2025/03/17
関東 受験・進学情報だより【埼玉県 高校入試制度】
公立の中学校に通うご家庭には必ず訪れる高校受験。この高校受験、地域や時代で制度が変わるので、学校成績(通知表)の扱い方や選抜方法が想像と違っているかもしれません。受験制度の概要を早いうちに理解しておくことで、対策が見えてきます。すべき対策を早期に行うことで、合格率が上がります。しっかり対策することで志望校合格を実現しましょう!
こちらの記事では、埼玉県の高校入試制度について簡単に解説をしていきます。また、2027年度(令和9年度)入試からの入試変更点もまとめていますので、今後埼玉県の高校入試を考えている方はぜひ参考にしてください。
INDEX ■埼玉県高校入試の日程と選抜方法 |
■埼玉県高校入試の日程と選抜方法
はじめに、埼玉県の高校入試について、日程と選抜方法の概要を説明していきます。
2026年度入学者選抜の日程
2026年度の公立高校入学者選抜の日程は以下の通りです。また、私立高校においては例年1月22日から推薦入試が始まります。日程をあらかじめ把握しておき、入試対策に役立てください。
2026年度(令和8年度)入学者選抜日程
埼玉県公立高校入試について
選抜資料の扱いと調査書について
埼玉県の公立高校における一般募集では、学力検査の他に選抜資料として調査書が必要です。調査書は、9教科(英語、数学、国語、理科、社会、音楽、美術、保健体育、技術・家庭)の学習記録・生徒会や部活動などの特別活動の記録・検定などその他項目の得点で構成されます。各項目の割合や満点については、高校によって異なります。
選抜方法のポイント
・一般選抜(一般募集)
埼玉県の公立高校一般募集で実施する入試方式では、調査書点と5教科(英数国理社)各100点、合計500点満点の学力検査点で合否を判定され、学校によっては実技検査や面接を実施しています。近年は2月の第4週で実施されています。調査書点と学力検査点は学校ごとに異なる比率で計算されます(埼玉県教育委員会のWEBサイトで、各高等学校の選抜基準として公開されています)。
また、一度の試験に対し2-3回の基準の異なる選抜が行われるという特徴があります。たとえば、「内申の比率が大きい1次選抜」を実施し、合格者を選定したあとで「学力検査の比率が大きい2次選抜」を行いさらなる合格者を選定するような形式です。1次選抜では定員の60~80%を、2次選抜でその残りの募集を行い、合格発表は一度に行われます。内申点は3年間のものを合わせて使用するので、1年生の成績も重要です。
・学校選択問題
一般入試の項目で説明した5教科(英数国理社)各100点のテストですが、基本的に全学校同じ問題(共通問題)を使用します。しかし一部の学校では、英数の2教科の問題に難度の高い「学校選択問題」を使用しています。2025年度入試においては以下の22校が学校選択問題を採用していました。
これらの学校を志望する場合は、学校選択問題用の対策が必要になります。
2027年度入学者選抜からの変更点
2027年度(令和9年度)入試より、高校入試では以下の点が変更になります。
・自己評価資料の提出及び面接を全員に実施
学校内外での活動や意欲等を自らの言葉で表現する「自己評価資料」を受検生全員が出願時に提出することになりました。また、これまで一部の学校のみが実施していた面接が全員に実施されるようになり、面接時は自己評価資料に基づいて実施されます。
・選抜の特色化、共通選抜と特色選抜に
現行では一般募集のみでしたが、令和9年度からは学力検査・調査書・面接を資料として選抜する「共通選抜」と学力検査・調査書・面接・特色検査(実技検査・小論文)の実施や学力検査等の傾斜配点を行うことができる「特色選抜」の二つの方式で選抜が実施されます。
・調査書の記載事項が変更
これまでは9教科5段階の評定・総合的な学習時間の記録・特別活動等の記録・出欠の記録・その他の各項目等が調査書に記載されていましたが、令和9年度からは「9教科5段階の評定」を基本とするよう変更されます。
埼玉県私立高校入試について
