2025/08/01
2025年度公立高校入試分析~過去問研究から傾向・対策を知る~【埼玉県】
公立高校入試分析は各都府県の高校入試の対策について「どのような傾向・形式の問題が出題されるのか、それに向けてどのような対策をしていけば良いのか」を正しく理解していただくことを主な目的としています。今後の高校入試対策をより効果的・効率的なものにするために、2023年度、2024年度と2025年度の出題傾向の比較や、2025年度入試の各科目の全体概観・大問別問題分析・おすすめの解答順序、そして中学3年の8月以降の入試対策を掲載しています。
INDEX |
1.英語(前期) 試験時間50分 満点100点
全体概観
- 語彙力・読解力・速読力の強化
リスニング以外は読解問題が出題されるため、時間配分が重要。英作文の問題が複数あることから、長文を正確かつ素早く解く力が試される。時間を計って過去問演習に取り組み、自分の解答ペースを掴むことが必要である。
- バランスの取れた学習
長文の中に語彙力や文法的知識を問う問題が大部分を占める問題構成となっている。単語・文法・長文のどれか1つに特化した学習ではなく、どのような問題にも対応できるための対策が必要である。
- リスニング力の強化
No.1~No.5は30~80語程度の比較的短い文章であるため容易であるが、No.6・7はともに150語を超える英文が放送されるため、日頃からリスニングに慣れておく必要がある。
2025年度 大問別問題分析・おすすめの解答順序
大問【1】リスニング 《解答数:11 配点:28点 難易度:標準》
放送される英文の内容についてイラストから選択する問題(No.1~3)が3問、英文から選択する問題(No.4~6)が5問、記述解答の問題(No.7)が3問出題されている。問題形式は2024年度から変化なし。英文はすべて2回ずつ放送される。No.1~5は1つの文章、会話につき1問、No.6・No.7は1つの文章、会話文につき3問出題される。リスニングの配点が全体の3分の1を占める。No.1~5の内容の聞き取りしやすい問題は確実に押さえておきたい。
大問【2】ポスター 《解答数:5 配点:17点 難易度:やや難》
日本語のメモをもとに英語のポスターの空欄に適切な語や英文を記述する問題。問1では基本的な単語を入れる問題が2問、意味に合う助動詞を入れる問題が1問出題されている。問2は日本語のメモに合う3語以上の英語を記述する問題。問3は指定する語句に基づいて、2文以上の英語を記述する問題である。問題形式は2024年度から変化なし。和文英訳の演習が重要となる。
大問【3】長文読解 《解答数:5 配点:18点 難易度:標準》
大問【3】は、宇宙飛行士に関する200語程度の文章読解であり、脱文補充、語挿入、語句整序、内容を問う問題(記述・選択ともに1問ずつ)が出題されている。2024年度と同様、数量詞に関する問題が出題されている。問5で出題される内容に関する選択問題では、本文中で使われた表現を別の表現で言い換えた選択肢の中から正しいものを選ぶ問題である。読解力と語彙力の両方の力が試される。
大問【4】会話文 《解答数:7 配点:25点 難易度:やや難》
「宇都宮市と公共交通機関」についての450語程度の会話文が、4つのパートに分けての形式で提示されている。問1~6では、指示語解釈や、内容一致(選択)、語句整序、適文補充(選択)が出題され、問7では、後日行われた40語程度の会話文の空所部分に適切な内容を3語以上で自由記述形式の問題が出題されている。問題形式については、2024年度から大きな変化は見られない。指示語解釈問題が内容一致(選択)問題に変化したのみである。
大問【5】長文読解 《解答数:3 配点:12点 難易度:やや難》
大問【5】ではことわざに関する文章について、内容を問う空所補充問題(記述)、選択問題の形式でそれぞれ1問ずつ、条件英作文(3文以上)が1問出題されている。条件英作文では、下線部が引かれた疑問文「図書館に漫画本はあるべきか」という問いに対してその意見を1文、理由を2文以上で答えるという形式で出題されている。英検(3級)で出題される記述問題と形式が近い。
