学校についてとなります。今回取り上げる中学校以外の中学校の入試問題やその傾向については、当該中学校の入試過去問題を必ずご確認下さい。
早慶明の中学算数入試のポイント
共通点その1:基礎重視、応用勝負など、学校ごとに出題傾向や難易度に特徴がある
【資料1】慶應中等部 大問1,2
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【資料2】早大学院中 大問2
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【資料3】明大明治中 大問4,5
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【資料1】は慶應義塾中等部(共学校 以下略称慶應中等部)、【資料2】は早稲田大学高等学院中学部(男子校 以下略称早大学院中)、【資料3】は明治大学付属明治中学校(共学校 以下略称明大明治中)、それぞれの算数入試問題からの一部抜粋になります。
慶應中等部は中学入試算数の典型的かつ標準的な内容のものが中心となっています。前回のコラムで取り上げた関関同立系列の中学校の算数入試問題にも似ていると言えます。もっとも、慶應中等部は慶應義塾大学の一貫教育校であり、同校は入試合格最低点や算数等の各教科の受験生平均点を公表はしていませんが、合格のためには高い正解率が求められます。特に毎年の生徒募集人数が男子よりも少ない女子においては、合格のためには男子以上の高得点が求められます。合格最低点(正解比率)が6割前後の中学校が多いなか、同校の合格最低点比率は8割以上と推察されています。
早大学院中は【資料2】のような手順や条件の書かれた文章を読ませたうえで複数の設問を解かせる大問を毎年出題しています。一見すると数学の問題のように見えますが、小学算数の学習内容で解けるような問題にはなっています。慶應中等部と比べると、全体的に難易度の高い、深い思考力や問題演習による慣れが求められる問題が多くなっています。このような算数の入試問題傾向は国公立大学や医学部医学科への大学進学志向の高い進学校、公立中高一貫校ではよく見られる傾向ですが、大学一貫教育校では珍しい傾向と言えます。
明大明治中は、問題自体は中学受験用のテキストや参考書でよく習うタイプの問題が多く出題されていますが、設問の文章が長めであり、長文の設問をしっかり読み、設問の条件に合った計算式や図をつくることができるかが算数高得点のポイントとなります。
共通点その2:中学受験算数の標準的なテキストレベルの学習は前提となる
早稲田大学、慶應義塾大学、明治大学、いずれもわが国を代表する私立大学であり、中学入試においても、中学高校を経て当該大学に入学試験(一般選抜)を経ないで入学が可能な早大学院中、慶應中等部、明大明治中はいずれも人気も入試難易度も高い中学校です。
資料の1~3で提示した算数の入試問題も、小学校の授業や教科書ベースでの学習のみで解くのは困難であり、中学受験専用の教材や塾などを使った"受験勉強"が必要となります。後にも述べますが、特に応用問題の出題も目立つ早大学院中や明大明治中を目指す場合、応用問題対策を進める観点からも、小6の夏ごろまでには中学受験算数で必要かつ標準的とされる解法や公式を体系的に学習し終えることが求められ、そのために塾に通う、もしくは中学受験用の算数教材を速習する必要があります。
このあとは具体的に、慶應中等部、早大学院中、明大明治中をそれぞれ第一志望校とする場合、それぞれの算数学習のポイントを述べていきたいと思います。
慶應中等部志望の場合:標準的問題演習の徹底とケアレスミスを少なくする
慶應中等部のように、入試難易度(偏差値)と比べて易しめの問題が中心の出題となる場合の算数学習のポイントは中学受験算数のあらゆる単元・テーマの基本的な解法を網羅的に身につけ、標準的な難易度の問題演習を幅広く進めることとケアレスミスを最小化する努力を重ねることです。小6の夏休み終了までには中学受験向けの標準的な参考書、テキストでの解法学習は終了させ、その後は共学校や女子校の過去問を中心に、慶應中等部と算数入試問題の出題形式や難易度の似通った問題を、制限時間を設けて毎日解き進めていきましょう。早大学院中の事項でも述べていますが、男子校は一般的に算数問題の難易度が高めのところが多いので、慶應中等部第一志望であれば共学校と女子校中心の問題演習から進めるのがいいでしょう。
問題難易度が低めで入試合格のためには8割以上の高得点が求められる場合、特に重要になるのが計算ミスなどのケアレスミスを最小化することです。ケアレスミスを減らすには、日頃から制限時間を設けた問題演習を進め、時間制約があるなかで工夫をして、正確さを保ちながら、途中計算や図表を素早く書き進める練習が重要です。筆算をせず頭だけで計算をするほどミスが起こりやすくなります。制限時間の中で、正確かつすばやく正答につなげるための途中計算の練習とそれによる正答率の測定、正答率が高くない場合の解法や途中式の確認・練習、この二つが慶應中等部のような学校の算数対策では特に重要となります。
早大学院中志望の場合:算数が得意な場合と苦手な場合で変わる 男子校・公立一貫校の過去問も