私立高校では、推薦入試や一般入試による日程の区別はなく、1月の特定期間(2025年度入試は1月22日~25日)の間に各高校の試験日が集中しています。2月以降に入試を設定している学校もありますが、募集枠が少ない場合もあり注意が必要です。
また、推薦入試については学校推薦と自己推薦、単願推薦と併願推薦など推薦形式によって違いがありますので、それぞれの特徴についてしっかりと把握しておきましょう。まず、推薦入試には学校推薦と自己推薦があります。前者では出願条件の中に内申点の基準値が設定されており、その基準値を満たすことができない場合には自己推薦で出願することになります。
また、私立高校では、「合格したら入学する前提」の出願となる単願推薦、第1志望が別にある場合に出願する併願推薦が存在します。事前に私立高校と個別相談を行うことで、合格可能性を判定してもらうことができます。ただし、気をつけておきたいのが、この個別相談はご家庭と高校の二者の間で行われるということです。中学校からは「決めましたか?」といった確認程度しかない場合もあるので、自分から積極的に高校に足を運びましょう。単願推薦、併願推薦、また、推薦を使用しないで受験する場合の一般入試について、以下にまとめていきます。
単願推薦
私立高校を第一志望にする際には基本的にこの単願で出願することになります。出願条件は基本的に内申+模試成績です。たとえば5教科で19、模試偏差値は3科で56のように基準が求められます。また、英検・漢検などの検定や部活での活動実績で加点してもらえるケースもあります。成績で判定してもらえ、高校側の定めた基準を満たしていれば合格の可能性は非常に高くなります。試験当日は3教科の学科試験と面接などを行う学校が多いです。
併願推薦
他の第一志望校が不合格だった場合には併願優遇で出願した学校に入学します、という約束のもと有利な条件で出願できる方式です。いわゆる「おさえ」のための制度だと考えてください。出願条件は単願同様、内申点や模試成績(単願よりも高い基準になっていることが多い)です。検定などの加点も同様です。公立高校を第一志望にする方は、私立の併願校を1校確保しておいて、公立対策に集中するというのがスタンダードな受験方法になります。高校側の定めた基準を満たしていれば合格の可能性は非常に高くなります。試験当日は基本的に下記の一般入試と同じ試験を受けます。
一般入試
学力テストにより合否が決まる方式の入試です。私立高校では一般的に英数国3教科での受験になります。私立高校の入試は方式にかかわらず例年、1/22以降に行われます。
■埼玉県高校入試問題の分析と傾向から見える対策
近年、大学入学共通テストをはじめとして、資料読解力・思考力・情報処理能力などの初見・非パターン化・複線的に情報の分散がなされた問題が公立高校入試でも増加傾向にあります。ここでは2024年度の問題分析から必要となる力や2022年度~2024年度の問題傾向から見える入試対策を紹介します。
2024年度埼玉県高校入試問題の分析
以下に2024年度入試問題における各科目の全体概観や分析をまとめます。どのような力が求められているのか確認していきましょう。
2022年~2024年度の傾向から見える対策
次に、2022~2024年度の入試問題傾向と、そこから見える必要な入試対策を説明します。1学期のうちは定期テスト対策に加えて、中1・中2の内容を復習をすることを基本として、8月以降の入試対策を記載しています。今後の学習に役立ててください。
以下に示す出題傾向表は2022~2024年度の入試問題を分野・単元、出題方式で分類したものであり、この表からどの単元を優先的に学習すればよいかがわかるものです。各項目は以下の評価基準にしたがっています。
・難易度
出題単元の難易度をA・B・C・Dの4段階に分類しています。
A:取り組み易く、正解するべき問題
B:標準的で、考えれば解ける問題
C:やや難しく、差がつくため解いておきたい問題
D:難しく、場合によっては飛ばしたほうがよい問題
・頻出度
出題単元の頻出度をA・B・Cの3段階に分類しています。