おすすめの大問別時間配分・解答順序
【1】13分→【2】4分→【3】8分→【4】14分→【5】8分→【見直し】3分
出題傾向(過去3年間)から見える入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
【出題傾向】
- 2023年度から2025年度にかけて出題傾向・形式に大きな変化は見られない。
- 英作文を含め記述問題の配点が約半数を占める。
- 語句整序・内容一致【選択】問題は例年正答率が低い。
【入試対策】
■8~9月:基礎固め
これまでに学習した内容の総復習を行う。英単語は『高校受験英単語ゲットスルー2600(エデュケーショナルネットワーク)』で頻出表現を覚える。文法は『BUILDER受験版(学書)』で復習し、長文読解対策は『長文読解練成 標準編(育伸社)』を中心に行う。苦手単元を見つけるために、Lapテストを用いることも有効な手段である。
■10~12月:弱点克服
文法や長文の弱点は、使い慣れた問題集を繰り返し演習し、克服する。長文読解については『高校入試対策英語ビジュアル読解(エデュケーショナルネットワーク)』にも取りかかりたい。また、過去問のCDでリスニング対策も始めていく。聞き取ることが難しければ、音読やシャドーイングを行って何度も英語を聞き、慣れるようにする。
■1月~入試:過去問演習
過去問演習は当日の環境を再現するために、必ず時間制限を設けて行う。時間内に解ききることができるように、各大問に使う時間を決めておく。リスニング対策・単語は入試直前期まで継続すること。また、長文読解は過去問を繰り返し解くことで問題形式に慣れ、仕上げていく。
2.数学 試験時間50分 満点100点
全体概観
- 大問【1】の小問集合で確実に点をとる
大問【1】の小問集合は、例年16問で構成され、配点は最後の問題のみ5点でその他は4点の合計65点である。特に前半は基本的な計算がメインなので、ミスなく得点したい。
- 先生と生徒の会話形式での問題がある
数学的なテーマについて、先生と生徒が会話をしている形式での出題がある。会話の中の空欄に当てはまる値や式を求め、ある操作についての説明を読み取り、規則性を理解する必要がある。
- 各大問の最終問題は正答率が非常に低い
問題の難易度差が大きいため、各大問の易しい問題がどれかを判断できるようにしておくことが大事である。最終問題を考えるよりも見直しを重視したほうがよい。
2025年度 大問別問題分析・おすすめの解答順序
大問【1】小問集合① 《解答数:16 配点:65点 難易度:やや易》
前半の(1)~(8)は、文字式や平方根、方程式などの計算問題が中心で比較的易しい。一方、後半の(9)以降は、関数、平面図形・空間図形、確率、資料の活用などの思考力も問われるやや難易度の高い単問が多く、正答率が低くなる傾向にある。問題の難易度や苦手な単元に応じて問題集の基本から標準レベルまでの問題を幅広く演習しておくことで対策できる。
大問【2】小問集合② 《解答数:2 配点:11点 難易度:やや難》
(1)で作図、(2)で図形の証明問題が出題されている。(1)は円周上のある点における接線の作図であり、典型問題であるが、図形的性質から必要な作図方法を理解しておく必要がある。(2)は平行四辺形であることの証明をする問題であり、証明に必要な条件を正確に覚えておきたい。いずれも対策したかどうかによって差がつきやすい問題である。
大問【3】規則性・文字式の利用 《解答数:5 配点:14点 難易度:難》
先生と生徒の会話を読み、ある操作についての規則性を考える問題が出題されている。表にまとめられた数字からそれぞれの規則を見抜く必要がある。(1)では会話中の空欄に当てはまる数を入れ、(2)は円周上にある点の数の和が9の倍数であることを記述で説明する。(3)は初期値を変えて操作を 回行い、合計の値から操作を行った回数と点の最大値を考える問題であり、規則性の理解と計算の正確さが問われる難問である。
大問【4】関数 《解答数:2 配点:10点 難易度:やや難》
