2021/11/22

Duranの留学記【第12話】

Hello there. 

Scene 12: I've got all the material.

Characters

Duran:デュラン。留学生。17歳。飛び級を狙っている。足が速い。
Cindy :シンディ。義妹、長女。17歳。日本大好き。品行方正系美少女。
Diana:ダイアナ。17歳。勉強できる。優等生系美少女。
Nicole:ニコール。17歳。セクシー系美少女。
Avril:アヴリル。17歳。ミュージシャン系美少女。
Peter:ピーター。学内書庫の書士。腹話術の人形系。博学。

昼のカフェテリアである。ランチの時間にシンディが、美少女隊と共にボクの横に座った。相変わらず、みんな可愛い。シンディはあれから「飛び級」に関して、いろいろと調べてくれている。美少女隊にもヘルプを頼んだらしい。彼女は学校中で聞き込みをしてくれたのだ。なにか分かったらしい。

"I'll tell you about what I've heard from teachers." (Cindy
(私が先生たちから聞いてきたことを話してみるわね)
"I couldn't know the details at all. All the teachers were unreliable."
(でも、詳しいことは全く分からなかったの。先生たちは全員、あてにならないわ)

 

シンディは不機嫌だった。ボクは彼女を促した。

 

"Anyway, please tell me what you've got." (Duran
(とにかく、君が聞いてきたことを教えてよ)

 

シンディが話し始めた。

 

"It seems there haven't been any skipping students from this school yet." (Cindy
(この学校からは「飛び級」の生徒は出たことが無いんだって)

 

これは予想されたことだった。そんなに多いはずがないのである。

 

"Oh, really? But, I thought so."  (Duran
(ああ、そうなんだ。まあ、そう思ったけどね)

"It's not just academic ability that you need." (Cindy
(必用なのは学力だけではないそうよ)

"Then, what do I need?"  (Duran
(じゃあ、何が必要になるんだい?)

"I don't know."  (Cindy
(知らないわ)

"What...?" Duran
(なんだって?)

 

彼女はボクの言葉を遮って続けた。

 

"It's difficult to get passed. And.." (Cindy
(合格するのは難しいんだって。そして...)
"It seems that you will be cursed if you talk about this too much...."
(あまりこの話をすると、呪われてしまうんだってさ)
"I was scared. That's all."
(脅されちゃったわ。これで、全部よ)

"Is that all? I'll be cursed? What the hell are they talking about?"  (Duran
(それで全部?呪いってなんだよ? 先生たちは何を言ってんだ?)

"So, I said I don't know!" (Cindy
(だから、分からないっていったでしょ!)

 

シンディは「お手上げ」というように手を広げた。どうやら、彼女はいろいろと聞いてくれたのだが、教師たちからはなにも得られなかったらしい。誰も、詳しいことは知らなかったのだ。ダイアナが口を開いた。

 

"My house is near the city office, so I went there." Diana
(私は役所の近くに住んでいるから行ってみたのよ)
"Can you believe? They said I have to ask at school."
(信じられる?学校で聞きなさい、だってさ)
"Is the Japanese city office like this?
(日本の役所もこんな感じ?)

 

ダイアナも怒っている。どこの役所も同じらしい。というよりも、あまりにレア・ケースなので答えようがなかったのだろう。だが...

う~ん、困った。そもそもボクが自分自身でリサーチしなかったのは、(語学力もあるが)こういった話は一度却下されたらそれでおしまい、になり易いと思ったからなのだ。ロールプレイングゲームが、あらゆる登場人物に情報を聞きまくって対策を考えるように、攻略の難しい交渉事は情報量がモノをいうハズなのだ。つまりボクは、一つでも多くの情報が欲しかったのである。ボクの時代はまだ「ネット社会」になっていなかった頃だったから、どうしても人づてでそれを仕入れるしかなかった。ボクは慎重に、「ボクの名前は伏せておいて」とも頼んでおいたから、そのことも影響したのかもしれない。しかし...。

 

"What should I do? I can't take any measures with this." (Duran
(弱ったな~。これじゃあ、何の対策も打てないな)

 

ニコニコと聞いていたニコールが手を挙げた。アヴリルと顔を見合わせた。

 

"Well, it's our turn. Avril and I have some good information for you."Nicole
(私たちの番ね。アヴリルと私がいいこと教えてあげるわ)
"First, you need at least three teachers who'll recommend you."
(第1、最低3人の教師からの推薦が必要)

 

