2025/08/01
2025年度公立高校入試分析~過去問研究から傾向・対策を知る~【神奈川県】
公立高校入試分析は各都府県の高校入試の対策について「どのような傾向・形式の問題が出題されるのか、それに向けてどのような対策をしていけば良いのか」を正しく理解していただくことを主な目的としています。今後の高校入試対策をより効果的・効率的なものにするために、2023年度、2024年度と2025年度の出題傾向の比較や、2025年度入試の各科目の全体概観・大問別問題分析・おすすめの解答順序、そして中学3年の8月以降の入試対策を掲載しています。
INDEX |
1.英語 試験時間50分 満点100点
全体概観
- 時間配分の対策
一般的な高校入試と比較して、問題数や読解問題の語数が多く資料整理も要することから、時間配分の対策がより重要となる。日頃の演習から時間を計って取り組み、自分の解答ペースを掴むことが大切。
- 精読力・速読力
大問8題をすべて解き終えるためには、文章を速く正確に読む力が求められる。大問【6】と大問【7】では、文章を読むだけでなく資料と照らし合わせて読む必要があるため、資料読解を伴う長文演習が必要。
- バランスの取れた学習
多くの大問で構成されているため、「読む」「聴く」「書く」の力の要素がバランスよく出題されている。どれか1つに特化した学習ではなく、どのような問題にも対応できるようにするための対策が必要。
2025年度 大問別問題分析・おすすめの解答順序
大問【1】リスニング 《解答数:7 配点:21点 難易度:やや易》
3種類の問題が出題される。チャイムのところに入る適切な英語を答える問題、対話の内容を聞いた後に答える英問英答の問題、表を見ながら当てはまる英文を選択する問題の3種類であった。すべての問題で問題文と選択肢は印字されているため、先にそれらを読んでおくことで流れてくる音声に対応することができる。
大問【2】大問【3】語挿入 《解答数:7 配点:18点 難易度:標準》
問2は文の読解と語彙力を問う問題、問3は語彙、または文法の知識を問う問題であった。関連する文法は、現在分詞、不定代名詞、前置詞、look+形容詞である。語彙力と幅広い文法知識が必要となる。不定代名詞に関しては2024年度も出題されているため、対策しておきたい。
大問【4】語句整序 《解答数:8 配点:16点 難易度:やや難》
20語前後の会話文の語句整序問題。日本語が提示されていないため、文脈や提示されている単語から組み立てるべき文を判断する必要がある。語句整序の1文だけでなく、前後の文と既に選択した単語には印をつけ、整理しながら解くことが重要である。
大問【5】条件英作文 《解答数:1 配点:5点 難易度:難》
3つのイラストつきの文章が提示され、その2つ目の文章の空所部分に適する内容を6語以上で記述する問題が出題されている。条件に指定された語を使うよう指示があるため、難易度は高い。前後の文章を正確に理解する力だけでなく、その文章に適切な応答ができるような英文を記述する力が求められる。
大問【6】長文読解 《解答数:3 配点:15点 難易度:やや易》
00語程度のスピーチ原稿とそれに関するグラフからの出題。本文中の空所に適する名詞句を選択する問題が1問、本文中の3か所の空所に適する文を選択する問題が1問、6つ文の中から本文の内容に合うものを2つ選ぶ形式の問題が1問出題されている。本文の内容に適する文を選ぶ問題では、本文中で使われている内容を別の単語で言い換えた文を選ぶため、同意語の暗記が重要である。
大問【7】長文読解 《解答数:2 配点:10点 難易度:標準》
会話文(200語程度)、チラシ(150語程度)とそれらに関する予約表と問い合わせフォームが提示され、それぞれに適切な選択肢を選ぶ問題が出題されている。表や図、チラシと照らし合わせて読み解く問題であり、質問内容から着目すべき箇所を絞って読み解く必要がある。
大問【8】長文読解 《解答数:3 配点:15点 難易度:標準》
文章内容を示す複数のグラフのうち、適切なものを選ぶ問題が出題された。(ウ)では、本文の内容に合うものを2つ選んだときの組み合わせとして最も適するものを選ぶ形式であり、2つとも正答でないと点数が得られない。選択肢が多く、選択肢の文も長いため、各選択肢の内容を正確に理解することが必要である。