A:過去3年度毎年出題されており、必ず学習しておくべき単元
B:過去3年度を通して2年出題されており、学習しておいたほうがよい単元
C:過去3年度を通して1年出題されたこともあるため、必要に応じて学習すべき単元
<英語>
・出題傾向表(2022~2024)
・入試対策
①基礎固め
8~9月はこれまでに学習した内容の総復習を行います。英単語は単語帳などを用いて頻出表現を覚えましょう。文法・長文読解も問題集や参考書を用いて学習します。問題演習を重ね、苦手単元を見つけることも大切です。
②弱点克服
10~12月は弱点克服を中心に取り組みましょう。文法や長文の弱点は、使い慣れた問題集を繰り返し演習し、克服します。また、過去問のCDでリスニング対策も始めていきます。聞き取ることが難しければ音読やシャドーイングを行い何度も英語を聞き、慣れるようにします。
③過去問演習
1~2月では過去問演習に取り組みます。過去問演習は当日の環境を再現するために必ず時間制限を設けて行いましょう。時間内に解ききることができるように各大問に使う時間を決めておきます。リスニング対策・単語は入試直前期まで継続しましょう。また長文読解は過去問を繰り返し解くことで問題形式に慣れ、仕上げていきましょう。
<英語(学校選択問題)>
・出題傾向表(2022~2024)
・入試対策
①基本文法を完璧に
これまでに学習した文法を問題集や参考書で総復習し、応用にも挑めるように基盤をしっかり整えます。英単語は単語帳などを用いて頻出表現を覚えましょう。問題集を用いて、長文読解対策もしていきます。苦手単元は問題集に繰り返し取り組み、克服していきます。
②弱点克服
入試問題形式演習期間は、過去問を解く準備のため、長文読解力を強化し、弱点補強を行います。長文読解対策も引き続き行います。英作文は、条件付き英作文の練習を行い、添削をしてもらいましょう。リスニングは過去問CDを聞きながらのシャドーイングが有効です。
③過去問演習
過去問演習時は、実際の試験時間内で解けるように時間制限を設けて演習を行います。リスニング対策は入試直前まで継続しましょう。長文読解対策は過去問を何度も繰り返し解いて強化していきます。入試問題集を用いて、読解力と集中力をあげていきましょう。
<数学>
・出題傾向表(2022~2024)
・入試対策
①既習範囲の復習
夏休み期間を利用して、今までに学習した内容を総復習しましょう。特に、大問【1】を確実に正解するための基礎力を養成することが重要です。また、苦手な単元をできるだけなくし、秋以降のテストや模試で目標点に到達できるようにします。
②弱点補強と得点源の確保
この時期は、模試など入試形式の問題に多く挑戦することになります。そこで重要なのが、自らの弱点と長所を明確にし、入試までにどの問題で得点しなければならないのかを理解することです。それに合わせて単元別の問題集や模試の過去問で演習を重ねておきましょう。
③答案作成の練習
入試直前期には、過去問を利用して答案作成の流れをつかんでおきましょう。各自で時間配分や目標点を設定し、それが実現できるように何度も過去問に取り組むことをおすすめします。演習の際には、必ず見直しまで実施し、1点でも多く得点できるように練習しておきましょう。
<数学(学校選択問題)>
・出題傾向表(2022~2024)
・入試対策
①既習範囲の復習
夏休み期間を利用して、今までに学習した内容を総復習します。特に、大問【1】を確実に正解するための基礎力を養成することが重要です。また、手持ちの入試対策問題集の発展問題にも果敢に挑戦し、入試に必要な数学的思考力を身につけておきましょう。
②弱点対策
この時期は、模試など入試形式の問題に多く挑戦することになります。そこで重要なのが、自らの弱点と長所を明確にし、入試までにどの問題で得点しなければならないのかを理解することです。それに合わせて単元別の問題集や模試の過去問で演習を重ねておきましょう。
③過去問演習
入試直前期には、過去問を利用して答案作成の流れをつかんでおきましょう。各自で時間配分や目標点を設定し、それが実現できるように何度も過去問に取り組むことをおすすめします。演習の際には、必ず見直しまで実施し、1点でも多く得点できるように練習しておきましょう。
