2024/12/02
【中学生向け】計画的な冬休みを過ごすために
10日間前後の休みとなる冬休みは、中学3年生にとっては入試前にまとまった勉強時間が取れる最後の期間です。同時に、中学1・2年生にとっては前学期までに学習したことを復習できる重要な期間になります。
今回は中学生の皆さんに向けて、冬休みの過ごし方及び学習ポイントについてお伝えしていきます。
INDEX ■冬休みの効率的な勉強法 |
冬休みの効率的な勉強法
冬休みにおける学習の目的は、全学年同じで、「復習」と「入試問題に対応できる力をつけること」です。受験生は過去問の演習で目標点を取るために、中学1・2年生は休み明けの模擬試験や実力テストで点数をとるために、単に復習するだけにならず、各単元を模試レベルまで引き上げることができるように、ここまでに学習した単元をしっかり理解しなければなりません。冬休みは短いので計画的にテーマをもって復習に取り組み、冬休み明けの成績アップを目指していきましょう。
学習計画の立て方
中学生の冬休みは非常に短いです。その期間で学業だけではなく適度な休息を含むバランスの取れた学習スケジュールを立てるようにしましょう。学習計画のポイントは以下の通りです。
【目標設定】
まずは、冬休みの学習目標や学習テーマを設定しましょう。どの科目やどんなスキルを強化したいのかを明確にし、それに基づいてスケジュールを立てられるようにするためです。
【時間設定】
次に、設定した学習目標やテーマに対して、取り組むべき科目やトピックをリストアップし、週ごとまたは日ごとに学習時間を割り当てます。ここでのポイントは、自分の集中力が継続する時間で学習時間を設定することです。計画を立てているときは、これもしよう、あれもしようと盛り沢山になってしまうことがあります。しっかりとこなすことが出来れば問題ないですが、「今日も計画通りにできなかった」ということが連続すると学習のモチベーションも下がってしまいます。そこで自分が集中できる時間を設定し短い休憩時間を挟んで取り組むことで、勉強を継続的に行うことができます。そのためにも普段から自分が集中できる時間を把握しておくといいですね。たとえ受験生であっても、友だちや家族との交流、趣味やリラックスの時間も計画に適宜取り入れ、バランスを持たせるようにすることで、ストレスを溜めずに試験に備えることができます。
【進捗確認】
そして週ごとに設定した目標を振り返り、進捗を確認します。計画に対しての進捗を確認することで、自分の勉強が進んでいることが実感でき、学習へのモチベーションを維持しやすくなります。
また、一口に科目やスキルを「強化」といっても具体的な数値目標が無いと「なんとなく頑張った」で終わってしまいます。直近の模試や定期テストの成績を基準に考えてみてください。目標設定の段階で「冬休み前よりもどれだけ上げたいか」を具体的な数値目標にしてください。受験生の場合、1月にも模試がある地域は1月模試の得点や偏差値を、もう模試の無い地域であれば未着手の過去問の得点や正答率などを基準にすると良いでしょう。次項から各学年の勉強方法や科目別の学習ポイントを紹介していきます。ご自身の冬休みの学習目標や計画作成に役立ててください。
各学年の勉強方法
各学年で冬休み中の学習において意識してほしいテーマをまとめました。冬休みの学習目標・計画を立てる際に参考にしてください。
冬休み明けには学年末がテストありますね。このテストは学年全体で学習した内容の総合力が試されるテストになっていることもあります。また、1・2学期のように中間、期末と分かれておらず、学年末テストの結果がそのまま成績に反映されるため、「次のテストで挽回する」ことはできません。よって、冬休みの学習は大変大きな意味を持つことになります。
<中学1・2年生>
中学1・2年生は、まずは2学期に学習した範囲の復習を行いましょう。2学期の内容は3学期の単元に関わることもありますし、次学年の内容に関わることもあります。学校の授業が進まない休み期間にしっかり反復することで知識・理解力を深めていきましょう。
学年末テストでは、3学期に学習したことに加え、それ以前に学習した単元からも出題されることが多いです。そのため、1学期の内容で理解が不十分な単元や苦手としている単元の復習も行うことがお勧めです。