関数 と直線に関する問題が出題されている。(1)は放物線上の2点を通る直線の式を求める問題であり、確実に得点しておきたい。(2)は2つの三角形の面積が等しくなる点の 座標を求める問題で、座標を使った三角形の面積計算と方程式の立式が必要となる。面積が等しくなる三角形の底辺や高さの比に着目して考えられるかがポイントである。
おすすめの大問別時間配分・解答順序
【1】15分→【2】10分→【3】12分→【4】10分→【見直し】3分
出題傾向(過去3年間)から見える入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
【出題傾向】
- 大問【1】の小問集合の前半は、出題分野の変化が少ないので対策しやすい。
- 大問【2】では、作図と図形の証明問題が出題されやすい。
- 大問【3】・大問【4】で出題される単元は固定されておらず、年度によって変化する。
【入試対策】
■8~9月:既習範囲の復習
夏期講習(夏休み)期間を利用して、今までに学習した内容を総復習するべきである。特に、大問【1】を確実に正解するための基礎力を養成することが重要である。また、苦手な単元をできるだけなくし、秋以降の模試で目標点に到達できるようにすること。
■10~12月:弱点補強と得点源の確保
この時期は、入試形式の問題に多く挑戦することになる。そこで重要なのが、自らの弱点と長所を明確にし、入試までにどの問題で得点しなければならないのかを理解することである。それに合わせて単元別の問題集や模試の過去問で演習を重ねておきたい。
■1月~入試:答案作成の練習
入試直前期には、過去問を利用して答案作成の流れを掴んでおくこと。各自で時間配分や目標点を設定し、それが実現できるように何度も過去問に取り組むことをおすすめする。演習の際には、必ず見直しまで実施し、1点でも多く得点できるように練習しておく。
3.国語 試験時間50分 満点100点
全体概観
- 問題構成は例年通り
問題構成は例年通り大問5題構成となっている。内訳は小説・漢字文法・論説・古典・作文の出題で、配点バランスも大きな変化はなく、依然として読解問題重視の構成が維持されている。
- 記述問題が依然として重視される
小説や論説文の大問では各2問ずつ、合計60字前後となる記述問題が出題される。古典や漢字・文法の大問も記述が含まれる形式。特に、論説文や作文にて、資料読み取り+自分の意見をまとめる力が求められる。
- 作文問題は資料の読み取り+自分の意見
作文問題は例年資料を活用しつつ、自分の体験もふまえて論理的に自分の意見を文章化するもの。1行15マスで11~13行の字数制限、資料読み取りと自分の考えの2段落構成という条件も例年通りである。
2025年度 大問別問題分析・おすすめの解答順序
大問【1】小説 《解答数:5 配点:26点 難易度:やや易》
河邊徹『ヒカリノオト』から出題。合唱コンクールを背景に、怪我をした主人公と仲間たちがともに苦難を乗り越える姿を描く。設問では、主人公の行動の意味や心情を中心に問われる。記号選択問題が出題の中心であるが、記述問題も出題されているため、素早い読み取りが必須となる。普段から速読を意識し、慣れておくことが重要である。
大問【2】漢字・融合問題《解答数:10 配点:24点 難易度:やや易》
漢字の読み書き、話し合いを題材とした融合問題が出題されている。漢字は「簡潔」「堆積」「顧みる」「包装」「勢い」の5つが出題。どれも目にする機会が多い漢字の読み書きであるため、全問正解しておきたい。融合問題に関しては、動詞の活用形や正しい敬語を問う文法問題や、話し合い中の発言の説明、話し合いの様子についての問題が出題された。日頃から文章を読む際には文法や表現上の工夫にも注意を払うようにしたい。
大問【3】論説文《解答数:6 配点:26点 難易度:やや易》
奥野克己『ひっくり返す人類学 生きづらさの「そもそも」を問う』からの出題。問5は作文問題以外の2025年度の問題で、最も解答に字数を要する50字程度の記述問題であるが、文章中に出てきた単語を用いて答える形式であるため、その単語が使われている部分に注目し、問われていることに合うようにその内容をまとめることで正解を導ける。選択問題などの他の問題も、傍線部前後の内容と問われていることの正確な把握が必要である。
