2021/08/02

学部の違いって何?「情報系学部」

 大学の学部選びにおいて、その学部に入って何を学べるかというのは重要な要素です。
 しかし、○○学部という名前からだけでは具体的な内容が分からないことも多く、一口に○○学部といっても大学ごとに学べる内容やカリキュラムが異なり、混乱する方が多いと思います。
 そこで、様々な大学の、似た系統の学部に所属している講師による座談会を開催しています。

 今回は「情報系」学部に所属している講師による座談会の様子をお届けします!情報系学部というとプログラミングのイメージがありますが、大学によって様々な特徴があるようです。今回、参加してくれた講師をご紹介します。

今回参加してくれた講師のみなさん(五十音順)

越智 健太おち けんた   (フラワータウン教室) 関西学院大学 理工学部 人間システム工学科
勝谷 悠生かつたに ゆうき   (JR茨木教室)     大阪大学 工学部 電子情報工学科 通信工学コース
古小路 直起 ふるこうじ なおき (加古川教室)     関西大学 総合情報学部
前田 悠翔 まえだ ゆうと  (城陽教室)      京都産業大学 情報理工学部
武藤 理玖むとう りく   (光が丘教室)     芝浦工業大学 工学部 機械工学科

質問者岡市 紗典:フリステウォーカー講師編集部員。

現在大学でどのような勉強や研究をされていますか?

古小路 僕は今2年生で、1年生ではプログラミングなどの情報系基礎科目を主に勉強しました、2年生では基礎科目に加えて社会系の学問である経済学や政治学を学んでいて、社会シミュレーションという、社会系と情報系の両方にまたがる学問について学んでいます。

筆者補足:大学では在学中に複数の授業科目を受講します。一般的には、基礎科目という、専門的な科目を学ぶ上で必要になる科目を1、2年生で受講します。2年生以降は展開科目という、より専門的な科目を受講し、3、4年生での卒業研究に臨みます。大学によっては学部、学科内で複数のコースが設けられていて、在学中に進学するコースを選択することで、自分の専攻を決定します。

勝谷 1、2年生では、電気回路やプログラミングなどの基礎的な学問や数学を主に学びました。2年生の後期から自分の行きたかった通信工学コースに進みました。通信工学コースでは光ファイバーやワイヤレス通信について学習しています。

武藤 ロボットの制御に関わる研究室に所属していて、現在は「深層強化学習を使った制御器設計」というテーマで研究をしています。簡単に説明すると、ロボットに対してさせたい行動を制御するためにAIを使うという研究です。

越智 人の認知機能や脳の仕組みについてのライフサイエンスと工学の両方を研究する研究室に所属していて、現在は「過誤記憶」に関する研究を行っています。簡単に説明すると、過誤記憶とは、誤って形成された事実とは異なる記憶のことで、過誤記憶が生じる過程でAIを活用することを目指して研究を行っています。

前田 僕の大学では10個のコースから好きなコースを組み合わせて学ぶことができます。僕が選んだコースはデータサイエンスコース、コンピュータ基盤コース、組込みシステムコースの3つで、順番に説明すると、AI、コンピュータの仕組み、IoT(Internet of Thingsの略、家電などの様々なモノがインターネットに接続すること)などの技術について学んでいます。

一口に「情報」といっても様々な学問があることに驚きました。皆さんが現在の学部を志望した理由は何ですか?

武藤 僕は、ロボットを動かしたいと思っていて、工学部の機械工学科を志望しました。機械工学科では応用化学学科や土木工学科など他の学科に比べて広い分野に渡って満遍なく学ぶことができ、かつロボットに関しても学べることが魅力に感じました。

越智 VR技術について学びたいと思っていたので、VRについて学べる大学を探して受験しました。最終的に進学を決める際には、VR技術に関して有名な先生のいる関西学院大学に進学しました。

古小路 僕は高校生の時に、将来就きたい仕事やなりたいものが決まっていなかったので、情報系は職業選択の幅が広いのではと考えて志望しました。関西大学の総合情報学部の説明会で、大学で学んでいく中で将来なりたいものが探せると説明され、今流行っているデータサイエンス(統計学や数学、機械学習など様々な手段によって、あるデータからどのようなことが言えるのか、という意味を見いだす学問)についても学べると知り、志望しました。

勝谷 僕は高校時代吹奏楽部に所属していて、当初は音響系の学問が学べる大学を志望していましたが、定員が少なかったため断念しました。ワイヤレスなどの通信系にも興味があったので今の学部を志望しました。

前田 僕は情報系の学問を学びたいと思っていましたが、情報系の中で特に詳しくどの分野を学びたいかは決まっていませんでした。京都産業大学の情報理工学科ではロボットやセキュリティなど、情報系の学問を横断的に学べると知って、志望しました。

今まで学んだ科目の中で一番難しかった、苦労した科目は何ですか?

武藤 2、3年生で学んだ制御系の科目が難しかったです。今まで学んだ物理の方程式を利用するのですが、その方程式をロボット制御に使える形に変換する理論が難しいです。高校生で学んだ内容から飛躍しているので、初めて学ぶ際には苦労しました。

越智 僕も武藤先生と同じく、制御工学が難しいと感じました。高校生の時に物理をある程度勉強していたのですが、それでも苦戦しました。また、卒業研究はこれまで学んできた科目とは異なり、答えのない問いに対して取り組む必要がある、という点で難しいと感じています。

古小路 1年生の初めに学んだプログラミングの科目に苦労しました。振り返ってみると難しくはないなと思いますが、それまでにプログラミングに触れたことがなかったので、すごく難しいと感じました。与えられた課題を居残ってこなしていました。

勝谷 難しかった科目は3つあって、プログラミング、量子物理学、電磁気学です。プログラミングの授業は丁寧に教えてもらうという授業ではなく、自分で調べながら課題をする授業だったので、初めの方はつまずいて苦労しました。量子物理学や、電磁気学はどちらも共通してイメージがしづらいものを扱う学問であり、難しく感じました。

前田 僕もプログラミングが難しいと感じました。小中高で触れたことがなかったので参考書を買って勉強したのですが、苦労しました。

他の学校と比べて、自分の学校の「ここがすごい」と思える所や特徴は何ですか?

