2022/06/20

生活と音楽【第1回】-リズムにのってしまうのはなぜ?-

気分をリフレッシュさせるために音楽を聴くという方は多くいると思います。音楽の授業でさまざまな音楽に触れたり実際に演奏した経験のある方も多いとは思いますが、「音楽って楽しいし息抜きにはなるけど、授業で音楽を学ぶことって意味あるの?」と疑問に思ったことはありませんか?

大学で音楽を学んでいる私が、みなさんにとても身近で親しみやすい音楽を使って、勉強の息抜きでありながらも、役に立つことを紹介します!

「無意識に」身体が動く

まずみなさんの一番好きな曲を思い浮かべてみましょう。どんなメロディー、歌詞でしょうか。明るく楽しい音楽のとき、無意識に頭や手足が動いていませんか?悲しくてどこか懐かしい曲のとき、無意識に涙が出そうになっていませんか?音楽が親しみやすいのは、このように「無意識に」人の身体が動いてしまうというのが理由の一つとして挙げられます。

このように今みなさんにとって身近な音楽ですが、同じようにはるか昔から音楽は身体の動きや人の生活と密接に関係しています。

身体が動くとき、私たちは無意識にリズムに乗って動いています。そのリズムにも区切りが存在します。それが「拍子」というもので、音楽を作ったり演奏するときには必ず使うものです。どの曲も、2拍子であれば1-2, 1-2、3拍子であれば1-2-3, 1-2-3というふうに進んでいきます。

拍子.png

日本と西洋のリズム

日本に昔からある民謡やわらべうたを思い浮かべてみましょう。運動会などでよく踊られる『ソーラン節』、地域で行われる夏祭りでの盆踊りの歌、わらべうたで言うと、『げんこつやまのたぬきさん』『花いちもんめ』『あんたがたどこさ』などです。これら、日本に昔から伝わる曲には2拍子系の曲がとても多いです。なぜ日本には2拍子系の曲が多いのかというのも、人間の身体の動きが関係しています。日本人は昔から田んぼを耕し、お米を自分たちで作る、農耕民族と言われています。農作業で思い浮かべるのは、くわやすきを縦に使って、1-2, 1-2と土を掘り起こす作業ではないでしょうか。このように日本人の身体は昔から1-2, 1-2とその場で動くようなことが多いため、2拍子系の曲が多くなっています。

反対に、西洋にはバレエのようなしなやかな踊りをイメージしたり、貴族の前できちんと列を整えて行進、整列するイメージがあります。日本人が農耕民族と呼ばれる一方で、西洋人は森や海などに生息する生き物を狩る狩猟民族と呼ばれています。馬に乗って駆けまわったりもするかもしれません。西洋の曲は2拍子、3拍子どちらの曲も同じくらいあるのですが、同じ2拍子でも、日本のように縦に動く2拍子とは違って、行進したり、馬に乗って狩りに出かける身体の動きから、前向きに常に進んでいく音楽がとても多いです。また、3拍子は昔から日本人が親しむ音楽にはあまりない拍子で、これは、1-2-3, 1-2-3とバレエなどしなやかな踊りの時に身体の動きにとても合わせやすいリズムです。バレエの舞台以外でも有名な、チャイコフスキー作曲のバレエ音楽『くるみ割り人形』の中の曲も3拍子で書かれています。

 昔から音楽は身体の動きや人間の生活に密接に関係しています。楽器の形が変わったり、流行りの音楽ができるのにも、きちんと理由があって、人間の生活や社会の変化と大きく関係しています。「授業で音楽を学ぶ意味」には、もちろん音楽を楽しむということもありますが、音楽からその時代の人間の生活や文化、気候、社会の動きを知っていくということもあります。みなさんも好きな音楽から、その背景を読みとってみると面白いかもしれません。

<文/開成教育グループ 個別指導部フリステウォーカー講師編集部:隅田佳乃>