【資料2】で早大学院中の特徴的な算数入試問題の一部を示しましたが、その他の算数問題も難易度が高めで、同中の算数入試で高得点をとるためには高度な算数の実力、得点力が必要となります。その分、慶應中等部と比べて、入試での合格最低点(正解比率)が低めと推定されます。
先に述べた慶應中等部と比べると、同校は算数が得意な受験生向けの入試問題と言えます。算数が得意または好きな受験生であれば、塾や自己学習でハイレベルな問題にも多く当たりつつ、【資料2】のような条件や手順を読み進める問題についても、設問文の読み方を習い、同校の過去問のみならず、難関とされる男子校や公立中高一貫校の算数過去問のなかで傾向が似ている長文の問題を解き進めていくといいでしょう。もちろんその前提として、中学受験の算数(特殊算を含めた)の様々な解法や公式を早めに習い、先述の慶應中等部や関関同立系の中学校の算数入試と同水準の問題は(小6夏休み頃までには)ほぼ解ける必要はあります。
他方、算数が苦手な受験生の場合はどうでしょうか。算数が苦手でも、中学受験の基本的~標準的(慶應中等部や関関同立の中学校の入試問題水準)な問題は解ける実力を身につける必要があります。それと並行して、国語、理科、社会、他教科で得意教科、入試で高得点を狙える教科をつくる必要もあります。そのうえで、【資料4】のように難度は低くはないけれども丁寧に解き進めれば正答が導き出せる問題と単元を抽出して、早大学院中や他の難関男子校の過去問の水準の問題演習にあたるなど、算数での入試目標得点率から逆算をしてから、応用問題演習を進める単元・テーマを決めるといいでしょう。
早大学院中が男子校であることもあり、先述のとおり、同校は私立大学の一貫教育校のなかでは算数の入試問題傾向が男子校の難関進学校や公立の中高一貫校の適性検査問題と類似していることが多く、同校第一志望であれば、同じ早稲田大学系列であっても早稲田実業中よりは(男子校の進学校でもある)早稲田中、そして武蔵中、海城中などの男子校進学校、余力があれば都立小石川中等教育学校などの公立一貫校の過去問のなかから出題内容や分量が類似する問題を演習問題としていくといいと思います。
明大明治中志望の場合:長めの設問文の問題演習を 途中式も大切に
明大明治中の算数入試傾向の特徴は設問文が長い文章題も出題されることと図形問題が(他校よりは)少ないことです。【資料3】では特に長文となっている大問を示しましたが、他にも、他校の文章題よりは設問文が長めの文章題が大問で合計4つ出題されています。
明大明治中のホームページのなかに「中学入試の出題方針」という記載があります。そこでは算数について、『(以前省略)2から5までの(文章題の)問題は必ず、「式や考え方」を書いてください。これは受験生の考え方を見るためです。答えが不正解でも途中式が正しければ、部分点が出ることもあります。「式や考え方」では、線分図や面積図、場合によっては方程式を使ってもかまいません。(以下省略)』
(※引用明大明治中HP:https://www.meiji.ac.jp/ko_chu/admission/info_jr.html)と書かれており、文章題の出題の意図が記載されています。すなわち、設問文を丁寧に読み、出題のポイントを正確に把握したうえで、問題を解く過程の計算式や図、表が書きあらわすことができているか否かが重要になります。
明大明治中のように長文の文章題が算数において多く出題される中学校を受験する場合、①文章題で問われる様々な解法や公式を理解すること、②理解をした解法や公式を使い、手を動かし、筆跡を残しながら解き進めること(短い設問文の問題を中心に)、③徐々に長い説明文の問題にもあたり、まずは時間をかけてでも正答に到達するための過程(計算式や図表など)を書き進めること、④長い説明文の問題を制限時間を設定してランダムに解き進めること、の4つのプロセスを経た学習が必要となります。①と②のプロセスは、他の中学校の算数受験対策と変わりませんが、③・④のプロセスでは明大明治中の過去問と同程度の文章量がある問題を選んでの問題演習となります。中学入試算数の問題集や過去問題集のなかから(明大明治中と)入試難易度の程度にこだわらず、明大明治中の過去問と同水準(以上)の文章量のもの、【資料3】のように大問1つのなかに2つの設問(小問)がある問題を選んで解き進めていくといいでしょう。
今回は慶應中等部、早大学院中、明大明治中の出題傾向を踏まえて、中学受験算数の発展的学習のポイントや着眼点を述べてきました。三校とも入試難易度も高い人気校であり、算数入試の出題傾向は三者三様ではありますが、中学受験算数の基本から標準の学習をマスターすることが志望校対策の土台となります。
小5までの学年の方は中学受験算数の標準的な学習範囲を丁寧に進めることを意識して学習していきましょう。他方、小6の方で早慶明の系列中学校等の難関校を志望する場合は、できれば夏休みが始まる前までに、遅くとも夏休み期間までには中学受験算数の出題全範囲の標準的学習を終わらせることができるように学習計画の構築や確認をしていきましょう。そのなかで、志望校の入試過去問の出題傾向を確認し、基礎基本を取りこぼさない、ケアレスミスをなくす、長文文章問題に慣れるなど、各自の志望校の出題傾向も踏まえた学習も進めていくといいでしょう。
<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>