アヴリルが引き継いだ。

 

"On top of that, the principal's recommendation is required." (Avril
(その上で、学校長からの推薦も必要なの)

"Second, you need to take a district exam and an interview test." (Nicole
(第2、地区のテストと面接試験があります)

"The test seems to be more difficult than schools."  (Avril
(そのテストって、学校のヤツよりも難しいんだって)

"Third, if you pass the test, you have a final interview." (Nicole
(そのテストに受かったら、最終面接に進めます)

"You will be talking to a pretty great person." (Avril
(かなり偉い人と話すことになるのよ)

 

シンディとダイアナがニコールたちを呆然と見ている。シンディ、ダイアナは「学業優秀者」、ニコールとアヴリルはどちらかというと「お遊戯優秀者」らしいのだ。ニコールたちに出し抜かれたのが信じられない、という顔つきだ。

 

"So, that's why you two said us, hurry to meet Duran." (Diana
(だから、あなたたち2人は早くデュランに会いに行こうって言ったのね)

"Who on earth did you hear all about?" (Cindy
(いったい誰にそれ、聞いたのよ?)

"Peter, the scrivener of our school archive." (Nicole
(ピーターよ。学内書庫の書士の人)

"You two don't know him, right? He is learned." (Avril
(二人とも知らないでしょ?あの人、物知りなのよ)
"He introduced me to the live house where I'm out."
(私の出てるライヴハウスも紹介してくれたわ)

 

アヴリルが視線をボクに移した。

 

"Peter said to me. Maybe the person who wants to hear this is Duran." Avril
(ピーターは、このことを聞きたがっているのは、恐らくデュランだろうって言ってた)
"And he said, if so, come to me as soon as possible."
(もしそうなら、大急ぎで私のところへ来なさいって)
"Otherwise he won't be in time."
(じゃないと、間に合わなくなるよってさ)

 

(あの腹話術の人形みたいな顔した人か。見かけによらず鋭いな。頼りになるんだ)

 

"I will. I'll do so." (Duran
(分かった。そうするよ)

 

ボクはアヴリルにそう答えると、4人を見渡した。

 

(うん、可愛いな~。いや、そうじゃなくて、ありがたいな~)

 

ボクは4人に頭を下げた。

 

"Thank you, thank you very much. I'm very appreciate." (Duran
(ありがとう。本当にありがとう。感謝してるよ)
"I'll definitely thank you for something."
(必ず、なにかお礼をするからね)

"You don't have to do such a thing." (Diana
(そんなこと、しなくてもいいんだから)

 

そういうダイアナの声が尖っている。彼女はまだ不機嫌なのか、とも思ったが、それにしては尖りすぎている。ひょっとして、ニコールとアヴリルがポイントを稼いだのが気に食わなかったりして?ってことは、ダイアナさん、やっぱりボクに気があったりなんかして...?そしてここから映画のシーンが始まったりして?

 

"Diana, the action you took to the city office really touched my heart." (Duran
(ダイアナ、役所まで足を運んでくれた君の行為はちゃんとボクの心を打ってるよ)

 

そうボクが言おうとした瞬間、ランチタイム終了のベルが鳴った。生徒全員が移動を開始する。ボクはまだ食べ終わっていない。だいたい、ランチタイムは20分しかないのだ。慌てて口の中に残りのランチを放り込むと、もう4人とも姿を消していた。

 

(―――もう少し、一緒に、いたかった...

 

が、まあ、いいや。それよりも、ピーターである。学校中の教師が知らないことを知っていて、依頼者がボクであることに気付くとは、腹話術人形のくせに「出来るな!」である。彼に頼れば的確なアドバイスがもらえそうだ。それにしても...。

3人以上の教師の推薦。その上での学校長の推薦。得体のしれないテストに面接。で、最後にかなり偉い人との面接...

 

(かなり偉い人って、誰なんだよ?)

 

やはり、ハードルは高そうである。が、アメリカの面接。特に若者の面接というのは「期待値」が大きいと聞いている。現時点での完成度よりも、将来どうなるのかを観られるらしいのだ。頭をそちらに向けておく必要がある。当然、英語面接ということになるのだが、これも「期待値」で観てくれるのだろうか?とにかくピーターに会いに行こう。すべては、そこからだ。新しいチャレンジが始まる。ボクは、こういう精神の緊張感が大好きなのだ。

 

See you next month.

<文/開成教育グループ 個別指導統括部フリステウォーカー講師編集部:藤本憲一(Duran)>