<中学3年生>
まず冬休みが終わるまでに、中学校3年間の学習内容を一通り完了させ、総復習を完成していきましょう。(そのためには冬休み前までに、中学校で習う単元はすべて終わらせておく必要があります)
総復習が完成したら、過去問対策に取り組みます。高校受験生が過去問演習に取り組む順番は、ケースによって異なりますが、入試の実施される順番に準ずると考えましょう。
ケース①【大阪】私立入試➡公立特別選抜➡公立一般選抜 の順
ケース②【東京】都立推薦➡私立一般選抜➡都立一般選抜 の順
ケース③【神奈川】私立入試➡公立一般選抜 の順
地域によって私立入試にも推薦入試があるなど入試制度が異なりますので、各都府県の入試制度がしっかりチェックするのを忘れないようにしましょう。
私立を推薦や併願で受ける場合、学校成績や面接などの重要度が高く当日の学力検査がそれほど重視されない場合もありますが、これは地域や学校、入試方式によって異なりますのでご自身の地域ではどうなるのかをよく調べておきましょう。
「私立高校」の試験を先に受ける場合には当然、過去問題演習も私立対策を優先して行います。冬休み中に「私立高校」の過去問題演習(おおよそ5年分)はできるだけ終わらせることが望ましいです。「公立高校」の過去問題演習も1~2年分はしておくのが理想的ですが、時間的に難しそうであれば、冬休み後でも大丈夫です。ただし、私立高校の入試では出にくいが、公立高校入試では頻出の出題形式があります。代表的なものは英語の「リスニング」「自由英作文」、国語の「作文」「小論文」などが挙げられます。どの形式が出題されるかは各都府県により異なるので、必ず5教科の最新年度の公立高校の過去問題は確認しましょう。また、これらの単元は自分で進めるのが困難なものも多いため、塾の冬期講習や勉強会イベントを利用していくのもいいでしょう。
私立でも公立でも、入試問題傾向は基本的に前年までを踏襲します。何年分も過去問演習をすると、その入試問題の型や求められる考え方が分かってきます。これが非常に有効ですので、冬休みに集中して対策するためにも、繰り返しになりますがその前の段階で「もう新しく習わないといけない単元」は残っていない状態にしておきましょう。
なお、2022年度から新学習指導要領となってからの入試が始まっています。そのため、新出内容や高校から移行してきた単元である、数学「四分位範囲」「箱ひげ図」、理科「ダニエル電池」、英語「仮定法」「原型不定詞」「現在完了進行形」といった項目は、以前の入試で出題されていない場合、過去問を使った対策だけでは入試形式の問題に触れることができません。そのため、これらの単元は最新の入試対策用問題集を用いて対策をしておきましょう。
過去問や入試対策用問題集を効果的に利用していくために、意識してほしいポイントは以下のとおりです。
≪ポイント① 出題傾向、時間配分、配点を知る≫
学校ごとに入試問題の傾向は必ず存在します。それに加え、頻出の単元や出題方式ごとの対策をすることで、点数の底上げが可能です。過去問の冒頭に傾向・対策方法が記載されていることもあるのでチェックするようにしましょう。
≪ポイント② 現時点での自分の力と合格点との差を知る≫
合格に必要な点数と現状の自分の点数を比較し、足りない部分をどの教科のどの単元で補うのか計画を立てることは大切です。どの単元で補うのかを決めたら、必ずメモで書き留めておき、いつ対策するのかを計画していきましょう。
≪ポイント③ 過去問演習を通して自身の苦手単元を再発見する≫
入試対策とは、解けない問題を解けるようにすることであり、まずは自身の弱点把握ができていなければ始まりません。解けない問題は、その問題が解けるように復習するだけでなく、その単元、その形式の問題に対応できるよう類似の問題・難易度の近い問題を演習する必要があります。
教材での学習ばかり、過去問の演習ばかりではなく、ポイント②と③の繰り返しを行うことが重要なのです。
科目別のアプローチ
ここからは、直近の試験が学年末テストとなる中学1・2年生に向けて、科目別の重要な学習ポイントを紹介しています。もしその単元に苦手意識がある場合は、重点的に学習計画に組み込んでいきましょう。
≪数学≫
<中学1年生>
・ポイント① 比例と反比例の式からグラフを描けるように!