武藤 工業大学なので工学以外の学問を学ぶ機会が少ないですが、工学の分野でより幅広い科目を学ぶことができる所です。また、留学に行きやすい環境であることも魅力だと思います。Web上の手続きで2クリックだけで行くことができ、例えばインドでは6万円の費用で留学が可能です。僕は2週間ベトナムのハノイ工科大学に留学しました。

越智 3つあります。1つ目は立地です。理工学部のキャンパスのある三田市は若者の活動に対しての支援が手厚く、三田市と連携した授業や学生団体を通してフィールドワークなどの支援をしてもらえます。2つ目は留学のしやすさです。同じキャンパス内に併設されている学部が国際色の強い総合政策学部で、留学に行きやすい環境だと感じています。3つ目はキリスト教に関する科目があることです。キリスト教系の大学なので、聖書に関する科目があり、他の大学では触れないような学びができるという点で魅力だと考えています。

古小路 他の情報系学部と異なる所は、キャンパス内にテレビスタジオがある点です。総合情報学部にはメディアに関する科目も履修でき、実習の中でキャンパス内の放送設備を用いて番組を制作します。これはテレビなどのメディア系に興味のある人には魅力的だと思います。また、総合情報学部は理系でも文系でも入学でき、入学後はメディアから情報、社会学と様々な分野について学べることから、他の情報系学部に比べて多様な学生が在籍していることも魅力の1つだと思います。

勝谷 留学生が多いことが魅力だと思います。外国語学部だけでなく、工学部にも多数留学生が在籍しています。また、理系学部は文系に比べ研究にお金がかかると思いますが、大阪大学は研究に関して他大学と比べて多額の助成金があり、研究に使えるお金が多いです。

前田 設備が新しいことが魅力だと思います。ファブスペースという、3Dプリンターなどの工作機器を自由に使ってモノづくりができる施設があります。また、情報理工学部の特徴として京都産業大学では情報系の科目を幅広く学べるので、在籍している先生は幅広い分野の先生です。様々な専門分野の先生から話を聞けることは魅力かなと思います。

今の勉強や研究をしていて、ここが面白い、やっていてよかったと思うことはありますか?

武藤 プログラミングを勉強していて、自分がしてみたいと思ったことをできるようになったことが面白いと思います。画像認識を利用してスマホゲームを自動で攻略する機械を作るなど、今まで勉強してきたことが形になると、やっていて面白いと感じます。

越智 僕の在籍している学科は人間システム工学科なのですが、人と情報技術の関わり方について学びました。人と情報技術の関わり方については、今目指されている社会である「Society.0」に直接関わるものであるので、やっていて良かったと思っています。

古小路 経済学、経営学や統計学、心理学など色々な視点から学べ、身近に多様な人がいることで、自分にこれまでなかった考え方を取り入れることできることが面白いと思います。

勝谷 プログラミングを勉強して、例えばエクセルの作業をボタン1つでできるようにするなど、自分が「こういうことができたらいいな」と考えたことを、調べながらでも作れるようになった、ということがやっていて面白いなと思います。

前田 情報系の学問を横断的に学べることから、自分の想像していなかった分野に興味を持つきっかけがあるというのが面白いです。2年生なので自分の専攻が決まっていないのですが、講義を受けて色々な可能性があると実感しています。

最後に、進路選択についてアドバイスをお願いします。

武藤 自分の興味のある分野じゃないと、勉強し続けることが難しいと思います。自分が将来なりたいものや、やりたいことについて学べる学部に行くことをお勧めします。

越智 大人と話す機会を増やし、自分が将来なりたい大人像を見つけてほしいと思います。そのためにフリーステップをぜひ利用してほしいです!

古小路 色々なアドバイスを受けて、学部学科を重視するのか、大学名を重視するのかなど、自分の方針を決めて、計画立てて進路を決めてほしいです。

勝谷 自分が大学で何をしたいのかを見つけて、特に理系の場合は何の研究をしているかを調べた方がいいのかなと思います。勉強をしていく上で楽しく感じる場合があるので、やりたいことが明確になくて、なんとなくやってみたいなと思った学部に入っても良いと思います。

前田 自分で調べて、主体的に進路を決めてほしいと思います。

取材を終えて

 一口に「情報系」学部といっても、学べる内容は大学によって全く異なる印象を受けました。大学における学問や研究は、ただプログラミングの方法を学ぶだけでなく、「プログラミングを何に活かすか」に焦点を当てた物のようです。例えばロボットを動かす(制御する)ことやVR技術だけでなく、脳の仕組みや経済学などの、一見するとプログラミングとは結び付かないものごとについても情報系の学部では扱っているというのはとても興味深いです。

 大学に入学した後、「思っていたのと違う」とがっかりしないためにも、大学選びの際には、入学後どのような科目を学び研究できるのかを注意深く調べることをお勧めします!

<取材・文/開成教育グループ 個別指導部フリステウォーカー講師編集部:岡市紗典>