おすすめの大問別時間配分・解答順序
【リスニング】10分→【2】【3】4分→【4】4分→【5】5分→【6】8分→【7】8分
→【8】8分→【見直し】3分
出題傾向(過去3年間)から見える入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
【出題傾向】
- 大問【2】大問【3】の語彙・文法問題は、出題形式が過去3年間で変化なし。
- 大問【5】英作文では、2025年度が過去3年で最も正答率が低い。条件つき英作文の練習が重要。
- 大問【6】~大問【8】読解問題の語数は、合計1500語程度。読解力が重要となる。
【入試対策】
■8~9月:基礎固め
夏休みは、これまでの学習の総復習を行う。英単語は『高校受験英単語ゲットスルー2600(エデュケーショナルネットワーク)』、文法は『BUILDER受験版(学書)』で復習する。また長文対策として、中1・2の教科書でも対策できるため、英文を毎日読み、早い段階で長文への苦手意識をなくしていきたい。
■10~12月:長文読解・英作文
10月以降は実践的な問題演習をする。長文読解は『高校入試対策 英語ビジュアル読解(エデュケーショナルネットワーク)』、英作文は『高校入試対策 自由英作文(エデュケーショナルネットワーク)』に取り組む。英作文では条件を正確に把握し、要求されている内容を正しく解答すること、文法上の誤りがないことを目標に取り組み、必ず添削をしてもらう。
■1月~入試:過去問演習
入試直前期は、過去問演習を当日の試験時間内で解けるように時間制限を設けて行うこと。またリスニング・単語は入試直前期まで対策しておく。長文読解は過去問や『精選全国高校入試問題集(エデュケーショナルネットワーク)』などの対策用の問題を必ずこなし、読解力を鍛えておくこと。
2.数学 試験時間50分 満点100点
全体概観
- マークシート方式による解答
基本的には小問集合は4択や6択の選択肢から選んで答える問題が出題されている。問題によっては、記号にあてはまる数をマークするタイプの問題もあり、正答率が低くなる傾向にある。
- 文章量の多い問題が出題される
問題文の中に、生徒同士の会話文、問題のルール説明やその具体例などの文章が長いため、素早く読んで状況を整理して正確に処理する能力が求められる。
- 関数・平面図形・空間図形に難問あり
計算問題を除く各大問の最終問題は極めて正答率の低い問題がある。この問題を解くためには、他の問題を素早く解いて、いかに時間を多く割けるかがポイントである。
2025年度 大問別問題分析・おすすめの解答順序
大問【1】小問集合① 《解答数:5 配点:15点 難易度:易》
計算問題が5問出題されている。配点はいずれも3点で、正負の数の計算から文字式の計算、平方根の計算などが出題される。すべて基本的な問題であるため、確実に満点を取りたい。
大問【2】小問集合② 《解答数:6 配点:24点 難易度:やや易》
(ア)因数分解、(イ)2次方程式、(ウ)関数の変化の割合、(エ)1次方程式の文章題、(オ)平方根の利用、(カ)回転体の体積が出題されている。大問【1】の問題より難易度が少し上がるが、ここまでは完答できる力をつけておく必要がある。
大問【3】小問集合③ 《解答数:7 配点:25点 難易度:標準》
(ア)円と相似、(イ)資料の活用、(ウ)2次方程式の文章題、(エ)平面図形の角度から出題されている。(ア)(i)相似の証明は選択肢から選ぶ問題であり、得点しやすい。(ア)(ii)の面積を求める問題は、正答率0.4%の最難問である。(イ)資料の活用の問題は、会話文の内容から箱ひげ図の正しい組み合わせを選ぶ問題であり、文章量が多いためポイントを押さえて素早く情報を読み取る必要がある。
大問【4】関数 《解答数:4 配点:15点 難易度:標準》
反比例、1次関数、関数 のグラフに関する問題が出題されている。(ア) 関数 の比例定数を求める問題、(イ)グラフの中の1次関数の式の決定、(ウ)グラフの中の三角形の面積比を求める問題となっている。(ア)(イ)は正答率がそれぞれ88.1%、61.2%で易しめであるが、(ウ)は正答率4%の難問である。そのため、(ア)(イ)を確実に得点できる力をつけておきたい。
大問【5】確率 《解答数:2 配点:11点 難易度:やや難》
