2021/09/06
意外と知らない?【日本の選挙制度】
衆議院選挙と参議院選挙の違いをみなさんは説明することができますか?
2021年には衆議院の解散及び総選挙が予定されています。2016年より満18歳以上の男女に選挙権が与えられることになりました。そのため人によっては高校3年生から選挙権を得て投票に行く人もいるかと思います。しかしながら、改めて日本の選挙制度について考えてみると、その特徴を説明せよと言われても困ってしまう人が多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では衆議院選挙と参議院選挙の制度について理解を深めていきます。是非公民の授業などにも役立ててください!
1. 衆議院と参議院
さて、選挙制度についてまとめる前にまずは衆議院と参議院の違いについてまとめていきます。
日本は国家権力を「立法・司法・行政」という3つの機能に分け、それぞれを国会、裁判所、内閣が分担しています。強大な国家の権力を分散させることによって国家の権力の暴走や濫用を防ぐことが狙いとなっています。
さらに間接民主制とよばれる、人々が選挙した代表者を通じて政治を行う体制をとることによって国民の意思を政治により反映させる国家体制が採られています。
この中で立法を担う国会は「国権の最高機関」として法律を作ることができる「唯一の立法機関」と呼ばれています。国家のルールを決められると言うことは非常に重要な役割であることが分かります。
外国ではフィンランドやデンマークなどの北欧や、人口規模が比較的小さい国で1議院制が採られることもあります。政府の意志決定が迅速であるというメリットや、また、人口が少ない国であれば1議院のみであっても十分に国民の意思を反映させることができるという判断の下に採られた国家体制です。
その一方で日本の国会は衆議院と参議院2つの議院から成り立っています。
日本が2議院体制を取り始めたのは明治時代、貴族院と衆議院が設立されて以降のことです。当時日本は欧米諸国(イギリス、フランス、ドイツなど)を手本として国家体制の近代化を図っていました。特にイギリスは議会制民主主義と呼ばれる現代の民主政治の起源とも呼べる国で、こちらも2議院制です。当時は貴族制度があり、貴族や、同じく特別な扱いを受ける宗教関係の特権階級者が所属する議院と、庶民の意見を反映させるための議院を分ける必要がありました。
しかし、現代の日本では身分制度は廃止されています。そして、かつての貴族院が参議院へと名を変えて、参議院と衆議院という2つの議院が国会を構成しています。
ではなぜ議院は2つに分かれているのでしょうか。
その理由しては、法律案をより慎重に審議することができること、異なる選出方法や任期でより多様な民意(国民の意思)を政治に反映できること、衆議院の解散中に発生した緊急事態に参議院が対応するため、などの理由が挙げられます。
以上の目的から日本は2議院体制をとっています。
それぞれの違いはその任期、権限の強さ、選挙制度にみられます。
まずは任期について。衆議院の議員は原則4年ですが衆議院が解散された場合にはその資格を失います。一方で参議院議員は任期が6年で、3年ごとに半数ずつが改選される仕組みになっており、解散制度がありません。
次に、権限の強さについて。衆議院の方が議院の任期が短く、より現在の国民の意思を反映した選挙結果になっているものと考えられるため衆議院の判断が参議院よりも優先される決議が複数あります。
内閣総理大臣の指名権、条約承認権、法律案の議決権、予算の議決権、以上の4つの権限が衆議院の優越が認められている物になります。どれも国民の意思の反映がとても重要なものです。
その一方で、参議院が衆議院に優越する権限を持つことはありません。
特別な例として、衆議院の解散中に緊急事態が発生したときに参議院が緊急集会を要請し、衆議院不在の国会を開催することができる能力を所持しています。ただし非常に特別な場合で、過去には60年以上も前に2回しか開催されていません。
そしていよいよ選挙の方法について。
衆議院では「小選挙区比例代表並立制」で465名、参議院では全国区での「比例代表制」で96名、「選挙区制」で146名議席があります。といっても、これだけじゃよく分かりませんよね。一つひとつ見ていきましょう。
2.選挙区制度とはなにか
まずは選挙区制について確認しましょう。衆議院では全国を295に分けた小選挙区制を、参議院では1~2つの都道府県を単位とした45選挙区での選挙区制を採っています。
選挙区制では有権者は候補者に直接投票します。そして多くの票を得た人から順番に当選する、という仕組みです。
衆議院が採る小選挙区制では1つの選挙区あたり1人が当選し、参議院選挙では選挙区ごとに1~6議席が配分され得票数が多い人から順番に当選していきます。
小選挙区制の場合には、影響力の大きな政党に所属する候補者が当選することが多く、大政党が出現しやすいため議会での意見の衝突が少なくなり政局が安定するというメリットがあります、また、個々人に直接投票することで投票者が候補者の人となりをよく知る機会となり、政治への興味関心を刺激することもできます。
しかしながら一方で少数派の意見が反映されにくく、死票(落選者に投票した票のこと)がとても多くなってしまいます。
参議院選挙のとっている選挙区制度では、複数の議員を1つの選挙区から選出するため、より小さな政党からも候補者を選出することができます。そのため死票は少なくなり、少数派の意見も政治に反映されることになります。その一方、小政党の出現は政局の不安定を招き、さらに同一の政党の候補者同士での争いも生じるため投票者の混乱が生じる場合もあります。
このように、選挙区制度にはそれぞれの長所と短所があります。その短所を補うためにそれぞれの議院は比例代表制も並立しています。次にこの制度について確認しましょう。
3.比例代表制とはなにか
比例代表制には拘束名簿式と非拘束名簿式の2種類があります。前者は衆議院選挙で、後者は参議院選挙で採用されています。
比例代表選では、投票者は支持する政党あるいはその政党に所属する候補者個人に投票し、ブロックごとの政党の得票数をドント式で分配、ブロック別の名簿の上位順に候補者が当選する仕組みです。
ではドント式とは一体どのような仕組みなのでしょうか。
ドント式では、以下の手順で当選人が決定されます。
- 各政党の得票数を名簿登載者数までの整数で割る。
- 割られた商の1番大きな数から順番に数え、選挙すべき議員の数まで各党に配分する当選人数を決める。
拘束名簿式では名簿に登載される候補者の順位が決められており、また衆議院選挙では比例代表への立候補と小選挙区選への立候補の重複立候補が認められています。
一方、非拘束名簿式においては全国単位で各党の得票数(政党+個人)を集計して当選者数を各政党に配分し個人票の順に当選者が決まります。また、選挙区選と比例代表への重複立候補は認められていません。
この比例代表選ではほとんど死票がなく、政党本位の選挙になり、選挙民の政党支持の分布がそのまま議席に反映されるという長所があります。しかしその一方で、連立政権が生じやすく、政局が不安定になりやすくなってしまいます。また政党に属さない人は立候補できないという短所もあります。
このように、比例代表戦にも長所と短所があり、選挙区制と補い合うことで国民の意思を政治に反映させながらも安定した政局になるようにという工夫がされています。
4.まとめ
ここまで、衆議院と参議院の違い、そしてその選挙制度についてまとめてきました。
とりわけ比例代表制については選出方法が混乱しやすくなっています。公民の定期試験などでも頻繁に問われる範囲ですので、試験前に是非確認してみてください。
<文/開成教育グループ 個別指導部フリステウォーカー講師編集部:高山萌々子>