2022/03/07

意外と知らない?【成年年齢の引き下げについて】

2022年4月から、日本での成年年齢が現行の20歳から18歳に引き下げられます。2015年の公職選挙法の改正による選挙権年齢の引き下げに続き、とても重大な民法の改正です。人によっては高校3年生の間に成人になる人もいることでしょう。

 そこで今回の記事では成年年齢の引き下げによって、どんなことが変わるのかを政治経済の目線からとらえたいと思います。

※当記事では「成年:成人する年齢のこと」「成人:成年年齢(4月からは18歳)に達した人物のこと」と定義して使用しております。

1.成年年齢の引き下げ

 先述したように、2015年に選挙権年齢が18歳以上に引き下げられました。世界の選挙権年齢は18歳が主流であることや、財政赤字や増大していく社会保障費の負担を負う若い世代の声をより政治に反映すべきだという考えが背景にあります。

 成年年齢も世界では18歳である国が多いこと、選挙権を与えるということは18歳の男女には重大な決断をする判断力が備わっているとみなしているのだから成人として扱ってよいのではないかという議論がなされていました。そして、ついに2022年4月から成年年齢が引き下げられる運びとなりました。

2.何が変わるのか

 では、成年年齢の引き下げによってどのような変化がもたらされるのでしょうか。

 成人、と聞くとすぐに思い浮かぶのはお酒やタバコかもしれません。こちらについては今までと変わらず20歳以上の年齢制限が継続されます。これは、そもそもお酒などに年齢制限をしているのは健康面への影響を考慮したものであるからです。

 政治経済の目線で考えると、成年年齢は「自分ひとりで契約を結ぶことができる年齢」「父母の親権に服さなくなる年齢」という意味を持ちます。例えば、未成年者はスマートフォンの購入や一人暮らしの部屋を借りるための契約などに親権者の同意が必要となります。それが成年者になると十分な判断能力があると考えられ、自分の意思で契約をすることができるようになります。

 また、公認会計士や行政書士などの資格の取得なども可能になり選択肢の幅が増えてくることでしょう。

 さらに、これまでは未成年者は親権者の同意がある場合に女性が16歳、男性が18歳で結婚することが可能でした。これが今回の成年年齢の改定によって女性の結婚最低年齢が18歳に引き上げられ男女間での差がなくなります。

3.トラブルに巻き込まれないように

 このように、成年年齢の引き下げによって自分の意思で行動する自由が認められる一方で、懸念されるのは消費者トラブルなどに巻き込まれる可能性です。

 高校を卒業したばかりでは契約や金銭関係のトラブルに関する知識も少なく、詐欺などにあう可能性も高くなります。自分が考えていた契約内容と実際の内容が異なっていて、料金を払えなくなってしまった、想定以上の料金が請求されてしまった、というようなトラブルに巻き込まれるかもしれません。

これまで未成年者が親権者の許可なく契約を結んだ場合には様々な救済措置がありました。しかし、既に成人している場合にはその救済を得ることができない可能性もあります。

このような消費者トラブルに遭わないために、まずは中学・高校に通っている間に契約などに関する知識を身に着け、どのようなトラブルが身の回りにあるのかを知る必要があります。また、実際に契約する際にも分からないことを疎かにせず積極的に質問する、信頼できる大人に付き添ってもらってどのように交渉しているのかを学ぶ、といったことも大切です。

さらに、トラブルに巻き込まれたときに消費者ホットライン(118)や消費生活センターなどの機関に相談することもできます。

成人したばかりの若者を狙う犯罪も少なくない今、安心して生活するために様々な知識を身に着けてほしいと思います。

<文/開成教育グループ 個別指導部フリステウォーカー講師編集部:高山萌々子>