2020/11/09

関東関西有名中学入試分析【冬から入試直前の対策(戦略編)】

今年も残り少なくなってきました。中学受験に挑む小6生にとってはラストスパートの時期です。これからの時期は受験生のみなさん一人ひとりによって、志望校合格のための戦略や勉強法が大きく変わってきます。今回は中学受験を間近に控えた小6生の冬期・入試直前期の戦略について述べていきたいと思います。

まずは入試までの日程や受験校確定などの「合格戦略」のポイントについてです。

戦略編その1 志望校入試までに残された日数から冬期の学習内容を決める

【資料1】2021年首都圏・近畿圏 私立中学校入試開始日(解禁日)

埼玉県

千葉県

東京都・神奈川県

近畿圏

1月10日~

1月20日~

2月1日~

1月16日~

「志望校の入試まで、あと何日ですか?」この質問に対する答えは志望校のある都府県によって異なってきます。

例えば、埼玉県在住の塾生であっても、埼玉県内にある私立中学校を第一志望とする場合と、東京都内にある私立中学校を第一志望とする場合では、志望校入試までに残された日数は20日ほど異なってきます(【資料1】参照)。もっとも、埼玉県内の私立中のなかには2月にも入試回を実施するところもありますが、2月入試は、1月入試による入学手続き状況による合格者数の絞り込みとなる可能性もあるため、第一志望とするのであれば、合格者数の絞り込みのない初回の入試を受験するのが鉄則となります。

埼玉県内の私立中学校を第一志望とする場合、フリーステップの冬期講習Ⅲ期の1月5日から5日後より入試がスタートします。できれば12月初旬からは併願校を含めた過去問演習に入り、遅くとも冬期講習Ⅲ期(12月25日~)には、模試の偏差値や合格可能性判定にかかわらず、第一志望校の過去問演習に入る必要があります。過去問演習を進め、過去問を解いて見つかった補強ポイントをその場で学習していくスタンスがいいでしょう。

この学習スタンスは、冬期講習明けからいわゆる「前受験」とされる中学校の受験が始まる近畿圏の中学受験生にも当てはまると思います。受験校の中学の「プレテスト」を受験しているのであれば、あらかじめ「プレテスト」の見直しや弱点補強を進めたうえで過去問演習を進めていきましょう。

他方、2月1日から入試開始となる東京都や神奈川県にある私立中学校を第一志望校とする場合、冬期講習Ⅲ期の終了日(1月5日)から志望校入試まで、20日以上日数があります。模試の合格可能性判定が60%以上であれば、冬期講習Ⅲ期に過去問演習を進めてもいいと思います。しかし、模試の合格可能性判定が60%未満であれば、志望校合格に必要な6年生までの学習事項のなかで理解・定着が不十分な単元やテーマが残っていると考えられます。今までの受験をした模試やテスト問題を見直し、以前、得点率が低かった単元やテーマの問題を解き直して、弱点の補強を冬期講習のテーマとすることをお勧めします。

戦略編その2 前受験や午後入試の情報収集を

私立中学入試は入試日や入試の時間帯が異なれば、第一志望校以外の中学校を併願受験することが可能です。近年の中学受験では、「前受験」や「午後入試」という入試で複数の中学校を受験する受験生が多くなっています。

「前受験」について

「前受験」というのは、第一志望校の入試より前の時期に実施をされる入試を受験することです。「前受け」とも呼ばれたりしています。入学・通学の可能性の有無によって、「前受験」も大きく二つに区分されます。

ひとつは第一志望校の入試日より前に、自宅から通学可能な地域にある中学校を受験するものです。例えば、東京都在住の受験生で、第一志望校の入試日が2月3日の場合、2月1日と2月2日に入試を実施する中学校を「前受験」として併願をすることが可能です。他方、第一志望校の入試日が2月1日で、同日より前に東京都の私立中学の入試がない場合でも、【資料1】にもあるように、東京都と隣接県とで入試開始日(解禁日)が異なるため、毎日の通学に支障のない場所であれば、東京都内の中学校よりも入試日の早い埼玉県や千葉県にある中学校を「前受験」することも可能です。

このような「前受験」の学校選びのポイントは、①毎日の通学が可能な場所にあること、②この学校の合格によって、2月の受験負担が軽減されること(第一志望校のみの受験になる等)の2点です。例えば、立教新座中学校(埼玉県新座市)は立教大学の系列校ですが、1月中の入試に合格をした後も受験を続ける受験生には、早稲田大学または慶應義塾大学の系列の中学校に的を絞るケースも多く見受けられます。