ルールにしたがっておもりを2人で取り分けるときの確率に関する問題が出題されている。2つのさいころを投げ、出た目に応じて30gと50gのおもりをとってその重さを比べるが、最後におもりの少ないほうが80gを取るため、状況が少し複雑になっている。さいころの出た目の対応表を書き正確に処理する必要がある。
大問【6】空間図形 《解答数:2 配点:10点 難易度:やや難》
各辺の長さが与えられた三角柱に関する問題である。(ア)三角柱の表面積、(イ)辺上の点からある平面に引いた垂線の長さを求める問題が出題されている。(ア)を確実に得点したい。(イ)は体積と底面積から高さを求める問題であるため、時間内に解くには、空間図形の計算に十分慣れておく必要がある。
おすすめの大問別時間配分・解答順序
【1】3分→【2】7分→【3】12分→【4】10分→【5】8分→【6】7分→【見直し】3分
出題傾向(過去3年間)から見える入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
【出題傾向】
- 過去3年間、出題される単元の大問構成の大きな変更はない。
- 計算問題の難易度が易しいため、確実に得点できるようにする。
- 問題の難易度差が大きいため、解くべき問題と解かない問題の判別が大事。
【入試対策】
■8~9月:基礎錬成
夏期講習テキストの演習と復習を行っておく。特に、基本的な計算問題で点を落とさないように、テキストの問題を全問正解できるようになるまで繰り返し解いておくとよい。また、各範囲の典型的な問題は、解けない問題がないように復習しておく必要がある。
■10~12月:実力錬成
一通り復習した後、応用問題にも取り組む。基礎問題で用いた解法を応用問題にも適用できるようにしておく。頻出単元である関数は、1次関数と2次関数の融合問題や文章題に慣れておくとよい。また、平面図形の証明問題も頻出であるため、慣れておきたい。
■1月~入試:得点力強化
志望校の入試傾向に合わせた問題演習を行うことで、得点力を強化させる。特に、頻出単元の問題に力を入れて取り組み、一度解けなかった問題を何度も復習して完璧に解けるようにしておく。また、傾向をつかむために過去問演習にも取り組んでおく。
3.国語 試験時間50分 満点100点
全体概観
- 記述問題は1問のみ
例年通り、記述問題は最後の1問のみの出題である。この設問は正答率の低い難問であるため、時間配分に工夫が求められる。普段から時間を計って解く練習を行い、自身の読解スピードを把握しておくとよい。
- 問題数、形式ともに変化なし
例年と同様に、大問数は全5問、設問数は全30問である。各大問の構成は、【一】漢字の読み書き・俳句の内容理解【二】小説【三】説明文【四】古典【五】融合問題となっている。
- 他教科より平均が高い
2024年度よりもやや易化の傾向が見られ、他教科と比べて全体的な正答率も高い。特に、多くの受験生が正解している問題を確実に得点できるよう意識したい。
2025年度 大問別問題分析・おすすめの解答順序
大問【一】漢字・俳句 《解答数:9 配点:20点 難易度:易》
漢字の読みが4問、書きが4問、俳句の内容理解が1問の計9問で構成されている。いずれも基本〜標準レベルの問題であるため、確実に得点したい分野である。特に漢字は知識問題であり、あまり時間をかけず、素早く正確に解答したい。一方、俳句の内容理解は比較的難易度が高く、得点差のつきやすい設問であるため、基本的な季語や表現技法は事前に押さえておくことが重要である。
大問【二】小説 《解答数:6 配点:24点 難易度:易》
砥上裕將『一線の湖』からの出題であり、例年通り傾向や形式に大きな変化はなく、小問数は6問である。すべて文章の内容理解を問う問題で、記述問題は含まれていない。難易度は易しめであるため、確実に得点したい。例年、(カ)の設問では、文全体における表現技法が問われる傾向がある。
大問【三】論説文 《解答数:9 配点:30点 難易度:やや易》
岩内章太郎『〈私〉を取り戻す哲学』からの出題。内容理解に加えて、文法事項などの知識問題が毎年出題されているため、十分な対策が必要である。内容理解では、筆者の考えを問う問題が多く見られるため、筆者の主張とその根拠を的確に読み取れるようにしたい。
大問【四】古文 《解答数:4 配点:16点 難易度:やや易》
