2026/05/11

関東関西有名中学入試分析【中学受験算数Q&A ご相談にお答えいたします。】

 中学受験の算数について、前々回と前回の私のコラムでは概要や具体的な対策方法などを述べてきました。今回は、これまでに編集部や私の教室に寄せられた中学受験算数に関する質問や相談にQ&A方式で見解やアドバイスを述べていきたいと思います。

Q:小学6年生の保護者です。今まで中学受験に向けた勉強はしていませんでしたが、本人がある私立中学校にどうしても入学したいと話しています。今から(小学6年生の5月)の算数の受験勉強を開始するにあたり、塾に通うことも含めて必要なこと、重要なことを教えて下さい。
A:まずは小学5年生範囲の定着度を確認することが重要です。そのうえで志望校の算数入試問題の出題傾向・難易度を確認し、次の対策ステップの方向性を決定しましょう。
 今回のご家庭のように残り1年未満といった比較的短期間で受験対策完了が必要となる場合、重要となるのは「入試問題の難易度や出題傾向に合わせた効率的な学習」と「入試に必要な算数以外の科目(国語、理科、社会、英語など)」とのバランスです。
 私立中学校は多数存在しますが、その入試問題、なかでも算数の入試問題の出題傾向や難易度は中学校によって多種多様です。
 まず小学5年生までの算数学習範囲の学習到達状況を確認する必要があります。小学5年生では小数、倍数・約数、約分・通分、合同、平均、速さ、割合など、中学受験算数の基本事項や前提事項を数多く習います。志望校に関わらず、小学5年生範囲の算数学習が定着していないまま算数の受験勉強を進めることは不可能です。小学5年生範囲の算数の学び直しが必要になるか否かを確認することは極めて重要です。
 確認には、小学6年生用の算数の問題集を使用します。巻頭部分の小学5年生学習範囲の復習(まとめ)問題がついている問題集が多いので、そのページの問題を解き、小学5年生範囲の定着度を確認しましょう。特に小数と分数の使い分け、約分・通分、速さ、割合はしくみや基本的な計算のマスターは小学6年生学習範囲や中学受験独特の特殊算の学習に必須です。どの単元・項目も8割以上の正答率が必要です。(ケアレスミスや計算ミスを除き)正答率が7割未満であった場合、当該箇所の単元の学び直しを小学5年生用のテキストや問題集ですばやく進めましょう。小学5年生範囲の学び直しが必要な場合でも、できれば1週間以内で小学5年生範囲の学習は完了させて下さい。

Q:小学5年生の保護者です。小学3年生から集団塾に通い、授業はまじめに受けていて、単元テストでは点が取れるのですが、塾の公開模試やクラス分けテストとなると成績がなかなか上がりません。塾の先生からも何度も注意をされているのですが、字を書くのがきれいではなく、計算の途中式を書かなかったり、書いても書いた式や数字を間違えて失点することが目立ちます。どのようにしたらいいでしょうか。
A:マス目のノートに丁寧に筆算をしながら解き進め、ランダムに出題される問題練習も進めましょう。
 授業の理解度は良く、授業直後の単元・テーマの復習テストは点数が取れている、しかし、模試や出題範囲が広い(もしくはない)長めの時間のテストとなると点数(偏差値)が伸びない、という相談は何度も受けてきました。
 実力・学力がしっかりと身についていないと言ってしまえばそれまでですが、具体的な理由として、①筆算をせずに頭の中でのみ考えて解こうとする②途中式を書く練習量、演習量が不足している③ランダム出題の問題演習不足(復習不足)以上の3点を指摘することができます。

 対策に、①筆算は練習段階ではマス目のあるノートに丁寧に書く練習を進める②テストや模試の復習、および過去問を学習する際は原本をやや大きめにコピーし、途中式が書けるスペースを確保した形式で、少々時間がかかっても途中式を丁寧に書きながら解く③(学校の授業がない)毎週土曜日・日曜日午前中にランダム形式の小問集合問題(例:【資料1】)練習を習慣化して行う
といった方法を示したいと思います。

【資料1:小問集合問題(例)】

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① 本来の入試問題ではマス目のない真っ白な問題用紙や計算用紙に筆算や図・表を書いていきますが、マス目があったほうがきれいに、正確に書きやすいため、練習段階においてはマス目のあるノートや方眼紙を使って、丁寧に書く意識を持ちながら筆算をつくっていきましょう(例:【資料2】)。既に算数が得意、成績や偏差値も上々という方はその限りではありませんが、算数が苦手、もしくは数字を含めた字がうまく書きにくい方は、算数のノートはマス目のあるものを使用することをおすすめいたします。ノート上で線を引く際も、フリーハンドではなく定規を使ってきれいに書くことにこだわることをすすめします(入試本番では定規の使用不可というケースもありますが、練習段階においてはきれいに書くことにこだわり、定規を使う習慣を身につけたほうがいいでしょう)。

