2021/02/08
関東関西有名中学入試分析【中学受験の基本】
関西に続き、関東の中学入試もいよいよスタートしました。現小学5年生にとっては"受験生"としての1年がスタートすることになります。
つまり、今まで以上に"受験生"となる生徒や保護者の方が主体的に動いていくことが求められます。
今回は、来年中学受験を控えた生徒と保護者の方に向けて、中学受験の基本事項となる、学校選びと入試科目の確認をテーマとして述べていきたいと思います。
中学受験の基本確認その1 学校選び
中学受験の第一歩は志望校を決めることです。
入試を受けなくても進学できる近隣の公立中学校ではなく、受験勉強が必要となる、入試のある中学校を志望するのには理由があるはずです。その理由の中でも、大学進学または高校進学に関わる理由をお持ちのご家庭が多いと思います。
学校選びの基本として、私立中学校や入試のある国公立の中学校の分類について、まずはお話します。
私立中学校のなかで一番多いのが、系列大学を有しない、もしくは系列大学がある場合でも、その大学への内部進学よりは他大学への進学を前提としたカリキュラムを策定したうえで教育を実践している中高一貫校です。東京大学や京都大学などの難関国立大学への合格実績の高さで知名度の高い進学校もあれば、生徒の個性や自由を尊重し、建学の精神に則った独自の教育を実践している学校もあります。今回はそれ以外の私立や国立の中学校の類型や特徴について述べていきます。
①中高大一貫教育校:系列大学進学を基本とする
一般的には大学附属校や"エスカレーター式"に大学に進学する学校とされている中学校です。
首都圏では早稲田大学高等学院中、早稲田実業中、慶應義塾(大学)の普通部や中等部、関西圏では同志社中や同志社香里中、関西学院中などです。系列大学に進学することを原則として、中学・高校とも、受験勉強にとらわれない教育活動を進めています。近年の、首都圏や関西圏などの都市部の私立大学の定員厳格化による大学入試の競争激化により、ここ数年、大学一貫教育校の中学志願者数は増加傾向にあります。
中高大一貫教育校の場合、余程の成績不振や素行不良がない限り、希望者全員が系列大学に進学できることを原則としていますが、他大学を受験する場合は系列大学への進学の権利を放棄する必要がある学校が多数です。【資料1】にまとめましたが、早稲田大、慶應義塾大、同志社大、関西学院大の系列中高などは、この場合にあたります。
しかし一方、国公立大学を受験する場合や、他の私立大学でも、系列大学にはない学部(よくある例としては医学部、歯学部、看護系学部)を受験する場合に、系列大学への進学の権利を保持できる学校もあります。なかには法政大学の系列校のように、国公立大・私立大を問わず、どの大学を受験したとしても、系列大学への進学の権利を維持できる学校もあります(いずれも【資料1】参照)。
②独立型中学校:外部高校受験のためのカリキュラム
私立中学の多くは高校を併設し、中学卒業後は併設高校に進学することを原則とした中高6年間一貫教育の体制を整えています。他方、少数ではありますが、併設高校を有しない、もしくは併設高校はあるが中学(コース)独立のカリキュラムを組んでいる私立中学校もあります(【資料2】参照)。
地域トップとされる公立高校の大学合格実績の好調を受け、このような中学校では、私立高校のみならず、公立高校の入試対策にも力を入れてきている傾向にあります。
※履正社学園豊中中学校、四条畷学園中学校、蒼開中学校には中高一貫コースもあり
③国立大学附属校:高校併設の有無 教育学研究の実践の場
中学受験の対象となる学校として、国立の中学校や中等教育学校も挙げることができます。国立の中学校・中等教育学校は国立大学の教育学部や教員養成部門の附属校として併設されているのがほとんどです。
大学での教育学研究の成果や理論の実践、大学生や大学院生の教育実習の場としての役割も、国立大学附属校は担っています。国公立の学校のため、義務教育期間である中学課程では、授業料や検定教科書の費用は、公立中学校同様に無料となります。
※この他に小中一貫校(中学から入学不可)である京都教育大学附属京都小中学校があります。
国立大学附属の中学は併設の高校(課程)の有無に応じて、中等教育学校、併設高校のある中学校、併設高校のない中学校に区分けができます。
【資料3】に近畿地方にある国立の中学校と中等教育学校の区分けを示しました。
中等教育学校とは中学校3年間と高校3年間の計6年間の中等教育課程を一つの学校で施す学校のことです。入学すると原則6年間通うことになります。もちろん高校入試を受験する必要はありません。併設高校がある国立中学校の場合は中学3年生の段階で、併設の国立の高校への進学を希望するか、他の高校を受験するかを決めることになります。