『太平記』からの出題。2024年度よりやや易化しており、(イ)以外は正答率が70%を超えている。傍線部の内容を問う設問が多く、登場人物の行動や状況を正確に読み取る力が求められる。普段から、主語の切り替わりに注意しながら読む習慣をつけておくとよい。
大問【五】融合問題 《解答数:2 配点:10点 難易度:標準》
2つの文章を比較して考察する形式の問題。(イ)の設問は例年、記述式であり、特に正答率が低い傾向がある。今回も2024年度よりは正答率が上昇したものの、依然として受験生の約4分の1しか正答できていない。問題形式には大きな変化がないため、過去問を繰り返し解き、設問形式に慣れておくことが有効である。
おすすめの大問別時間配分・解答順序
【一】5分→【二】10分→【三】10分→【四】8分→【五】12分→【見直し】5分
出題傾向(過去3年間)から見える入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
【出題傾向】
- 出題傾向・形式に変化なし。
- 内容理解を問う問題が多い。
- 古典では漢文の出題はなく、古文のみが出題される。
【入試対策】
■8~9月:基礎固め
古文は内容理解の問題となっており、基本的な単語や文法の理解が前提となっている。そのため、『みにつく国語(好学出版)』などを活用し、古典の頻出単語や文法を日ごろから暗記する。『BUILDER受験版(学書)』などで読解の演習も行うこと。
■10~12月:作文力の強化
作文と資料読み取りの融合問題は『ロジカル国語表現(好学出版)』などを使って対策を行う。グラフ、調査票、アンケートなどを読み取る力が必要。ニュース番組や新聞に日頃から触れ、時事問題を把握しておくとよい。
■1月~入試:過去問演習
入試当日と同じ50分間で過去問演習を行う。作文を書く時間とその他の問題にかかる時間配分を考慮して取り組むこと。また、入試直前期の仕上げとして、『精選全国高校入試問題集(エデュケーショナルネットワーク)』も活用するとよい。
4.理科 試験時間50分 満点100点
全体概観
- 全問選択肢形式での出題
作図や記述問題は無いが、解答数は34問あり、決して楽ではない。計算問題や思考力を問う問題も多く、効率的に解き進めることが必要である。
- 4分野×2大問の8題構成
前半4つと後半4つに1つずつ各分野が割り振られており、前半の方が易しい問題となっている。分量は決して少なくないため、前半をなるべく素早く正確に解答し、後半でいかに点を取れるかがカギとなる。
- 完答の問題が消滅
完答して初めて得点となる問題が無く、部分配点となっているため、差がつきにくくなっている。むしろ両方落とすとかなり不利になるため、片方だけでも点を取りに行く姿勢が大切。
2025年度 大問別問題分析・おすすめの解答順序
大問【1】大問【2】大問【3】大問【4】小問集合(全分野) 《解答数:14 配点:36点 難易度:標準》
各分野3~4の解答数で構成されており、ランダムな単元から出題されている。基本~標準の問題が多いため、後半の問題に割く時間を残すために、なるべく時間をかけずに解きたい。大問【1】は光、抵抗値、静電気の問題、大問【2】は密度、電離の様子、中和時のイオン濃度の問題、大問【3】は顕微鏡の使い方、動物の分類、酸素の運搬についての問題、大問【4】は結露、太陽系の惑星、極夜についての問題が出題される。
大問【5】物理分野 《解答数:6 配点:16点 難易度:標準》
斜面を転がる小球の運動の問題。小球の平均の速さを扱う問題に慣れておく必要がある。また、力学的エネルギー保存の法則を暗黙的に使って考えるが、その発想に至らない限り解けない。位置エネルギーと運動エネルギーの和が一定であること、運動エネルギーが速さに依存すること、速さの増加する割合は小球にかかる重力の斜面方向の成分に依存することを理解しておく必要があり、日々の演習が欠かせない。
大問【6】化学分野 《解答数:4 配点:16点 難易度:標準》
炭酸水素ナトリウムとクエン酸の化学反応の問題。反応物質の質量と生成物質の質量の関係を実験結果のグラフや表から読み解くことが求められる。馴染みのない組み合わせの化学反応であるかもしれないが、他の組み合わせでの化学反応で同じ形式の問題は必ず解いたことがあるはずである。物質が変わっても問題の解き方は同じであるため、汎用性を意識した演習(特に質量計算)を行っておくとよい。