大問【4】古文 《解答数:4 配点:12点 難易度:標準》
『古今著聞集』からの出題。現代語訳が付されている部分もあり、内容は比較的掴みやすい。問4は対話文形式であり、登場人物の言動や心情を正確に読み取り、選択肢と照らし合わせる力が問われた。また、主語を問う問題や、登場人物の言動の理由を原文から問う問題があり、人物関係に注意して内容を正確に掴む力が求められている。
大問【5】作文《解答数:1 配点:12点 難易度:やや易》
食品ロスに関する意見文を作文する問題が出題されている。食品ロスが家庭で発生した場合の理由と、事業で発生した場合の各業種の割合が資料で示され、そこから読み取れる内容について説明したうえで、自身の経験とも結びつけて自分の意見を書く必要がある。字数制限内で論理的に説明する力が問われ、日頃の訓練は必須である。
おすすめの大問別時間配分・解答順序
【1】10分→【2】5分→【3】10分→【4】10分→【5】10分→【見直し】5分
出題傾向(過去3年間)から見える入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
【出題傾向】
- 大問【1】大問【3】に記述問題が定着しており、本文からの要点記述能力が重要となる。
- 長文読解の文章量や出題形式、作文問題の形式や条件に大きな変化がない。
- 例年1つの小問で出題されていた大問【2】の文法問題が、2025年度では融合問題に組みこまれている。
【入試対策】
■8~9月:知識の基礎固め
夏休みまでに『みにつく国語(好学出版)』『練成古典問題集(育伸社)』を用いて、古典の頻出単語&文法や語句・漢字といった基礎知識の暗記分野を固める。また、『BUILDER 受験版(学書)』を活用して説明文の読解問題などの基本的な読解練習を行うとよい。
■10~12月:読解&作文対策
10月以降は実践的な演習を中心に行う。『入試必修STUDY(文理)』を活用して記述・抜き出し問題を中心に演習問題を行い、弱点を克服すること。また、作文は『ロジカル国語表現(好学出版)』を使って作文のルール・書き方のポイントを復習し、指定字数以内で書く練習を積む。
■1月~入試:過去問演習
直前期は、入試当日の試験時間内で過去問演習を中心に対策する。作文を書く時間を考慮し、作文以外の大問を解く時間配分を考えながら取り組むこと。過去問の他には『精選全国高校入試問題集(エデュケーショナルネットワーク)』を直前期の仕上げとして活用するとよい。
4.理科 試験時間50分 満点100点
全体概観
- 小問集合の大問1つと各分野大問1つずつ
例年通りの出題構成であり、全分野の基礎固めと各分野の得点戦略が必要である。特に、小問集合は基礎的な問題のみであるため、素早く正確に解答したい。
- 作図1問、計算問題2問
これも例年と変わらないが、作図問題は本質的には数学の作図であり、差がつきやすい問題である。一方、計算問題は基本的なレベルであるため、得点源としておきたい。
- 記述問題は7問から4問に減少
記述問題の出題数が減少し、難易度も比較的低いため、他の難易度の高い問題に割くことのできる時間が増える。記述問題という形式に惑わされず、素早く得点を重ねたい。
2025年度 大問別問題分析・おすすめの解答順序
大問【1】小問集合 《解答数:8 配点:24点 難易度:やや易》
中学理科の全範囲から基礎問題がランダムに出題されている。配点比率が最も高いかつ易しい問題群であるため、時間をかけずに完答を目指したい。分野に偏りなく基礎固めを行っておくべきである。ここで点数を落とすと他の受験生にリードされてしまうため、最も力を入れて対策すべき大問である。
大問【2】地学分野 《解答数:7 配点:19点 難易度:標準》
地震とプレートに関する問題であり、作図が1問出題されている。問1は地層のずれに関する基礎問題であるため、確実に正解したい。作図問題は、発生した地震の震央の位置を書き入れる問題であり、難易度は比較的高い。一方で、配点は他の問題と変わらないため、解けない場合は後回しでよい。知識はあまり要求されず、問題文や図から正確に情報を読み取り、答えを導く力が求められる。