【資料2:ノート活用例】

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② 塾のテストや模試を復習する際やテスト・模試の過去問を学習する際は、テスト・模試の原本や原本と同じ寸法のコピーを可能な限りで拡大コピーをして、途中式や図を書くことができる余白部分を確保した状態にするといいでしょう。小学6年生後半期(夏休み明け以降)の入試過去問演習学習の際は入試時と同じ寸法どおりに印刷し、別途、計算用紙が配布される場合は計算用紙も準備し、入試本番の形式に慣れることが重要です。小学6年生の夏休みまでの時期、すなわち算数の実力をしっかりと養成していくことが目的の時期には、問題を解く途中過程を丁寧に確認しながら解くうえでも、途中式や図を充分に書き込むことができるスペースを確保するべきです。

③ 中学入試本番の算数の問題は【資料1】のように、出題範囲が特定されず、様々な単元・テーマの問題がランダムに出題されます。受験生によっては十分に学習していなかった事項や、学習はしたけれども復習や演習が直近ではできず解法を忘れてしまったり、思い出すのに時間がかかってしまったりして、思うような得点ができず、それが合否に影響するケースもあります。模試は出題範囲が掲載された場合であっても、問題は習った時期順や難易度順に限らないランダム形式での出題が基本となります。
ランダム出題の問題演習の進め方ですが、小学6年生かつ小学6年生を含む小学校(教科書レベル)の算数の全範囲の学習が進んでいる場合は、第一志望校よりも難易度(模試判定偏差値で、第一志望校よりも5ポイント以上低い学校が目安)が易しめの中学校の算数入試過去問のうち計算問題と小問集合問題(【資料2】と同じような出題形式の問題)を20分前後の制限時間を設けて、入試本番と同様の形式で(マス目のノートや用紙は用いず)毎週土曜日・日曜日やイレギュラーの祝日の午前中に1日1出題解き進める練習をするといいでしょう。他方、小学5年生(以下)や小学6年生でも中学受験算数の学習開始の時期が遅れ、教科書レベルの小学6年生全範囲の学習が完了していない場合であればランダム問題演習に取り組む必要はまだありません。計算問題集を使った計算問題のランダム出題の問題に取り組むことは有効ですが、小問集合問題においてはまだ習っていない項目も少なくないはずです。まずは現在学習をしている単元やテーマの学習と体得に集中してください。

Q:小学6年生の保護者です。算数・国語・理科・社会の4科目入試の志望校合格に向けて勉強を進めています。塾の算数の先生から「算数は毎日学習時間を設けて下さい。」と言われました。しかし、国語、理科、社会の授業や宿題、予習復習もあり、算数以外の科目の塾の授業がある日は算数の学習ができないこともあります。算数以外の塾の授業がある日も算数の学習はしないといけないのでしょうか。
A:"算数勘"を鈍らせないために、短い時間であっても毎日の算数学習習慣維持が理想。算数は1日のなかでの学習タイミングが重要です。
 算数・国語の2科目受験の場合、算数を毎日学習することは困難ではありません。しかし、算数・国語・理科・社会の4科目受験に向けた受験勉強の中で、塾の他科目授業がある曜日など、算数を毎日学習することは日によって難しいことがあり得ます。他科目の学習が中心となる日においても算数の学習は必要なのでしょうか。
 算数は少ない時間であっても毎日学習を進めるべき科目です。理由は①問題を解き進めることで、算数の思考力や計算力、筆算、途中式などの記述力が着実に身につく②算数(数学)の思考力や勘は1日でも休むと、それを取り戻すには時間がかかる③算数的思考力が早期に養成されると、理科などの他科目の学習効率にも好影響につながるなどの点があげられます。

① 算国理社のなかで、算数は最も思考力の発達や俊敏さ、深さが求められる科目です。算数の思考力は算数の問題を自分で解くことでしか身につきません。また、算数は鉛筆(シャーペン)を動かしながら問題を解き進める、計算を進めるという身体で身につける能力も重要になるという側面もあります。スポーツや稽古事みたいに"身体で覚える"、"身体が身につける"能力は日々のトレーニングといえる問題演習や計算練習で身につけていくものです。

② 算数は思考力とともに科目特有の勘(物事を直感的に捉える能力や判断力。感性とも言えます)が重要となる科目です。国語、理科、社会でも科目特有の勘は存在しますが、問題に触れ、その問題について思考することが常に必要となる算数や数学は他科目と比べても、時間内で頻度を高く問題に触れることでその勘が養われる、維持される科目と言えます。すなわち、算数の問題を解く頻度が少なかったり、時間的間隔が長くなると、その思考力や勘はにぶりやすくなります。例えば、算数の問題を1週間全く解かなかった場合、その後、1週間前と同じ水準の算数的思考力や算数的勘を取り戻すには1週間を超える日数が必要になるといわれています。