大問【7】生物分野 《解答数:5 配点:16点 難易度:やや易》
微生物のデンプン分解の実験に関する問題。実験操作の目的も問われるため、実験過程での各操作の役割についても学習しておくべきである。また、結果や考察・結論を導く力も問われるため、そういった演習も日頃から行っておく必要がある。ヨウ素液だけでなくベネジクト液も出てくるため、典型的な頻出項目以外も押さえておきたい。
大問【8】地学分野 《解答数:5 配点:16点 難易度:標準》
プレートと地震に関する問題。後半の震央を求める問題やS波が届く地点、緊急地震速報が出てからS波が届くまでの時間を求める問題で差がつく。難易度が高く、数学的な考え方を駆使する必要がある。緊急地震速報が出てからのS波到達を考える設問は落ち着いて考えれば解けるため、残り時間を気にして焦らないことが大切。
おすすめの大問別時間配分・解答順序
【1】3分→【2】4分→【3】3分→【4】3分→【5】8分→【6】8分→【7】8分→【8】8分→【見直し】5分
出題傾向(過去3年間)から見える入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
【出題傾向】
- 過去3年間、出題形式や出題分野はおおよそ一定で、各分野の中での単元はランダムである。
- 前半は比較的易しいため、ここで素早く正確に解くことが大切。
- 後半では応用的な思考力が求められるため、得意な分野により時間を費やすべきである。
【入試対策】
■8~9月:復習と基礎固め
『BUILDER受験版(学書)』などの3年間をまとめた問題集を使って、既習範囲の内容を総復習したい。特に、大問【1】~大問【4】の中の基本的な問題を確実に正解するために、一問一答形式の問題を中心に演習し、キーワードに反応して素早く解けるようにしておきたい。並行して2学期以降の範囲の予習も進めておきたい。
■10~12月:大問形式に慣れる
一問一答形式の問題に答えられるようになった後は、大問形式の問題を中心に演習する。『BUILDER受験版(学書)』の基本問題などの標準的な問題から演習し、得意分野は練習問題などの応用問題まで演習しておくとよい。答え合わせだけでなく、解答・解説のポイントなどの細かいところまで読み込んで知識を蓄えておくこと。
■1月~入試:過去問の演習
過去問を用いて演習を行う。問題形式の構造を理解しながら解くようにする。大問【1】~大問【4】でも難易度の差があるため、正答率が高い問題で間違えている場合は復習しておくこと。大問【5】~大問【8】の大問では、連続して同じ単元が出題されにくいことを踏まえて、最近出題されていない単元の対策もしておきたい。
5.社会 試験時間50分 満点100点
全体概観
- 地理・歴史・公民の配点がほぼ均等
例年大問【1】大問【2】が地理、大問【3】大問【4】が歴史、大問【5】大問【6】が公民、大問【7】が多分野複合の問題構成。各大問につき5つの解答数(大問【7】のみ4問)の形式も、2024年度と同じ。配点も分野間の差はほぼない。
- 資料読み取り型の問題が多い
地理の地図や雨温図を用いた問題はもちろん、どの分野も図表や資料の情報をふまえて答えなければならない問題がある。特に地理や公民のグラフや表の数値に関する問題は慣れておく必要がある。
- 組合せ型の問題も多い
2つの空欄に入る語句の組み合わせ、2文または3文の正誤の組合せ、複数の文から適切な2文を選ぶ組合せなど、組合せ選択型の出題が非常に多く、1問の中で複数の知識やより高度な情報処理能力が求められる。
2025年度 大問別問題分析・おすすめの解答順序
大問【1】世界地理 《解答数:5 配点:14点 難易度:標準》
大西洋に面したヨーロッパ・北アメリカ・アフリカに属する各国に関する問題。どの問題も地図や数値を含む表の情報が解答の手がかりとなっている。(エ)のように、表の情報をふまえたうえで、各国の歴史的な関係に関する知識から正解を導くタイプの問題もある。求められる知識は標準的なものでも、それを活用する力が問われる問題構成になっているのが神奈川県の入試の特徴である。
大問【2】日本地理 《解答数:5 配点:15点 難易度:やや易》
