2023/02/20

学部の違いって何?「文学部」特別編

はじめに

みなさんは文学部にどのようなイメージを持っていますか?「何をやっているか分からない。」「就活に不利なのでは?」という少しマイナスのイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか。今回は、その疑問を解消すべく、現在文学部に所属している先生たちにお話を聞いてみました。

参加講師

中尾 彩(以後中尾)→慶應義塾大学文学部倫理学専攻

天本 聖莉(以後天本)→立命館大学文学部東アジア言語学域現代東アジア言語文化専攻

長瀬 陸生(以後長瀬)→京都府立大学文学部日本・中国文学科

井上 太一(以後井上)→龍谷大学文学部哲学科

本田 萌香(以後本田)→國學院大學文学部史学科

大まかな勉強内容

本田「南北朝時代から室町時代にかけてを中心に日本史の勉強をしています。」

中尾「倫理学は簡単にいうと、哲学の一種です。物事の善悪について勉強をしています。」

天本「中国語や、中国や韓国のポップカルチャーについて勉強をしています。」

長瀬「今は様々なことを網羅的に勉強をしています。日本文学、中国文学、日本語学などの授業があります。来年3年生になったら、より専門的なことを勉強していきます。」

井上「西洋哲学について勉強をしています。ゼミではデカルトについて研究をしています。」

文学部に進んだ理由

インタビュアー「みなさんが文学部に進んだ理由はなんですか?」

中尾「心理学だったり、コミュニケーションに関連する学問に興味があったのでそれらを学べる文学部に進みました。」

天本「高校生の頃から中国ドラマが好きでした。中国語はどこでも学べるけど、文化なども学びたかったので、この学部に進みました。」

井上「高校生の頃から説明文、特に哲学の話を読むのが好きでした。大学でも似たようなことがしたくて、哲学科に進みました。」

長瀬「高校生の時にお世話になっていた塾の先生が京都府立大学出身で、その人についていきたいのと、源氏物語を学びたかったため志望しました。」

本田「私は幼い頃から歴史が好きだったので、歴史で有名な國學院大學に進学しました。」

文学部の学びは生活に役に立たない!?

インタビュアー「みなさんが勉強されてることって、実生活に役に立ちますか?どうしても学問によってしまうなと思うのですが。34年生の3人はいかがですか?」

井上「今自分が学んでいることは全ての学問の源流なんです。様々な人物の思想を学び、自分だったらどうするという視点で考えます。それによって、何かあった時のヒントになってくれます。」

中尾「自分が学んでいることが直接活きることはないです。井上先生がおっしゃるように、考え方のプロセスや考え方の種類をディスカッションの中で学んで、それを活かすことはできます。」

本田「直接的には活きません。批判的な視点を養えたことによって、SNSで流れてくる情報を鵜呑みにしないようになりました。」

インタビュアー12年生の2人はどうですか?文学部に入って失敗したと感じることはありますか?」

長瀬「失敗したとは思わないです。確かに就活などで実学として活きることはないかもしれません。ですが、好きなことを掘り下げた経験が大切になるのではないでしょうか。また、文学部の学生は言葉の使い方が上手なのではないでしょうか。コミュニケーションや言葉を使って、自分を表現したりすることに長けていると思います。」

インタビュアー「今みなさんがうなずいていましたね。本当にそうなんですね。」

天本「私は中国の文化や中国の方が何を考えているかも学んでいます。大学卒業後に中国の方とお仕事をする機会があった場合、根本的な文化の違いを理解した上で関わることができるのでは無いかと思います。小さいクラスの中で、自分が好きなことを調べて発表する授業があります。1人で20分くらい発表することを学生で経験できてよかったなと思います。社会人になっていきなりは大変なので。」

将来にどう活かすか

インタビュアー「今学んでいることをこれからどう活かしますか?」

長瀬「大学院に進学したのち、教員を目指すのでとても活かせると思います。」

井上「正直まだあまり考えられていないです。あと数年大学にいるので、自分でやりたいことがあれば批判的かつ建設的に考えてチャレンジしていきたいと思います。」

中尾「倫理学を直接的に活かそうとは思っていません。マーケティングや営業など、普通に文系就職をするつもりです。」

インタビュアー「では、あまり就職のことは考えずに進学してもいいということでしょうか。」

中尾「そうですね。周りの友人も学問を活かそうとは考えていないです。今改めて将来を考えている人が多いですね。この4年間は目の前にあることを全力にやってきました。この姿勢はこれからも大切にしていきたいです。」