③ 計算が必要な問題や図表・グラフの数値を分析する問題など、算数的能力が求められる問題は理科や社会、国語でも出題されるケースがあります。特に理科では、食塩水(溶液)の濃さや食塩(溶質)の量を求める問題、てんびんに関する(長さと重さの関係性がポイントになる)問題など、算数の問題でも出題される項目もあれば、電流の強さ、天体・太陽・月の動き、物質変化にともなう気体の量や物質の重さなどを求める問題など、計算や算数上の思考が求められる問題がどの中学校でも必ず出題されます。社会や国語においても、近年では図やグラフを見て、そこにある数値に関する選択肢を選んだり、計算が必要になる問題が出題されることもあります。

 毎日の学習が理想ではあるのですが、毎日算数の問題に長時間取り組むことは他科目の学習のこともあり、現実的ではありません。毎日の算数学習のポイントは①短時間の計算演習や小問演習の習慣化②算数学習時間は朝と思考力が働く時間帯に絞る(思考力が働かない時間帯にはしない)③平日と土日で学習内容や取り組む問題量・難易度にメリハリをつけるといった3点です。

① 短時間の計算演習・小問演習 計算問題や【資料1】のような小問集合は毎日、理想を言えば起床から朝食をとる前の時間帯に、10分~20分の比較的短い時間でいいので進めましょう。朝の時間帯を逃すと、学校がある平日で計算や小問の演習ができる時間帯は下校後になります。塾がある日は帰宅後から塾に向かうまでの時間帯はバタつくことが多いはずですし、学校から帰宅後は(特に体育があった日は)朝よりは思考力が鈍る傾向にあります。帰宅後、少しの時間でもお昼寝などの休息をした後に(計算を含めた)算数の学習ということもあり得ますが、塾のある日、ない日に関わらず、朝に余裕をもって起床をしたうえで、計算・小問の短時間演習を習慣化させることをおすすめします。

② 今まで述べてきた通り、算数は思考力、すなわち頭脳の働きが決定的に重要な科目です。眠さや疲労、体調不良で頭、思考力がうまく働かない時に算数の勉強を進めても、その学習効果はほとんどありません。むしろ、思考力が働く時に解くべき問題や課題を無駄に使ってしまうことになります。頭が働かない、体調が良くないと感じるときは算数の学習はせず、社会や理科(主に生物分野)、国語(漢字や熟語)における、理解系や知識(暗記)系の作業学習を進めるか(当日中に算数の学習を進めたい場合は)お昼寝など、脳を休ませる休息をとる、もしくは早めに就寝するなどの行動をとりましょう。逆に、休息後などで体調が整った時、思考力や集中力が高まった、回復したと感じたならば算数(または国語の読解問題)の学習を優先的に進めるといいでしょう。

③ 学校や(通塾生の場合)塾の授業がある平日と学校の授業がない土曜日・日曜日では、家庭で能動的に受験勉強に取り組むことができる(可処分)時間が大きく異なります。今まで計算問題や小問集合のことは述べてきましたが、中学受験の算数の入試問題においては長い文章を読む必要がある問題や途中式が長くなる複雑な問題も出題されるのが一般的です。それら長い文章や難易度の高い問題を学習するには、思考力や集中力とともに余裕のある時間が必要です。このような問題の学習や演習は時間的余裕のある土曜日や日曜日に設定することをおすすめします。他方、平日の下校後の算数の学習は、通塾生の場合は塾がある日の授業と授業後の見直しぐらいで、塾に通っていない場合はお昼寝などの頭の休息時間の後に、学校で算数の授業がなかった日にテキストや参考書などを使って学習をしていきましょう。学校で算数の授業があった日は、2科目受験生はその日も算数の学習はするほうがいいですが、国語を中心とした学習としたり、4科目・3科目(算国理)受験生の場合は算数以外の受験科目の学習状況を踏まえ、算数に次いで思考力や集中力が求められる国語の文章読解問題の学習や理科の計算関係の問題、体調次第では社会や理科(主に生物分野)の理解や知識の学習を進めるなど、どの科目を学習するにおいても、事前に定めた学習計画と当日の体調(思考力の状態)を踏まえて、1日の到達目標やテーマを明確化したうえで勉強をしていきましょう。

 今回までの3回にわたり、中学受験の最重要科目である算数の特徴や学習アドバイスなどを述べてきました。
 中学受験の算数は頭の良し悪しや算数・数学に対するセンスの有無が必要だと思われがちです。しかし、ごく一部の超難関進学校はさておき、このたびの連載で取り上げた関関同立系や早慶明系を含めた有名校、人気校である中学校の算数入試問題のほとんどは今回の連載でお伝えした方針に基づく学習で対応可能です。
 算数は毎日の(短時間)演習と思考力・集中力に基づく学習のタイミングや内容のメリハリが極めて重要な科目です。今回の連載コラムを参考にしつつ、無理と無駄のない効率的な算数の受験勉強に繋げていただけたらと思います。

<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>