宮城県仙台市に関する3つの資料をもとにした問題。この大問の問題はすべて組み合わせ選択型になっており、過半数の3問は3つのものを見分ける問題となっている。それぞれ雨温図・グラフ・文の正誤に関するものであるが、2つを比べる問題より検討する情報量が多く、当然選択肢も増えるため、ここでもスムーズに情報を処理する力が重要である。
大問【3】古代~近世 《解答数:5 配点:15点 難易度:標準》
古代・中世・近世それぞれの日本と中国の関係を表した文からの出題。他の2分野と比較すると、歴史分野の問題では資料の活用が少ない。一方、問題文や選択肢の情報を読み取ったうえで、それを歴史に関する知識と照らし合わせて答えるタイプの問題が多い。(オ)の適文選択問題などは、その典型例である。
大問【4】近現代 《解答数:5 配点:14点 難易度:標準》
近現代の日本における歌や音楽の歴史について述べた文からの出題。ここでも画像資料が使用されているが、正解を具体的にイメージするためのヒント程度の位置付けで、その資料がなければ問題が解けないというわけではない。大問【3】の(ア)と大問【4】の(エ)はどちらも事柄を年代順に並べ替える問題であるが、近現代史は覚えるべき事柄がより細かくなる傾向があるため、特に時系列に沿った暗記が必須である。
大問【5】経済のしくみ 《解答数:5 配点:15点 難易度:標準》
貨幣や支払い手段に関する文からの出題。国債と日本銀行の金融政策に関する(エ)も含め、すべて広い意味での経済のしくみやはたらきに関する問題である。(ア)・(ウ)の選択肢や(イ)の正誤判定の対象となっている文を見ると、経済についての標準レベル以上の知識が幅広く必要とされている。また、表の情報を読み取って答える(オ)のような問題もあり、公民分野でも資料読み取り型の問題に慣れておく必要がある。
大問【6】現代社会・国際社会 《解答数:5 配点:14点 難易度:やや易》
2023年に日本で行われた主要国首脳会議に関する文章をもとに、大問【5】で問われた経済以外の公民分野の範囲に関する問題が幅広く問われている。ここでも表の情報を読み取る(ア)のような問題がある一方で、内閣に関する詳細な知識が問われている(イ)のような問題もあり、知識・読解力・情報処理能力がバランスよく必要とされている。
大問【7】総合問題・国際社会 《解答数:4 配点:13点 難易度:やや易》
例年通り、大問【7】は3分野の混合問題となっている。西アジアの国々に関する問題。具体的には、(ア)(イ)が地理分野、(ウ)が公民分野(政治・国際社会)、(エ)が歴史・公民分野の分野横断型問題。(エ)もそうであるように、神奈川県の入試に多い組み合わせ選択型の問題は、分野横断型の問題を作りやすい。このタイプの問題についても、事前に十分な対策を行っておきたい。
おすすめの大問別時間配分・解答順序
【1】6分→【2】6分→【3】6分→【4】6分→【5】6分→【6】6分→【7】5分
→【見直し】9分
出題傾向(過去3年間)から見える入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
【出題傾向】
- どの分野のどの単元も、ほぼ満遍なく出題される。
- 比較的公民分野の比重が大きい。
- 資料を用いた問題はどのようなタイプにも対応できるように幅広く対策。
【入試対策】
■8~9月:まずは基礎固め
的を絞らずに『BUILDER受験版(学書)』や一問一答形式の問題集などを使いながら、これまで学習した内容を全般的に復習する。他県と比べて比重が大きい公民分野の習得も、学校の授業と並行して必ず行っておくこと。
■10~12月:苦手分野対策
10月以降は、返却された模試などを参考に、自分の苦手分野を把握し重点的に対策する。『BUILDER受験版(学書』の発展問題や資料問題を中心に、本番に近いレベルの入試形式問題で入試本番への準備をすること。
■1月~入試:過去問で総仕上げ
過去問や『入試必修STUDY(文理)』『精選全国高校入試問題集(エデュケーショナルネットワーク)』を使いながら、時間内で解答できるように時間配分の練習も併せて行う。間違えたところは、テキストを使って復習しておくこと。
いかがでしたでしょうか。
公立高校入試は中学3年生のほとんどが通る大事な入試です。当記事の分析結果だけでなく、2024年度以前の過去問も必ず研究し、十分な対策をしたうえで挑み、合格を勝ち取りましょう。
<文/開成教育グループ 個別指導統括本部 教育技術研究所>