2021/10/25

Duranの留学記【第11話】

Hello there. I'm telling you.

Scene 11: American Style

Characters

Duran:デュラン。留学生。17歳。4年制高校3年。飛び級を狙っている。

Jeff:ジェフ。イケメン。アメリカ体育会系。アメフト副キャプテン。

今日も1時間目は体育である。そして、Jeffがいつものようにアメフト部に入れと勧誘してくる。

"I know you want to join us. Be a star of our team. Come on, try it!"(Jeff)
(アメフトやりたいのは分かってんだぜ。お前ならスター選手だ。迷うなよ!)

 

なんという自分勝手なこの理屈!しかし、こういう高校生、結構アメリカには多い。ジェフはボクが、なんらかの理由でクラブ活動をしたいのにできないのだ、と思い込んでいる。憎めないナイスガイなのだが...。

 

"Hey look my body! Duran, you can be like me." (Jeff)
(どう、見ろよオレのこの身体。デュラン、君もオレみたいになれるんだぜ)

 

体育が終わりシャワーの後、ジェフはブリーフ一枚で、全身に力を入れボディビルダーのポーズをとった。ニッと笑う。こういう高校生もアメリカには多い。男子は鍛え上げた肉体を持っていなければならないという考えなのだ。ボクは痩せている。ジェフは、

 

(せっかく運動神経がいいのに)

 

とボクのことを不憫に思っているらしい。

 

"School has a lot of machines for free. Don't you think it's amazing?" (Jeff)
(学校の山ほどのトレーニングマシンは、タダで使えるんだぜ。いいだろ?)

"There are many other good things. Leave it to me. Ask me anything."
(他にもいいことだらけだぜ。オレに任せとけよ。なんでも聞きなって)

 

ジェフには悪いが、ボクは今のところスポーツには興味がない。今は「飛び級」(3年生から4年生に上がること)の件が僕の頭を占めている。それは恐らくボクに、かなりの勉強量を強いてくるだろう。ルールも知らんアメフトなんぞ、やっている場合ではない。たいたい、なんでボクがムキムキ・バキバキにならにゃならんのだ。

 

"I'm so sorry Jeff. But maybe I think I'll have to study a lot."(Duran)
(悪い、ジェフ。ボクは恐らくもっと勉強しなきゃいけなくなると思うんだ)

"Study? Are you kidding? Is there anything good to do such a thing? (Jeff)
(勉強だって?ふざけているのか?そんなことして何になる?)

 

こういう高校生も......、もういいか。そういえばジェフもアカデミックコース(大学進学コース)ではない。

 

"You know I'm an exchange student, I'm thinking about skipping now." (Duran)
(ジェフ、ボクはさ、留学生なんだよ。今、飛び級を考えているんだ)

"Skipping? What kind of sport is it?" (Jeff)
(スキッピング? どんなスポーツだそれは?)

 

ボクは彼に(飛び級)のあらましを語った。

 

"Hmm, is there such a thing? I wonder if I should take that test too." (Jeff)
(ふ~ん、そんなのがあるのか。オレも受けようかな)

"You too?"  (Duran)
(君も?)

"Yes. Because school will end soon. Oh, but..."  (Jeff)

(そうさ。すると学校が早く終わるじゃないか。あっ、でも...)

"If that happens, club activities will not be possible. It's no good."
(そうなったら、クラブできないじゃん。ダメだな)

 

ジェフよ。君は確かにいいヤツだ。バキバキだ。ナイスガイだ。しかし...。

 

"Okay I understand." (Jeff)
(よ~し、分かった)

"Understand? What?"  (Duran)
(分かったって、なにが?)

"I'll do something about it."  (Jeff)
(オレが何とかしてやるよ)

"What?"  (Duran)
(はあっ?)

"I said 'Leave it to me', didn't I? So, I'll think it works well"  (Jeff)
(任せとけって言っただろ?オレが上手くいくように考えてやるよ)

 

(どこから来るんだ、その自信?)

 

"Well, thank you. If you get to know something, please tell me." (Duran)
(あ、ありがとう。なにかあったら教えてね)

"I'm sure I can. And I'm gonna wait you to play with me till you skip." (Jeff)
(任せとけ。じゃあ、飛び級ができるまでクラブはお預けだな)

 

(こいつ、まだ言っているよ...)

 

"If you can't make it in time, you can come to basketball team." (Jeff)
(間に合わなかったらバスケットボールに来ればいい)

"I'm in it, as well. Do it together!"
(オレはバスケもやってんだ。一緒にやろうぜ!)

 

(ジェフはなにを言っているのだ。勉強せないかんと言っているだろうが...)

 

"Jeff, I said I don't have enough time."  (Duran)
(ジェフよ、ボクには時間がないのだよ)

"So, I said you can come to basketball."  (Jeff)
(だから、バスケに来いって言ってんじゃん)

"I can't play it even though I don't have time to play football."  (Duran)
(アメフトやる時間が無いって言ってんのに、バスケやれる訳ねーじゃん)

"That's why I 'm telling you I'll wait.  (Jeff)
(だから待ってやるって言っているだろう)

  

(待てよ。どうもおかしい)

 

前にジェフと話をした時も、話がかみ合わなかった。なにか勘違いがあるようだ。確認トークをやってみよう。

 

"OK, Jeff. Let me talk you a little."  (Duran)
(なあ、ジェフ。確認させてくれ)

"You wanted me to play football at first, right?"
(君は最初、ボクにアメフトをさせたかった。そうだろ?)

