2020/10/26
Duranの留学記【第1話】
Hello there!
英語講師のDuran(デュラン・日本人!)です。実は私、高校生の時に留学していまして、その時の話を(特に英語の話を!)チョットばかりしてみたいな、なんて考えています。少しばかり、お時間を。
8月渡米。アメリカの学校は9月から始まるワケで、それまでの間、ホスト・ファミリーの家でその家族とアメリカの生活に慣れなければいけない。私が行くことになっていたのはペンシルバニア州だった。独立宣言・アメリカ合衆国憲法の立案なんかで有名な州だ。一年間共に暮らすホスト・ファミリーは父・母と5人の弟と妹たちだった。彼らは上から17歳(女)・15歳(男)・11歳(女)・7歳(男)・3歳(男)。で、ボクが17歳。陽気な家族だった。それはすごくいいことだ。が、彼らはあろうことか、初対面のボクに一斉に話しかけてきた。
Welcome ? ? ?!(父)
? ? ? flight? I ? ? ? ? you ? ? ? ? trip(母)
I couldn't ? ? ? ? I love Japan ? ? ? ? ? ? ? ?.(17歳)
What ? ? ? ?? Is NINJYA OK? (15歳)
It's about ? ? ? (11歳)
I ? ? ? come. Let's play game, ? ?, after ? ? home.(7歳)
Dad, you said ? ? ? ? ? ? You are a ?! (3歳)
わっはっはっはっは!である。「?」は聞き取れなかった単語だ。いや、こんなスピード、何が何だか分からんわい!何を隠そう(いや、隠さんでもいいのだが)私は英会話なんぞやったこともないのである。私にできたことはひたすら沈黙を守ることだけだった。やがて、ジャパニーズ・スマイル(外国人はこれを無機質な笑み・不気味な笑み、という)を続ける僕の耳に,今度はこんな家族の会話が飛び込んできた。
What's ? ? him? (父)
I have no ? . (3歳)
I ? ? ? ? too bad. Maybe ? ? ? ? ?.(母)
I ? ?. He ? understand what ? ? ? ?.(15歳)
Are you ?? Japanese are ?.(17歳)
I heard ? ? ?.(7歳)
Mam, I'm hungry! (11歳)
ここまで分からんと、もはやガンジーの「無抵抗主義」しかない。とにかく私は「飛行機酔いだ」(こんな単語、知らん)・「時差ボケだ」(これも知らん)と必死の思いで伝え、その日は夜だったこともあり、早くベッドに入ることに成功した。しかし、「おやすみ!」というわけにはいかない。起き上がり、我が記憶力を励まし、かなりの時間をかけて反芻に勤めた。そして、ノートに書き落としたのが以下の英文である。(もちろん全文推測でしかないのだが...)
Welcome to the U・S!(父)
(アメリカへようこそ!)
How was your flight? I heard the storm let you go on a terrible trip.(母)
(飛行機はどうだった? 嵐のせいで大変だったってきいたんだけど)
I couldn't wait to see you. I love Japan so much as I've made a plan to visit.(17歳)
(待ち遠しかったわ。私、日本に行く計画を立てたことがあるくらい日本好きなの)
What should I call you? Ninjya is OK? (15歳)
(お前、なんて呼べばいい? 「忍者」でいいか?)
It's about time you come.(11歳)
(あんた、遅いわよ)
I knew you would come. Let's play game, I mean, after we'll get home.(7歳)
(君が来るのは知ってたんだよ。さあゲームしよう、いや、家に着いたらね)
Dad, you said he would be shorter than me. You are a liar! (3歳)
(ダディー、彼は僕よりちっちゃいって言ったじゃん。嘘つき!)
そして、家族の会話が、
What's wrong with him? (父)
(彼、どうしたんだ?)
I have no idea. (3歳)
(分かんないよ)
I think his trip was too bad. Maybe he was sick about it.(母)
(きっと飛行機が悪かったのよ。彼、それで疲れてるんだわ)
I doubt it. He couldn't understand what we were talking about.(15歳)
(そうじゃないよ。あいつ、俺たちが何しゃべってんのか分かんないんだぜ)
Are you kidding? Japanese are smart.(17歳)
(ふざけないでよ。日本人は聡明よ)
I heard exactly the opposite.(7歳)
(僕は正反対なこと聞いたけど)
Mam, I'm hungry. (11歳)
(ママ~、お腹すいた)
恐ろしく時間がかかってしまった。しかし、こう書き出してみると、彼らが使っている英文のランクって年齢ほど差はないように思えた。う~ん。さて.........)
――明日からどうしよう?
次の日、起きてみると父たちはもう外出していて、家にいるのは母と3歳の子だけだった。3歳は目ざとく、顔を洗い終わったボクを見つけると、嬉しそうに話しかけてきた。が、その前にボクは先手を打った。
Speak slowly, please.(Duran)
(ゆっくりしゃべってね)←情けない!
Hey, you finally woke up! I could get up earlier than you this morning.
(やっと起きたんだね。僕の方が早起きだよ。―強調・比較級)
Oh, yeah. You are a good boy.(Duran)
(そうだね。君はいい子だね)
Yes. You came from far to see me, didn't you?
(うん。君ってさ、僕と会うために遠くから来たんだろう?―付加疑問文)
―Yes. (Duran)
(そうだよ)←だって、Noって言ったら理由を説明しなきゃいけなくなるじゃない
I thought so. Well, Duran. Have you ever played the game called "Micro Island"?
It's a board game.
(そうだと思ったよ。ところでDuran、「マイクロ・アイランド」っていうゲームはやったことある?ボード・ゲームなんだけど―現在完了・分詞)
―No. (Duran)
(ううん)
That's the one the seven years old brother told you yesterday.
If we play it before he comes back, he'll be surprised at us.
(それ昨日、7歳が話してたヤツなんだ―関係代名詞)
(もし彼が帰ってくるまでに僕たちがやってたら、きっとびっくりするよ。―時制)
Well, but I don't know the rules. (Duran)
(う~ん、でも俺、ルールを知らないからね)
I'll show you how. Just looking at them, I could get the rules.
(見せてあげるよ。僕は見てるだけでルールを覚えたんだ―関係副詞・分詞構文)
信じられない...。ボクが4年もかかってまだマスターしていないこれらの英文をたった3歳の子どもがスラスラと話しているとは...。彼がアメリカ人だからか?いいや、アメリカ人だから英語がしゃべれる訳では断じてない。彼に英文は書けない。恐らくbrotherの単語も書けまい。算数ならば、一桁の足し算すら怪しい。しかし、彼は「話せ」ているのだ。しかし、頭脳の働き、という点で考えると、「17歳」であるボクが「3歳」の彼に負ける道理などあろうはずがない。つまりこういうことになる。「少なくとも高校程度の文章は三歳児でも話している」→「英語は3歳児でも話せるほど簡単である」→「17歳のボクなら話せるはずである」ここに今回の留学でのボクの「英語力」の成就がありそうな気がした。いずれにせよ今からトライする指針が出来た。
Duranの一言。
「英語は簡単なものなのかもしれない。少なくとも、ボクたちが思い込んでいるものよりも」
See you next time.
<文/開成教育グループ 個別指導部フリステウォーカー講師編集部:藤本憲一(Duran)>