2022/09/26

生活と音楽【第3回】―生活と楽器―

 今、音楽をするとき、楽器というものは欠かさずに使われるものです。楽器を演奏するときにはもちろん楽器を使いますし、歌を歌う時に音程を合わせたり、曲を作るのにも、楽器を使って確認する人は多いと思います。楽器は、普段ではあまり身近ではない人もいるかもしれませんが、何気なく聴いている音楽には必要不可欠なものだと私は思っています。

今回は、そんな楽器が生活においてどのように求められ、変わってきたかについてお伝えします!

世界最古の楽器

 皆さんは世界最古の楽器と聞いて、なんの楽器を思い浮べるでしょうか?ピアノ...ギター...トランペット...など考えられるものはさまざまだと思います。

実は、フルートが世界最古の楽器と言われています。とはいえ、今使われているような、長くて、鉄でできたものとは少し違う形です。諸説はありますが、2008年、ドイツにある石器時代の洞窟遺跡で、ハゲワシの骨やマンモスの骨でできた笛が発見され、それが4万年ほど前のものであり、世界最古の楽器であるという発表がされています。このフルートは骨でできているので、今の鉄でできたフルートのように澄んだ音が鳴るというわけではないように思いますが、音色に関しては現在のものに負けないくらい、幅広いものかもしれないとも言われています。

社会における楽器の役割と変化

フルートができてから、現在に至るまで、さまざまな楽器ができています。それぞれ時代は違っても、役割としては似たようなものがほとんどです。今でも、大事な祝典の時、音楽は必ずどこかには流れるはずです。私たちが想像できないほど昔でも、大事な祝典や勝負事を始める前の合図など、人々が心を合わせたい時には音楽があったと言われています。役割はある程度一貫していますが、社会の変化によって少しずつ形も変わってきています。

 まずは先ほどのフルートです。フルートは横向きに吹く笛で、金属でできた楽器です。フルートは、金属でできていますが、木管楽器の仲間です。その理由もフルートの形の変化によるものです。フルートの形は、世界最古の楽器であったように、動物の骨で作られた横笛だったのですが、もともとフルートとは、横向きの笛のことも縦向きの笛のことも指していました。つまり、今でいうリコーダーのこともフルートと呼んでいて、むしろ、横向きの笛より、フルートという名のリコーダーが主流だったのです。18世紀後半になり、音楽は貴族など一部の人にしか楽しまれていなかったですが、啓蒙思想と共に、庶民にも身近なものになりました。それまでは教会や宮廷でしか演奏されなかったものがより広い空間で演奏されるようになったのです。それまでのリコーダーのような木でできた小さな楽器では、音も小さく響きにくくなってしまうため、金属でできたフルートに形が変わっていきました。

 次に、金管楽器の中でも最高音域を持つ華やかな印象のトランペットです。現存最古のトランペットは、ツタンカーメンの副葬品で銀や銅でできたもので、3000年ほど前のものと言われています。しかし、「ラッパ」という言葉は、旧約聖書やギリシア神話に書かれていたり、50006000年ほど前には狩りや戦いの合図としてつかわれていたかもしれないという記録があります。そのころのトランペットも世界最古の楽器であるフルートと同じように、動物の骨でできていたようです。そこから、シルクロードからヨーロッパへ逆輸入するなど全大陸に存在すると言われていて、主に時報として使われる生活に欠かせないものになっていました。今のように楽器として使われるようになったのは、300年ほど前のことで、王様の近くで演奏することが多く、音程が悪くてもとにかく立派な音を出すことが優先されていました。しかし、これもフルートと同様、18世紀後半から19世紀にかけて、庶民にも音楽という文化が浸透し、音楽は聴いて楽しむものに変わったため、正確な音程に合わせたり、合奏用として演奏するために、演奏できる音の幅を広げるなど、今のような形に変わっていきました。

社会の変化や考え方の変化により、音楽の形はどんどん変わっていきます。今からでも、求められるものが変わっていくと、楽器の形が変わっていく可能性もあります。皆さんも、今までに触れたことのある楽器の歴史を調べて、当時の時代背景と照らし合わせたり、これからどのような形に変わっていくのか予想してみても面白いかもしれません。

<文/開成教育グループ 個別指導部フリステウォーカー講師編集部:隅田佳乃>