大問【3】生物分野 《解答数:5 配点:19点 難易度:やや易》
生物の分類および微生物の有機物分解に関する問題であり、記述問題が1問出題されている。実験からの出題に関しては、実験操作の目的も問われるため、実験過程での各操作の役割についても普段から学習しておくべきである。また、実験結果から考察・結論を導く演習も行っておくことで、実験設定が変わっても正解を導くことができるようになる。
大問【4】化学分野 《解答数:8 配点:19点 難易度:やや易》
物質の性質や密度に関する問題で、計算問題と記述問題が1問ずつ出題されている。大問内での計算量が多いため、正確に計算することが求められる。各設問で把握しなければならない条件は比較的少ないため、落ち着いて問題文や表を読むことが大切である。記述問題については、用いるべき語句が提示されるため、それをヒントに空欄に入る内容を考えればよい。類似問題を訓練しておくことが重要である。
大問【5】物理分野 《解答数:5 配点:19点 難易度:標準》
電流と磁界に関する問題で、計算問題と記述問題が1問ずつ出題されている。計算問題は抵抗値の簡単な計算のみであるため、確実に正解したい。(2)(3)は電流の向きと磁界・磁力の関係を押さえておかなければ、解くことが難しい。記述問題は化学分野と同様に用いるべき語句が提示され、その語句に関して図から分かることを読み取って記述する。
おすすめの大問別時間配分・解答順序
【1】5分→【2】8分→【3】8 分→【4】8 分→【5】8分→【見直し】13分
出題傾向(過去3年間)から見える入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
【出題傾向】
- 過去3年間、出題形式や出題分野は一定であるが、各分野の中での単元はランダムである。
- 小問集合は配点比率が高く、難易度が低いため、完答を目指したい。
- 記述や作図、計算問題をいかに正確に解けるかが高得点のカギ。
【入試対策】
■8~9月:弱点克服と復習がメイン
9月までは自分なりの弱点を見つけたうえで、各分野の最低限の知識と計算問題の解法を身につけることがポイントである。ここが固まらないと2学期以降に苦労することになる。夏休み期間中に、確実に基礎固めを行うことが望ましい。
■10~12月:標準問題へのステップ
弱点を克服したうえで、次は合否を分ける標準問題への対策を行う。入試のレベルの問題かもう少しレベルを下げた問題を演習することで、今後の学習指針を明確にしたい。記号問題なら解けても、記述問題が解けない、ということのないようにしたい。
■1月~入試:過去問題集への挑戦
過去問対策を中心に行う。埼玉県の理科は記述問題や作図問題が多いため、断片的な知識では解答できないことがある。解答できなかった記述問題と作図問題を復習し、出題されてない分野は問題集を用いてさらなる演習を行いたい。
5.社会 試験時間50分 満点100点
全体概観
- 地理・歴史の比重が大きい
例年通り、大問は6題で、大問【1】大問【2】が地理、大問【3】大問【4】が歴史、大問【5】が公民、大問【6】が3分野の混合問題。設問数や配点も例年と変化なし。各分野の配点の比率は、おおよそ地理:歴史:公民=3:3:2となっている。
- 資料問題が非常に多い(地理はほぼ全問)
近年増加傾向にある資料問題が2025年度でさらに増え、特に地理分野は大問【6】(2)以外の全ての問題において、地図をはじめとした図表やグラフを用いた問題が出題されている。また、歴史・公民分野での文字資料の活用の増加にも注意が必要。
- 記述式の資料読み取り問題などの独特な問題
資料から読み取れることを短文にして答える記述問題が、各大問で1問ずつ出題されている。また、正解の個数が明示されていない「すべて」選ぶタイプの記号選択問題もある。これらの対策は必ず行っておきたい。
2025年度 大問別問題分析・おすすめの解答順序
大問【1】世界地理 《解答数:6 配点:14点 難易度:やや易》