比例と反比例の定義をそれぞれ認識する必要があります。2年生では1次関数、3年生では2次関数と、比例・反比例よりも条件が複雑な関数となるため、この単元の学習を終えた段階では比例・反比例の式からグラフを描くことを目標に取り組みましょう。
・ポイント② 空間図形の位置関係を把握できるようになろう
空間図形において、その図形のどの部分を見ればよいかということを判断できるようになる必要があります。これは2年生で、証明問題が出題されるためです。そのため、この単元を学習し終えた段階では、平行や垂直であるといった直線と平面の位置関係を、確実に見極めるようになる必要があります。
<中学2年生>
・ポイント① 1次関数の文章題に取り組もう
1次関数を使った文章題では、規則性の問題や図形上を点が動く問題が頻出です。この手の問題は、図を描いて問題内容を整理するとよいです。テキストの解答や先生が描いた図を真似て、必要なポイントを押さえた図を描けるようになりましょう。
・ポイント② 図形の性質を把握しよう
2つの図形を合同であると証明するには、合同条件を覚えることが第一に必要です。合同の証明は難しいと感じやすいですが、問題で与えられた条件と図形の合同条件を照らし合わせることで、図形のどこに目をつければよいかが分かるようになります。
<中学1年生>
・ポイント① 指示語や接続語に注意して読解しよう
文章を読んで理解するということは、文と文のつながりを理解していくことです。その上で指示語や接続語が何を示すかを読み解いていくことは非常に重要となります。
・ポイント② 登場人物の心情の変化を読み取ろう
小説では場面や状況が変わるうちに登場人物の心情も変化していくことが多く、そういった心情の変化を読み取れるかどうかが小説読解におけるテーマとなります。
<中学2年生>
・ポイント① 小説では、あらすじから主題を読み取ろう
著者が最も伝えたい小説の主題が、直接的な言葉で書かれていることはほぼないですが、主題というのは小説のあらすじを理解して物語の全体像を把握できれば読み取ることができます。
・ポイント② 古文の特徴をとらえ、読解の基礎を固めよう
頻出である単語や、敬語などをできるだけ多く暗記しておく必要があります。古典特有の敬語に注意して、人物の関係や文脈をとらえられるようになりましょう。
<中学1年生>
・ポイント① 疑問詞や助動詞を正しく覚え、使いこなそう
疑問詞を用いた疑問文を作るときに意識することは、文の中で一番聞きたいことが文の初めに来るということです。5W1Hの疑問詞を正しく覚え、Yes/Noでは答えられない疑問文の作り方や答え方を理解できるようにしましょう。また、2年生にあがると"can"以外の助動詞をたくさん学習します。助動詞canを用いて助動詞の基本的な使い方を、冬休み中に例文とセットで覚えて、使えるようにしておきましょう。
・ポイント② 現在進行形という新しい文の形を理解しよう
会話中は、「現在」に関することはもちろん、「現在進んでいる」事がらについても話をします。それが「進行形」と言われるものです。今までに学習した現在形を基本とする語順を確認しつつ、進行形の作り方をしっかり覚えておきましょう。
<中学2年生>
・ポイント① 不定詞・動名詞の意味と用法を正しく理解しよう
2年生で学習する文法事項は、入試に直結するような重要なものばかりです。中でも不定詞と動名詞は最頻出です。この冬の間に、不定詞・動名詞の意味と用法をどれだけしっかりと理解できるかが、次のステップに向けて重要なポイントになります。
・ポイント② 接続詞の意味と文章のつながりを読み取ろう
英語の長文問題では、国語の読解問題と同様に、前後の文脈から適切な接続詞を選択させる問題が多く出題されます。入試問題のように、英文の量が多くなり、内容が難しくなっても、スムーズに読解できるよう接続詞の用法や意味を正しく理解し、文章間のつながりをつかめるようにしておく必要があります。
<中学1年生>
・ポイント① 力を表す矢印を書けるようになろう
物体にかかる力の大きさ、向き、作用点についてのポイントをしっかり押さえ、正しい矢印を書けるように練習しておきましょう。ここで注意しておきたいことは、どんな力も1本の矢印で表されるということです。
・ポイント② 水溶液や物質の状態変化を理解しよう
水溶液の状態変化と溶解度を利用した問題が頻出です。水溶液にある物質を溶かした状態に着目している問題が参考書で多く見られます。図・表・グラフの数値を用いて、計算できるように繰り返し頻出形式の問題を解くようにしましょう。
<中学2年生>
・ポイント① 物質の成り立ちを理解しておこう
熱分解や電気分解などの分解方法や、酸化しやすい物質かどうかを把握しておく必要があります。化学反応式のポイントは「反応前後で元素の数が変わらない」ことです。このルールに数字を当てはめていけばOKです。
・ポイント② オームの法則を使いこなそう
オームの法則や電力、電力量を求める計算は、定期テストはもちろん高校入試でも難しい単元として出題されますので、しっかり復習しておきましょう。また、電力と電力量は混同しやすい内容のため、きちんと整理して覚えておくことがポイントです