<国語>
・出題傾向表(2022~2024)
・入試対策
①既習範囲の復習
夏休みまでに問題集や単語帳を用いて、古典の頻出単語&文法や語句・漢字といった基礎知識の暗記分野を固めます。また、問題集を活用して説明文の読解問題などの基本的な読解練習を行うとよいです。
②読解&作文対策
10月以降は実践的な演習を中心に行います。問題集を活用して記述・抜き出し問題を中心に演習問題を行い、弱点を克服しましょう。また、作文も問題集を使って作文のルール・書き方のポイントを復習し指定字数以内で書く練習を積みましょう。
③過去問演習
直前期は、入試当日の試験時間内で過去問演習を中心に対策していきます。作文を書く時間を考慮し、作文以外の大問を解く時間配分を考えながら取り組みましょう。過去問の他には入試問題集を直前期の仕上げとして活用するとよいです。
<理科>
・出題傾向表(2022~2024)
・入試対策
①弱点克服と復習をメインに
9月までは自分なりの弱点を見つけた上で、各分野の最低限の知識と計算問題の解法を身につけることがポイントです。ここが固まらないと2学期以降に苦労することになります。夏休み期間中に確実に基礎固めを行うことが望ましいです。
②標準問題へのステップ
弱点を克服した上で、次は合否を分ける標準問題への対策を行います。入試のレベルの問題かもう少しレベルを下げた問題を演習することで、今後の学習指針を明確にするのが理想です。記号問題なら解けても、記述問題が解けない、ということのないようにしましょう。
③過去問演習
過去問対策を中心に行います。埼玉県の理科は記述問題や作図問題が多いため、断片的な知識では解答できないことがあります。解答できなかった記述問題と作図問題を復習し、出題されてない分野は問題集などでさらなる演習を行いましょう。
<社会>
・出題傾向表(2022~2024)
・入試対策
①最初は基礎固め
問題集や参考書を使用して全体の基礎固めを行います。近現代史や公民の対策として、時事にも目を向けるようにしていきましょう。
②復習と弱点克服
10月以降は、返却された模試などを参考に、自分の苦手分野を把握し重点的に対策していきます。12月までに、弱点の補強までは終わらせておくようにします。特に図表や資料を用いた問題の読み取りの練習は意識的に行っておきましょう。
③過去問演習
過去問を実際の試験時間内で解答し、余裕をもって答えられるように、時間配分も体感的につかんでおきましょう。入試問題集も活用して総仕上げを行い、不安なく入試本番に臨めるようにします。
・私立と公立で入試スケジュールや選抜方法が異なります。自身の志望校がどのような選抜方法・入試スケジュールなのか早めに把握し、学習スケジュールをたてていきましょう。
・公立第一志望でも私立第一志望でも、内申点が重要になります。高い内申点を確保するには、まずは学校の定期テスト対策をしっかり行うのが大事です。
・今年新中学3年生となる方は、内申点対策と並行して、入試対策も始めていきましょう。過去問の傾向から逆算し、余裕をもって学習を積み重ねていきましょう。
・2027年度に入試を控えている方は、入試の変更点も踏まえて日々の学習に取り組んでいきましょう。
関東1都3県の高校入試制度を比べてみると、「東京では、公立の推薦があったり、英語のスピーキングテストがあったりする」「千葉では国語のリスニングがある」など、おのおの特徴がある一方で、「公立は内申点と当日の学力検査点で合否が決まる」「私立は単願・併願の推薦制度がある」「推薦のためには内申点を基準として使う」など似ている部分も多くあります。どこでも言えることですが、普段の定期テストや提出物でしっかりと通知表の点数=内申点を取って、入試当日の試験で良い点を取るためには、普段の勉強の定着と入試対策の両方が必要になってきます。早め早めの対策をしていき、入試当日に自分の力を出し切れるようにしていきましょう。
<文/開成教育グループ 個別指導統括本部 教育技術研究所>