併設高校への進学条件は学校によって異なります。原則、次のうちの3つに分類されます。
- 無試験で併設高校に進学できるところ
- 一定の成績要件を満たしている場合に進学可能なところ
(成績が内部進学の基準を満たしていない場合は他の高校受験が必要となります) - 内部進学枠の定員内で高校入試を受験する必要のあるところ
※個々の中学校の併設高校進学要件については各中学校にご確認ください。
最後に、併設高校のない中学校の場合、公立中学校同様に高校受験が必要になります。
国立の中学校の場合、学校として特定の高校の入試対策のカリキュラムを組んでいるわけではありませんが、例えば、滋賀大附属中学校であれば滋賀県立膳所高校、奈良教育大附属中学校であれば奈良県立奈良高校というように、中学校のある地域でトップ校とされる公立高校の受験者や合格者が比較的多くなる傾向にあります。
中学受験の基本確認その2 入試科目
①4科目・3科目入試が中心
志望校が決まったら、志望校の受験科目を確認しましょう。
首都圏では国語・算数・理科・社会の4科目入試、関西圏では国語・算数・理科の3科目入試(国語・算数・理科・社会の4科目入試と選択できる学校もあり)を、多くの私立や国立の中学校が採用しています。
志望校が4科目または3科目入試を採用している場合はもちろんですが、志望校が決まり切っていない場合でも、受験勉強に専念できる環境にあるならば、4科目または3科目の入試を念頭に置いて理科や社会の学習も進めることをおすすめします。
国公立大学の入試の第一関門はセンター試験から共通テストに移行しましたが、文系の学部も理系の学部も、国公立大の場合、英語・国語・数学・理科・社会の5教科を入試で課すケースが大半となります。
私立大学進学を前提とする場合でも、先に述べた大学一貫教育校においては、5教科まんべんなく学習するカリキュラムとしている学校が多く、そのための基礎学力や素養をみるための中学入試となっています。
②受験科目に英語を考える場合
最近では理科・社会の代わりに、または国語の代わりに英語を入試科目とする方式を導入している中学校もあります。もしくは英検の取得級の証明書の提出を英語の入試の代わりとしている中学校もあります。
英検3級から準2級の水準の入試問題としている学校が多いですが、難関とされている中学校の場合は英検2級以上のレベルの入試問題が課されることもあります。
例えば、慶應義塾湘南藤沢中は一般入試で、国・算・理・社の4科目入試または国・算・英の3科目入試を選択することが可能です。同中学校の英語入試問題の水準は英検準1級から2級と学校側が示しています。
※同中学校の英語入試問題内容については同校ホームページの「中等部入試 英語試験について(https://www.sfc-js.keio.ac.jp/exam/jr-englishexam.html)」をご参照ください。
もっとも、中学入試で英語を導入している学校(日程)は中学入試全体の中ではまだ少数です。
英語を中学受験の入試科目として考える場合は、志望校のみならず併願先として考える学校に英語入試があるか、英語入試がある場合、英語の入試問題が英検のどの級の水準なのか、受験生自身が英検でどの級を持っているのか、塾を含めてどのように受験勉強を進めるのか、など、慎重に検討する必要があると思います。「英語が好き」ということも大切ですが、志望校の英語入試問題が目安としている英検の級、またはそれ以上の級を持っていることがポイントとなります。
③2科目入試(国語・算数)の場合
私立中学志望ではあるけれども、スポーツや習い事など受験勉強以外にも頑張っていることがあり、4科目・3科目の学習時間の確保が難しい場合や志望校が2科目入試のみである場合には、国語・算数の2科目の受験勉強となります。
国語も算数も、思考力や読解力、つまり"頭を使う力"が重要になる科目です。受験勉強においても、頭がはたらく時に学習することが重要です。スポーツや習い事などをしている場合、心身ともに疲れている、それらの活動後に国語や算数の勉強をするのは現実的ではありません。
となると、スポーツや習い事の前の時間帯やそれらがない日の勉強が重要になってきます。塾はスポーツや習い事のない日、もしくはそれらの前の時間帯に通うことをお勧めします。スポーツや習い事の前の時間帯の学習としては、国語ならば短い文章を読み設問を解く問題、算数ならば計算問題や一行問題を、30分や20分といった短いスパンの時間内に解く習慣を身に着ける。"頭がはたらく時間"を意識した学習を進めていきましょう。
<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>