もうひとつの「前受験」は、志望校入試の前にリアルな「中学入試」を経験し、合格を勝ち取ることで志望校入試に弾みをつけるためとするものです。このような「前受験」の受験校としては、受験生の自宅から通学可能な地域外にある学生寮を併設した、首都圏や近畿圏以外の地域にある中学校が選ばれる傾向にあります。例えば、愛光中学校(愛媛県松山市)は男子学生寮を併設した、四国地方屈指の進学校ですが、学校のある松山市以外に、東京都内や大阪市、福岡市でも入試を実施していて、それぞれの地域の難関進学校を第一志望とする受験生の「前受験」校としても人気を集めています。

このタイプの「前受験」のポイントとしては、①確実に「合格」が見込める学校を選ぶ、②第一志望校入試の疑似体験となる会場設定、の2点になります。

①については、上述した愛光中学校は四国・中国地方ではトップクラスの難易度(偏差値)のある入試であり、そのような難関校を「前受験」と考えることができるのは、開成中学校(東京都荒川区)や灘中学校(兵庫県神戸市)などの首都圏・近畿圏の最難関中学校の合格可能性が高い受験生に限られます。「前受験」の目的はリアルな入試を体験することと「合格」という成功体験を得ることです。難関校にこだわる必要はなく、受験生ご自身の目的やニーズにあった学校を選びましょう。

②については、第一志望校と同じ試験会場、または類似の試験会場での「入試」をあらかじめ経験することを意図したものです。首都圏外・近畿圏外の中学校の首都圏や近畿圏での入試は貸し会議場や貸しホールが会場とされる場合が多いのですが、大学のキャンパスで入試を実施する中学校もあります。

昨年度の例ですが、例えば、佐久長聖中学校(長野県佐久市)の首都圏入試会場としては慶應義塾大学三田キャンパス(東京都港区)を選択することが可能です。慶應義塾中等部(東京都港区)の一次試験(学力試験)の入試会場も慶應義塾大三田キャンパスのため、慶應義塾中等部を志望校とする受験生にとっては、佐久長聖中を受験することによって、同じキャンパスでの「入試」を事前に経験することが可能です。他方、キリスト教カトリック系の女子校である不二聖心女子学院中学校(静岡県裾野市)と札幌聖心女子学院中学校(北海道札幌市)の首都圏入試は、聖心女子大学(東京都渋谷区)のキャンパスで実施されます。東京(港区)にある聖心女子学院中等科は中学入試を実施していませんが、雙葉中学校や白百合学園中学校(いずれも東京都千代田区)などのカトリック系の女子校を志望校とされる受験生にとっては、同じ雰囲気の校舎、女子だけの受験生での「受験」を事前体験するメリットは大きいと思います。

「午後入試」について

「午後入試」とは、お昼過ぎの午後の時間帯に実施される中学入試のことです。旧来からの中学入試は午前中からお昼にかけて入試を実施するのが一般的です。今では「午前入試」とも呼ばれるようになりましたが、そのような「午前入試」の終了後の時間帯に実施される入試が「午後入試」です。

「午後入試」のポイントとしては、①入試科目が算数と国語(または算数のみ)のところが多い、②同じ中学校であれば「午前入試」のほうが合格しやすい傾向にある、③受験チャンスが増えるメリットと心身の疲労のリスクを慎重に考える、の3点があります。

これらのポイントから、4科目(国算理社)または3科目(国算理)の受験勉強を進めてきた受験生と2科目(国算)に絞って受験勉強を進めてきた受験生とで、「午後入試」の考え方が異なってくると思います。4科目・3科目の受験勉強を進めてきた受験生は、「午前入試」の学校では4科目・3科目の入試を受験する前提だと思います。今まで、4科目や3科目で受験をしてきた模試やプレテスト直後の受験生ご本人の体調を見て、受験会場への移動もあわせて、その2・3時間後に「午後入試」で実力を発揮できる体調にあるか、翌日にも「午前入試」を控える場合、翌日の入試までに体調を整えることが可能か、慎重な検討が必要です。

他方、2科目の受験勉強を進めた受験生にとっては、「午前入試」は4科目・3科目の受験生よりも入試時間は短く、「午前入試」・「午後入試」の中学校が自宅から近いのであれば、「午前入試」後にいったん帰宅をして、食事や休息をとってから「午後入試」に向かうことも可能です。そのため、4科目・3科目の受験生より、2科目受験生は「午後入試」を無理なく活用しやすいとも言えます。もっとも、2科目入試であっても、入試本番ということもあり、模試やプレテストでは経験をしなかったような緊張や疲労を感じるかもしれません。自宅からの学校や入試会場への所要時間や交通アクセス、入試難易度や問題傾向などを確認して、無理のない範囲で「午後入試」という選択肢を検討してください。

<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>