天本「私も中国で仕事をしたいと思っているわけでは無いです。人と関わることが好きなので、広報や営業のお仕事ができたらいいなと思っています。中国進出をしている企業でそのような仕事ができたらいいなと思っています。」

インタビュアー「お話を聞いているとみなさん将来を考えて進学したわけではないんですね。好きなことのために進学して好きなことを学んでいるんですね。裏を返せば、それでもいいということですか? 文学部でコミュニケーションであったり言葉について学んで、そのスキルは直接的では無いにせよ、どの道に進んでも活きてくるということですか?」

全員「はい!」

文学部に入って苦労したこと

インタビュアー「文学部に入って苦労したことはありますか?」

井上「大学に入ると難しい研究書をたくさん読む必要があります。本を読む習慣がない人は初めは大変かもしれないです。」

中尾「私は本が苦手なので、はじめはとても苦しかったです。レポートの比重が大きかったこともあって、活字慣れするのが大変でした。ですがなんとかなっているので、興味関心を突き詰めたいという思いがあれば打ち勝てると思います!」

天本「学域という広い括りなので、興味がない分野でも勉強をしなくてはならないです。そのため正直嫌なことも多いです。今は中国の高校生が使う歴史の教科書を使って授業を受けているのですが、とても辛いです。興味関心のあることだけできるというわけではないのです。」

長瀬「演習発表で和歌を現代語訳することをしています。言葉をひとつひとつ現代語訳してという作業が終わりが見えなくて大変です。どこまでやっても先生に指摘されます。(笑)」

インタビュアー「本当に好きじゃないと苦しい部分が多いのですね。数学のように明確な答えがある訳ではなく、それを証明するためにいくらでも突き詰めることができる学問なんですね。ですが、それを乗り越えた先には将来に役立つ持久力がつきそうです。」

本田「私が研究したいのは室町時代なのですが、3年生のゼミで扱っていたのは鎌倉時代の史料でした。正直興味なかったですし、全然分からないまま発表して先生にたくさん指摘されました。本当に自分がやりたいことだけできたのは4年生になってからでした。天本先生と長瀬先生の気持ちがよく分かります。それと、漢文と古文がある程度できないと史学科ではやっていけません。私は苦手だったのでとても苦労しました。」

インタビュアー「自分が通っている学部学科に興味があるならやっておいた方がいいことはありますか?やっておいた方がよかったなーと思ったこととか。」

本田「通史と古文と漢文ですね。」

天本「世界史はやっておけばよかったです。」

中尾「倫理を勉強しておけばよかったです。早い段階で選択科目をしっかり見通しておけばよかったです。」

井上「歴史です。高校生の時、歴史より数学の方ができたので入試では数学を使いました。ただ、入学してみたらたくさん歴史を使うので苦労しました。」

文学部のここが好き!

インタビュアー「最後に、絶対これは伝えたい、文学部の魅力を教えてください。」

天本「概論の授業で先生が自分の専門に関わるビデオなどを見せてくれたりするので、とても楽しいです!」

中尾「自分の専攻に関わらず様々な授業を取れます。就職には関わらないかもしれないけど、自分の生き方を見つめ直す、生活を豊かにするといった点では、文学部は深い学部です。」

長瀬「自分も中尾先生と同じで、様々な授業を取れます。音楽の歌詞から卒論を書く予定の友人もいます。様々な観点からアプローチできることも文学部の特徴です。文学部は楽しいです!」

本田「教科書には出来事だけ羅列してあるけど、現代の私たちがそれを知ることができる理由は史料に書いてあるからです。その史料を自分の力で解読していくことはとても楽しいです。史学は地味ですけど、教科書を読んで『これはなんでなんだろう』と疑問を持ったことがある人は絶対ハマると思います。」

井上「教科書に書いてある事柄を『どうしてこの人はこの行動をとったのだろう。自分だったらどうしよう。』と考える学問です。それによってつくのは知識ではなく知恵です。それが文学部の魅力だと思います。」

おわりに

いかがでしたでしょうか。中高生のみなさんは将来のことを考えて大学を選びなさいと言われることが多いと思います。ですが、自分が本当にやりたいことを模索するために好きなことを精一杯やる大学生活でも良いのではないでしょうか。「大学は人生の夏休み」とよく言われます。それをダラダラするだけの「夏休み」にするのか、好きを突き詰める「夏休み」にするのかはあなた次第です。文学部という名の底なし沼でみなさんをお待ちしています。

<文/開成教育グループ 個別指導部フリステウォーカー講師編集部:本田 萌香

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