<中学1年生>
・ポイント① 世界の諸地域の特徴をとらえよう
アジア、ヨーロッパをはじめとした世界の諸地域について自然や産業のポイントを押さえます。特徴をつかんで理解しておけば、模擬試験などでも得点しやすい分野です。
・ポイント② 歴史は時代順に整理して考えるくせをつけよう
歴史の学習では、どの時代のできごとなのか、またそれがどの順番で起こるのかということを、しっかり把握できているかが重要なポイントになります。
<中学2年生>
・ポイント① 日本地理は地域ごとに産業の特徴を押さえよう
日本の農林水産業・工業などの産業について、地域ごとに特徴をとらえましょう。単純な暗記に頼らず、その特徴がある理由を合わせて理解しておくことが大切です。
・ポイント② 近世・近代は外国とのつながりを意識しよう
近代以降は日本だけでなく欧米の動きを一緒に押さえていくことが重要です。ヨーロッパで起こった革命や各国の海外進出が、世界全体に与えた影響を把握していきます。また、ロックなどの啓蒙思想は公民とも絡むため、しっかり押さえておきましょう。
英語や数学は以前に学習した単元の知識を前提として新たな単元の学習に入ることが多いので、上記以外でも理解が不十分な単元の復習を行っておくと次学期以降の学習理解につながります。理科と社会では、知識の暗記がメインとなるため、1つの単元の問題を解く上で他の単元の知識がなくても問題ないことがあります。しかし、学年末テストでは、3学期以前に学習した単元もテスト範囲に含まれることもあり、結果的に幅広い知識が求められることとなります。学校によって学習の進度や順番が異なることもあるため、今まで学習してきた単元を整理してから、復習に入るとよいでしょう。
冬休みの健康管理と生活リズム
この時期に勉強と同じく大事なのが体調管理です。体調がすぐれないと試験や入試本番など、大事な日にパワーを十分に発揮できません。また、受験前などは精神面から身体にも不調が出てくるのはよくあることです。できるだけ健康に冬を乗り越え、その後に控えるイベントのために身体にも気を配りましょう。
規則正しい生活リズムと質の高い休息
冬休みの計画を立てる上で、生活リズムを整え睡眠時間を確保することは、学習環境を維持するために非常に重要です。毎日同じ時間に起床し、就寝しましょう。夜更かしや遅い起床は生活リズムを乱し、学習効率を低下させます。充分な睡眠をとることで、記憶力や集中力が向上し、意欲が持続します。通常、青少年には約8時間の睡眠が必要だと言われているので、勉強が忙しく睡眠が足りない場合は、週末にリカバリースリープ(追加の睡眠)で調整することも考慮しましょう。また、適度な運動も睡眠を改善するのに役立ちます。ただし、運動は寝る数時間前に行うと、逆に覚醒状態になることがあるため注意も必要です。
生活習慣チェックシートを用意しました。以下の項目で今自分が行えているものにチェックをし、チェックが付けられなかった項目は見直していきましょう。
睡眠時間を確保するための工夫
「規則正しい生活リズムと質の高い休息」でも述べたように、十分な睡眠時間の確保は、効果的な勉強とストレス軽減にもつながります。早寝早起きを心がける中で、多くの人を悩ませているのがスマートフォンやタブレット、テレビなど電子機器との付き合い方です。寝る前にスマホがやめられず、つい夜更かししてしまう、といった経験は多くの人が持っているのではないでしょうか。
スマートフォンやタブレット、テレビなど電子機器の適切な使用頻度について考えてみましょう。次にスマホ等の誘惑から避ける方法をご紹介するので参考にしてください。
・スマートフォンやテレビの利用時間を制限する
アプリを使用してスマホを利用制限したり、親や家族に制限をかけたりしてもらいましょう。
・スマートフォンのサイレントモードを活用する
通知が来ても分からないようにしておくモードです。通知によって集中が妨げられるのを防ぎます。
・学習用のツールやアプリを活用し効果的な学習をサポートする
・自己規律を守る
計画通りに学習することで、誘惑に負けずに勉強に集中します。
(一定の学習時間内はスマホを触らない等)
・リワードシステム
一定の学習時間を達成したら、スマートフォンやテレビを楽しむ時間や自分へのご褒美を設けるなど、自分を励ます方法も効果的です。
他にもスマホ等の電子機器の代わりに自分のストレス解消やリラックス方法を見つけて誘惑から逃れるなど、環境の整備が成績アップ・志望校合格へのステップと言えます。
冬休みのまとめと総括
冬休みは、中学1・2年生にとっては「苦手単元を克服し、今までの総復習をして入試に対応できる力をつけていく期間」です。そして受験生にとっては「入試にむけた過去問題の演習を行い、出題形式慣れ、時間配分などの戦略を確立する期間」また、「過去問題演習の中で見つかった弱点単元を復習する最後の期間」になります。
冬休みは短い休みですので、学習環境を整え、計画を立てて、効率よく勉強を行い、少しでも安心して入試や学年末テストを迎えられるようにしましょう。
<文/開成教育グループ 個別指導統括本部 教育技術研究所>