"Clear."  (Jeff)
(そうだよ)

"I told you I don't have enough time."  (Duran)
(ボクは時間が無いと言った)

"Correct."  (Jeff)
(その通り)

"Then why do you want me to play basketball?  (Duran)
(じゃあ、どうしてボクにバスケまでやれって言うんだい?)

"Because I'm on that team too." (Jeff)
(だから、オレもそのチームにいるからだ)

 

(ここだ。ここでややこしくなっているのだ)

 

"I can't play basketball because I don't have time." (Duran)
(ボクは時間が無いからバスケはできないってば)

"Yes, you can.You can do it if you got done of that stupid skipping."  (Jeff)
(できるよ。君がくだらん飛び級を終えてからね)

 

(いや、違う。そうじゃないんだ)

 

"Why do I have to do two clubs after finishing it?"  (Duran)
(なんで終わってから2つもクラブをしなきゃならんのさ?)

"It's not two, you need to try just one."   (Jeff)
(2つじゃない、ただ1つやればいいんだ)

"Football, Basketball these are two."  (Duran)
(アメフト、バスケ、2つじゃないか)

"Yes, but you can't do two at the same time."  (Jeff)
(そうさ。でも2つなんて同時にできるわけないじゃないか)

 

(あ~、だめだ。話が通じない)

 

"I have to combine with them. I can't." (Duran)
(ボクは掛け持ちでやらなきゃいけないじゃないか。無理だよ)

"No, you can't. Then I said, I'll wait." (Jeff)
(うん、無理だ。だからオレは待つって言っているんだよ)

  

(待つって...。ん、ひょっとして)

 

"You said I can't do them at the same time, right? (Duran)"
(君はボクに両方一緒にはできるわけが無いって言ったよね)

"Exactly." (Jeff)
(そうだよ)

"I guess clubs do it at different times? (Duran)
(ひょっとして、各クラブは別々の時季にやるのか?)

"You mean all the club activities are seasonal systems?"
(クラブってシーズン制ってことなのか?)

"Definitely, Yes. Isn't it in Japan?" (Jeff)
(もちろんそうさ。日本は違うのか?)

"Are you doing the same club for all year long?"
(君たちは一年中、同じクラブで過ごすのか?)

  

ジェフも驚いていたが、ボクも驚いた。ボクはクラブがシーズン制とは知らなかったのだ。ジェフによると、通常、スポーツクラブは3シーズンに分けて行われるらしい。

 

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秋シーズン(9~11月いっぱい)

 アメリカンフットボール

 サッカー

 フィールド・ホッケー など

冬シーズン (12月~3月上旬)

 バスケットボール

 レスリング

 水泳         など

春シーズン (3月上旬~6月上旬)

 野球

 テニス

 陸上         など

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だからスポーツ好きは高校時代を通じて、いろいろなスポーツクラブを楽しむのだ。マイケルジョーダンやラッセル・ウィルソンが複数のドラフトで指名されたのも分かる。アメリカはマルチ・スポーツマンを育てるのだ。

  

"I finally understood the meaning of what you were saying."  (Duran)
(やっとキミの言っていることの意味が分かったよ)

"I thought it was weird too." (Jeff)
(オレも変だと思ったよ)

"But, doing the same thing all year round.Uoom."
(でも一年中同じことするなんて、なあ)

  

ジェフは納得がいかないようである。マルチスポーツは結局、専門のスポーツの能力もより向上させるといわれている。ただ、なんか日本には向いていない考え方のような気がするのだが。

 

"What are you going to do after finishing school so early?"  (Jeff)
(そんなに早く学校を終えてどうするんだい?)

 

と、ジェフが不思議そうに聞いてきた。

 

"Is there anything you want to do after that?"  (Jeff)
(そのあと、何かやりたいことでもあるのか?)

"Oh yeah, you're going to university. You want go there faster ha?"
(そうか、お前は大学に進むんだよな。そんなに早くいきたいのか?)

"Is studying so interesting?"
(勉強って、そんなに面白いのか?)

  

ボクには返事ができなかった。日本の大学受験事情を、簡単に解説できるほどの語学力の持ち合わせはないし、したくもなかった。ジェフのように学校に、(学校を楽しむため)にやって来ているヤツに、言っても分かってはもらえないだろう。

 

"You gave me a hard question."  
(キツイ質問するな~)

 

と、ボクは力なく言った。

 

"Why?"  (Jeff)
(なんで?)

 

ボクはやっぱり黙っていた。

 

"Why, hey answer me, why?"  (Jeff)
(なんで、おい、答えてくれよ)

 

彼はまだ言っている。ボクは無言で笑った。なんか、今までと違う映画のシーンみたいだ。

なんか、複雑な表情のボクに、ジェフが肩を叩きながらこう言った。

 

"Leave it all, leave it all to me, Duran!"
(大丈夫だって、全部オレに任せろよ、デュラン)

 

See you next time!

<文/開成教育グループ 個別指導統括部フリステウォーカー講師編集部:藤本憲一(Duran)>