世界地図に示された国や地域に関する問題。(3)(4)はいずれもグラフの読み取り問題で、前者が短文記述問題、後者が正解の個数が明示されていない記号選択問題と、埼玉県の入試に特徴的な出題形式の問題である。資料の読み取り自体は比較的容易であるため、事前に十分な対策を行っておき、得点源としたい。
大問【2】日本地理 《解答数:6 配点:16点 難易度:やや易》
地図に示された関東・中部・近畿地方の都府県や都市に関する問題。地図・地形図のほかに、(1)(5)では写真、(2)では雨温図、(3)(4)では各種数値に関する表といった資料が用いられている。ただ、解答の前提となる知識は基本的なものであり、選択肢の判断も比較的容易である。どのようなタイプの資料問題にも対応できるようにして、ここでも高得点を目指したい。
大問【3】古墳~江戸時代 《解答数:5 配点:16点 難易度:標準》
古墳時代から江戸時代までの中に含まれる特定の五つの時代について、日本と世界との交流についてまとめたノートをもとに問題が構成されている。(1)(2)は『宋書倭国伝』や「三世一身法」「墾田永年私財法」といった文字資料を現代語に訳したものからの出題。著名な文字資料は内容まで押さえておきたい。(4)で使用されている絵画のような文物の画像資料も、有名なものは必ず作者などの関連事項とセットで覚えるようにする。
大問【4】明治~昭和時代 《解答数:5 配点:17点 難易度:標準》
明治維新から太平洋戦争後の沖縄の国土復帰までに起こった、いくつかの出来事が書かれた年表をもとに出題されている。(3)は大正時代の政治の動きを年代順にまとめたものからの出題であるが、近現代は前近代より覚えるべき出来事が短い期間に集中するため、正しい年代順でそれらを覚えていくことを特に意識したい。
大問【5】公民分野 《解答数:9 配点:23点 難易度:やや易》
公民分野に出てくるさまざまな用語についての問題。最も解答数の多い大問であり、公民分野全体から幅広く出題されているが、2023~2025年度では連続して裁判に関する出題がある。経済に関する問題も毎回必ず出題されており、易しい難易度の問題が大半を占める。教科書レベルの知識は一通り押さえておきたい。
大問【6】混合問題 《解答数:5 配点:14点 難易度:やや易》
SDGsに関する課題について作成した4枚のカードと関連付けて出題されている。(1)は歴史、(2)(4)は地理、(3)は公民の問題。(4)はレポートの内容から適切なグラフを選び、さらにそこから読み取れる事柄を記述で答える形式で、文章読解力と資料の情報をまとめて記述する力の両方が必要。事前の資料問題対策で、このタイプの問題にも対応できるようにしておきたい。
おすすめの大問別時間配分・解答順序
【1】7分→【2】7分→【3】7分→【4】8分→【5】9分→【6】7分→【見直し】5分
出題傾向(過去3年間)から見える入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
【出題傾向】
- 地理分野は各単元がバランスよく出題されている。
- 歴史分野は各時代がバランスよく出題されているが、配点は近現代重視。
- 公民分野は政治・経済のしくみに関する出題が多め。
【入試対策】
■8~9月:最初は基礎固め
『入試必修STUDY(文理)』『BUILDER受験版(学書)』などを使って全体の基礎固めを行う。近現代史や公民の対策として、時事的な出来事にも目を向けるようにしたい。
■10~12月:復習と弱点克服
10月以降は、返却された模試などを参考に、自分の苦手分野を把握し重点的に対策する。弱点の補強までは終わらせておく。特に、図表や資料を用いた問題の読み取りの練習は意識的に行っておきたい。
■1月~入試:過去問演習
過去問を実際の試験時間内で解答し、余裕をもって答えられるように、時間配分を体感的に掴んでおきたい。『精選全国高校入試問題集(エデュケーショナルネットワーク)』も活用して総仕上げを行い、不安なく入試本番に臨みたい。
いかがでしたでしょうか。
公立高校入試は中学3年生のほとんどが通る大事な入試です。当記事の分析結果だけでなく、2024年度以前の過去問も必ず研究し、十分な対策をしたうえで挑み、合格を勝ち取りましょう。
<文/開成教育グループ 個別指導統括本部 教育技術研究所>